昼休みが終わり午後の始業時間。ご飯を食べながら味方陣営の手札を確認した俺たちは、実際にどれくらい使いこなせるかを確かめるために第四グラウンドへと足を運んでいた。
一応の初戦相手となる須郷たちが居たら場所を変えるつもりだったが、姿が見えないのでこのままここで練習を始めよう。
「さて、順番に得意な魔術でも披露してみるか」
「うん」
「おっけー」
言い出しっぺの俺は人から魔力を貰わなければ大したことは出来ないので、幻影魔術と身体強化を見せてお終い。
続く椎木は自分の目の前に防御魔術を展開してくれたが、まともな攻撃手段を持たない俺たちにはそれがどれくらいの強度を持っているのかは判断できずに終わった。一応、防御魔術に関しては他よりも速く発動できるし、ある程度連発も出来るとは本人の談。
最後に友利の同調魔術。……が、事前に申告していた通り魔力供給が上手く出来ずに発動すらままならず終了。
うーん、絶望的。
「……ごめ、やっぱあたしは戦力になりそうにないね」
「あっ、謝らないで。私こそ全然役に立てそうになくてごめんね……」
「悪い、同調魔術って名前くらいしか聞いたことないんだけど、どんなことが出来るんだ?」
暗い雰囲気になりかけたために気になっていたことを友利に質問する。
「さっき私が使おうとしてたのは対象の人物と思考を繋げる魔術だよ。めっちゃ簡単に言えばテレパシー、脳内電話」
「へぇ。他にはどんなのが?」
「1対1じゃなくて広範囲の複数人と繋げれたり、視覚とか聴覚とかの五感を共有したり、対象の魔術適性や身体能力なんかも同調できるよ。あとは同調って言いながら一方的に真似したり真似させたりとかも」
聞いてみた感じだと応用が利くうえに、使いこなせればかなり強力っぽい能力だ。……これは俺も使えるようになれば凄く便利そう。うん。是非とも欲しい。俺に協力して欲しい。
思わぬ拾い物……人に対して使っていい表現か分からないが、思いがけないところから目的に合致する人物を発見できた。
俺の方でも使えると便利な魔術なんかを調べたりしたし、七瀬さんにもアドバイスを貰ったりもしたが、同調魔術は見逃していた。というか魔術の種類が多すぎて調べきれてないのもあるけど。
……今になって思えば七瀬さんが激しく勧めてきた空間魔術は明星と仲良くさせようという思惑が透けて見える。まんまとそれに引っかかってしまったわけだが、七瀬さんは嘘を吐いてるでもなく、実際に空間魔術はかなり魅力的だから文句も言えない。
話を元に戻して、友利の協力を得るために信用を勝ち取る、ひいては話を聞いてもらいやすくするために明日の勝負は是非とも勝ちたい。となれば今すべきことは現状を理解し、勝つための作戦を立てて練習に打ち込むこと。
「……一つだけ確かめたいんだけど、魔力を貰っていいか?」
「あたし? いいけど」
「それと、対象の身体能力を同調……与える? 魔術も教えてもらっていいか」
「構築だけなら教えられるけど、そこから先はあたしには無理だけど、それでいい?」
「あぁ、頼む」
お願いし、魔力の受け渡し方について説明する。友利の態度からして意外にも少し逡巡し、照れた様子を見せながらも素直に手を握ってくる。七瀬さんや明星は言うまでもなく、椎木も最初から抵抗なくやってくれたものだから、そんな反応をされると俺までむずがゆくなる。
とはいえこれは真面目な練習。表情には一切出さずに、貰った魔力を使って教えてもらった魔術の発動を試みる。構築は友利の指示に従いながらも、そこに込める魔力量は手探り。
まずは成功させることだけを目標に慎重に、慎重に進める。感覚だけを頼りに、あっ、発動できそうかも、ってところを探し出す。
数分かけてようやく発動が成功し、対象者と身体能力が同調する。相手は勿論、友利だ。
「……出来た、よな? 友利、何か変わったところあるか?」
「えっ、う~ん……あたしも発動できたことないし、上手く出来てても分かんないかも」
言われてそれは確かにと思い当たる。身体能力と言っても俺は特別何か優れているわけではないし、場合によっては普通に女子に負けたりもする。体力や握力なんかは上昇しているかもしれないが、実感しづらいだろう。
「あー最初はもっと分かりやすいのからやれば良かったか。悪い。えーと……じゃあ、その状態で友利の方が同調魔術を使えるか?」
「えぇぇ……、さっきも見せたけど使えないって」
「試すだけ、やってみて」
促され、渋々といった態度を隠さず友利が魔術を展開する。
一度やってみて分かったが、同調魔術は空間魔術とは別のベクトルで魔力調整が難しい。感覚の話になってしまうが、空間魔術が目を瞑った状態で距離感を正確に測る難しさだとすると、同調魔術はダンスを踊るために相手と呼吸を合わせる難しさだろうか。誰かと踊った経験なんて皆無だから全く適当に例えてるけど。
ともあれ俺の使った魔術が成功していれば今は友利は俺の身体能力を有しているはず。初めての試みだから予想になるが、身体能力の中には魔力の操作精度なんかも含まれているはず。
「……ん、んんん? あれ、なんか…………出来、そう?」
普段とは違う手ごたえを感じたらしい友利を、そのまま静かに待ち続ける。椎木もぐっと拳を握りながら黙って応援している中、眉を寄せて悩まし気に集中している友利が表情を緩めた。
「……あっ、出来た」
「おっ、マジか」
(えっ、出来てるよね?)
「うわっ!」
唐突に脳内に響く声に驚き、短く悲鳴をあげながら身体をのけ反らせる。初めての感覚だが、耳の鼓膜が揺れるでもなく頭の中に直接語りかけられるようで、率直に言えばちょっと気持ち悪い。
(気持ち悪いって……酷くない? いや気持ちは分かるけど)
(……あっそうか。当然俺の思考もそっちに届くのか。やばっ、迂闊なこと考えられねぇ)
(早速迂闊なこと考えてない? それ言わない方がいいやつでしょ。言ってるわけじゃないけど)
(自然体自然体余計なことは考えない………………)
(………………)
(……俺たちの様子に椎木が心配そうな表情で戸惑ってる。小柄な体躯と合わさって小動物みたいで可愛いな)
(めっちゃ考えてるじゃん、おもろ)
(やめろやめろ今すぐ魔術解除しろ!)
「えっと……二人とも、大丈夫?」
「あっ、悪い。ちゃんと魔術が成功してちょっと混乱してた」
「上手くいったんだ! 良かったぁ」
脳内で会話をしていた俺たち――傍から見たら急に黙って百面相をしてる二人を見て、椎木が堪え切れずに声を掛けてくる。
問題なく発動できたことにほっとした溜息を吐く彼女に、俺も想定していたことが出来たことに内心で安堵の息を吐く。
気が付けば友利の声は聞こえなくなっており、魔術を止めたのだろう友利を見れば自分の掌をぐっぱと閉じ開きしながら見つめていた。これまで一度も同調魔術が成功したことがないと言っていたから、何か感じ入るところがあるのだろうか。
ともかくこれで取れる戦略の幅が広がるし、練習方法にも目途が着いた。ついでに友利を協力者に勧誘する方法も。
明日の試験での勝ち負けは俺には実害は無いかもしれないが、あの須郷とかいう奴の言葉は聞いてて気分の良いものじゃないし、勝てるならそれに越したことはない。友利の協力も得やすくなるかもしれないし。
そのためにも勝つための作戦を考えなければ。
「……よし。二人とも、試験での動きを聞いて欲しい」
暫く考えこみ勝ち筋を組み立て、二人に説明した。
UA (474 - 446) × 100 = 2800文字(3000文字) :来週ノルマ
今週ノルマ:3000文字
今回 3018文字 目標達成
ここまで書いといて、たまに見直すと全部書き直したくなるなぁ。投稿してなかったら絶対そうしてたし、そもそもここまで書けてないと思うからひとまずこのまま投稿は続けるけども。
今回も見てくださった方、本当にありがとうございます。