魔術高専   作:一般ゲーマー

16 / 22
UA (242 - 230) × 100 = 1200文字(3000文字)
今回 4250文字 

先週投稿しておらず目標達成は出来ませんでしたが、
2000文字は書いてたのできちんと罰ゲームのジュース禁止はやってました。
それ含めて今週は5000文字以上は書いたのですが、きりが悪くなったのでこの文字数で投稿します。ちゃんとこの後800文字程度ストックしてるので、来週は4000文字がノルマということで。



1章-12 特殊体質

 速水先輩との模擬戦を終えて別れてすぐ、明星に「ちょっと待っててくれ」と残してぱぱっと着替えと借り物のシンボルや武器の返却を済ませる。その後入口のベンチに座って待っていた明星と合流し、トレーニング施設を後にする。明星は気怠そうにしながらも大人しく俺の後ろを付いてきているので、そのまま勝敗を決する部屋まで移動する。

 

 

「明星が見せてくれた候補の部屋がここだったよな?」

「そうだね」

「勝負の内容的には俺が買ってから渡す感じになるけど、どうする?」

「めんどいし私の方で買うからAPだけ頂戴。今更そんなことで無効だなんだとごねたりしないから」

「了解。じゃあ端末のアドレスを教えてくれ」

「……あそっか。教えてないんだった」

 

 

 一瞬ポカンとした後に俺たちがまだお互いのアドレスすら知らないことに思い至った明星は、スカートのポケットから端末を取り出すと俺に画面を見せてくる。そこに映ったアドレスを見ながら端末をぽちぽち、登録とAPの譲渡を完了させる。

 

 

「……これ、部屋を買っても余るくらい送られてるんだけど」

「俺も強引なことをした自覚はあるから、ちょっとしたオマケだ。気にしないで貰っていいぞ」

「……ならありがたく」

 

 

 必要分に色を付けて渡した結果、別に報告せず黙ってればいいのに律儀に報告してくれる明星。俺の言葉にあっさり受け取ることにしたようだけど、面倒くさがりのくせに変なところで真面目なんだな。そういう性格だからこそ俺にとって助かる展開になっているんだけども。

 数十秒の操作を終えると、明星は購入を済ませたようで入口に端末を掲げる。部屋の権利を買ったことで端末がそのまま鍵になったらしく、カチャと小さく音が鳴ると部屋に入れるようになった。

 

 明星が扉を開けると部屋の全貌が視界に映る。中央に長机が2つ並べて置いてあり、その周りに椅子がざっと10個。それとは別に壁際にもデスクと中央のよりも立派な椅子が一つ。その反対側には何も置かれていないが、それなりの量が保管できそうな棚が一面を埋めていた。

 正直な感想を言えば、明星個人が所有するには随分と立派な部屋だと思った。この部屋、文科系部室棟の余った一室なだけに、それなりの人数の部員が入れる構造になっているっぽい。この部屋を明星にあげることが勝負の内容だったとはいえ、明星が羨ましくなってくるな。

 

 

「さすがに暫く掃除してなかったのか、ちょっと埃っぽいな」

「あんまり物も無いから、すぐに終わりそうだけどね。面倒くさいけど先に終わらせよっかな」

「布とかあるのか?」

「1階の購買のところ行けばあるんじゃない? 売ってなくても購買の控室っていうか、事務室みたいなところに置いてありそうだから貰えないかな」

「とりあえず行ってみるか」

 

 

 明星の言った通り、特別雑巾として使えそうな布は売られてなかったが、店員さんに聞いてみたところ無償で貰うことが出来たのでさくっと入手し部屋に戻る。お手洗いの洗面台で湿らせて部屋を拭きあげるのには二人掛かりで5分もかからなかった。

 使い終わった雑巾はゴミ箱へシュートし、中央の椅子に座って一息。広いけど物が何も置かれてないから物寂しさを感じてしまう。

 

 

「さて、勝負は俺の勝ちってことで協力してもらえるよな?」

「……はぁ。いいよ、約束通り協力する。でも出来るだけ面倒なことはやめてよね」

「安心してくれ、前も言ったようにただ魔力を貰いたいだけだから」

「あぁ、そんなこと言ってたね。意味が分からなかったけど、まさか万能魔力持ちだとは」

「明星が知ってることにも驚いたけどな」

 

 

 万能魔力は珍しい体質であり、数百万人に一人くらいの割合でしか存在しない。この学校は勿論、大陸にまで範囲を広げても一桁しか居ないだろう。

 

 

「それで、魔力をあげるのは良いけどそれをどうするの? 確か万能魔力持ちでも、貰った魔力を永遠に保持できるわけじゃなかったよね」

「本当によく知ってるな」

 

 

 明星の言うように、他人から貰った魔力は段々と俺本来の魔力と混ざり合い、最終的に万能魔力へと染まってしまう。そうなればせっかく貰った適性の高い魔力も意味を為さなくなってしまう。だが、俺は万能魔力とは別にもう一つ特殊な体質を持っていた。

 

 

「実はな明星、俺の魔術適性は軒並みDランクなんかじゃない。回復魔術はCランクで、氷魔術はBランクある」

「……ぅん? 万能魔力の特徴は魔術適性が総じて低いことでしょ。BやCなんて一般人と同じくらいにあるじゃん」

「確かに俺の魔術適性はオールDランクだったぞ。それは速水先輩が見たように、学校に提出した正式な書類でもそうなってる」

「じゃあさっきのはどういうこと? 意味が分からないんだけど」

「その書類を提出した後に、俺の魔術適性が変わったってこと」

「……は?」

 

 

 俺の言葉に訝し気に明星は眉を顰めた。だがそういう反応をするのも理解できる。魔術適性は生まれつき決まっており、

基本的に後天的に変わることはない。珍しいケースで言えば、事故によって魔力を生み出す器官が損傷し、その結果変わったという事例は聞いたことがあるくらい。

 だが、俺は別に事故にあったわけでもないのに魔術適性が変化した。もっと言えばこれから望むように変化させられる。

 

 

「答えを言っちゃえば、俺は他人から魔力を貰ってそれを行使すれば、段々とその魔力の魔術適性を受け継ぐことが出来る」

「なにそれずっる。チートじゃん」

「言うほど最強ってわけじゃないけどな。気持ちは分かるけど」

 

 

 逆に言うと魔術適性を高くするためには、それに対応した協力者が必要になってくるし、その魔力を使うのに時間が取られるから同時に複数の適性を伸ばすことも出来ないし、何なら一つをBまで上げるのだってかなり時間が掛かった。

 もう一つの弱点と言えば、元の魔力の持ち主にはその分野で絶対に敵わないこともある。あくまで受け取った魔力に適性が近づくだけで、元々持っていた相手よりも適性が高くなることはないし、それに適した魔術の構築も経験値も劣る。

 

 とはいえ頬杖つきながら文句を垂れる明星の言うことも理解できる。俺も初めてこれを知った時は自分のことながらチートかよと考えたものだ。これから俺つえーが始まると歓喜してすぐ七瀬さんにぼこぼこにされたのは良い思い出。

 

 

「てなわけで、明星には魔力の提供をお願いしたいわけだ」

「……さては沙雪さんに私の適性を聞いたな?」

「正解」

「だからそんなにしつこかったのね……。沙雪さんめ、余計なことを」

 

 

 そう、俺も最初は明星の態度から協力を取り付けることを諦めていたのだが、七瀬さんからこいつの適性を聞いて即掌をひっくり返した。明星は空間魔術の適性がAもある、非常に稀なタイプだった。

 空間魔術と言えば虚空に収納が出来たり長距離移動をワープ出来たりと、便利さが他の魔術よりも突き抜けている。だがその分扱う難易度が高く、要求される魔力量や魔術の構築が繊細で難しく、少なくとも適性がCは無いとまともに使うことも出来ない。それでいてその適性を持つ人が少ないことから、空間魔術を使える人は将来仕事に困らないと言われるほど。

 そんなレアな持ち主がすぐ近くに居るとなれば、俺がなりふり構わずアタックを仕掛けるのもしょうがないことだろう。

 

 恨めしそうに七瀬さんへの呪詛を口にする明星には申し訳ないが、俺の目的のために手伝ってもらおう。

 

 

「はぁ……、今更沙雪さんに言っても仕方ないし、さっさと終わらせて」

「さんきゅ。それじゃ手を出してくれ」

「ん」

 

 

 俺の言葉に従い頬杖をついたまま逆の手を差し出してくる。俺よりも随分と小さく、強く握ったらそのまま潰れてしまいそうな白い手を軽く握る。

 

 

「それで、魔力なんて渡したことないんだけど、どうしたらいいの?」

「魔術を使う時に魔力を込めるように、ただただ魔力を掌から押し出すようなイメージだな。上手くいかなくても俺の方で吸収する魔術を使うから大丈夫」

 

 

 めちゃくちゃ柔らかい手にドキドキしながらも説明を続ける。七瀬さんや柊さんからも何回も貰っているが、何度経験しようが慣れそうにない。二人がすべすべとした感触だとすると、明星の手は特段肉付きがいいわけでもないのにぷにぷにとしていて何とも心地の良い感じがする。

 ……これはあれだ。赤子や小さい子供の手と同じ感じか。なんかそう思うと落ち着いてきたな。

 

 

「……なんか失礼なこと考えてない?」

「至って真面目な男だぞ俺は。この真剣な眼差しを見ろ」

「こっち見んな」

「酷くない……?」

 

 

 謎の鋭さを発揮する彼女に誤魔化しの言葉を口にするも刺々しい返しで一蹴される。そんな強い言葉を使わないでくれ、泣くぞ。

 そんなやり取りをしながらも魔力は無事に受け取り完了。明星はパッと手を離すと空いた手で携帯を弄り始める。俺のお願いはただ魔力を貰うことだけなので、あとは受け取った魔力を使って俺の方で勝手に魔術を発動するだけなんだが……。

 

 

「……ん~~~~~~?」

 

 

 空間魔術の想像以上の難易度に苦戦し、長い唸り声が自然と零れる。

 

 魔術の発動は大まかに分けて3ステップある。最初に構築。まず具現化させたい事象についての魔法陣を描く必要がある。数学でいうと式、漫画で言うと詠唱だろうか。

 次に魔力の供給。構築した魔法陣に魔力を込める。これにも繊細な操作が必要で、少なすぎれば効果は小さくなるし多すぎれば暴走するか、そもそも発動が出来なくなる。

 そして最後に開放。これはシンプルで、魔力を込めて準備の整った魔術を任意のタイミングで発動するだけだ。感覚としては握りこぶしを開くくらいの簡単な動作。この3ステップの手順を踏むことで魔術は発動する。

 ちなみに構築については紙や他の道具などに直接書いても問題はないが、魔力が通りやすい素材じゃないと2ステップ目が出来ないうえ、戦闘中に悠長にどこかに書いてる隙はないため、通常は微量な魔力を用いて掌とか空中に魔力の線として描き出す。こうすれば最初の2つのステップをまとめて行うことが出来るので大抵の人はこの方法を用いる。現に今日の模擬戦では俺も先輩もそうしていた。

 

 話を戻して、俺も使い慣れた索敵魔術だったり幻影魔術だったりは秒で発動できるが、空間魔術はまず構築することが難しい。難解なパズルを解いてるみたいに、構造が複雑で何をどう組んだらいいものか頭を悩ませる。

 これまでも氷魔術と回復魔術は練習してきたが、それの比ではないほどに苦労しそうだ。こう見えて要領だけは良いと自負していたが、空間魔術の習得にはかなり骨が折れるのは確定だな。

 

 その後も俺は一人、あぁでもないこうでもないと苦戦しながら空間魔術の練習にひたすら励んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。