魔術高専   作:一般ゲーマー

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UA 188 - 175 × 100 = 1300文字
今回 4350文字 目標達成
次から3000文字以内だったら、2倍にしようかな。





1章-8 金策

 明星と勝負を受けることが決まり、救護室を出てからそのまま建物の外まで足を運び、一番近くにあるベンチに浅く腰掛ける。

 

 

「っはあぁぁぁ…………」

 

 

 深いため息一つ零して背もたれに体重を掛けて空を見上げる。

 さて、どうしたものか。

 順当に行くならばさっき見せてもらった獅子堂なんちゃら先輩の依頼を達成すること。とりあえずはそれが達成できるか情報収集したいところだが、今はちょっと指一本すらも動かす気にならない。後で依頼内容の詳細も含めて確認するとしよう。

 それ以外の方法だと、別口でどうにか150万APを稼ぐ方法を探すか。獅子堂先輩以外にも、もしかしたら達成できる内容で大きな報酬を得られるものがあるかもしれない。まぁそんな美味しい依頼があるなら他の誰かがさっさと受けてしまうだろうが。

 あとは……既に専用の部屋を探し出して交渉し、何とか部屋を譲ってもらうか。……うん、無理だな。

 

 やはり一番現実的なものは獅子堂先輩の依頼になるか。

 そう考えるもこれは最終手段にしたい。理由は2つ。勝てる気がしないことと、勝てたとしてもかなり目立つことになってしまうだろうから。

 学校生活の目標の一つに設定したものだから、出来るなら目立つ行動は避けていきたい。だがしかし明星の手助けは極力手に入れたい。天秤にかければ、さすがに明星に比重が傾くか。

 

 

「あれ? 神凪君? こんなところでどうしたの?」

 

 

 現状を整理して現実に打ちひしがれていると、正面から名前を呼ばれる。まだ学校に知り合いが3人しかいない上に、その3人とも違う声。

 いったい誰がと想い視線を向けると、そこには見覚えのあるポニーテールの先輩。

 

 

「うげっ」

「えっ」

 

 

 もう関わることのないと思っていたストーカー疑惑のある先輩の登場に、思わず声が漏れ出てしまう。そんな俺の反応を見た速水先輩はと言えば、ぴたっと動作を停止させ硬い表情を見せる。

 やっばい。先輩に対して露骨に失礼な態度を取ってしまった。年上どころか同年代との関りも普通より少ないと自負している俺には、こんな時にどう対処すればいいのかマニュアルが備わっていない。教えて、AI先生。

 そんな風に俺も俺でフリーズしていると、やがて速水先輩の目がじんわりと潤んで声も震え始める。

 

 

「ご、ごめんね。私なにかしちゃったかな? もしそうだったら謝るから……あ、でも心当たりが無くて、その」

「違うんですごめんなさい。説明するんでちょっと落ち着いてもらっていいですか。隣どうぞ座ってください」

 

 

 まさかの返答に慌てて謝罪をし、さっと横にズレて隣を差し出す。まさかそこまでダメージを受けるとは思わないじゃん。泣きはしてないけど万が一にでも泣かれたら困る。目立つ。俺、悪者。みんなのサンドバッグ。

 

 

「そのですね、前に会った時に俺って自己紹介をしてないじゃないですか。なのに俺の名前と端末のアドレスを知ってるようだったので、その……俺の中でちょっと危ない人じゃないのか疑惑がありまして……」

 

 

 俺の指示通りにひとまず素直に座ってくれた先輩へ向けて、早速言い訳を始める。バカ正直に言いすぎたかもしれないが、泣かれるよりはマシ。というか今言ったことの答えを実際に知りたいし。

 俺の説明を聞いた速水先輩はぽかんとした後、「あっ」と小さく声を出す。そして思い当たる節があったのか申し訳なさそうに眉尻を下げた。

 

 

「ごめんね、確かに一方的に知ってたら怖いよね。うん、私の方もきちんと説明するよ」

 

 

 そうして元気を取り戻した先輩曰く、あの日は学生会として一般生徒より早く登校していた彼女は昼休み前に食堂で昼食を摂っていた。そしてそこに俺と明星登場、速水先輩のすぐ近くに座る。そして聞き覚えのある七瀬さんの名前が聞こえたことで盗み聞き開始。俺の存在が気になったために学生会権限で俺の名前とアドレスを把握……という流れらしい。

 ちなみに食堂では俺たちに背中を向けるように座っていたために、きちんと顔を確認できてなかったらしい。そして速水先輩にとって七瀬さんは、1年生の頃にお世話になった先輩とのこと。

 

 

「なるほど、そういうことだったんですね」

 

 

 話を聞いた俺はストーカーやら病んでる先輩じゃないことにほっと一安心。ちょっと職権乱用か疑うレベルのことをしている点は置いておくこととする。

 

 

「うん。ごめんね、誤解させるようなことしちゃって。沙雪先輩は私の憧れだったから、名前が聞こえてどうしても気になっちゃって」

 

 

 憧れ……? いや、分からなくもないが割かし適当だったりぽんこつな一面もあるあの人に……?

 そんな失礼なことを考えながらもそれを微塵も表に出さない様に気を付けつつ、適当に相槌を打つ。それを受けて俺の納得を得られた速水先輩は、話を変える。

 

 

「ところで、神凪くんはこんなところでどうしたの? どこか部活でも入った?」

 

 

 たしかにここは部室棟のすぐ目の前だから、そんな勘違いもされるか。

 

 

「いえ、ちょっと考え事をしてただけです。部活には入ってないし、今のところ入る気もないですね。速水先輩こそ、学生会の用事ですか?」

「そうそう、これからちょっとそれ関係の作業をしようかなって。学生会の部屋もここの3階にあるんだ。しかも各委員会や部署ごとに一部屋ずつあるから割とのんびりできるんだよ! どう、神凪くんも入らない?」

「いや俺は――」

 

 

 そんな勧誘を受け、ふと思いつく。部活だ。

 この高専ではどうなってるか分からないが、基本一つの部活には一つの部室が与えられるはず。もし新しい部活を設立して俺を含めた明星以外の部員が幽霊部員となれば、明星の求める専用の部屋が完成するんじゃないか?

 いやでも卒業まで部活を存続させる必要があるし、それに伴う活動実績もいるのだろうか。分からん。とりあえずそこを考えるのは後にして、まずはそれが実現できるか確かめるのが先か。隣に学生会の人もいるわけだしちょうどいい。

 

 

「すみません速水先輩、新しい部活の設立条件って知ってますか?」

「えっ? 部活を立ち上げるの? 条件としては5人以上の部員と初期費用の10万ポイントがあれば可能だけど……」

 

 

 5人……5人かぁ……。

 頑張れば集められそうなラインな気もするが、短い時間じゃその人となりが計れない。途中で変にやる気を出されたり、明星にアプローチするような奴相手だと困る

 

 

「ちなみに存続のための条件は?」

「部員が5人を切らないことと、あとはきちんとした活動報告があれば他に実績とかは必要ないかな。でも実績がないと予算も全然出せないけどね」

 

 

 達成……できるか? 3週間以内に条件に適した部員の確保と、恐らく俺一人による継続的な活動実績。もし時間を掛けてそれをしたとしても、明星の協力というリターンに見合っているか。

 ……分からん。でも最強候補の何某先輩と戦って勝よりは可能性はあるか?

 

 

「神凪くんは何の部活を作るつもりなの? もしかしたらもうあるかもしれないし、支障がないなら教えて欲しいな」

「それは……」

 

 

 速水先輩の言葉に答えようとして詰まる。そりゃしたい部活動があるわけでもないし、そうなる。

 口を閉ざしたまま、一拍置いて考える。そもそも事情を隠す必要はないか。普通に要所だけ相談して、何か俺に思いつかない方法が知れたら儲けもの。そうだな、そうしよう。

 

 

「実はですね……」

 

 

 賭けてる内容については伏せて、勝負をしていること、その方法と期限についてを伝える。

 ふむふむと相槌を打ちながら話を聞く速水先輩に、「何か良い方法を知らないですか?」と投げかけると、考え込むように暫く閉口する。

 俺一人だと正直すぐにはこれ以上思いつかないので、俺も黙って彼女の言葉を待つ。

 

 

「そうだなぁ……。いきなりだけど、神凪くんって何が得意?」

「得意?」

「う~んと……神凪くんが編入したのってここでしたいことがあったから? それとも沙雪さんからの指示?」

 

 

 その質問に何の意図があるのか首を傾げながら、素直に答える。

 

 

「たしかに七瀬さんからの提案はありましたけど、編入するのを決めたのは自分です」

「そっか。なら何か目的があるんだよね。勉強か、研究か、戦い方か。教えてもらえる?」

「別にそれくらいなら。その中だと……戦い方ですかね」

「なるほどねぇ……」

 

 

 ここまでのやり取りに何の意味があるのか。

 意味深に呟いた速水先輩は一拍置いてから身体を少しこちらへと向きなおした。

 

 

 

「よし、神凪くん。私とも一つ取引をしない?」

「取引?」

「そう。神凪くんは一つちょっとした質問に答えて欲しいのと、私と1回戦って欲しい。その代わり、私は神凪くんに150万APを払ってあげる」

「は!?」

 

 

 あまりにもな取引の内容に驚き、普段は出さないほどの声量が出る。俺は隣の速水先輩に顔を向け、矢継ぎ早に質問を繰り出す。

 

 

「いや、それって速水先輩にメリットあるんですか? てか150万ってそんな簡単にポンと出せる金額ですか?」

「まぁ安くはないけど、150万くらいなら問題ないよ。神凪くんはまだ分からないだろうけど、大きな学校行事の成績上位者になればもっと貰えるし、学生会に入ってると毎月APが貰えたりもするんだ」

「だとしても150万も俺に払う意味は分かんないです。初対面も同然の俺にですよ」

「私にもメリットはあるよ? 沙雪さんが推薦するような君のことを知れるんだし」

「たったそれだけのために150万も……」

「私が良いって言ってるからそれで良いの。神凪くんは嫌なの?」

 

 

 嫌かと言われると当然嫌ではない。むしろ降って湧いたこのチャンスに飛びつきたい。だが、あまりにも突然なことで理解が追いついてないだけだ。

 一度冷静になって考える。俺は速水先輩のことをほとんど知らないから、先輩には悪いが騙されてる場合も考慮していくつかパターンを想定する。

 

 

「……戦うって言ってましたけど、勝敗は取引に影響しますか?」

「ただ戦ってみたいだけだから、勝敗は関係ないよ。……あっ、ただ本気でやってほしいかな」

「了解です。それから取引って学校端末を使って契約的な操作が行われるんですか?」

「口頭の口約束だけで、端末ではAPの受け渡しだけだよ。気になるなら受注者を限定した依頼でも投稿して、それを介したりも出来るけど、する?」

「……いえ、大丈夫です。あと、受けるとしたら日程っていつになりますか?」

「私が場所を押さえるけど、そういうのって全部予約制だから。それでも遅くて来週末には出来ると思うよ? それ以降で神凪君の希望があったら合わせるよ」

「……ありがとうございます。速水先輩、その取引に乗らせてください」

 

 

 そこまで詳細を聞き、俺は彼女との取引に応じることにした。俺の返事を聞いた速水先輩は「ありがとうね! それじゃあよろしく」と快活に笑って手を差し出してきた。

 ……え? 握手? なぜに。

 女子と触れ合ったこととかないから恥ずかしい緊張しそう。手汗とかかいてないかしら。

 

 

 

 

 

 

 

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