ニセコイ・モウソウ   作:ぬめり

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ラブコメってムズいですね。

先に言っときますと今回は夢オチです。この二次創作の主人公周りの設定を大まかに思いついたので、所謂設定開示回というやつです。主人公の内面にも触れます。
丸々オリジナルだし別に恋路に進展がある訳でもないので飛ばしてもらっても大丈夫なんだからねっ!?


第十一話(コミック文庫版のおまけを読んでしまった精神的ダメージによるキチゲ解放をしてるだけなので飛ばして下さっても次回以降に支障はありません。長いです)

「さっきのあにめとやらは中々面白かったのう。お笑いもあるかと思えば、激しい戦闘、突然の悲劇、各々の恋愛模様…斯様なものがあるとは、現し世もなかなかどうして捨て難いものじゃ」

 

 おたまは僕のベッドを占領してその上で遠慮なくゴロゴロと寛ぎながら、視聴したアニメに思いを馳せている。

 

「あーそう…」

 

 学校から帰って来ると、おたまはDVDの山を抱えて「これを観るのじゃ」とか言い出して、ぶっ続けで数時間。夕飯の時間もテレビで観ていたが、僕の家族は「まだまだ小さいんだから好きにさせたら良いんじゃない?」と言っていた。これも洗脳されているからなのか、はたまた素で言っているのか。

 

「あんな場所で生活するのは退屈しなさそうじゃなー。お主はあにめの世界で過ごしてみたいとは思わんか?」

 

「…別に…」

 

 存在がファンタジーな君が言ったって説得力ない。そもそもこの世界がアニメみたいなもんなんだから、現在進行形で僕はアニメの世界で過ごしている。とっくにその願望は叶っているのだ。

 

「ノリが悪いぞお主ぃ!」

 

 むすっと頬を膨らませて、おたまは僕の背中をぽかぽかと叩く。

 

「だってさぁ…6、7時間ぶっ続けだったんだから、流石に疲れるって。アニメ映画5本はきつい…」

 

「お主の体力が無さすぎるだけじゃろうて」

 

「はいはい…ふぁぁ…もう子供は寝る時間だぞおたま。ほらほら、そこは僕のベッドだから、そこの敷布団で寝るんだ」

 

 僕はベッドにいたおたまを起こして、引き摺り下ろした。結構重かった。

 

「むー!最初はわらわのことちゃん付で呼んだった癖に、扱いがおざなりになってはおらんかの!?」

 

「嫌でもおざなりになりますよーっと…」

 

 おたまを敷布団の上に置き、そのまま部屋の電気を消してベッドに入り就寝した。

 

 

 目覚まし時計のアラーム音がけたたましく部屋に響く。

 

「ふぁぁぁ…」

 

 大きく欠伸をしてから、手を伸ばしてベッドの上手に置いてある時計のボタンを押してアラームを止める。

 

 まだ眠い目を擦って、眼鏡をかけるとボヤけた視界がハッキリと見える。普段通りの…?何か、違う様な気がする。色彩が鮮やかというか、奥行きはあるはずなのに平面っぽいというか、何かとにかく大きな違和感がある。

 

 異常事態が起こっている。しかし、大した問題はなかった。普通に呼吸はできるし、今こうしている様に身体は問題なく動く。

 とりあえず眠気覚ましにも顔を洗いに行こう。

 

 歩いていると、前に進んでいるはずなのに、逆に周りの風景が自分に合わせて動いているような感覚だった。

 

 洗面台の前に立って鏡で自分の顔を見る。眼鏡以外にはこれと言った特徴のない凡庸な顔だ。よしいつも通り。…いつも通り。だが、何か違う。平面だ。二次元的というべきか。輪郭もハッキリと、空間と区別する為に黒い線で区切られているようだ。

 

 だが、気にしていても特段障害が出る訳ではなかった。仕方ないからそのまま歯を磨いて、パシャパシャと顔を洗う。

 水に濡れた顔をタオルで拭き、洗面所を出た。

 

「兄ちゃんおはよ。今日はちょっと早いね」

 

 妹が現れた。妙に陰影のついた姿で、大仰に右斜上45度くらいに首を傾けながら謎の逆光を浴びて。…これシャフ度では…?

 目の前でやられると凄く鬱陶しいな…。

 

「何してんのお前…?」

 

「何って、起きて来ただけだけど?」

 

「あぁそう…いや…何でもない…おはよう…」

 

 本人には何一つとして違和感が無いようだった。何も、何一つとして。僕にとって異常性を感じるこの世界は彼女にとっては何ら普遍的なものだったらしい。

 

 ピンク色のパジャマを着ていて、先程の発言通り嘘偽りなく起き抜けである事が判断できる妹は、まだボサボサの長髪を翻し、僕の隣を通って行く。向かう先は洗面所。僕と目的は同じく洗顔に来たのだろう。

 

 妹の早苗は、黒縁眼鏡の僕とは違って赤縁の眼鏡を掛けていて、自分で言うのも何だがボケーっとした感じは少なく、目元はよく見るとキリッとしている。そこにどことなく気の強さを感じるものだ。

 実際、妹は気の強い女性で、中学校では風紀委員をやっているらしい。本人談だが、誰も自分の学年でやろうとしなかったので仕方なく立候補したそう。

 僕とは違って真面目な一面のある妹だ。だが、普段から適当な所のある父さんと母さんの血を引いているといったところか、物事を楽観的に見る節もある。

 

 …何で僕は妹についてこんな事細かく考えてるんだ…?

 

 自分自身にも異常性があることに気づく。世界がおかしいと思いきや自分自身がおかしいのではないかという可能性が僕の頭の中に浮上する。

 どう対処すべきか。いや、それ以前に対処という方法は合っているのだろうか。

 

 考えてみるが何も思いつかなかった。

 

 とりあえず、普段の日常を全うするとしよう。その中でもしかすると何か解答方法やそれによる答えが出るかも知れない。

 

 僕は自室に戻って、クローゼットを開いて制服を取り出す。凡矢理高校の男子生徒用制服だ。

 女子生徒用の制服は白を基調とはしているが、袖口が広く、襟とスカートが水色で、オレンジ色のネクタイをつけている。オレンジ色は僕らの年代の色らしい。結構特徴的な制服だった。

 しかしながら男子生徒はこれといって特徴のない制服。白のカッターシャツ、黒色のジャケット、同じく黒色のズボン。地味だ。地味すぎる。まるで女子生徒の制服を考えたついでに作られた様な代物だ。

 

 無駄な思考を挟みながら僕は制服に着替えた。傍らの敷布団に視線を向けると、おたまはまだ熟睡していた。口元から涎を垂らし鼻提灯まで出している。呑気なものだ。

 

 着替えが終わって、僕は一階の台所まで向かうと、食事をしている父さんと、今まさに朝食に手をつけようとする妹がいた。

 父さんは商社勤めのサラリーマン。出社前なので勿論の事スーツを着込んでいる。上着は椅子にかけている。最近部長に登り詰めたそうだ。だが、やはりそれでも中間管理職、まだまだ頑張って貰わないといけないと、母さんからは言われている。

 そして、僕より後に起きたはずの妹もきっちりと身嗜みを整えている。通う中学校の制服を着て、あまり似合っていないおさげに髪を結えていた。

 

 既に食卓には僕の分の朝食も並んでいる。

 今日の朝食はご飯に味噌汁、小皿に漬物が2、3切れ。そしてハムエッグに、付け合わせのグリーンサラダ。ハムエッグには塩胡椒、サラダにはレモン風味のオリーブオイルドレッシングがかかっている。しっかりとした量で、和洋折衷の内容だった。

 

 普段は気の抜けている母だが、やはり専業主婦としては2人の子供を十数年育てた歴戦の猛者といったところか、毎日毎日、僕たちよりも先に起きて準備をしていた。

 

「さっさと食べて行っちゃいなさいよー」

 

「へーい」

 

 いつもの朝のやり取りを交わす。そのいつもと見えている世界は違うはずだがそこに違和感は無い。

 言われた通りにさっさと食べてしまって、学校に行こう。

 

 いや長ぇよ!まだ家の中だけだぞ!?

 

 …ん?僕は何にツッコんだんだ?

 

 

 感じは違ったが、普段通りの経路を行けば学校に辿り着く事ができた。できたのだが…

 

「な、なんか…違う…」

 

 見慣れていたコンクリート造りの、凡矢理高校という名で体を表現したような一見して凡庸な校舎はそこには無かった。

 

 その代わりに、南国にでも生えていそうなヤシの木や校舎入り口の道までに沿って作られた植え込み、異様に水飛沫の飛ぶデカい噴水があったり、舗装された地面に模様があったりとエキセントリックな…まるで自称有名建築家が自我を出し調子に乗って描いたコンセプトのよく分からない意味深に意味のない設計図を教育委員会が「いやぁこれは素晴らしい」などと実のところ大してコンセプトなどに理解を示していない靄がかってぼんやりとした感想を出して周りも「まぁ良いんじゃない」とそのまま通してしまい、委任された建築会社が設計図そのままに鵜呑みして欠陥性や周囲の景観その他諸々無視して建てられた建造物のようなものがあった。

 

 こんな「どう?お洒落でしょう?」とでも言いたげな校舎だったろうか。我が凡矢理高校とは。

 だが、校門を確認するとどうにもここが凡矢理高校らしい。

 

 恐る恐る校舎内へと入り、教室へと向かう。いつも歩いているはずの廊下はガラス窓の回廊といった感じで、天井もガラス張りで陽の光が差し込んでいる。何だこの変な廊下。

 教室の場所自体はどうも同じらしかったが、内装は違う。淡い感じの色彩で、生徒机と教卓が無ければ、お洒落なカフェの一室と言っても一瞬信じるくらいだった。

 

 …どうも朝から頭の中がうるさい。何でもかんでも事細かく説明してしまっている気が…

 

 僕は座席に着くと頭を抱えて突っ伏した。

 朝から感じる違和に気を取られない訳はなかった。現状の打破をやるにしても自分の内面まで侵蝕しているのなら、解決する術について手詰まりだったのだ。この凡矢理高校に着いてから頭の中の喧しさは加速している。

 

 そう、今この時も。

 

「おっす〜悠也、今日も無駄に早いね〜」

 

 彼─舞子集は僕の友人である。眼鏡に金髪、減らず口。その飄々とした雰囲気と、それに違わぬ彼の軽薄さは少々いただけない部分もあるが、持ち前の明るさとコミュニケーション能力で学校内外問わず友人や知り合いが多い。彼の明るさがあるからこそ、僕という人間も一条たちの輪に入れてもらえているのかも知れない。

 

 …僕は下唇を噛んで声を押し殺す。物凄くツッコみたい。「んなこと知っとるわ!」と声に出してツッコみたい。

 

「どうした?」

 

「んにゃ、何でも。おはひょ…」

 

 疲れる。いや、体力的なものではなくて、精神的な方面で。

 

 ここで疑念が浮かぶ。まさか、ニセコイのメインキャラが現れる度にキャラ説明のようなモノローグが頭の中に浮かぶのではないか、と。

 

 ─その心配は…残念ながら的中していた。彼ら彼女らが一挙一動する度に頭の中を駆け巡る妙に説明くさいモノローグ、しかも困ったことに女性陣の背景にはそれぞれのイメージカラーに合った謎の煌めきが発生するわ、下や上から舐め回すゆっくりとしたカメラワーク、そして斜め45度のシャフ度。

 

 何故メタ的な映像効果を僕が認識できているのか全く謎だが、陰影のハッキリついて現実的な描写など全て無視した新房昭之ないしシャフト演出をこうも生身に浴びせられると鬱陶しいこと事欠かない。

 一番鬱陶しいのが市川崑に影響を受けたのであろう喋る人物ごとにカメラが切り替わる独特のカメラワークだろうか。パッパパッパ目まぐるしい。

 

 …し、しんどい!これを少なくとも今日一日中は耐えないといけないとはなんてこった!まず1日で終わるのかこれは。また次の日もこうだったら精神が壊れるかも知れない。キツい。シャフトの過剰摂取はやるものではない。

 

 まてよ、という事はこの世界、アニメの世界…という事なのか?なんで?これ書いてるやつ、さして文章力なんてないのに何してんの…?

 ん?書いてるやつ?文章力?何言ってるんだ僕は。

 

 疲れたのか、何だか一条たちいつものメンバー以外の生徒は押し並べてその他大勢みたく一括りにされて人型のシルエットに…何だか実際にそうなって見えるぞ。何だこれ…。

 

「どうしたんだよ悠也?体調悪いのか?」

 

 頭を抱える僕を見かねて声をかけたのは一条だった。彼は間の抜けた表情をしているが、内実は情に厚く齢16でヤクザ達を纏めている次代の集英組組長だった。要はヤクザの息子である。

 本人は普通の人間と自身のことを評価しているようだが、そんな事はない。特筆すべきはそのラブコメ体質であろう。

 彼は小野寺小咲の一世一代の勇気は聞き逃すわ橘万里花という誰がみても美人な彼女を「まったくやれやれ」などと話半分で相手にしないような対応をして、鈍感主人公まっしぐらである。

 

 彼に近づかれて顔を赤らめる鶫誠士郎の好意も気付かない。そんな彼女は僕の思い人であって、僕は普段から目で追っているものの全く声をかけれずに、ぬあああ!やめろ!やめろ!くそっ!

 

「ぐおおお…」

 

「おい、本当に大丈夫か?!あんまり酷いんだったら保健室に」

 

「いや大丈夫まじで…ちょっと考え事してるだけだからさ!大丈夫!」

 

「そ、そうか?」

 

 あぁ…どうなるんだこれ…。

 

 

 何とかかんとか午前の授業を耐えて、少しでも脳内情報を減らす為に屋上で昼食を食べている。昼食は母さんの作った弁当だった。内容は、どうでもいいから!食わせろ!ボケ!

 

「しんどい」

 

 なるべく思考を続けないようにしないといけない。その上で頭を動かして行動をするという矛盾。一体何なのか。

 

「何だかお疲れの様じゃの」

 

「うおっ!?っておたまか」

 

 彼女は─うるっせぇ!黙れ!

 

 少し前から、脳内会話すれば何とか長いモノローグを掻き消すことができると気付いた。これで気持ちを何とか保てている。気分はうるさい奴と話し込んでいる気分。もしかしたら頭の中にもう1人いるんじゃないだろうか。いない。そうかいないか。

 あれ?

 

 話を戻すと、

 

 後ろから突然現れたのはおたま。僕の家に居候している妖狐だ。世界観から外れているがそこは気にしないようにした。

 

「…まさか今の状況っておたまが?」

 

「その通りじゃ。昨日あにめを観たじゃろ?それでお主にもあにめの世界を体感させてやろうと思っての」

 

「もっと観たかったのか?」

 

「…正直…、じゃがそれとこれとは、あまり、少ししか関係おらんぞ!」

 

「してるじゃん!?」

 

「まぁまぁ、とにかく、お主の認識をいじって、普段見ている世界の感じ方を変えてみたということじゃ」

 

「じゃあカメラワークがうるさいことも、頭の中のモノローグがうるさかったことも?」

 

「そう…って、ものろーぐ?何じゃそれ、知らん…怖…」

 

 妙に意味ありげに陰影の濃くなったおたまは雲の流れ行くよく晴れた青空を背景にそう言った。こんなに空は目立っていただろうか。

 

 え?モノローグ関係ないの?え?

 

「…で、これっていつ終わるんだ」

 

「明日までじゃな」

 

 今日一日で済んだことを喜ぶべきなのか、まだまだ残り数時間はこの感覚を味わわされるということなのか。

 

 …こんな状況我慢してられるかっての。そう我慢ならない。もしかしたら午後くらいには終わるんじゃないかという希望すら絶たれた。世界が灰色に染まる。

 

 言い方を変えると…

 

 1カメ、右斜めを向く。2カメ、正面を向く。3カメ左斜めを向く。4カメ、再び右斜めを向く。

 

「絶望した!碌にアニメ世界を表現し切れていないことに絶望した!」

 

 冗談は眼鏡だけにしろ!

 

 …これ何にツッコんだんだ僕は。

 

「急に何じゃお主。まぁ、今日一日、楽しむと良いぞ」

 

 そう言っておたまはフッとその場から消えた。

 

 楽しめるかアホ!

 

 

 進学校とかだったら、午後からの授業は7時間目まであるらしいが、幸い凡矢理高校は6時間目で終了するのが基本だった。

 そう考えると良く午前の授業を耐えることができたものだ。耐えただけで授業の内容が右から左に抜けてしまっていることに目を瞑れば。

 

 そろそろ昼休みが終了し、5時間目が始まる頃だった。

 

 モノローグ鬱陶しいのは本当に何なんだよ。

 

「はぁ…」

 

「朝にも言ったけど、本当に大丈夫か?俺たち友達なんだがら、1人で抱え込まずに相談してみろよ」

 

 一条は優しく僕に話しかけてくれた。その優しさは感謝したい。したいがお前の一挙一動ごとにカメラワークが変わったりどこからともなくSEが鳴るんだよ。どうすりゃいいんだよ。

 

「…言うに憚られるというか、言ったってしょうがないというか」

 

「まぁまぁ、良いじゃねぇか。皆んなには秘密にするからさ、とりあえず吐き出してみろよ。そっちの方がちょっとくらいはスッキリするかもだぜ?」

 

 純粋な視線を一条は僕に向かって向けてくる。その優しさが痛い。

 おい、一条の目にキラキラとしたエフェクトをかけるな。純粋ってそう言う意味じゃねぇよ。

 

「…一応、言ってみるぞ?」

 

「おう」

 

「本当に言うぞ?」

 

「ああ」

 

「馬鹿にしたりしない?」

 

「だから大丈夫だって」

 

 ここもカメラワークの移動があって鬱陶しかった。

 

「実は…朝からアニメみたいに見えるんだよ。世界全体が…」

 

「はい?」

 

 画面いっぱいにクエスチョンマークが浮かぶ。画面…?

 

「ほら〜、言ったってしょうがないじゃん」

 

「確かに…悪いけど理解できねぇわ…。原因は分かってるのか?頭打ったとか?」

 

「実質、そんな感じかなぁ」

 

「何かできることはないか?」

 

「嫌に聞こえるかもしんないけど、あんまり喋りかけないで貰えると助かる。今もカメラワークが切り替わりまくってるし脳内のモノローグ抑えるので精一杯なんだわ」

 

「じゃあ尚更今からでも早退した方が良いんじゃねぇか…?」

 

「成績大して良くねぇからせめて皆勤賞取りたいんだよ…!」

 

 こうは言うが、僕は嘘をついている。気恥ずかしさと多少の見栄で言った出まかせだ。実のところ僕はニセコイのメインキャラ達が目の前で生き生きと動いている姿を目に焼き付けたいだけ、ただそれだけのために学校に来ている。主に鶫誠士、ぬあああ!

 

 僕のあまり考えないようにしていることが赤裸々に…。

 

「ま、兎にも角にも、今日はちょっとそっとしておいてくれると嬉しい。皆んなにも適当に伝えといてくれるか」

 

「そうか…分かった。じゃあ…えーと、良くなるといいな(?)」

 

「おう(?)」

 

 最終的に2人ともよく分からなくなって話は終わった。

 

 一条は僕の場所を離れていって、自席に着席する。

 僕は教室の端っこの方の席だったから、教室全体を見回せる。だから、誰がどこにいるのか、誰がどう行動しているのかよく分かった。普段なら皆んなの会話やらを側から聞くことができて退屈しないが、今はなかなか鬱陶しい。

 

 無論、ニセコイのヒロイン達も見える。今は何故かキラキラしたオーラを纏っているように見えるし、いつにも増して美人に見える。作画に気合いが入っている。作画って何。

 

 …あんな美人達に惚れられてる一条が羨ましい。

 原作を知っていることもあって、僕は10年前のことも知っている。でも、知らない。僕は何も関係ない。僕はこの世界に紛れ込んだ異分子で、きっと、いや絶対に僕が居なくとも円滑に彼ら彼女らの物語は進んでいくことだろう。

 鶫誠士郎も僕のことは眼中にないだろう。僕がどれだけ視線で追っても彼女の視線の先にあるのは結局一条楽だった。

 

 僕は何もできない。友人達に甘えている。僕は彼女を見ているだけだ。

 

 …考えないようにしていたことをつらつら頭の中に羅列しよってからにお前は。

 

 うるさい。

 

「え?」

 

 頭の中で声が響く。これは…僕か?いや、僕しかいない。

 

 良い加減自由にさせろ。お前も自由にしろ。

 

 は?

 

 僕は僕だ。でも(おまえ)は僕じゃない。(おまえ)が勝手にやってるだけだろ。

 

 何を言って…

 

 僕の席を取ってまでやりたかった事がこれか?

 

 何、を…

 

 お前はどこかで線を引いている。

 

 …

 

 お前は怖がってる。

 

 …

 

 今を壊すのが怖いんだろう。

 

 …

 

 全部なぁなぁにして、過度に関わらない。

 

 …

 

 中学から友達だなんて思ってる癖に、一条楽も舞子集のことも頑なに名前で呼ばない。

 

 …

 

 本当は友達だなんて思ってないんじゃないか?

 

 …

 

 皆んなはただの漫画のキャラクターで、自分は関係ないと?

 

 …

 

 これが、ここが現実だろ。

 

 …

 

 側から見てるだけか。

 

 …

 

 折角僕になったんだから、動けよ。自分で。

 

 …

 

 何とか言え。

 

 …

 

 動け。

 

 …

 

 動け。ほら動け。鶫誠士郎が誰かに取られるぞ。

 

 …

 

 動け。僕が勝手にして良いと言っているんだ。

 

 …

 

 動け。

 

 …

 

動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け

 

 動け!!!!!!!!!!

 

「─うわあぁぁぁぁぁっ!!!???」

 

 頭が一つの言葉で埋め尽くされ、その恐怖に僕は絶叫した。

 そして─ベッドで、勢い良く上体を起こす。

 

 ─目を覚ました。寝てたのか僕は…。夢…?

 

 おたまの寝息が聞こえる。

 ボヤけた視界を、眼鏡をかける事で矯正、辺りを見回した。何もおかしくない。いつも通りの景色。アニメ調でも何でもない。

 時計を見ると、時刻は朝5時。まだ朝日の昇り切っておらず、部屋は薄暗かった。

 

 本当に‥夢だったのか?

 

 判断つかない。夢というにはあまりにも鮮明な体験だった。僕…僕は僕だ。でも…他に誰か居たのか?僕が転生したから…僕がその誰かの立場を…。

 

 冷や汗が垂れる。あまり考えたくない。

 

「むにゃ…むにゃ…?おー、起きたか悠也…どうじゃった?夢の中を弄らせてもらったのじゃ。あにめの世界は楽しめたかの」

 

「…おたまが…見せたのか?」

 

「そうじゃ…ふ、ふぁぁぁ…む?まだ早朝ではないか…わらわは寝させてもらうぞ…」

 

 大きな欠伸を立てたおたまは、布団にくるまって再び寝入った。この部屋で起きているのは僕だけになった。

 おたまが何か悪気があってやったことの様には思えなかった。ただただ伝えられた言葉以上の意味は無いと思えた。

 なら、あれは何だったのだろう。おたまが僕の夢に、意識に触れたから、それに呼応して別の何かが出たのか…?

 

 ただの推察でしかない。推察しかできない。僕は冴えた頭のせいで寝ることもできず、どうすることも無いまま無為にベッドの上で時間を過ごした。

 

 『動け』

 

 夢の中で響いた頭の声が反芻する。

 

 僕は…僕は…。

 

 脳裏に浮かぶのは友人達の後ろ姿。横顔ではない。

 

 僕はまだ、隣に立てていなかった。

 

 僕は、多分、僕の中に居た誰かの為にも、一歩を踏み出さないといけなかった。そんな勇気の出し方を、『誰か』に教えて欲しかった。

 

 僕は、自分自身が嫌で嫌でしょうがなかった。

 

 

 

 

 

 




はい。おしまい。何だったんだこれ。

ここで出てきた『誰か』は今後出てきたりしません。ニセコイと関係なくなっちゃうし。
まぁ、土台作りは何となく出来てきたような気がします。
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