レオン ハリウッドシリーズ バイオハザード 作:masayumi
あれは、正直キツかった。
黒いレザージャケット、スローで爆破を背に歩くカット、無駄に決めすぎたカメラワーク。
なんだ、俺はアクション俳優か?
あれが「アメリカのヒーロー像」ってやつか?
知らん。
俺がこの間出演したネットフリック〇限定ドラマ「インフィニットダークネス」
世界市場を意識して、思いっ切り演出がハリウッド式になってしまい、俺もかなりアメリカ人俳優の様な演技を求められ辟易した(あ、俺、アメリカ人だったわ…)しかもそれが世界市場ではヒットしてしまい(日本の旧来ファンからは、チャラいの冷たいの叩かれまくって凹んだのだが)しばらく俺はハリウッド的任務に就くことになった。
・・・・・・
「レオン・S・ケネディは完璧で、無敵で、どんな爆発にもびくともしないんだよ!」
脚本家がそう言ってたらしい。
知らねえよ。
実際の俺は焼けたホットドッグで舌火傷するし、シャツのボタンは必ず一個ずつずれるし、
あと…任務中に石につまづいてコケるのも普通にある。
それなのに演出家は完璧な男の演技を限界までさせようとするからたまったもんじゃない。
撮影(任務)後、控室(倉庫)で一息ついたときには、あまりの「キメ疲れ」で魂が3つくらい抜けてた。
眉間にシワ寄せすぎて、数時間後も戻らなかったのには笑えたいや、笑えない。
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この前の任務(撮影)なんだったんだ?
俺はスパイか?傭兵か?それともB級アクション映画の主人公か?
冗談じゃない!
熱いんだよ!
……と、心の中で叫びながら、爆発する研究所を背にスローモーションで歩いた。
もちろん、火の粉が舞い散る中、髪は風になびき、憂いを帯びたいい男は無言で歩き続ける。
誰だ演出したやつは?
そこのスタッフ、送風機を持ってくるな!
火の粉がさらに散るじゃねえか。
・・・・・・
任務前、装備チェックのとき。
俺の支給品リストを見て、思わず吹き出した。
黒いレザージャケット(新品)
タイトなジーンズ(敵に蹴られると痛い)
サングラス(夜間任務なのに)
メインウェポン→カスタムマグナム(反動で手首が死ぬ)
サブウェポン→セリフ
……最後のなんだ?
「現場でのアドリブ対応、期待してます」
いや、任務だよ?ふざけてんのか?
・・・・・・
敵の基地への侵入シーン。
ここでアドリブ。
ゾンビたちが襲ってくる中、俺は片手を挙げて言った。
「さあ、パーティーを始めようか」
死ぬほど寒かった。しかも滑った。
現場、シーーンってしてた。
俺の心が折れた音か聞こえた。
それでも任務(撮影)は任務(撮影)だ。
アホみたいに跳ねまわる爆発を横目に、俺は基地へ突入した。
もう何度目かのスローモーション。
無駄にキマるカット、そして肩こり
爆発→ジャンプ→回転撃ち→着地→腰痛→そこでアドリブ。
「これがヒーローってやつさ」
やっぱり日本に帰ろう…
・・・・・・
銃は重いし、回転してるとき腰をグキッとやりかけた。
肩はガチガチに凝り、ジャケットは脇が破れそうなほどパツパツ。
ジーンズもヤバい。
撮影中に尻の部分が破れたらシャレにならない。
スタッフに永遠に変態呼ばわりされる。
撮影後、カメラを回していた男が一言。
「最高にクールでした!」
ハニガンの代わりに一時的に組まされたオペレーターだ。
ありがとう、でも
今の俺の腰はクールじゃない。
ひたすら痛い……
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数日後、街で偶然クレアに会った。
彼女は少し目を細めて、じっと俺を見たあとこう言った。
「……レオン、もしかして、最近ハリウッド風任務のデビューした?」
心を抉るな。
「お前も見たのか、あの任務の記録映像……」
「ええ、スローモーション多すぎて、何が起きてるかよく分からなかったわ」
・・・・・・・
……次の任務(撮影)はどうか普通であってほしい。
せめて火薬量は人道的なレベルで頼む。
帰還報告書の備考欄に、俺は書いた。
「今後、任務に映画的演出を挟むのは勘弁してください。腰が限界です。」
DSO上層部からの返信は簡潔だった。
「了解。次回はドローンで俯瞰撮影を検討する」
お前ら聞いてんのか?
・・・・・・・
俺は人間だ。
不死身じゃないし、無敵のヒーローでもない。
疲れるし、痛いし、何よりああいうセリフを真顔で言うのはやっぱり無理だ。
でも
「また誰かが『かっこよかった!』って思ってくれるなら、まあ……1回くらいは、いいか。」
今度はもうちょっと、ラフなシャツがいいが。
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それから撮影班(破壊工作隊)!
背中に爆風浴びるの、ホントに髪焦げるんだよ、火薬を少し控えてくれ。