ニセコイ・モウソウ 作:ぬめり
前回のことは気にしないで下さい。
誰か他に2026年にニセコイの二次創作をしている人はいますか?
「この前はありがとな、動物達の餌やりやってくれて。大変だったろ?」
学校で一条に言われたことは、確か、おたまが僕の家に居候することになった時のことだった。
「あれか。一条が予め餌の下処理してくれてたからそこまで苦じゃなかったよ。ワニの餌やりはなかなか怖かったが」
「そうか?でも、動物達に嫌われたり、襲われたりとかしなかったか?」
「うーん…別にんなことなかったけどな。普通だったぞ。餌やったら、勢い良く食い付くくらいで」
「…じゃあ、特段男が嫌いって訳でもねぇのか…」
一条は怪訝な顔をして何か考え込む。
「どうしたんだよ。まさか嫌われてるのか?」
「まぁな…異常な程に」
「どんな感じで?」
原作を読んでいて、一条楽という人間がどれだけここで飼育されてる動物達に嫌われていたのかは知っていた。
彼が動物達と触れ合う度、叩かれ、噛まれ、突かれ、啄まれ、ありとあらゆる攻撃を受けているというのは。だが、面白半分で知らないフリをして、彼の口から聞いてみたかった。
「それは、んー、言うよりやって見せた方が早ぇんだよなぁ。まだ昼休みの予鈴まで時間あるし、来てみろよ」
マジか。アレが生で見れるのか。
この流れに乗らない手は無かった。僕は一条について行った。
「ほぉら皆んなー、俺が来たぞー!」
一条が近付くと、動物達は彼を明確な『敵』として全力を持ってしてこの場から排除しようとした。
威嚇として羽を広げる孔雀、呼応して謎の鳥も絶叫が如く鳴き声を上げ、犬や猫もペットではなく肉食獣の一面を見せて唸る。こういった風に、一条は動物達の敵として認識されているようだった。
「─ほらな?」
「どんだけやねん」
このまま一条が襲われ続ける訳にもいかなかったので一旦その場から離れて話し合った。
「なぁ、マジでどうしてこんなに嫌われてると思う?」
「うーん?」
確かにこの嫌われ方は異常だった。一種のギャグとして切り捨てるのも可能だが、一応友人として全く見過ごすのも心苦しい気がして、僕は考えてみた。
一条が何か普通の人と違うことはあるだろうか。
若干整ってはいるがのほほんとした顔。内山昂輝に似てる声。普通の日本人っぽい髪色。日本人の肌の色。中肉中背。おそらく普通の運動神経。臭くない体臭。
思いついたものを適当に頭の中で並べてみたが、変な所はない。
何が変だろうか。人のことについて何が変と考えるのが変な気もするが、変なところを探そう。
何か…そういえばこの人ヤクザの息子だったな。
「ヤクザ…?」
「俺がヤクザの息子だからってそんな事動物達に分かる訳ねぇだろ…」
「えー?でも一条が人と違うところってそこくらいしかねぇだろ」
「はぁ?もっとあるだろ!あれだよ…その…あれ?もしかして俺ってあんまり取り柄ないのか?」
「…ドンマイ」
哀れな彼に僕はポンと肩を叩いて慰めた。
「『ドンマイ…』じゃねぇよ!そこは認めてくれるなよ!?」
「ははは」
ただ一旦呼吸を挟む。
気づいたのはその時だった。
「すんすん…?」
おそらくそれは一条の体臭か、彼の着ている服に染み付いている匂いだった。ほんの少し焦げ臭い匂い。大して気になる程ではないし、臭くもないので気にしていなかった匂いだ。
「何か臭うのか?」
「いや、一条の匂いが…」
「おいおい、野郎の匂いとか気にするもんじゃねぇぞ?え…臭いのか…俺…?」
一条は自身の服を匂い始めた。
「いやいや、臭いって訳じゃないんだよ、ただほら、お前ってちょっとだけ焦げ臭い匂いがあるんだよ」
「焦げ臭い…あー…多分、ウチのヤツらが銃持ってるから、それにちょっと前まで千棘の所とドンパチやってたらしいし、そのせいで硝煙の匂いが服に付いちまったんだろうなぁ。気になるか?」
「お前ん家のナチュラル銃刀法違反は置いとくとして…いや気にはならないかな。あんまり匂うんだったら、桐崎さんにも言われてそうだし」
「それもそうか」
「でも…動物達って嗅覚強いだろ?もしかしたらそれで嫌われてるとか」
「マジ?」
「可能性はある」
実験が始まった。
先ず、僕が一条のブラザーを羽織って動物達に近付いてみることにした。一条とは体形に差がなかったのでピッタリサイズが合っていた。あんまりすんなりと着られたものだから逆に変な感じがする。
「ど、どうだ…って、ぶばほっ!?痛だだだだ」
僕に向かって動物達が全力で攻撃してくる。主にブレザー部分を集中的に。
あんまり攻撃されると僕の命が危ないし、ついでに一条のブレザーがただのボロ切れになってしまからさっさと退散した。
「いやーとんでもない嫌われようだったわ、一条」
「我ながらなんて酷い…」
次は一条の番だった。流石に服全体を貸す訳にはいかなかったから、僕もブレザーだけ貸した。これでもそこそこはカバーできて…ない…めちゃくちゃ攻撃されてる…。しかも僕のブレザーまで攻撃されてるし。
「─ダメだったな…」
「実験の結果、マージでお前だけが特別嫌われてる可能性が強まってしまったと」
「悲しい事言うなよ…」
一条の顔に影が落とされて、若干薄ら笑いをしているものの、その瞳には涙が浮かんでいた。
「…でも、あれだ。霊長には好かれるかもな。あの…黒くて、怪力で、ドラミングが特徴的な、動物園によくいるのはニシローランドの、ヒト科ゴリラ属の、学名がゴリラゴリラゴリラの」
「って、ゴリラじゃねぇか!?遠回しかと思いきや結局言ってるし!」
「赤いリボンとか付いてそうだよな」
「…?あ、ぶふっ…あっはははは!そうだな!そんでもって金髪碧眼でギャングの娘で…」
「あははは、そうかもなぁ、ははは…は、は…?」
横目に映ったのは赤いリボンを付けた金髪碧眼のギャングの娘だった。
「お、おい、一条っ!」
「ははは…どうしたんだよ悠也…あ…」
「うふふっ」
彼女は屈託のない笑顔で立っている。だが、その細めた瞳の奥には輝きは無く、ただ真っ暗な怒りがあった。なんて良いタイミングで立ち寄ってくれたのだろうか。涙が出そうだ。
「ふぅ…だーれがゴリラだお前らぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「「ほぎゃぁぁぁぁ!!!!????」」
青空が…綺麗だったなぁ…。
※
まだ昼休みの時のダメージが残っているが、ギャグだったので(?)すぐに回復した。
ホームルームも終わって、舞子から何か誘われている事もやり残した事も無かったから教室を出たのだが、筆箱を机の上に置きっ放しになっていたことに気付いて出戻った。
「こほっ、こほっ!」
咳き込む声が聞こえる。
鶫さんが黒板消しを窓の外に向かってはたいていた。しかし、風向きもあってチョークの粉は鶫さんの方向にかかって、それを吸い込んだ彼女はむせていた。あまりにも前時代的な行動だった。
「鶫さん何やってんの?」
「こほっ…今日は掃除当番でな、黒板をキレイにしなくてはいけないのだが…私はどうにもこの黒板消しをはたくのが苦手でな…」
「そんなことしなくても、クリーナー使ったら」
「クリーナー?どこにあるのだ?」
「えっ?ほら、そこの…」
僕は教卓付近に置いてある、コンセントに繋がった緑色の箱を指差した。
「あの箱はそういうものだったのか!?てっきり、有事のための自爆装置かと…」
「違うわい!?学校をどんだけ戦々恐々とした場所だと思ってんのさ…まぁ良いや、ちょっと貸して」
鶫さんが手に持っていた黒板消しを手に取って、僕はクリーナーを使ってみせた。スイッチを入れて、クリーナー上部に黒板消しを擦り付けると、黒板消しに付着していたチョークの粉が吸い込まれ、綺麗になる。
相変わらず機会音がうるさい。だが、こういうのも学校の醍醐味だったりするような気もする。
「すごいな!あっという間に新品のようだ!」
綺麗になった黒板消しの面を見せると、鶫さんは目を輝かせた。そんな物珍しいものか?これ?
「もしかしなくても黒板消しずっとはたいてた?」
「あぁ。…こんな風に普通に学校へ通うのは初めてだからな…あまり勝手が分からないところもあるのだ」
「そっか…他に学校で分からないことがあったら、全然聞いてよ。僕ぁ、一応とも…知り合いではあるし。ほら、一条とか他の皆んなにもさ」
「…そうだな。その時は、よろしく頼む」
鶫さんは優しく微笑んでいた。ほんっと、綺麗だよなぁこの人。ん?顔にチョークがついてるな。ポケットにティッシュあったかな。
ズボンのポケットをまさぐってみたが無かった。おそらくどこかで落としたか。
「どうかしたのか?」
「鶫さんの顔にチョークついてて、あー、これ、ハンカチ」
気づいたら手前、何かしてあげないといけない気がして、僕はハンカチを彼女に手渡した。
「でも、良いのか?これは…」
「全然。どうせ帰ったら洗うし。あ…いや汚いからこれ以上汚れようが構わないとかそういう意味じゃなくて。汗とか拭いたりしてないから…!」
「ふふっ…誰もそこまで言っていないぞ。だが、そう言うならありがたく使わせて貰うぞ、佐藤悠也」
僕が渡したハンカチを使って、彼女は顔のチョークの粉を拭い取った。その後、何故か鶫さんは自身のスーツのポケットに僕のハンカチをしまった。
「?」
「折角使わせて使わせて貰ったのだから、こちらで洗うぞ。また明日、教室で会ったら返そう」
「そう?ありがとね」
「貴様が礼を言ってどうする…」
※
時間が進んで、夜。
自宅でおたまと一緒にリビングで映画のロードショーをテレビで観ていた。僕はソファに座っていたのだが、おたまは隣に座らず、僕の膝の上に乗っている。
「ちょっと重い…」
「おい!れでぃに対して失礼じゃぞ!」
「へいへい…で、こういうの平気なのか?」
映画の内容はギャング映画だった。アクション要素の強い大衆向けのものだったが、年端の行かない少女には少々向かない、血生臭い描写が多かった。
「どうせ作りモノじゃろう?それより、カッコいいではないか、銃をバンバン撃って敵を薙ぎ倒していくのは!ほれほれ観てみろ!おお!りあるじゃのー」
おたまはテレビ画面の銃撃戦にのめり込んでいた。子供っぽい。そういえばおたまって何歳なのだろうか。言葉遣いは古風なところは古風だし、でも時々現代っ子ぽいような。
あの稲荷神社が建てられた時からずっとあそこに居たのだろうか?それとも最近?んー…分からん。
「…お主、ほんの少しだけ、こちら側に近付いてきとるの」
「はい?別に妖狐とかになった覚えは無いんだけど…」
「そういう意味では無い。こちら側というのは、この世界の住人という意味じゃ」
「???」
「むぅ、理解力の無い奴じゃのー。この映画に出てくる敵役くらい理解力が無い」
丁度テレビに映っていたのは丸ハゲにちょび髭で頭が悪そうな奴だった。捕まったヒロインを見てグヘグヘと汚い笑い声を出していた。
…なんて失礼なやつだこののじゃロリ!
膝に乗っているおたまの身体を掴んで揺さぶってやった。
「わ、わ、わ!映画が良く見えんではないかー!」
「制裁だこんにゃろー」
…こうしていると、年の離れた兄妹が出来たような気がする。実の妹の方はというと、さして歳が離れていないのもあって戯れるなんてことは少なかった。最近は思春期真っ只中で(それは自分もそうだが)、余計に。
あたふたしている姿を見ると、なかなか可愛げがあって…
「おい!ちょっと見逃してしまったではないか!祟るぞお主ぃ!」
おー、今のちょっと無かったことにしてくれませんか。
「…全く…あ、この銃撃戦をしている女子、お主の想い人に似とらんかの」
「へ?」
テレビを見てみると、凛々しい女性が敵のアジトを襲撃し、銃乱射で敵を倒していく。その凛々しい女性は、どことなく鶫さんに似ているような…
「…おたま、僕の好きな人知ってんの…?」
「知っておるぞ。神様なのだから当然じゃろうて。お主が懸想しておるのはつぐっ!?」
おたまの口を無理矢理抑えた。
「むーっ!?むーっ!?」
黙って映画を観ておきなさい…。
ゲームのストーリーを元ネタにしました。オリジナルも勝手に入れてますけどね…。
因みに一条楽が動物に嫌われてる理由、知ってる人いますか…?気になるので知ってたら教えてくださいませ…。