緩やかに吹きすさぶ春風と爛々と照り付ける太陽が絶妙に混ざり合い、何とも気持ちの良い天気である。
根が出不精で面倒くさがりの俺でも、これほど外出に適した条件であれば散歩に出かけるのもやぶさかではない。実際に今現在、高専内を歩いていてもぽかぽかと上昇する体温を風が適度に抑えつけてくれて心地よい。
だが、それに反して空気が重たい。勿論、物理的な意味ではなく。
原因は俺の一歩前を歩く明星であり、無言で黙々と足を動かす明星は面倒くさいオーラを背中越しでも伝わるほどに全身から迸っていた。
「ここが図書室。私は使ったことないから本の借り方も忘れたけど。知りたいなら先生か図書委員に聞いて」
「あぁ、うん」
「じゃあ次はシミュレーションルームね」
視線で指示された方へ顔を向ければ俺の背丈よりも高い本棚が見渡す限りに立ち並ぶ。
そんな光景に圧倒されるよりも先に、明星は短い説明だけするとさっさと次の場所へと歩を進める。図書室に一歩も入ることなく急いでその背を追いかけながら、どうしてこうなったと十数分前の出来事を思い返す。
☆
「神凪君はこれからどうするの? 午後の授業までは何も無いわよね?」
「そうですね。なんで適当に構内を歩き回ってみようとでも思ってます」
「それならちょうどいいわね。ちょっと待ってて」
編入初日の学校説明を終えた後、柊さんに引き留められて別に急ぐ用事でもないので座ったまま待機する。
先ほどの説明の復習がてら、端末を操作して色々なアプリを弄ってみる。
「ほ~ら、明星さん起きて」
「……んぅ、もう時間ですか?」
「えぇ、起きる時間よ」
ここに来て速攻寝入っていた明星を柊さんが起こす声を聴きながら、掲示板アプリを立ち上げる。【雑談】【依頼】【質問】【取引】と4つの項目が大きく表示され、そのうちの依頼を選択すると、まるでRPGゲームのクエストのような画面が出てきた。
『訓練相手募集。平地のシンボル戦』
『宿題見せて@4年狩猟科』
『衝撃ルールで10戦。登校初日の放課後』
他6つの計9件。
新年度初日でこれは多いのか少ないのか判断がつかないが、戦闘系が目立つ。むしろ2つ目のはここに書き込む内容じゃないだろ。学校にばれるぞ。てか同じ宿題なら同じクラスだろうし、直に頼めよ。
「……え、まだ10時じゃないですか。お昼食べるとしてもあと2時間半は寝れるじゃん」
「何言ってるの、明星さんは神凪くんの案内役なのでしょう?」
一つ前のページに戻って今度は雑談の項目を開く。依頼と似たような構成のページに何個もタイトルが並んでいる。
『春休みの課題の進捗を報告し合う会』
『昨年度で一番活躍した生徒について part4』
『28世代雑談用 part71』
『魔力充填武器は最高のロマン! 異論は認めない』
『複数属性の魔術構築に関する考察 part8』
などなど。
中には錠マークがついては入れないのもあったが、端末の情報で制限を掛けることも出来たりするのだろう。最後のタイトルなんかは普通に興味あるし、暇なときはpart1から覗いてみようかな。
「ちゃんとここに案内したじゃないですか」
「案内役はここからが本番でしょう。今からお昼まで神凪君に学校の案内をしてあげて」
「えっ」
「えっ」
ぼんやりと聞いていた会話に聞き捨てならない言葉が聞こえ、俺と明星の声が重なる。
「神凪君もそれでいい?」
「えっ、いや……構内の散策くらいなら別に一人でもいいですよ」
「そーだそーだ。もっと言ってやれ神凪」
なんだその言い草は。微妙にキャラ崩壊するレベルで嫌なのかよ。キャラ崩壊語れるほど明星のこと知らんけど。
「そうは言っても一人だとそこが何の部屋なのか分からないでしょう。行きたい場所を闇雲に探すことにもなりかねないし、明星さんも居た方がいいわよ」
「いや、そういうのは追々覚えていきますよ。あと流石に地図とかありますよね」
「来客用の1号館に1つだけあるけれど、それだけよ。ちなみにこの学校の端から端まで歩くと1時間以上は余裕で掛かるわ」
「1時間……」
想像以上の広さに絶句する。
「おい、言い負かされるなよ神凪」
「そんなん言うなら明星も何か言えよ」
「……先生」
「役目を放棄したらしっかりと七瀬さんに伝えさせてもらうわ」
「頑張ってくれ神凪」
「敗北が早ぇな」
柊さんの台詞に速攻で白旗を挙げた明星が俺を頼ってくる。そもそも明星と七瀬さんの関係って何なんだろう。今日にでも七瀬さんに抗議のメッセージと一緒に聞いてみようか。
「まぁ七瀬さんの頼みとは言え明星さんに申し訳ないから、案内してくれるなら私からAPをあげるわよ」
「1万ください」
「……まぁいいわ。あなたたちのお昼代も含めて明星さんに1万APをあげるから。神凪君、お昼は明星さんに奢ってもらいなさい」
「えぇ……」
「文句があるならタダ働きを強制させてもいいのよ?」
「早く行こうか神凪」
「掌くるっくるかよお前」
柊さんの説得(脅迫)に応じた明星はベッドから勢いよく抜け出すと扉を開けて待機する。今更俺が断れる雰囲気でもなく、せっかく案内してくれるというなら有難く恩恵に与ろう。
「……それでは柊さん、説明ありがとうございました」
「えぇ。神凪君、あまり気負い過ぎずに学校生活を楽しんでね」
相も変わらず女神のような優しい微笑みを浮かべる柊さんとそんな言葉を交わしてから、扉で待っている明星に合流して救護室を後にした。
☆
そんな出来事を経て、面倒くさいですオーラを全開にしながら報酬を受け取った手前、渋々と案内をする明星と、案内してもらってる立場で文句も言いにくいので黙ってそれ追従する俺の構図が出来上がった。
教室棟、事務棟、全5つある体育館のうち2つ、開発科や研究科がよく使用している実験棟などなど。
一つ一つを高速で終わらせる明星によって30分の間にそれなりの教室を回ることが出来たが、それでもまだ全体の設備の3分の1も見れていないらしい。
どんだけ広いんだよと言いたくなるが、2000人も生徒がいるうえに魔術を扱う特性上、トレーニングルームなども大量に確保しているらしく、しかもその一つ一つがそれなりの大きさを有しているのだから、そりゃあ学校の敷地も大きくなるよなと諦めのような納得をする。
「……これで大体授業で使う場所は回ったと思う。他の学科がどんなことしてるかの分からないけど」
図書室の下、階段を下りてすぐのフリースペースの案内を終えて明星が告げる。
「全ての場所を回るのは無理だから、あとは優先的に見ておきたい場所があったら言って」
「……それじゃあ、放課後に戦闘訓練で使える場所を頼む」
「りょーかい。それじゃあこっち」
明星の提案に答えると短く返事をして、再び先導してくれる。
「……そういえば聞きたかったんだけど」
またも無言な時間が再開するかと思いきや、明星の方から声が掛けられる。「なにを」と返事をして続きを促す。
「“厄災”って知ってるの?」
「あぁ、知ってるぞ。明星も七瀬さんから聞いてるんだよな」
「……まぁね」
“厄災”は七瀬さんの特殊な力によって予知した約1年半後に起こる異常事態のことであり、混乱を避けるために一部の人しか知らないことでもある。
具体的には魔物の活発化、強力な魔物の出現、魔力の消失など。そのうちの魔力の消失に関してはどうやったのか詳細は知らないが七瀬さんが対策を進めているらしく、俺の役割は“厄災”までにとにかく強くなって魔物に対処できるようになっておくこと。
実際に七瀬さんと特訓をするようになってから以前よりもかなり強くなったと自負しているが、それは以前の自分と比較した時の話で、他の人と比べるとまだまだ実力が足りていない。
そもそも俺の体質的に一人との特訓よりも色んな人に協力してもらう方が強くなれるので、七瀬さんと話し合って何とかここへの編入を間に合わせた。
そんな経緯はさておいて、明星も知っている側であることは昨日の七瀬さんからのメッセージからも予想できたが、明星の方はそれを確認して何が聞きたいのだろうか。
「それで、この学校に来たのもそれに向けて?」
「あぁ、強くなるためにな」
「……なんで?」
「……えっ、なにが」
疑問を呈する声に、逆に俺の頭にハテナが浮かぶ。今の会話のどこに分からない要素があったのかと聞き返すと、前を向く明星がちらりとこちらを一瞬見据えて口を開く。
「別に神凪が頑張る必要もないでしょ。沙雪さんが中心に動いてるんだし、魔物との闘いだって他の人がやってくれるはずだよ」
「それはそうだけど……それを言うなら俺がやってもいいわけだろ?」
「それは神凪がやる理由にはなってないよ。やらなくても良い理由はあるのに、どうして神凪はやろうと思ってるの」
「えぇ……? お願いされたから……?」
なんと答えればいいのか考えた末に出たのがそんなシンプルな理由だった。
明星は俺がふざけていると思ったのか、ジトっとこっちを見やるが、そうとしか言えないのだからしょうがないだろう。
「……言いたくないなら無理には効かないからいいよ」
ふいっ、と前を向き直りながら告げられた言葉に、何か勘違いをしてそうだなと訂正をする。
「別に誤魔化してるとかそういうんじゃなくて、本当にそんな理由だぞ。恩人が困ってて俺の力が必要ってんならそりゃやるでしょ」
「“厄災”の中身も知ってるんでしょ。死ぬかもしれないんだよ」
「どのみち失敗したら皆死ぬんじゃないか? それなら俺も手伝って少しでも生きる確率を増やした方が得だろ」
「“厄災”に対処しようとする時点で神凪は他の人より死ぬ可能性があるって話をしてる」
「そうならないようにこうして編入して来たんだけど」
「……ただのお人よしか」
「お人よしじゃなくて自己満足だよ。俺だって知らない誰かのためにーとか、世界を守るためにー、なんて気はないからな」
俺はただただ七瀬さんに助けられて、その七瀬さんが困っているから手を貸したいと思っただけだ。
まぁ事情を知ってしまった以上、俺がやらないことで犠牲者が増えてしまうー、なんて後ろめたさや脅迫観念が無いとも言えないけど。あの時こうやっておけば良かったとかいう後悔を抱えて日常を送れるほど俺の神経は図太くない。
「そういう明星だって事情を知ってる上でここに通ってるってことは、俺と一緒なんだろ?」
俺ばかりがやり玉に挙げられていたが、立場としては明星も一緒だろと質問する。
「私は事情を知ってるだけ。神凪と違って手伝う気は無いよ」
「ほぉん」
明星も“厄災”を知ってる以上、俺と同じように七瀬さんに何かしらの能力を見込まれて勧誘されたのだと思うが、どうやら明星は断ったらしい。
俺も一度断ったし、七瀬さんも強要する人じゃないからそういう人が居ても何らおかしくないと適当な相槌を返す。
「……理由とか聞かないの?」
「言いたくないなら無理に聞かないぞ」
「なにそれ。私の真似?」
「いや本心。会って間もない奴に話したくないことなんて腐るほどあるだろ」
「それはそうだ。じゃあ言わない」
そう言い切った明星は言葉通りそれから何も発することなく淡々と歩を進めた。
そうして案内された訓練施設でも相変わらず最低限の説明しかしてもらえず、まぁ場所が分かっただけでも助かったと言い聞かせてお礼を返す。
「ちょっと早いけどお昼にしよう。混む前に食べたい」
その後別の種類の訓練設備を見たところで明星がそう言った。携帯で時間を確認すれば11時を少し過ぎた程度。新入生たちが何時に開放されるのか分からないが、通常の授業と同じあれば12時に終了するはず。
食堂の場所はまだ教わってないが、今から移動してお昼にすれば新入生が来る前に十分食べ終えれるだろう。
「了解、案内よろしく」
ここ数時間見た明星は人と関わりたくない様子がひしひしと感じられるので、俺も特に拒否せず明星の言葉に同意する。
そうして校舎から離れた訓練場から10分ほど歩き、校舎近くの食堂までやってきた。
隣には開放型のコンビニのような購買が併設されており、今は生徒が独りもおらず店員さんだけが品出しを行っている。その横を素通りして食堂に入ると、中は大雑把に見て数百人は余裕で入れそうなほど広いスペースが広がっていて、ほんの数名だけぽつぽつと席が埋まっている。
「すぐそこの券売機で食券を買って、あっちのカウンターの人に渡して。料理だけ提供されるから、箸とかお盆とか調味料はあそこから自分で取ってって」
指を差し説明を秒で終えると、明星は悩む様子も無く券売機の前に立ち学校端末を操作しながら一つの料理を押した。その後券売機に端末をかざせばピロンと小さく音が鳴って、券が発行された。
「現金も使えるけど、こうやってAPでも買えるようになってる。私は先に券を渡すから、決まったら教えて」
「りょーかい」
俺の返事を聞いてるのか怪しいスピードでその場を離れた明星は一旦置いておき、俺も券売機に向き直る。
ラインナップはかなり豊富で、日替わり定食が3種類ある他に、丼もの、麺類、定食などなどそこらのファミレスよりも選り取り見取りだ。しかも学生にやさしいリーズナブルな価格。
前の学校には食堂が無く、購買はあったもののコンビニより少し安い程度。そのため自炊で弁当を持っていくか、自炊をサボって購買で済ませるかのどっちかだった。
この種類の多さと安さだったら毎日食堂でもいいかもしれないと考えながら、少し悩んで頼むものを決めた。
「明星」
「ん、先にボタンを押して」
戻ってきていた明星の言う通りに、カツ定食のボタンを押す。明星が再び端末をかざして決済をすませれば、出てきた食券を手渡してくる。
「ありがとう」
「別に、元は柊先生からそれ込みで貰ったものだから」
感謝も素直に受け取ってくれない明星はその場を離れてカウンターの近くで待機する。ツンデレかな。
俺も食券を渡して明星の隣に移動すると、そっと距離を置かれた。……えっ、この短時間で嫌われた? それとも本当にツンデレ? いやまぁ明星からしたらしたくもない案内役をほぼ強制的にやらされて、その大元の原因が俺である以上嫌われる要素はあるんだけども。
並んで待っていても明星が口を開くことはなく、俺も何を話したものやらと少し思案をしていると、先に明星の料理が提供されて席に移動する。ほぼ間を置かず俺の分も出来上がり、明星を追いかけて対面の席へと座る。
「……なんでそこ座るの」
……想像以上に嫌われてらっしゃる?
「ダメだったか?」
「案内はもう終わったし、別に一緒じゃなくてもいいでしょ」
「わざわざ別に座る理由もないだろ。……あっ、そっちが嫌なら普通に他のところに移るけど」
「……別にいいよ」
明星はぶっきらぼうにそう告げると、いただきますと手を合わせて食べ始めた。そういうところはちゃんとしてるのな、なんて思いながら俺も合掌して箸を手に取る。
目の前には少し大きめの茶碗にたんまり盛られたご飯に、それを覆い隠せるほどのサイズのカツとサラダ。提供された時も思ったが、あの安さでこの量は本当にお得感が凄まじい。
明星が混む前に行きたいとか言っていたけど、こんな食堂ならこれだけの広さをしても混む理由はよく分かる。今日は時間も昼には少し早い上に在校生は基本的に御前はいないらしいからこそなんだろう。明日、弁当を作るかここを使うか迷うな。
思案しながらカツを堪能していて、ふと明星に聞きたいことがあったんだと思い出す。
「そういえば明星」
「なに」
「お前と七瀬さんってどういう関係なんだ? 俺と同学年ってことは在学期間が被ってるわけでもないだろうし」
「沙雪さんは私の保護者代わりの人だよ」
「ぅえっ……」
親戚か知り合いかだろうと予想していたところに、予想外からの回答を叩きつけられて思わず変な声を出してしまった。
苗字の違う二人、ましてや七瀬さんはまだ高専を卒業して3年しか経ってないため、確実に複雑な事情があるはず。何がまずいって、初手で地雷かもしれない話題を出したこと。これじゃあますます嫌われる要素が積み重なっていく一方だ。
「……隠す気はないから気にしなくていいよ。それに詳しい事情まではさらさら話す気無いし」
「ぉおう、了解です」
挙句の果てにコミュ力が無い俺はまともな返答も出来ないまま、明星のフォローに救われる始末。なんか涙が出そう。主に自分の情けなさで。
「……もう一個気になることあるんだけど聞いていい?」
「好きに聞いて良いよ。言いたくないことはそう言うから」
「それじゃあ。明星は七瀬さんの手伝いをする気は無いって言ってたけど、それならなんでここに入学したんだ?」
「別に、何となくだよ。高校の進路ってそんなもんじゃない? 他よりもちょっとだけ興味があったから。神凪も前の学校はそうやって選んだんじゃないの?」
「あー、俺は家の近さとか学費とかそこ辺りの方を重視してたな……。ちなみに明星の学科は?」
「研究科」
「好きなのか、勉強」
「面倒」
好きか嫌いかで言えよ。同意はするけども。
「そっちは。狩猟科?」
「いや、総合科」
「……えっ、なんで?」
俺の答えに理解できないという感情を浮かばせながら聞いてくる。たしかに強くなるためという編入理由からすると、狩猟科や守護科に入るのが普通なのだろう。だが、俺の場合は色々と事情が複雑だ。
戦闘経験は今でもギルド活動で実践を積んでるし、基礎能力を伸ばすだけならどこの学科でも出来る。そして何より俺の特殊な体質は、色んな人に協力してもらうことが強くなるための一番の近道になる。
事前に七瀬さんに聞いた話だと、総合科は他学科の授業に混ざることもあるというから、俺の目的にぴったりだった。
そんな説明を明星にすれば、続けて質問がされる。
「その特殊な体質って何?」
答えてもいいものかどうか。明星に話すのは構わないけれど、あまり大っぴらにはしたくはない以上、他にも人がいるこの場では話しにくい。
「……知りたかったら七瀬さんに聞いてくれ」
考えた結果、七瀬さんに丸投げした。明星もそこまで関心があったわけじゃいのか、ふーんと短く相槌をすると食事に戻った。
ご飯を口に運びながら遅いテンポで会話をし続けていると、あれだけあった量のご飯もあっという間に食べ終えた。俺よりも量が少なかった明星は先に食べ終えていたのだが、意外にも俺が食べ終えるまで待ってくれていた。
手を合わせてご馳走様でしたと呟くと、それを合図に明星が立ち上がる。
「食器はトレーごとあそこに返却すればいいから。2年の教室の場所も教えたし、後は大丈夫だよね」
「あぁ、覚えてるし問題ない」
「そっ。それじゃあ私はこれで」
「あっ、最後に一つだけ。明星も俺の協力者になってほし――」
「無理。めんどい。それじゃ」
俺が言い切るよりも先に断りの返事をした明星は、俺を案内した時以上のスピードで食堂を出て行った。事情を知っている側だし、不愛想に見えて話しやすい奴だったから出来れば協力してほしかったのだが、嫌がってる奴に無理強いは出来まい。諦めて自分で候補を探すとしよう。
まだまだ初日、それも授業が始まってもいない段階だ。
高専特有のシステムも面白そうだし、こみ上げる期待感にほんのり胸を躍らせながら俺も食堂を後にした。
設定メモ。
狩猟者:街の外にある魔物の出現する危険区で魔物を討伐する狩猟者(ハンター)になることを目標に、実戦を含んだ授業を行う。
守護者:魔物、魔術に関する災害・事故・事件への対処をする守護者(ガード)になることを目標に、実戦を含んだ授業を行う。
研究科:魔術の理論に関する研究を主に扱う。
開発科:魔術に関わる装備や道具に関する授業を主にする。
総合科(普通科):普通校と同じような一般的な知識に加え、魔術全般に関した知識を広く浅く学ぶ。他の学科と合同授業することがしばしばある。