そんな彼の最後を綴った物語。
荒野に鳴り響く幾重もの剣戟。
無残にも散ってゆく命。幾重にも積み重なる屍の山に彼はいた。
彼の者、恐ろしいまでの返り血と数多の傷を受けながらも、見る者を圧倒する闘気を纏っていた。その姿はまるで東方の国に伝わる修羅の如きものであったと皆語る。
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あと何人斬ればいい?
あと何人刺せばいい?
私はあと幾つの屍の山を築けばいい?
そんな終わりも見えない様な自問自答を私は繰り返す。
この体を濡らした血の者たちにも守るものはあったはず。しかし、私は彼らを殺した。
たった一人私を殺すだけの戦。しかし、散った命は数えきれぬほど。その全てを私が奪った。
何の罪の無い彼らを私は殺した。この体は多くの罪で汚れてしまった。
あいつを殺す為の戦が始まってから半日が過ぎた。
千を超える軍勢相手にあいつは一人挑み、まだ戦っている。そしてこちらの軍はたった半日で僅か三百を残すばかり。散っていった者達はこの国でも選りすぐりの騎士や魔物を狩る狩人、数多の戦場を駆けた軍人に傭兵だ。しかし今ではその大多数が肉塊に変わり、生きている者も戦意を失い欠けている者すら出始めている。
本来ならば俺はこの状況を悔しがり、打開策を練らなくてはならない。だが俺は嬉しくて堪らなかった。
修羅と呼ばれる彼の友人として彼が生き延びている事が嬉したかったのだ。このまま全てを殺し、生き延びてほしいそれがただ一つだけの俺の願いだった。
あれからまだ私は人を殺した。周りにいた戦士は皆息絶え、私も多くの傷を受け満身創痍だった。体が重い。もう私の命も長くはない。死ぬ前にせめて友人に会いたかった。
そんなことを考えていると私に近づいてくる気配を感じた。それは会いたくて仕方のない友人の一人だった。
「君も来ていたんだね、エルヴィン」
「お前こそよく生き延びたな、カレン」
そう告げる彼の顔が私にはよく見えなかった。とうとう眼も見えなくなってきたようだ。
「エル、私はもう間もなく死ぬ。その前に君に介錯を頼みたい。死ぬなら君の剣で死にたい」
私の言葉を聞いた彼は息を呑んだ。辛い役割なのは分かってる。それでも私は彼に最後を頼みたかったのだ。
「治療魔法もお前の氣でもだめなのか」
「ああ。もう、こうなってしまえばどちらも効きはしないさ。だからお願いだ、最後は友の手で逝きたい」
「・・・・・・」
「頼む、エル。私の最後の願いを叶えてくれ」
そう言えばエルが断れないのを知っていて私は頼んだ。友人の涙する音を聞きながら。
僅か二十三年の短い人生だった。しかし私はそんな短い人生で良い友人を持ち、多くを学び、奪った。この体にはきっと数え切れないほどの恨みや憎しみが纏わり付いているだろう。行く先は地獄に他ならないだろうと私は考えていた。
すると私の首筋に刃の当たる感覚がした。
「カレン、お前のおかげで国は救われた。それを知っておいてほしい。お前は多くを奪ったかもしれんがその裏で多くを救ったんだよ」
「・・・・・・」
そんな彼の餞別の言葉に対して私は無言で答えた。
「最後に何か言うことはあるか」
「エルザに暴れるなと伝えてくれ」
「無茶を言うなカレン」
そう喋る彼の声に迷いはもう感じなかった。
「じゃあな、カレン・エインズワース。最高の友人だったよ」
「君も最高の友人だったよ。エルヴィン・アルシュタイン」
それを最後に私の世界から何もかもなくなる。
ここで私の人生は幕を下ろした。