今回は少し重い話です。
気持ち悪い話だと思うのでお気をつけてください。
内容は過去の回想メインなので会話文無しです。
トラウマ。
肉体的・精神的な衝撃を受けた事で長い間それに囚われてしまう状態で、また否定的な影響を持っている事を指す。
僕はこれの精神的なものを持っている。僕は……いや、彼女も長い間お互いの存在に囚われている。
僕、呼称今田一也としよう。そして、彼女、呼称長谷部由紀としよう。僕と彼女の関係は今は疎遠。理由はトラウマのようなもの。
まずは、過去の話をしよう。
あれはまだまだ青い中学時代。
いつもの帰り道、友人の太郎が楽しそうに笑いながら話しかけてきた。
内容はつい最近転校生が来たという話だった。僕にとって至極どうでもいい話だったので聞き流していたら、翌日噂の転校生を見に行く事になっていたのを覚えている。
内心面倒ではあったが一度返事をしたため断れないのでしょうがなく諦めた。
翌日見に行くと言っていたのになかなかいかず、ついには放課後。
校門で確認する事になって尚更面倒になり、帰ろうとしたところに彼女は現れた。
パッと見すごく可愛いかと聞かれたら何とも言えないがそれでも僕はその薄幸顔に惹かれてしまった。
翌日から僕は薄幸の彼女に話しかけた。最初はあたりさわり無いように鞄に付いているアニメキャラのキーホルダーの話から話し始めた。
メアドもすぐに交換し、引っ越してきたばかりの彼女に町案内をするという名目でデートをしたりもした。
だが、現実は、非情でとある日、女子の友人に言われた。彼女は彼氏がいるから色々控えた方がいいと。しかもそれは僕と馬の合わない男子だった。
どうしたらいいか悩んだ。悩んで悩んで出した答えはいい友人になれればいいという諦めきれないが一歩引いた答えだったのだが、そこからトラウマへの道を歩き始める。
ある雨の日
友人女子、呼称中村としよう。その中村とテスト終わりで早帰りだったので駅周辺を散歩していた。
あたりさわりのない会話。つまらなかったがいい息抜きにはなっていた。そんな最中に一本の電話。
出てみると転校生こと長谷部とその彼氏清川からだった。
内容はとても簡単清川の家に向かうことだった。人は多い方がいいらしく僕も向かう事にした。
向かった先で待って今のは今まで見たことない弱気な清川と濡れ鼠となって俯いている長谷部。事情はわからなかったがとりあえずタオルを用意して体を拭かせた。
落ち着いた頃に話を聞くと離婚してこの街に逃げてきたらしい。そんな中運悪く父に似た男に遭遇。彼氏に連絡をとり、何とか逃げおおせる事に成功したらしい。
そこで思ったのがどう家に帰すかというもの。一人で返すのは勿論自分だけだと不安だった為すぐに集まれるメンツを集めたらしいが、いるのは四人ばかり。あとから一人増えたのだがそれでも五人。
考えたのは暗くなる夕方に皆で囲いながら送るという些細な抵抗のみ。何とも情けないが所詮中学生なのでしょうがないものだと思ってほしい。
そこからは行動も決まっておりテキパキと事を進められ無事自宅に辿り着いた時ややこしい今回の出来事は更にややこしくなってしまった。
なんと長谷部が僕に告白じみた事を告げてきたのだ。唖然とする僕、笑顔で帰っていく長谷部、諦めと僕への怒りや嫉妬に染まった清川、乾いた笑いを漏らす友人二人。
そこから僕が次に身動きをとる事が出来たのは清川に後はよろしくと肩を思い切り叩かれ痛がった時だった。
そこから先はアクシデントはなかったが問題はあった。それは二人の関係。
付き合わないままだったがほぼ付き合っているも同然でキスもしていたし、手を繋いで歩いたりもしていた。なかなか踏み込めない二人。深まる思い。
告白したら終わってしまうのでは、と思いそんな不健全な関係を続けていたが、それは僅かな傷を互いにこさえるだけだった。
そんなある日の出来事。ついつい僕が長谷部にキスをした時、彼女の限界を迎えた。傷を負いすぎたのだ。いや、傷を負わせすぎたんだ僕が付き合おうと言わずにいたから。
限界を迎えた彼女は泣き、暴れ、僕を罵った。黙ってそれを受け入れ殴られ続けた僕を嫌になったのか彼女は家に帰り、僕は自己嫌悪のあまり嘔吐してしまった。
それからの生活はなかなかに堪えた。学校ですれ違うたび息を詰まらせるような悲鳴を小さく上げ避けられた。
それが数か月続き、交流も無くなった時、中村の提案で皆で祭りに行った。
空気が悪いから仲直りしろと言われ、二人きりにされた僕たちは会話もなければ、花火を楽しむ余裕も無かった。だけど、それじゃあいけないんだ。そう思った僕は、話しかけた。
声はみっともないほど震え、噛みながらの不格好な言葉。謝罪と告白。その二つをぶつけられるのを予想していなかった彼女は驚きと羞恥に顔を染めた。
そのあとは、思いのぶつけ合い。お互いに思っていたことをぶつけ合った。そしてこの時僕と長谷部は付き合うことになり、初めて本当のキスをしたのかもしれない。
だけど、この関係もすぐ終わりを迎えた。
ある日のメール。
そこには、別れようの一言。
僕は一度彼女を大きく傷つけた事を引きずり、彼女を引き留める事が出来なかった。
だから返したんだ。別れようと。終わりの言葉を。
そのあと彼女から何でそんな事を言うの?とメールが来た。
ここで僕は混乱したがすぐに答えは向こうから僕の前に姿を現した。
ふざけた一文。ただそこには引っかかったとだけ書かれていた。
送り主は後から知ったが彼女の親戚で彼女に溺愛している男だった。だから、自分以外の男とメールしあまつさえ付き合っているのを知ってしまったんだから邪魔をする。
その結果、僕は彼女と別れた。
泣きながら僕を罵倒し消えていった。僕はどうすることも出来ずに彼女の背中が遠ざかるのを涙の一つすら流さずに見送った。僕に涙する権利はないから。
それからの毎日は辛かった。いつもはメールをしていた時間はただただ空白な時間に。休日も家に籠ったままだった。
学校ではなにも知らない女子たちに責められ居場所なんて無かった。
そして僕は彼女を見かけると頭が真っ白になったし、彼女は事の顛末を知ったらしく僕に電話をしてきた。
だけど、恐怖が勝った僕は冷たく彼女をあしらってしまい、関係は完全に崩れ去った。
あれから、もう数年の月日がたった。
僕と彼女は違う高校に進学したものの駅で偶々会ってしまえば、お互いに傷を思い出し恐怖に震える。
お互いに信じあう事が出来ずに傷つけあった。忘れれば簡単なのに忘れられない。今でも囚われているお互いの存在というトラウマに。
不意に呟き、聞こえるのはあの頃の関係のまま。いまちゃんという僕のあだ名と僕が呟いた彼女の名前。
トラウマは今日も僕を苦しめた。