ニセコイ・モウソウ   作:ぬめり

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実質1日2回投稿。実は第九話の前にやってたのは内緒。
今回はおたまが出てきます。二桁目という節目で新キャラ出しますよ。

しっかしラブコメてのはムズいですな。

ニセコイの二次創作を確認すると、今年に入って更新しているのはどうやら自分だけでした。孤独な闘い。あは…はは…。
寂しいヨォ…(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)


第十話

 登校中、喉が渇いたので鞄から水筒を取り出そうとした。しかし、鞄に水筒は無かった。おそらく家に忘れてしまったのだろう。

 

「今から取りに行くのも面倒だな…っと」

 

 タイミング良く、自販機を見つけた。最近浪費気味で財布事情は厳しいが、ここで買った方が早いと思った。

 財布から100円玉と10円玉数枚を取り出して、投入口に入れようとすると、手元が狂ってしまい、よりにもよって100円玉が落ちてしまった。

 横倒しで落ちれば良かったのに、運悪く縦に、しかもバランスは良くころころと車輪の様に転がっていってしまう。

 手に持っていた残りの10円玉を財布の中に戻してから追いかけた。すると、通行人の足に蹴られて明後日の方向へ飛んでいってしまった。飛んでいく100円玉を目で追うと、電柱に当たってまた違う方向に。やっと落ちると思いきや、ゴルフバッグを背負っていた通行人の、そのバッグから突き出たゴルフクラブのパターにカンっと当たって飛び去って、最終的に道から柵で隔たれた茂みの中へと消えていった。

 

「あー…」

 

 僕の淋しい財布の中の貴重な100円玉一枚がその責務を果たさず失われてしまった。万事休す。

 いや、しかし、まだ学校までの時間はある。いつも15分くらい余裕を持っているのだ。見逃してたまるか。

 

 位置的に考えると、ここは一条の自宅近くの神社だった。僕は小走りで神社の鳥居までぐるっと回って、境内へと入る。

 

「落ちた方向を考えるとこっちか?」

 

 あまり来たことの無い神社で、ほぼほぼ勘に任せて動いた。

 落ちているであろう場所に向かっている途中、掠れた文字でおそらく「稲荷神社」と書かれた古びた木の案内書きがあった。

 

 辿り着くと…

 

「一条何してんの…?その子は?」

 

 一条楽と、小学校3、4年くらいの、和装をした少女が居た。

 

 少女の姿は浮世離れしていて、目元に朱を塗った古風な化粧、3つの翡翠色の勾玉を首から下げ、頭には狐の耳、そして臀部から狐の尻尾が3本生えていた。

 

「お前ついにコスプレ小学生にまで手を」

 

「違ぇよ!?…つかお前は何でここに?」

 

「ああ、それはだな、あれよあれよとすっ飛んだ100円玉を追いかけてここまで来たんだよ」

 

「あの100円玉はお主のものだったのか。今度から奉納する時は社に適当に投げるのではなくて、ちゃんとここの賽銭箱に入れるのじゃぞ?」

 

「へ?」

 

 奉納?何の話だ…いや、まさか。

 

「…そこのお嬢さん。もしかして100円玉ってもう賽銭箱の…」

 

「もう中じゃぞ。わらわの手を煩わせたのはいただけないが、久しく見向きされていなかったこの社に来た賽銭じゃ。信仰も必要故な。しかと受け取った、感謝するのじゃ」

 

「…それは…あの…どうも…」

 

 胸を張って語る少女に、それは勘違いだから返してくれなどと言い出せる訳がなかった。言っていることはよく分からないが、何となく目の前の子供を傷つけることを言うのは良心が憚られる。

 

「悠也、あんまり真に受けるもんじゃないぞ?さっきからこの子…ここの神様だとか妖狐?だとか言ってるし」

 

「この子ではない!わらわはおたまじゃ!それに全く信じておらんではないか!」

 

「はいはい…っと、そろそろ行かなくちゃな。千棘と待ち合わせしてたし、あんまり遅くなるとぶっ飛ばされちまう。ついでだ、一緒に行こうぜ悠也、あんまりゆっくりしてると学校にも遅れちまうし。じゃあな、おたま」

 

 肩を一条に押されて、そのまま一緒について行く事になった。僕は…100円玉を取りに来たんだが…僕の…100円玉…。

 

 

「遅いわよ、楽!」

 

 ガードレールに腰掛けて、桐崎さんは一条の事を待っていたらしい。

 

「へいへい、悪かった、千棘」

 

「彼女を待たせるなんて彼氏として失格…って、あれ?佐藤くん?珍しいわね。いつも私たちより早く登校してるのに」

 

「ちょっと野暮用で寄り道を…そこで一条と会いましてね」

 

「ふーん…って、じゃあアンタも寄り道してたって事じゃない!彼女との待ち合わせ遅らせといて何道草食ってんのよこのバカ!」

 

「ぐはぁっ!?」

 

 桐崎さんから放たれた怒りの鉄拳が一条の顔面へズドンとめり込んで、一条は倒れ込んだ。今の威力だと体力の3分の1は削れただろう。

 

「おはようございます、お嬢!」

 

 殴られた一条を哀れに思っていると、鶫さんが来た。

 

「む、一条楽…に佐藤悠也?珍しいな、貴様ならいつも私たちより先に─」

 

 ─以下同じ様なことを言われ続けながら、橘さん、小野寺さん、宮本さんと舞子の順にやって来て、いつものメンバーが揃った。

 朝っぱらから僕を入れて8人とは、大所帯なものである。こんなにゾロゾロと、どんだけ仲が良いんだろうか。

 

「しっかし、朝から我がクラスの美女を独り占めして登校か?うらやましーぞ、この野郎!」

 

 小野寺さんから貰った絆創膏を鼻に貼って、桐崎さんに殴られた患部を痛がっている一条に、舞子は冷やかしを入れた。

 

「そうだぞ一条。まさか普段僕が先に行っている間こんな感じなのか?」

 

「え?あぁそうだな…そう言われればこんな感じだ」

 

「かーっ、この4股野郎が!何て羨ましい!地獄に堕としてやりましょうや舞子さん!」

 

「んー、そうしたいのは山々だが、俺はるりちゃんと登校できたから悔しくないんだよなー」

 

「何だとこんにゃろー」

 

 僕はムカついて舞子にぐりぐり攻撃をお見舞いした。なるべく拳の突出した骨をめり込ませて痛くなるように…!

 

「あはは痛い痛い…あ、いや、ちょ、悠也さんマジ…いだだだだ」

 

「舞子くんは勝手についてきてるだけよ佐藤くん…それはそうと、そろそろ歩き出さないと遅刻するわよ」

 

 ─宮本さんが話を切り出して、僕らは凡矢理高校へと歩みを進める。いつもの様に、友人達と騒がしく。

 

「…なぁ、楽」

 

「ん?どうした悠也」

 

「なんか…すんげぇ第一話というか、ゲームのオープニングみたいな気がする」

 

「何言ってんだお前…?」

 

 

 彼らの様子を物陰から見ている存在がいた。

 

「…名は『一条楽』に『佐藤悠也』か…むぅ…楽のいなり寿司も捨て難いが、彼奴は彼奴で人生が充実してそうじゃしの…それ以上に悠也のことが気にかかる…賽銭の分もあるし、よし決めたぞ」

 

 彼女はおたま。正真正銘の妖狐、この世ならざる人外の存在である。彼女はとあることを心に決めて、その場を去った。

 

 

「はぁ…何でうちの高校は動物園並みに多様な生き物を飼育してんのかねぇ?」

 

 特に波風立たずに平々凡々とした1日を終えた後、用事があるからと飼育係の雑務を一条から頼まれた。

 ここの動物達はどこかから拾われてきたらしいが…犬や猫はまだしも、ワニだのクジャクだのカピパラだの、どう考えたって何処かから脱走してきた個体だろ。警察に届けろよ現実的に…いや、こんなこと突っ込んだって無駄か…。

 

 さて、一条からは動物達の名前とそれぞれに与える餌の書かれたリストを貰っているが…何々?スメルニョン西野に…サイクロプス・ゲンガー・朱雀…確認するだけ無駄か。餌だけ見ておこう。

 

「─ふぅ、一通り終わったかな。ワニの餌やり体験を学校でやるとは中々貴重な体験だった…」

 

「ようやく見つけたぞ」

 

「…?」

 

 聞き慣れない声がした。振り返ってみるが、声の主は後ろにはいなかった。しかし、足元には、小柄な狐がちょこんと座っていた。

 

「狐もいるのかこの学校…狐の餌は…あれ?狐どこだ?リストに書いてない?」

 

「動物の餌など要らんわい!…まぁいい、ずっとお前を探しておったのじゃ。どうしても聞きたいことがあってのぉ」

 

「…っすぅー」

 

 うーん、どうやら疲れているらしい。まさか幻聴に幻覚まであるとは。これは重篤な症状だと見た。さっさと帰って寝てしまおう。面倒ごとに絡まれるのも嫌だし…。

 

「うん?おい!何処へ行く!」

 

 うわ、なんか追いかけて来た。

 

 少し歩くのを早めてみても、それでも追いかけて来る。次は小走り、それでも。なら走って。

 

「ちょっと待つのじゃー!」

 

 うるさい関わってられるか!いつものメンバーと付き合うのでもそこそこ体力削れてるんだよ僕!逃げるぞ!

 

「ぬおおお!」

 

「おい!おい!」

 

 暫く走って、学校の正門前まで辿り着く。少し疲れた。息も絶え絶えに後ろを向くと、どうやら撒くのに成功したらしい。あの狐の姿はなかった。いや、最初から幻であったのだろう。

 

 安心して前を向いて、帰ろうとした。

 

「ふっふーん、動物の身体を舐めるでないぞ!」

 

 歩いた先に狐が待ち伏せしていた。

 

 それを確認した僕はその脚を翻し、学校内へと逃げ去った。本当に面倒くさい予感がする。ここで逃げなければ、何かとんでもないことが起きる気がしたのだ。

 

 からがら教室まで逃げ込んだ。何となく机の裏に隠れる。

 

「30分時間潰して…そのままトンズラかますか…?」

 

 そう考えていると、廊下からカツカツと足音が。下校時間で人が居ないのも相まって鮮明に聞こえた。少し顔を出して見てみると、窓の外に居たのはキョーコ先生だった。何だ…安心…。

 

「どこにいるのじゃー?」

 

 前言撤回。のじゃって何だよ分かりやすい。

 

「マジか‥なんだあれ?」

 

 目の前で巻き起こっている怪奇現象に辟易する。

 

『プルプル』

 

 鞄の中から着信音が鳴った。画面を確認すると舞子だった。勝手に着信拒否するのも悪いので、一応出た。

 

「もしも〜し悠也、今どこだー?帰りにカラオケでも寄ってかない?」

 

「悪い今ちょっと…何かその、謎の存在に追っかけられてて…嫌な予感するからどうにかして逃げないと…」

 

「は?謎の存在?…いや、それはつまり、スニーキングミッションですな!…てことは当然ダンボールは持っているだろうなぁ?」

 

「持ってないわ。スネークか」

 

「お、知ってる?」

 

「父親がやってたんだよ。先んじて言っておくが先折りタバコもブロック型栄養食も持ってない」

 

「くそ、ボケが塞がれた…!まぁ、だが、ダンボールなら学校内に元々幾つかの設置してある!ダンボールの前で◯ボタンを押せば隠れられるから自由に使うと良いだろう…!」

 

「何言ってんのお前。メタルギアの話?」

 

「…幸運を祈る!」

 

 そう言って舞子は電話を切った。何だかゲームのチュートリアルみたいな電話の内容だった。だが他人任せだった。そりゃないぞオタコン。

 

「そこにおるのかー?」

 

 謎の存在はキョーコ先生の姿で僕のことを探して、教室に近づいて来る。まずい。

 

 教室を見回すと、本当にダンボールがあった。こんな所にあったっけ…誰かが置いたのだろうか?だが、もっけの幸いというやつだ。有り難く使わせてもらおう。

 若干バキボキ身体が鳴ったが、案外入れた。完全にやってる事がメタルギアだ。

 

 教室に入って来た謎の存在をダンボールの穴から確認し、完全に僕が居ない方向を向いたのを見て、僕はダンボールから抜け出してなるべく音を立てずに教室を出た。

 

 そして全速力で走った。

 

 何もかも終わった。何もかも…。ただ今から帰還する。

 

 …僕は何を考えとるんだ。

 

 

「ただいまー」

 

 家に帰って、早速階段を登って2階の自室へと向かった。

 どっと疲れた。だが、何か言い知れない脅威から逃れる事ができたのだ。今日は勉強も何もせずゆっくりと寝るとしよう。勉強はいつもしていないがね。

 

 自室の扉を開いた。

 

「待っておったぞ」

 

 あの狐がいた。

 

「あ、はぁぁぁぁぁぁ…何で化け狐が…」

 

 体全体の力が抜けた。その場に倒れ込む。じゃあもう、学校での出来事何だったんだよ。家割れてるんだったら最初から来いよ…。

 

「む?おっと変化を解くのを忘れておった」

 

 シャランと鈴の音が鳴ったかと思うと、狐は瞬きの間に少女へと変わっていた。その少女には見覚えがあった。

 

「…えと、君は朝の…おたまちゃんだっけ…?」

 

「そうじゃ。ふふふ、お主もわらわの事を真剣に受け止めていなさそうだったから、驚かせてやろうと思っての。どうじゃ、わらわが神様であること実感したか?」

 

「悠也ー?誰かいるのー?」

 

 一階から母さんの声がした。

 

「な、何でもなーい。ただの電話ー」

 

 まさか自分の家に幼女を連れ込んでいるなどバレればどうなるか分からない。僕は開きっぱなしになっていた自室のドアを閉めて鍵をかけた。

 

「実感はできたけど…状況が掴めないし…色々と言いたいことはあるんだけど…どうして僕の家に…?」

 

「うむ、良い質問じゃ。わらわ、今日から…そうじゃな、1週間ほどここに住むから」

 

「はい?」

 

「一条楽の家より少々手狭じゃし、1週間じゃ」

 

「いや、一条の家知ってんだったら一条の方に…」

 

「それも悪くないんじゃがの?いなり寿司についてあどばいすを授けたいことじゃが、もっと重要なことがある」

 

「というと?」

 

「お主、この世のものではないてあろう?」

 

「えっ、ええええ!!!???」

 

 な、なんで分かんの!?いや、神様だから分かるのか!?

 

「お主の方が面白そうじゃからこの家に来たのじゃ…おい、聞いとるのか?」

 

「えぇ…じゃあ、あれですか…この世の異分子である僕を排除するために…」

 

「そんな物騒なことせんわい!単純に面白そうだと思ったから。それと賽銭のお礼じゃな、お主が望むなら意中の女子との縁を取り合ってやっても良いぞ」

 

「そういうのは…なるべく自分でやりたいというか…その…そんな事より1週間て、この家、自分で言うのも何だけど大きくないんだぞ?どうするつもりなんだ?」

 

「おお、そこか、その点については…」

 

 おたまちゃんは右手を振って何か念じる。すると指先から光が出て、この家を覆った。

 

「…これで、この家の者はわらわのことを、親戚の家から遊びに来たたまちゃんと認識するようになったぞ。問題なかろ?」

 

「…寝泊まりは…」

 

「お主の部屋じゃが?」

 

「まずいんじゃ」

 

「そこら辺も込み込みで幻術をかけたぞ」

 

 成程、幻術って便利だなー。じゃないわい。どうすりゃ良いんだよ。

 

「なるべく食事は和食、できればいなり寿司があると嬉しいのぉ。いなり寿司はおあげを裏返して作るのじゃ。では、これから1週間世話になるぞ」

 

 食事にすら文句つけて来たぞこの子。一体全体、これから先の1週間どうなるんだ…。

 




ラブ要素無しで終わり。
これから暫く、おたまの関わる回が続く様な気がします。名付けるなら「おたま編」かなぁ。いや、意外とすぐ終わるかもしれない。僕の匙加減と底の浅いアイデア次第ですな。頑張って枯渇させていきます。

この二次創作のおたまですが、元ネタのゲーム版よりいくらか成長したイメージで書いています。そっちの方が融通効くと思って。まぁ大して変わんないと思いますがね。
おたまが関わることでどうなるのか。引き際としてはゲーム版みたいにハッキリしたものにはならなさそうですが、進展はする…のかなぁ。

感想やら誤字修正とかあれば、どうぞお願いします。
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