魔術高専   作:一般ゲーマー

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UA (198 - 188) × 100 × 2 = 2000文字
今回 3350文字 目標達成




1章-9 模擬戦

 土日はギルド活動以外は特に変わったことはなく、のんびりと過ごしていたらあっという間に週が変わり、そしてこれまた特筆することが……あまりないまま木曜日。

 月曜の昼休みには速水先輩から『取引日時は木曜日の放課後でいい?』との連絡がきた。つまりは今日、これからだ。取引は放課後すぐではなく、30分ほど経ってからになるが、俺は今テラスで明星を待ち伏せしていた。

 もはや定位置になってるんじゃないかと自分で疑問に思うほど、いつもの場所で座って待っていれば、未だに連絡先を持っていない明星が登場する。

 

 

「明星」

 

 

 声を掛ければ相変わらず面倒そうな顔をするが、今日はそこに驚きが混ざっていた。それに嫌そうな表情を付け加えた百面相明星は渋々こちらに近づいてくる。……なんだかんだ表情豊かで面白いなこいつ。

 

 

「……なに? まさかもう用意できたとは言わないよね」

「ま、そうだな。今手元には無いけど、このあとすぐ手に入る予定だ」

「……うげぇ」

 

 

 俺の返答に心底嫌そうな顔をしながらよく分からない鳴き声を上げる明星を横目に、俺は立ち上がり言葉を続ける。

 

 

「それ関係で今から用事があるんだけど、明星も付いてきて欲しい。今から時間あるか?」

「……まぁいいけど」

「えっ、マジか」

「なに? 行かなくてもいいなら帰るけど」

「いや悪い、もっと抵抗するかと思ったから。ありがとう」

「勝負に関係するらしいからしょうがないでしょ。早く終わらせてよ」

 

 

 案外簡単に了承を得られたため、そのまま指定された場所に向かう。

 やってきたのは第四訓練場。かなりでかい。一つ一つが鍵の掛った個室になっているが、その広さは部屋とは呼べないほどの大きさでなんと1辺50mほどもある、らしい。その代わり数が少なく予約も数日先まで埋まるほど人気だと聞くが、速水先輩はなんかすんなりと取ってきていた。

 

 

「いらっしゃい神凪くん。そっちの子は例の勝負をしている女子かな?」

「そうです。今日で勝負も終わりそうなんで、説明がてら連れてきました」

「……明星天音です」

「明星さん……。うん、よろしくね! 私は4年の速水楓です!」

 

 

 明るい先輩とは対照的にテンションが低いまま挨拶をする明星。明星は積極的にコミュニケーションを取るわけでもないから、そのまま会話に割り込む。

 

 

「それで、俺ここに来るのは初めてなんですけど、何したらいいんですか?」

「あっ、ごめんね。あとは予約した部屋を自由に使っていいんだけど、その前にこれを選ぼっか」

 

 

 速水先輩が指さす先には綺麗に畳まれた運動着と、小さいバッジのような何か。そして数種類の武器が置いてあった。こんな剝き出しで置いていいものなのかと近くで見てみると、どれもこれも刃は潰されて殺傷力が落とされているようだった。

 

 

「この体操着とかシンボルはこれからする勝負に必要だから、自分のサイズに合うやつを選んでね。武器も同じく。練習用の貸出装備だから気にせず使ってね。あとシンボルは5個取っておいて」

 

 

 説明しながらぱっぱと自分用の道具を取っていく先輩に倣って、俺も同じように選んでいく。装備に関しては七瀬さんに仕込まれて数種類扱えるが、一番使いやすい短剣を数本まとめて手に取った。

 

 

 

「それじゃああっちの方に更衣室があるから着替えてきて。そのあとは5って書かれたブースが予約した場所だから、そこの前で集合ね。明星さんは先に行ってても私に着いてきてもどっちでもいいよ?」

「……先に行ってます」

 

 

 相変わらず協調性のない選択肢を取る明星に、先輩は気にした様子もなく「それじゃあすぐに向かうから、ちょっとだけ待っててね」と声をかける。

 この取引の内容からしてそうだけど、さてはこの先輩かなり優しいな? 最初怪しいストーカー扱いしてごめんなさい。

 

 大した持ち物もないうえに男の着替えなんて秒で終わるので、速攻で明星と合流。会話なく待っていれば先輩もすぐにやって来ては、お待たせ~と楽しそうに手を振ってくる。

 

 

「ブースに入るには予約した人の端末が必要でね。こうして……っと」

 

 

 部屋の前にある読み取り機のようなものに端末をかざすと、目の前の扉がスーッと スライドして開かれていく。

 中へと足を進める速水先輩に追従し、初めてブースに足を踏み入れる。中は物一つ置かれていない殺風景な部屋で、事前の情報通り、奥行きと幅は大体50mはありそう。高さに関してはそこまででもないが、5mはあり3階建ての校舎に匹敵するくらいだろうか。

 数歩先に進むと足を止めて振り返った速水先輩は、これから行う模擬戦について説明してくれる。

 

 

「この学校の模擬戦って2種類あってね。一つが衝撃戦、そしてもう一つがこれから行うシンボル戦っていうの。神凪くんはもう誰かから説明を受けた?」

「いや、聞いたことないですね」

「じゃあ簡単に説明するね。衝撃戦っていうのは、衝撃を検知する特殊な運動着を着て戦って、ある一定以上の衝撃を相手に与えた方が勝ちっていうルール。それでシンボル戦っていうのは、私たちがさっき持ってきたこのシンボルを運動着に装着して、相手のそのシンボルを先に既定数破壊した方が勝ちって言うルールだよ。どちらにも共通するのはスタート前の魔術の構築や魔力溜めなんかは禁止ってことくらいかな」

「……なるほど」

 

 

 短い説明ながら、簡単な内容だったために頷いて理解を示す。

 

 

「シンボルは頭、両腕、胸、背中、両脇腹、両足の最大9つセットできるの。今日の葉片腕、片足、片腹に胸と背中の5か所に着けて、先に4つ破壊した方の勝ちって言うルールにしようと思うけど、それでいい?」

「大丈夫です」

「それじゃあシンボルの設定のやり方を教えていくね」

 

 

 そうして先輩に方法を教わり、自分のシンボルを同期してから運動着にセットすれば準備完了。

 ルールも難しくないため理解はできた。あとは約束通り全力で戦うだけど。……ただ、速水先輩が七瀬先輩を大きく評価していて、それに釣られて俺のことも過大評価しているのなら申し訳ない。俺はそこまで強くないです。

 

 

「よしっ、それじゃあ適当に離れよっか。明星さん、ごめんだけど適当にスタートの合図をしてもらっていいかな?」

「分かりました。……私ってここにいる意味ある? なんでこんなの見せられるの?」

 

 

 おい、聞こえてるぞ。後半の方は小声だったが、俺ら3人以外に誰もいないんだからそりゃ聞こえちゃうって。見ろ、速水先輩を。ちょっと苦笑い浮かべちゃってるでしょうが。

 そんな文句を心にしまって、適当に距離を取ろうかと思っていると、速水先輩は何故か入口近くに戻る。部屋の奥ばかりを見ていて見落としていたそこには、ブースに入る時には持っていなかったはずの巨大な弓と少し変わったデザインの靴。あれはまさか……。

 

 

「もしかしてですけど、それ、魔装具だったりします?」

「おっ、よくわかったね。大正解!」

「うっそでしょ」

 

 

 魔装具。通常の装備とは違って、魔術が編み込まれた特殊な装備だ。材質に魔力伝導率が高いものを使わなきゃだったり、そもそも魔術を組み込むのが難しく通常は専門のプロが行ったりと、一つ買うだけでもかなりのお金が掛かる高級品だ。

 その分効果は絶大なので、戦闘を生業にしている本職は大抵複数持っているものだが、学生の速水先輩が2つも。おかしいでしょ。

 ……いや、俺も七瀬さんからの貰い物で一つだけ持っているけど。今日も。何ならいつでも使えるように今も手元にあるけど。模擬戦だから使う気は無かったが、どうしたものか。

 というか速水先輩は魔装具を2つも使うって俺を殺す気か? やっぱいこれまでの優しさは罠だったか? 憧れの七瀬さんに近づく男をぬっ殺す! ということか?

 そんな俺の不安を読み取ったのか、先輩は安心させるように笑って告げる。

 

 

「あはは、大丈夫だよ。さすがに大けがをさせるようなことはしないから。と言っても神凪くんの本気が視たいから、私も本気でやらせてもらうね!」

 

 

 それは死刑宣告ですか?

 先輩はそんな俺の内心に気が付くことなく、「それじゃあやろっか!」と笑顔で離れていく。残された俺はと言えば、なんとなく明星の方を見やればしれっと視線を逸らされた。ちくしょう。こうなったら俺も魔装具を使ってやる。大した魔術じゃないけどな。

 諦めて俺も速水先輩と向かい合う様に距離を取り、指抜き型のグローブを手に付けると、深呼吸一つして意識を切り替えた。

 

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