ニセコイ・モウソウ   作:ぬめり

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小説の書き方なんてよく分からずにやっとります。
お気に入りが100件を超えました。嬉しいですな。これからもどうかよろしくお願い申し上げます。見捨てないで…!


第十四話

 日曜日、今日は舞子からの誘いがあってカラオケに行くことになっていた。

 舞子伝いの友人が数人と一条で、男連中だけのカラオケだ。舞子曰く「女子抜きで気楽にパーっとやろう」ということらしい。

 

「暇じゃのー」

 

 予定のあった僕とは対照的に、おたまは僕のベッドを占領して、そうぼやいていた。

 

「良いよなー妖怪は」

 

「妖怪ではない!妖狐じゃ!」

 

「どっちもあんまり変わらんでしょーが」

 

「変わるわ!良いか、妖狐というのはな、やがて神に等しき仙狐に至る有り難〜い存在なのじゃ。わらわのババ様なんて、九尾なんじゃぞ九尾!偉いんじゃぞ!それにの、わらわの『おたま』という名前はババ様から貰ったそれはそれは貴い名なのじゃ!」

 

「ふーん」

 

 熱く語るおたま。僕はあまり興味がなかった。

 

「『ふーん』じゃないわい!一蹴するでないわ!わらわはいつか仙狐へ昇華するため人々の願いを─」

 

 面倒くさそうな設定を右から左に受け流して外出用の私服を適当に選んでいると、

 

「…まったく。ところで、お主、何か願い事は無いか?」

 

 おたまが僕に向かってそう尋ねてきた。

 

「藪から棒だな…うーん、別に、至急何かあるってこともないかな」

 

「まぁまぁ、とりあえず頭に浮かんでみたことでも良い。最近は社からの願いも受信が無い故、暇なのじゃ。人の願いを叶えるという感覚を維持するためにも、ちょっと肩慣らしがてらにの。何かないか?」

 

「そう言われてもなぁ…てか、受信て何?Wi-Fi?」

 

「わいふぁい、とやらはよく知らんが、想いの籠った願いは頭に響いてくるのじゃ、ビビビっと」

 

「へー」

 

「で、何かないかの?」

 

「うぅむ…好きな人に会いたい…なんて…、ははは」

 

「この期に及んでハッキリせん奴じゃのぉ、お主。まぁ良い。その願い叶えてしんぜよう」

 

「え、いや冗談で…?」

 

 おたまは『叶えてしんぜよう』と言ってから特に何もすることなくしていた。願いを叶えると言っていたのだから当然何かお呪い的な行動をすると思っていたが、どうしたのだろう。

 

「…?なんか無いの?」

 

「あぁ、あの程度の願いじゃから、もう始まっとるじゃろうな」

 

「始まっとる…と言われましても」

 

「気にせず一日を過ごせ」

 

「はぁ…?」

 

 なんだか気になるが、そろそろ家を出ないと集合時間に遅れる頃だったので、さっと着替えてしまった。

 

 

「イェーイ!盛り上がって行こーぜ!!」

 

 カラオケが始まっていきなりテンションの高い舞子。

 僕はといえばだが、一条以外の舞子の友人とも一応同級生ではあるはずだが、あまり話したことがなかったので若干の気まずさがあった。

 

「歌う前にトイレ行ってくっから、先始めててくれ。ついでに飲み物も取ってくるからよ」

 

 そう言って一条は部屋を出てしまった。部屋の中の友人がマイナス、気まずさがプラスされる。

 飲み物を取ってきてくれるのは嬉しいが、僕の中の淋しさを増やしてくれるのはあんまりしないでもらえたら嬉しかった。

 

「俺、歌いま〜す」

 

 早速、舞子の友人の1人が選曲をして歌い始める。曲は一昔前のロックバンドのヒットナンバーだった。

 舞子や他の友人は賑やかしとして合いの手を入れたりしている。僕もとりあえず部屋に備え付けされていたタンバリンをシャンシャンと適当に叩いている。

 あんまり話したことのない人に対して馴れ馴れしくノっていいものか。やっぱり気まずい…。

 

「なぁなぁ、悠也」

 

 曲がそろそろ終盤に向かう中、舞子が話しかけてきた。

 

「…どうした?」

 

「もしかしてさ、ちょっと緊張してる?」

 

 図星だった。態度に現れてしまっていただろうか。

 

「…実は…」

 

「へぇ〜…あ、はいはーい!次、悠也が歌いまーっす!」

 

「は?!いやちょっ」

 

「まぁまぁ良いじゃん」

 

「曲もまだ選んでないし…」

 

「ポチッとな」

 

「あっ」

 

 勝手に舞子はリモコンで選曲をしてしまった。画面に表示される曲。耳にしたことはあるがしっかりと聴いたことはない、最近流行りのアイドルグループの曲だった。

 

「ほいほい、マイク持って…さぁ張り切ってどうぞー!」

 

 マイクを握らされて画面横に立たされる僕。

 

「ははは、がんばれー」

 

「いけいけー」

 

 舞子の友人達にも歌うことを煽られる。引くに引けなくなってしまった。

 前奏が終わって、画面を見ると音程バーと歌詞が表示される。舞子の奴、勝手に採点モードでやりやがったな。

 

 …南無三、やってやるぞ!どうなっても知らんからな!

 

 大きく息を吸って、僕は全力で腹から声を出す。やるからにはできるだけ盛り上げてやるわ!

 

「アイウォンチュー!!!!」

 

「「「アイウォンチュー!!!!」」」

 

 合いの手が聞こえる。ノッてくれる嬉しさにテンションが上がった。

 

「アイニーヂュー!!!!」

 

「「「アイニーヂュー!!!」」」

 

「あぁたぁまーぁぁあ!のぅぉぉ!なぁぁあくぁぁあ─」

 

 ─もうやたらめったらに歌って、気付いたら曲は終わっていた。終わる頃には解放感と清々しさがあった。息も絶え絶えに、秋だというのに汗すら出ていた。

 

「…グッジョブ悠也…!」

 

 汗だくの舞子がグッドサインを僕に出す。無駄にキリッとした表情でちょっとムカつくし、お前は座って合いの手出してただけだろうが、とツッコミをしたかったが、そんなことより楽しかった。

 ちなみに採点結果は加点含めて84点だった。高いのか、採点基準が甘いのか。

 

 こういう時に飲み物をカーッと飲んだらスッキリして…って、あれ?飲み物が無い。

 あ…一条の奴、戻ってきてないじゃん…。

 

 

 その後、僕に続いて歌った人が歌の中盤に差し掛かるくらいに、一条は戻ってきた。僕の喉はカラカラだった。

 戻ってきた一条の手元には、借りてきたのであろうお盆に乗ったいくつかのコップと、水やジュースのピッチャーがある。

 

「結構盛り上がってるじゃねぇか。すまねぇな、ちょっと遅れちまった」

 

「一条遅かったな。うんこか?」

 

「うん…って…大きい方と言いなさい大きい方と。でも、まーそんな感じ…だな」

 

「ふーん…?」

 

 含みのある言い方が気になったが、そんなことより喉の渇きを潤したかったから早速コップに水を注いでがぶ飲みした。うまい。

 

「楽おっかえり〜。帰ってきたのが遅れた罰として、お主には二連続で歌ってもらおうかーふははは」

 

 横から舞子がふざけながら寄ってきた。相変わらず憎たらしい表情をしている。

 

「はぁ?ったく…ま、仕方ねぇ、十八番の演歌いかせてもらうぜ!」

 

 一条は舞子のおふざけに対して案外すんなりと了承した。もっと抵抗するものだと思っていたのだが。

 

 選曲がされて、ちゃららら〜と古風な歌謡曲の伴奏が流れる。一条は大仰に息を吸い込んで─

 

 ─なかなか、いや、相当上手かった。抑揚のついて、感情の籠った歌声、プロ並みにこぶしの効いたアレンジ。上手すぎて、波の打ち付ける断崖で熱唱する情景すら浮かんでしまった。

 無駄に歌の表現としてコロコロ変わる表情に若干むかっ腹が立たないこともなかったし、一回波にさらわれろと思ったが、自然と拍手してしまった。

 

「へへっ」

 

 一条は自慢げに鼻をこする。しかしそうしていても文句が出ないくらいに歌声は説得力のあるものだった。

 

 

 暫く歌って、歌い疲れた後はカラオケのフードサービスで軽食を頼んだ。

 それを挟みながら談笑が始まる。主に恋愛事情や一条の桐崎さんへの愚痴が多かった。

 

「やっぱ桐崎さんて大食いなんだなー」

 

「でもよく食べる子って可愛じゃねぇか」

 

「やっぱ羨ましいなー、俺も彼女欲しー!」

 

 一条の話を聞いて、舞子やその友人達は口々に感想を出す。桐崎さんへの愚痴だった筈が、いつの間にか桐崎さんと付き合える一条が羨ましいなんて話にすり替わっていった。

 

「いやいや、大変なんだってマジで」

 

 困り顔で一条は言う。

 

 話が続いて、段々と「あんな美人と一緒にいるんだから許してやれよ!」とか「そんな風に言うなら桐崎さんくれよ!」とか男性陣の羨みは恨み節に変わっていった。酒でも飲んでしまったのかという勢いだ。

 彼女のいない男性陣の勢いに引いていっている一条の顔が面白いので僕はジュースを飲みながら優雅にその様子を愉しんでいた。ふはは。

 

 ブーッブーッ。

 

 一条の様子を手助けすることなく眺めていたら、服のポケットに入れていたケータイのバイブレーションが鳴った。

 確認すると妹からのメールだった。内容は今日の夕飯について。おたまが食べたがっていたからとドリアらしい。

 

 メールを確認し終わって、ケータイを閉じて何の気なしにテーブルの上に置いた。

 

 

 駄弁ったり歌ったりして、お開きの時間になった。

 

「代金は一条の奢りということで」

 

「な訳ねぇだろ!」

 

 何気に2時間くらい居たが、カラオケ代だけだと学割で800円だった。中々良心的だ。フードの料金を合わせて、1人1000円ずつくらいの割り勘で済んだ。

 

 財布から1000円札を出して、その財布を服のポケットにしまうと、何か感覚が、重みが少ないことに気付いた。ポケットをまさぐる。

 

「…あ、やべ」

 

「悠也、どうかした?」

 

 隣に立っていた舞子が僕の声に反応する。

 

「部屋にケータイ忘れたっぽい、部屋まで取ってくるわ。気にせずに先に解散しといてくれな。これ1000円、渡しとくから。またな」

 

「ほ〜い、了解しました〜」

 

 舞子に代金を渡して、その場を離れた。

 

 清掃が入って置き忘れたケータイを回収され、色々と面倒になる可能性を考えて小走りで部屋へ行った。

 

 部屋番号を確認して、扉を開ける。充満していたピザやポテトだったりの軽食の匂いがした。

 部屋を見渡す。テーブルには食べカスの付着した皿や底にうっすら飲み物の残っているコップ、誰も使わなくなったリモコンとマイクがある。そのテーブル上でケータイを発見した。さっきまで僕が座っていたのであろう位置に置かれていた。

 

「ふー、あったあった」

 

 安堵の息を漏らして、ケータイを服のポケットに入れる。これ以上は部屋に用はない。

 扉を開けて部屋を出る。

 

「わひゃっ!?」

 

 ほんの少しハスキーな女性の驚き声がした。部屋の前を通る時に僕がタイミング悪く扉を開けてしまったからだろう。

 

「あ、すみません」

 

 僕は頭を軽く下げて謝り、その場を去ろうとした。

 

「いえ…って、佐藤悠也!?」

 

「ん?え?鶫さん?」

 

 僕は思わず二度見した。そこにいたのは私服姿の鶫さんだった。青緑色のカーディガンを羽織って、内側に水色の、多分ワンピースを着ている。ファッションスタイルを考えるに桐崎さんのものだろうか。

 

「─鶫さんってカラオケ来るんだね。桐崎さんたちと?」

 

「今日は私1人だ。お嬢に来週カラオケに誘われていてな、その練習に

と…まさか貴様にも遭遇するとは」

 

「“も"?」

 

「あ。あー、こっちの話だ。き、気にするな、ははは」

 

「???」

 

「こ、これから帰る所なのだ。それでは!」

 

「あ、ちょっと…行っちゃった」

 

 鶫さんは逃げるように猛スピードで駆けて行った。僕は何か悪いことでもしただろうか。

 気落ちして頭をガクッと下げた。その下げた視線に、ハンカチがあった。

 

「これは…」

 

 ハンカチを拾い上げる。ふわっと香る洗剤の匂い。我ながら気持ち悪いが嗅ぎ覚えのある匂いだった。これは鶫さんのものだ。

 

「…うーん?」

 

 鶫さんの姿は見えない。だが、会計で足止めされているのを勘定に含めたらまだそうカラオケ店から出た所くらいから離れていないのではないだろうか。走れば追いつくかも知れない。

 

 

 急いで店を出て、左右を見渡した。

 …居た。遠いがなんとか分かる。鶫さんの後ろ姿だ。もう少し離れていたら見失っていたかも知れない。

 

 彼女のことを走って追いかけて、近づかながら声をかける。

 

「おーい!鶫さんちょっと待って!おーい!!これ、ハンカチ!」

 

「…?…!?」

 

 僕の声に反応して鶫さんは振り向いた。少し驚いて、何故か彼女は小走りに。

 

「いや、ちょっと、あーもう」

 

 鶫さんの下へと僕は全速力で走る。縮まっていく距離。やっとの思いで近付けた。

 

「これっ…ハァハァ…っ、は、ハンカチ落としっ…ハァっ…あーっ…ちょ、んぐっ、ちょっとくらい、止まっ、て…ハァハァ…」

 

 息絶え絶えにハンカチを持った手を伸ばした。

 

「は、ハンカチ?」

 

 鶫さんは立ち止まる。そして、彼女は僕の手元のハンカチを見て、自身がハンカチを落としていたことに気付く。

 

「─すまない…言ってくれればよかったのに…」

 

「ずっと…言って…ハァハァ…ました…ハァーッ」

 

 どう見たって小走りにしか見えないのに想像以上に速かった。流石マフィアのヒットマンというべきか、人間を辞めているというか。…よく追いつけたな僕。

 

「そ、そうなのか…ありがとう…しかしハンカチ…あっ!そういえば、貴様からハンカチを預かっていたままだったな」

 

「ふぅ…。…そういえばそうだった。でも別に明日で良いよ、どうせ学校だし」

 

「いや、ここから今住んでいるアパートに近いんだ。…急ぎの用が仕方ないのだが…」

 

「全然そういう訳では!大丈夫、暇です─」

 

 

 ─鶫さんの案内に従ってアパートまで行く。アパートは5階建くらいのコンクリート造りで、鼠色の地味な印象。劣化があって、あまり新しく建ったものではないと見受けられた。

 

 話によると、普段は桐崎さんのあのどうやって建てたのか知ったものではない馬鹿でかい豪奢な家(僕の印象)に寝泊まりしているそうだが、任務によってはアパート住みらしい。

 

「…ということは、鶫さん何か任務中なの?」

 

「それは…機密情報だ。貴様も、命は惜しいだろう?」

 

「あ、はい」

 

 聞いてはダメなオーラを出されたので黙った。変な風に踏み込んでしまっては、普通の男子高校生である自分としてはやってられないしバイタリティもない。だから止める。

 

 鶫さんの借りている部屋の玄関扉まで来た。鶫さんが扉を開けると、部屋の中が見える。典型的な女の子の家…ではなく、コンクリート壁がそのままで、ミニマリスト的な風のさっぱりとした、ただ住むだけに必要最低限の家具を揃えている部屋だった。

 

「入らないのか?」

 

 玄関先の通路で待っていた僕に鶫さんはそう言った。

 

「ハンカチ取ってくるだけでしょ?それに、遠慮無くズカズカ人ん家に上がれないというか…」

 

「そうか…?いや、確かに…一条楽(あいつ)がおかしいのか…」

 

 口振りからして一条が来て、しかも部屋に上がったことがあるっぽい。羨ましいなぁ。一体何が味方しているのだろう。やっぱり古味直志か。

 

「だが、その、折角来たのだから、お茶でも飲んで行かないか?」

 

「良いの?」

 

「ああ」

 

「じゃあ、お言葉に甘えて、お邪魔します」

 

 僕も鶫さんに続いて部屋に入る。何気に女子の部屋に入るというのは人生初だ。そう意識すると緊張してきた。どうしよう。

 全体的に身体の動きがカクつく。高負荷でまともに動かないゲームキャラみたいだ。

 ガチガチになって円テーブルの前に座った。

 

「…」

 

 落ち着かない。鶫さんの部屋を見て、やはり殺風景だが、それでもここが女子の部屋であるという事実はどうしても僕の心を動揺させた。視線をぐるっと動かす僕は側から見れば挙動不審だっただろう。

 

 …視界に鶫さんが入った。玄関近くの備え付けキッチンで湯を沸かし、2人分の湯呑みに淹れたお茶を注いでいる。

 もし付き合えでもしたら、ああいう姿を日常的に目にすることになるのだろうか、などと、気持ちの悪いことを考えた。

 

 湯呑みを持った鶫さんがこちらにやってくる。

 僕は咄嗟に視線を下へと向けた。

 

 テーブルに湯呑みを置く音が聞こえる。

 

「…茶菓子も用意できれば良かったのだが…、生憎、切らしてしまっていてな」

 

「ぜ、全然、お茶だけでも嬉しいです!」

 

 鶫さんは僕の向かいに座った。僕の緊張感はより高まった。変に黙って間が空いてしまう。お茶を飲んだ時の啜る音だけが耳に入る。

 こういう時に気を利かせて話でも切り出せたらなぁ…。何か話題…、さっきまでカラオケに居たのだから、カラオケか…?

 

「「あ、あの…あっ」」

 

 なんか被った。

 

「…つ、鶫さんの方からどうぞ…別に僕は大したことじゃないし」

 

「そうか…その…き、貴様には好きな人はいるのか!?」

 

「ブーッ!?」

 

 話を聞く途中で口に含んだお茶を全て撒き散らしてしまった。飛び散った水滴は壁や床を濡らした。

 

「わーっ!?ごめんなさい!ティッシュ、ティッシュあります?!」

 

「て、ティッシュ!?ならそこの棚の上だ!?」

 

 箱ティッシュから数枚抜き取って濡れた壁や床を拭く。

 玄関先でお邪魔しますと言って本当に邪魔をするやつがこの世にいるだろうか。それが僕だったのだが…。いたたまれない。

 

「─申し訳ない…」

 

「急に聞いてしまった私も…その」

 

「…話題変えない?ややこしくなりそうだしさ。ほら、カラオケ行ってたんだし、それの話題とか。鶫さんって何歌ったりしてたの?」

 

「私か?私は─」

 

「あー、あれね。あれか。うんうん人気だよね」

 

 話題を変えてみたのはいいものの、なーんにも知らんかった。当たり障りのないことしか言えなかった。

 後、話ぶり的に2、3時間1人で歌っているような感じだった。凄いなこの人。

 

「─して、貴様は一条楽達と何を歌ったんだ?」

 

「僕は最近流行りの…?僕って一条達と来てたの話してたっけ」

 

「あ…」

 

「『あ…』って」

 

「実は、貴様と会う前に一条楽とも会っていてな。何分カラオケは初めてだったから成り行きで手解きを」

 

「じゃあ一条の奴それ黙ってたのか。どうりでどこか怪しいと思った」

 

「…一条楽に黙っておくよう言ったのは私の方だが、貴様と会うのが嫌だった訳ではない。ただ、舞子集に会うのが面倒だっただけで…って何を言わせるんだ馬鹿者!?」

 

「あれ!?僕怒られてる!?」

 

 鶫さんの中でどういう逡巡があったのか知らないが、なんか怒られる。すぐに鶫さんは落ち着いたが、気まずいのに変わりはなかった。

 場持ちよく会話を保たせる能力が僕にあれば良かったが、そんなもの持ち合わせていない。

 

 ん?ちょっと待てよ。鶫さんが僕と会うのは嫌じゃないって言ったのか。一応は信頼を勝ち取れているということなのだろうか。へぇ、ふーん…。

 

 妙に喉が渇いて、目の前のお茶を飲み干した。

 

 少し顔が熱い。

 

「えと、さっきの、好きな…えぇと」

 

「な、なんだ?」

 

「好きな…曲は!何だった!?ほら!カラオケのやつ!」

 

 僕は一体何を誤魔化したのだろう。

 

「あぁ!好きな曲か!…わ、私はあまり選り好みしない質でな!強いて言うならバラードは歌い易い気がしたぞ(?)」

 

「へ、へー、そうなんだ。僕はアレだよ、皆んなで盛り上がる感じの曲が好きかな!?」

 

 上手く話せている気が全くしない。人と話すという行為はこんなにも難しいものだっただろうか?

 この後も少し話したが、辿々しい内容でしかなかった。

 

「─そ、そろそろ帰ろうかな」

 

「そうか?では…あ、ハンカチをまだ渡していなかったな」

 

 鶫さんから洗って貰っていたハンカチを受け取る。ちょっと鶫さんの匂いが…考えるのは止めよう。

 

「ありがとね。鶫さんと話せて嬉しかった。また明日」

 

「…!ああ、また明日…」

 

 鶫さんに別れを告げて、家路についた。

 

 鶫さんの頬が赤らんでいた様に見えたが、多分それは夕日に照らされていたからだろう。

 

 

 家ではおたまがソファに寝転んで漫画を読んでいた。

 

「む、帰ったか。遅かったの」

 

「まぁ、ちょっと…。…ありがとな、おたま」

 

「ふっふーん。わらわの力思い知ったかの?」

 

「どこからどこまでがなのかは分からないけど、確かに」

 

 僕はおたまの頭を撫でた。語感がなんだか洒落っぽいが、とにかく撫でたのだ。

 

「うぅ…おい!不敬じゃぞ全く…悪い気は…せんが…んふふ〜」

 

 

 夕飯を食べ終えて、夜のことだった。おたまは僕の膝の上に乗ってテレビを観ていた。

 

「むむっ!…その願い、聞き届けたり」

 

「どうしたんだおたま?」

 

「少しな。まぁまぁ、明日、楽しみにしていると良い」

 

「?」

 

 




書いていたら普通に勢い余って告白してしまったりしていたので、場所やら場面やらを変えて最終的にこうなりました。鶫誠士郎のところはこっちで勝手に考えました。カラオケの所の元ネタはゲーム版です。

次回の内容は何となく決めています。最後の方で「明日」とか言ってますが明日、明後日は無理そうです()
ではまたいつか。書けたら出します。

誤字修正あればお願いします。
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