魔術高専   作:一般ゲーマー

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1章-1 編入

「……疲れた」

 

 

 振り返れば長い長い下り坂が眼下に広がっていて、こんな坂を上ったのならそりゃ疲れもするだろうと納得する。これから毎日この坂と格闘しなきゃいけないと思うと辟易してしまうが、これもそのうち慣れるのだろうか。

 顔を前へと戻すと目の前には大きな校舎が鎮座していて、『第三魔術高等専門学校』という看板が掲げられている。

 先月まで別の一般校に通っていた俺――神凪詠は8年前に両親と妹を亡くしたこと以外は平凡に生活していたが、1年ほど前のスタンピードという災害を機に生まれた縁によってこのたび高校2年の春から魔術高専に編入することになった。

 思い出に浸りたい気持ちもあるが、それよりも今は編入初日ということでこれから一人だけの説明会が待っているため、時間に余裕があるとはいえ早めに向かっておきたい。

 

 そういえば俺をここに推薦してくれた件の縁を結んだ七瀬さんによれば、学校の案内状とは別に案内人を用意したとのこと。別に行き先の救護室なら行ったことあるから案内の必要はないのだが、俺の断りもなんのその、七瀬さんはそれを無視して準備を進めてしまったっぽい。

 案内人の名前を思い出すべくスマホを取り出して過去のメッセージを追いかける。

 

 

『改めて、高専への編入おめでとう!』

『ありがとうございます』

『私から提案しておいてなんだけど、あまり気負い過ぎないでね。1に青春、2に青春、34が無くて5に特訓くらいでいいから』

『青春が送れるかは分からないですけど、趣味の時間くらいは取らせてもらいますよ』

『大丈夫! 明日の編入初日、詠くんは早めに学校に行くって聞いてたからそれに合わせて案内役を用意しておいたの!』

『知ってる場所だし案内状もあるんで一人で大丈夫ですよ』

『私達の事情も知ってる詠くんの同い年で、天音ちゃんって言うんだけどね。凄く可愛いんだよ!』

『聞いてないです。それよりも俺の話を聞いてください』

『天音ちゃんの協力が得られれば詠くんの能力の力にもなるし、事情を知ってる者同士今後とも関わることもあるかもだから、仲良くしてあげてね。レッツ青春!』

『聞いて? 俺の声届いてます?』

 

 

 そんな俺の声(文字)にはニコニコしているスタンプで返されてやり取りは終わった。

 今見返してみると時間も場所も書かれていないし、容姿の情報もない。これでは一人で目的地に行くよりも案内人と合流する方が難易度が上がってしまっている。本末転倒。

 なんなら無視してしまっても七瀬さんのせいで済みそうだが、相手さんも探しているとなればさすがに申し訳なくなるので、それはダメだなと自重。

 とはいえどうやって探したものやらと考えながら、とりあえず正面玄関へ向かうかと歩を進める。

 

 正面校舎――たしか1号棟の玄関前は前の学校の2倍くらいはありそうな広さをしていて、ででんと中央に大きな木が鎮座していて、その周りには謎のモニュメントや過去の校長か知らないがありがたいお言葉が刻まれた石碑などがある。

 編入試験の時はこの1号棟からじゃなくて脇道を抜けた先にある4号棟から入ったよな、と少し前のことを思い返しながらぐるっと木を回った先で、1号棟の出入り口の横に備え付けられたベンチの上に寝そべっている姿を見つける。

 

 

「……なにごと?」

 

 

 思わず呟きながら注視して近づく。

 足を曲げているため断言はできないが、かなり小柄な部類に見える。それこそ七瀬さんと同時期に知り合った中学2年……4月からは3年に上がった宇華ちゃんよりも小さく見える。

 そんな身長に反して薄桃色の髪はかなり長くて地面に垂れないように体の上で抱えている。

 頭の下には鞄を敷いていて、ひざ掛けらしきものをかけている万全態勢。

 まだ人通りも少ない時間帯とは言え、先生たちは既に出勤している時刻。少なからず往来のある校舎の前のベンチで堂々と横になるとは、何とも大胆な行動を取る子だ。まさかコレが案内人とは言うまいよな。

 

 恐る恐る近付くと、気配に気がついたのか閉じられていた瞼がのっそりと持ち上がり、その視線が俺とかち合う。

 するとおもむろに起き上がったと思えば枕にしていた鞄を手にスタスタと歩み寄ってきた。

 

 

「おはよう……ございます。神薙さんですか?」

「はい、そうですけど……」

 

 

 素直に頷くと相手は表情を崩し――どちらかというと愛想笑顔からスンっと真顔になった。

 

 

「良かった。沙雪さんから聞いてると思うけど、謎に案内役を任された明星天音です」

「あぁ、どうも……。今日から編入することになった神薙詠です」

「……案内、いる?」

「まぁ、一応?」

「えぇ……だる……」

 

 

 面倒であることを全く隠すことなく少女――明星は肩を落とした。

 そんなに嫌か? ……嫌だよな。確か今日は入学式はあるものの在校生は出席する必要がなく、本来なら午後からの登校で良かったはず。それなのに俺に合わせて朝のこんな時間に来ることになったんだから嫌にもなるだろう。

 俺が悪いわけじゃないのに申し訳なさが募る。なんかごめんなさい。

 

 

「それで、どこに案内すればいいの?」

「あーっと、救護室、です」

「ならちょうどいいや。そこならベッドあるし。それと同学年だから敬語じゃなくていいよ」

「……わかった。そうさせてもらう」

「ん、それじゃあ着いてきて」

 

 

 そうして明星はくるっと振り返ると、俺のことなぞ気にもせずにさっさと足を進めていった。

 七瀬さんは俺に明星とレッツ青春とかほざいていたが、俺には難易度が高すぎる。

 もともと友達と遊ぶ回数が月に1回あるかないかの平均以下の高校生活を送ってきた俺だ。普通よりも数段気難しそうなこの少女とどうやって青春をしろと?

 どうせならその方法まで具体的に説明してほしかったと心の中でぼやきながら、俺は明星の背中を追いかけていった。

 

 

 

 

 

   ☆

 

 

 

 

 

「あら、明星さんおはよう。今日は午後からのはずだけど随分と早いのね」

「おはようございます。沙雪さんに言われて仕方なくです。編入生連れてきたんで。あとベッド借ります」

 

 

 言うが早いが明星は柊さんの返事も待たずにベッドの方へと向かったかと思えば雑に靴を脱いでダイブをかましていた。おい。スカートだろうが。見えなかったけど。

 

 

「柊さん、おはようございます」

「あぁ神薙くん、おはよう。明星さんとは知り合いだったの?」

「いや、初対面です。七瀬さんから案内役がどうとかって」

「あー、そういうね」

 

 

 奥の机に座っていた柊さんが明星の挙動にきょとんとしていたから、雑に経緯を説明する。七瀬さんの名前を出せば大抵のことはそういう事だと納得してくれるから便利だなあの人。

 いや、日頃の行いか。

 

 

「すぐに一区切りつけるから、ちょっとだけそっちのソファに座って待ってて貰えるかしら」

「了解です」

 

 

 返事をしながら後ろ手にドアを閉めて、指を指された先にあるソファへと向かう。

 柔らかな感触へと腰を降ろしながら、手持ち無沙汰もありあまり露骨にならないように周囲を見渡す。救護室らしく清潔に保たれた空間は今の時間帯もあって使用者は明星を除いて無く、まるで周囲から切り離されたかのよう。

 前に来たのは編入試験より前に、七瀬さんに連れられて学校見学した時になるが、その時と何ら変わりはなかった。

 チラとキーボードを叩く柊さんへ視線を向ける。柊さん自身もあの時と変わらない落ち着いた年上美人さんで、そして相も変わらず忙しそうである。

 前も土曜出勤をしていて仕事について語ってる時は目を濁らせてたなぁなどと回想にふけっていると、打鍵音が止まる。

 んーっと腕を伸ばして胸を張る仕草からそっと視線を逸らし手元の学校案内を眺めて暫し。

 

 

「おまたせ。紅茶は飲めたわよね」

「大丈夫です、いただきます」

 

 

 差し出された紅茶を受け取ってすぐに一口飲む。……熱い。

 柊さんも自分の分の紅茶を持って対面へと座る。

 

 

「それじゃあ改めて、入学おめでとう。今更だけど私はこの第三魔術高専で救護医をしている柊美優よ。神薙くんとは顔見知りってことで今回の学校説明について任されたから、分からないことは何でも聞いてちょうだい」

「ありがとうございます、よろしくお願いします」

「前に聞いてたり、その手元の案内とかホームページとかにも書かれていることもあるけど、説明したって体裁が必要だから許してね」

 

 

 そんなあけすけな事情を明かしたところから始まったのは、書類に沿って文章をなぞる説明。

 制服がないため私服で通うこと。学校のカリキュラムや年間行事など。

 守護科、狩猟科、研究科、開発科、総合科――通称普通科の5学科が5学年それぞれに2組ずつ、約2000人が在学していること。

 そういった基本的なことの復習に加え、補足として一般的な高校よりも進級の難易度が高くて留年生もそれなりにいることと、二年連続の留年は退学処分になることを注意事項として説明される。

 ここまでは編入すると決めたときに調べているし、この資料だって事前に配布されたものだから目を通してあるから知っている。

 退学についてもここの卒業生である七瀬さんから事前に聞いていたので驚きはない。

 

 

「最後に魔術高専の最大の特徴であるAP(アカデミーポイント)SP(ステップポイント)について説明していくわね。まずは……はい、この端末を受け取って」

 

 

 渡されたスマホとそっくりの端末を受け取り、軽く触ったりひっくり返したりしてまじまじと眺めてみる。感触やボタンなども含めてまるでスマホ……スマホだなコレ。

 

 

「その端末は神凪くんの個人情報が入ってたり、学校内の色々な場面で使うから大事に扱ってね」

「……ちなみにもし壊しちゃったりした紛失した場合ってどうなりますか?」

「それは普通のスマホとかよりかなり頑丈に出来てるから、あまり壊れることはないけど。壊れても弁償はしなくていいけど、新しいのが届くまで少し時間が掛かるし、その間これから説明する機能の一部は使えなくなるから注意してね」

「わかりました」

 

 

 コンコンと軽く指で叩くもそれだけでは頑丈さを計り知れず、とりあえず面倒はごめんなので丁寧に扱おうと心に留める。

 

 

「それじゃあ電源を入れて……あっ、パスワードは後で個人的に設定しておいてね。それでまずはホーム画面のこの……そう、そのアプリを開いてみて」

 

 

 端末の電源を入れて10個ほどのアイコンが並ぶホーム画面を表示すれば、身を乗り出して開いて欲しいアプリを指さした。指示に従ってタップすれば画面が切り替わり、中央にでかでかと【AP 10000】【SP 1000】という文字が上下に並んで表示される。

 

 

「画面にAPとSPが表示されているでしょう? 入学したばかりの神凪くんはAPが一万でSPが千のはずだけど、合ってる?」

「はい、合ってます」

「じゃあまずAPから。それは魔術高専内で使える通貨となっていて、相場としては1AP=1円の価値をしてるわ。用途は幅広くて購買で買い物したり食堂で食事したり、学園にお願い事をしたりと、色んなことに使えるわ。それに応じて入手機会も多くて、試験で好成績を納めたり、他の生徒や先生の依頼をしたり……そうね、ホームに戻って掲示板アプリっていうのを開いてみてくれる?」

「掲示板……これですか?」

「そうそう。そのアプリは学内専用だけど普通の掲示板として使える他に依頼専用のサーバーもあって、依頼をしたり受けたりすることが出来るわ。依頼者によっては報酬が現物だったりもするけど、大体はAPのやり取りだから、神凪くんも必要になったらそこから稼ぐのもいいかもしれないわね」

「……なるほど」

「APの使用は学校内に限られるけど、持っておくに越したことは無いから、興味があったら依頼を受けてみるのも良いわよ」

「そうしてみます」

 

 

 そこまで説明を終えると、柊さんは視線を落としていた紙をぴらと一枚めくり、次にうつる。

 

 

「次にSPなんだけど、こっちは進級に関わるポイントになるわ。1年間の間に規定のポイント……2年生なら1500SPを集められなければ留年よ」

「……ちなみに、それってどれくらい難しいんですか」

「SPの獲得方法は主に試験や特別授業、行事の時になるのだけれど、その全てで赤点回避や最低限の活躍をしてれば越えるレベルよ。とはいえ毎年各学年で二桁にいかないまでも、何人か留年する人は出てくるんだけれどね。神凪くんも気をつけてね」

「マジですか……頑張ります」

 

 

 ここへの編入費用として唯一の身内である祖父以外に七瀬さんからも援助してもらっているので、退学含め留年も何とか避けたいところ。自分でもいくらか稼いでるとはいえ、到底学費を全部賄えるわけでもなく、二人には滅茶苦茶お世話になっている。

 まだまだ先の話になるが、無事に卒業できたら精一杯の恩返しをしなければ。

 

 

「そしてSPは高専内の機能の制限開放にも関わっているの。今見てるアプリのメニューボタンから『SP情報』に飛ぶと見られるから、試しに開いてみて」

 

 柊さんの指示に従って画面をタップすると、ズラァっと情報が列挙される。

 

【1000SP:レベル①の権限開放(1つ)】

【1500SP:レベル①の権限開放(1つ)】

【2000SP:30000APの付与】

【3000SP:レベル②の権限開放(1つ)】

 ……

 

 青く強調された『レベル①』なんかの文字を押すとさらに詳細が表示された。

 

【レベル①権限:シミュレーションルームの使用許可、または規制Ⅰ書物の閲覧許可】

 

 一つ前の画面に戻ってから下に素早くスクロールする。ざっと見た感じだとAPの付与と学内の権限の開放が主だった。中には気になる文言もあったが、俺にはまだ先の話のため今は聞かずに流す。

 

 

「学内の設備は良いものが揃ってるから、安全に強くなるには良い環境だと思うわ。神凪くんの能力的には色々使えた方が便利かしら?」

「……まぁ一度使ってみないことには分かんないですね。ちなみにさっき言った方法以外にSPを稼ぐ方法はあるんですか? 獲得手段が限られてるとどうしても時間は掛かりますよね」

「一応あと2つあるわ。一つが毎月末に挑戦システムっていう生徒同士で競ってSPを奪い合う方法だけど、あまり使う人は居ないわね」

「えっ、結構なチャンスなのにどうして……いや、リスクを嫌がってるのか」

「たぶんそうね」

 

 

 柊さんの説明だと、進級に必要なポイントは赤点を避ければ得られる程度のはず。ならわざわざ挑戦システムを使ってリスクを負う必要もないわけだ。

 それでも使用者がゼロではないということは、SPによる権限開放によほど積極的なのか、赤点を取ってピンチなのかのどっちかだろう。

 

 

「あとは挑戦する条件が厳しいのもそう。挑戦状は送られたら拒否が出来ないシステムなんだけど、自分よりSPが高い人相手にしか挑戦状を送れないの」

「……まぁ、拒否権が無いならそうなりますよね」

「それから、挑戦状を受けた生徒の学科によって競う種目が相手の得意分野に変わるわ。守護科なら対人戦、狩猟科なら対魔物戦シミュレーション、研究科なら筆記テスト、みたいな感じにね」

 

 

 それもまぁ妥当だろう。守護科が研究科の生徒相手に戦闘を押し付けたら一方的な展開になるのは目に見えている。必然的に同じ学科の生徒に挑むことになるだろうが、それだと相手は常に格上。勝率が低い勝負を挑む人も少ないということだろう。

 そこまで推測して恐らく俺が使うことはないだろうなと判断し、視線を柊先生に合わせるともう一つの方法も教えてくれる。

 

 

「2つ目の方法はギルドからの依頼をこなすことね。こっちも使う人がいない……というより使える人が少ないわ」

「それもまた以外ですね。挑戦システムみたいなリスクを負う必要はないんですよね」

「えぇ。だけど神凪くんも知ってる通り、ギルドからの依頼は当然どこかのギルドに所属する必要があるわ。でも、学生の歳でギルドに所属している人は珍しいのよ。とびきり優秀だったり、伝手があったり、将来を早めに見据えてる人も中にはいるけど、数で見たら極少数になるわね」

「あー……」

 

 

 言われて思い返し、確かになと納得する。

 俺が既にギルドに所属しているから感覚が麻痺していたが、ギルドへの所属は自分の将来を決める大事な岐路だ。俺の所属ギルドはトップが七瀬さんなだけあって、規律も緩く移籍も『したくなったらいつでもいいよー』なんて言われているが、普通はそうもいかないものだと聞いている。

 要するに俺が特殊な環境にいるおかげで、SPを楽に稼げるというわけだ。ラッキー。

 

 

「……あっ、俺お金稼ぎと特訓を兼ねて普段からやってるんですけど、SPの代わりにお金が貰えなくなるとかあります?」

「それは大丈夫よ。通常の報酬を減らす代わりにSPやAPを増やすことも出来るけど、その設定をしなければ普通に報酬を貰ったうえでSPを獲得できるだけだから」

「それなら良かったです。というかAPも貰えるんですね」

「まぁその分報酬が減るから、お金をAPに変換するようなイメージね。あんまりそうする人は見たことないけど」

 

 

 まあそうか。学内限定のAPとお金だったら、わざわざAPに変換する必要性が感じられないからな。

 とはいえ俺に都合の良いシステムによってSPの獲得が簡単になり、留年の危険性もぐっと減った。大助かり。……いや、七瀬さんはここの卒業生だからこのシステムも知っていたはず。ならこれを見越して俺をギルドに入れてくれたのだろうか。もしそうなら本当に頭が上がらない。

 でも七瀬さんだからそこまで深く考えていない可能性もある。まぁどちらにせよ結果オーライ。感謝はしておく。

 

 

「これで全部の説明が終わったけど、何か質問とかあるかしら?」

「それじゃあ1つだけ」

 

 

 俺はさっき『SP情報』を開いた時に目に入った、同じメニューボタンに並んでいる『AP有償依頼』をタップして画面を見せる。

 

 

「これって掲示板アプリの『依頼』と何が違うんですか?」

「あぁ、それは学校に対する依頼ね。掲示板アプリの方が生徒を請負人とするなら、こっちは学校が請負人になるの。手順としては、このページに依頼内容を書き込むと、学校がそれに必要なAPを提示する。それに同意して支払いをすれば依頼は完了、って流れね」

「なるほど。……それって、どんな内容まで対応してくれるんですか」

「学校が対応してくれることならどんなことでも大丈夫よ。例えば、私が把握してる範囲だとSP権限の前借りだったり、装備の取り寄せと購入だったり、学食の優先利用権なんてのを買ってた子もいたかしら」

 

 

 最後の権利はSP情報の中にも記載がなかった。つまりはそれ以上のお願いも額によっては対応可能ということだ。

 何個かやってみたいことは思いついたが、入学したばかりの俺の手持ちは極わずか。それに優先度も低いこともあってとりあえず後回しになるだろうか。

 

 

「他に質問はある?」

「いえ、大丈夫です」

「それじゃあ次に移るわね」

 

 

 そこからは大雑把な授業の構成や行事の内容、そして今日のこの後の段取りなどを説明してもらった。

 ホームページなんかの簡単な情報や、七瀬さんから事前に話を聞いていた通り、前に通っていた普通校とは大きく毛色が違っているがかなり面白そうな学校だ。その分留年や退学のリスクも大きいが、それを上回る期待感で柄にもなくわくわくしている。

 元よりゲームが好きな俺はAPやらSPやらのシステムを初めて聞いた時から楽しみでしょうがない。

 

 

「これで全部の説明が終わり。最後に、全体を通して質問とかあるかしら」

「……関係ないことでも良いですか?」

「えぇ、私に答えられることなら」

「それじゃあ一つだけ。俺の体質的に都合の良い人を簡単に見つける方法ってないですか?」

 

 

 俺がこの学校に来た大きな理由に、俺の特殊体質に合っていて、なおかつ協力的な人を探すことが含まれている。学校のシステムも行事も何も分からない俺には今時点でそんな人を探す方法が思いつかないが、俺の体質も知っている柊さんなら何か知っているかもしれない。

 

 

「う~ん、各個人の魔術適性は入学時に調べてはいるけど、それが公開されるわけじゃないからなぁ。ただ、適正が優れている人はやっぱりSPも高い傾向にあるから、そこから調べていくといいかも。挑戦システムを使えば、各個人のSPは表示されるからね」

「なるほど、ありがとうございます」

 

 

 この学校の特殊なシステムを把握している先生から有用なアドバイスを貰う。まさか片っ端から全ての生徒を調べるわけにもいかないから、アドバイスを元にどうやって探そうかと考えを纏め始めた。

 

 

 

 

 

 

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