今回 3600文字 目標達成
編入初日にして激動――でも何でもない静かな一日を終えて自宅。俺のわがままで寮生活ではなく、実家からの通学を希望したため登下校は片道1時間半ほど。
家は無人になるとあっという間に腐ると聞くから、この家だけは守ろうと自宅通いを決めたが拘束時間が中々に響く。とはいえどうすることも出来ないので諦めるしかなく、放課後に散策していたこともあって遅い夕飯となった。
そうして夕食と風呂を追えれば時刻は21時近く。
さすがに寝るにはまだ早い時間かなと、ソファに深く沈み込んで携帯を弄る。適当にインストールしているアニメアイコンのタスク管理アプリを開き、買うものリストや宿題一覧を無視して新しく学校生活の項目を作る。今日の編入説明も踏まえて、改めて魔術高専での俺の目標を見直して整理するとしよう。
言わずもがな最終目標は“厄災”の対処のため、魔術高専では俺が強くなることを第一目標におく。あとは……あまり目立たないことだろうか。七瀬さんの誘いを迷っていた時に、戦いとは無縁な環境で居てほしいという祖母の気持ちを大切にしたいという想いがあり、今はこうして破ってしまっているが、その気持ちが無くなったわけではない。
そのため、俺は“厄災”の対処後は魔術と無関係か、もしくは戦闘をしない開発や研究への進路を考えている。まだ登校初日で学校の雰囲気も何も分からないが、目立たないに越したことはないだろう。
今挙げた2つ以外の目標と言えば、特に思いつくものは無いが……。
「……一応入れておいてやるか」
ささっと指を動かして3つ目の目標に『青春する』と書き込む。……自分でやっておいてなんだが、何だこれ。
まぁいい。
ソファに座った状態から仰向けへと姿勢を崩し、さらに細かく考えを詰める。
簡単なところから行けば、青春の項目。特に考えることもなく、友達を作る、友達と遊ぶ、彼女を作る、と適当に挙げ連ねる。最低限クラス内で友達の一人や二人は欲しいと思うが、恋人に関しては興味はあるが特段欲しいと思ってない。……とりあえずこれでいいか。
次は目立たないことについて。これは単純に授業や行事で目立った活躍をしなければ良い。訓練するときも広い共有スペースじゃなく、個室ブースを使えば問題なし。あとはAPやSPの量だが、挑戦システムの関係上APは公開されるがSPは本人にしか分からない。だからギルド活動で与えられるポイントは全てSP変換すればこれものーまんたい。
「……でもなぁ……APの特典も良さそうなんだよなぁ……」
独り言をぼやきながら、それでも一旦の方針としてSPに変換することに決める。後から変えることもできるし。
そして最後に強くなることについて。
ひとまず出来ることは体力と魔力の基礎トレーニングと魔術の構築などの座学や練習、あとは実戦経験を積むことだろうか。
このうちの実戦経験に関しては放課後にギルド活動してれば勝手に養われるからオーケー。
トレーニングは今まで通り自宅でできる範囲でもいいが、学校の設備を利用した方が数倍良いだろう。でも今日見た限りだと訓練施設は人気で競争率が高い。APの特典に優先権やらがあったが、目立たないためにAPの獲得は積極的にしないからそれも無理。これもどうにかしたいが、SPでも優先権が得られないものか。
あとは俺一人でするのもいいが、編入前に七瀬さんとやっていたように実力者との手合わせが出来たら一番良い。その相手を探すのが大変そうだが……組み手相手探しと称して小目標に設定しておくか。
そして最後にして一番重要な魔術鍛錬。俺は特殊体質で魔力適性が高い人から魔力を貰うだけで強くなれる。デメリットは特になし。強いて言えば相手にメリットが存在しないから、この方法を使うための協力者探しに難航すること。
現に、今この方法をできるのは七瀬さんと柊さんくらいしかいない。先ほどの組み手相手探しと合わせてこっちも進めたい。
今の一番の候補は事情も知っている明星だが、今日の反応だと協力をこぎつけるのは厳しそう。強制できるものでもないし、したいわけでもないなので素直に明星は諦めて別の人を探した方が早いかもしれない。
とりあえず目標設定はこんなところか。
まとめると、授業や行事、空き時間に有望そうな協力者を探しつつ、自身はあまり目立つ行動をしない。放課後はギルド活動が基本で、それが無い時は自主トレーニング。あとたまに青春という名の遊びができたら良いなという感じ。
「こんなところか?」
文章に書きだして要点を整理して保存する。
携帯が示す時刻はいつの間にか22時の直前を示しており、方針を固めたことで満足したからそろそろ寝るかと、のっそりと身体を起こす。それとほぼ同時に、手に持ったままの携帯が着信を告げる。
こんな時間に誰だろうとディスプレイを見やれば七瀬さんからだったので、片手でスワイプして応答。
「もしもし、神凪です」
「詠くんお疲れ~。夜遅くにごめんね。まだ起きてた?」
「ちょうど今から寝ようと思ってたところです」
「うぇ、ごめんね邪魔しちゃったみたいで」
「いや、寝てたわけじゃないんで別に大丈夫ですよ。それで、どうしたんですか?」
「いやぁ、登校初日の感想でも聞こうかなって」
親か。
過保護か。
「今日だけじゃなんとも。ただ普通に授業受けただけなんで。ただ学校のシステムは面白そうでしたけど」
「そうだねぇ、私も普通の高校は通ってないから比較できないけど、色々と面白い学校なのは確かだよ」
「ちなみに卒業生の七瀬さんからして、おすすめの訓練施設とか、協力者になってくれそうな強い生徒の探し方とか知らないですか」
「それは……内緒。詠くんはそんなの気にせず青春してください!」
「七瀬さん曰く、今は世界の危機らしいですけど」
「ギルドとして活動してるだけで十分だし、詠くんの体質に協力してくれる人は私の方でも探してるから、そんな気負わなくても大丈夫! もちろん、そっちで見つけられたらそれも良いんだけど、それを優先したりはしないでね!」
つい数分前にそれを目標に掲げたことに苦笑しながら、下手に返事をすることなく話を逸らす。
「そもそも青春ってなんですか。俺にはそんなこと出来そうにないですけど」
「別に難しく考える必要はないんだよ。ただ友達を作って、一緒にわいわいと盛り上がったならそれはもう青春なんだよ」
「今日、クラスメイトの人と一言も話すことが出来なかったんですけど」
「……ま、まぁまだ初日だから」
「スタートダッシュに失敗したとも言えますね」
「それは……ほら…………ねっ?」
ねっ? はやめて。フォローしようとして何も出来てないのが一番傷つくから。俺の言い方も悪いけれども。
「だ、大丈夫だよ。詠くんには天音ちゃんがいるよ! どうだった? 仲良くなれそう?」
「天音ちゃんって……あぁ、明星のことですか」
今日一日明星としか呼んでなかったから一瞬誰のことか分からず、少し考えて思い出す。
「まぁ、何だかんだ言いながらもしっかり案内してくれましたし、良い奴ではあると思いますよ」
「そうそう、天音ちゃんは口では面倒くさがりながらも何だかんだお願いしたらやってくれる良い子なんだから。そういう所は詠くんに似てるから相性がいいかもね! 前にも一緒に買い物行ったときとか嫌そうな顔してるのに素直に付いてきてくれて、そんなところがまた可愛くてね。もっと前は一緒にお風呂に入ったりもしてたのに、最近は絶対に無理って拒否してくるのがもう悲しくて――」
「分かりましたから。七瀬さんが明星を可愛がってることは十分に伝わったので大丈夫です」
「まだ3時間は余裕で話し続けられるけど」
「寝かせてください」
本当に二人の関係が分からずに聞いてみたい気持ちはあるが、深い事情が絡んでいることは何となく察せるし、何なら余計なことまで話しだして長くなりそうだから無理矢理中断させる。
「確かに明星は良いやつなんでしょうけど、恐らくもう関わることはないですよ」
「えー? 事情も知ってるんだし詠くんの協力者には最適でしょ?」
「食い気味で断られましたよ。厄災の件にだって関わってないんでしょう?」
「そうだけど、私としては多少強引でも詠くんに勧誘してもらいたいところだなぁ」
「強引に誘うのは七瀬さん的にNGなはずでは?」
「私はしないって決めてるけど、それを詠くんにまでは強制してないから」
「俺だって嫌ですよ。そもそも協力者なのに強引に勧誘したら協力的じゃなくなるんじゃないですか?」
「そこは……ほら。詠君の魅力で何とかしてよ」
「んな無茶苦茶な……」
七瀬さんの物言いに苦言を呈す。
俺だって叶うなら手伝ってくれる人は一人でも多く欲しい。明星が誘いやすい――性格ではなく、状況的に誘いやすい人物なのは確かだから、実際に俺も一度話を持ち掛けたわけだし。
それでもあの明星の拒否具合からしてどんな手を使えば手伝ってくれるのか想像つかない。それなら別の人を探した方がまだチャンスがあるだろう。
「でも良いの? 天音ちゃんの魔術適性は――」
そんな俺の考えは、続く七瀬さんの言葉で覆ることになった。
自分で書いておきながら、3600文字で話しが一つも進まないな。
来週末から県外に1週間滞在することになるので、もしかしたら投稿できないかも。
ジュースとお菓子も食べにくい環境のセルフ罰ゲームもあるし、マイルール適応外ってことで。しょうがないしょうがない……。
平日は書けるからそこで頑張るしかないか。