ニセコイ・モウソウ   作:ぬめり

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季節外れの夏から抜け出せず、原作5巻からも抜け出せない。やっと今回で抜けれるはず…。


第六話

 夏休みもそろそろ佳境という頃に、舞子から「皆んなで海水浴行くんだけど空いてるか?」と携帯にメールが来た。

 だがしかし、タイミング悪く先に家族との予定が入っていた。家族と2泊3日の海水浴である。奇しくも海水浴と、目的が被っていた。

 

 なぜ海水浴なのかというと、数ヶ月か前に母さんが雑誌の懸賞で有名な避暑地にあるホテルの宿泊券を当てたからである。母さんは雑誌の懸賞に応募することが半ば趣味と化していて、偶にこういったデカい景品を当てることがある。

 妹が受験期なのもあって最初は行かない方が良いのではないかと言ったが、妹は、

 

「別に有名私立とか狙ってるわけじゃないし。兄ちゃんみたいに勉強苦手じゃないし」

 

 とか言い出し、母さんも帯同して

 

「それもそうねー。有効期限切れちゃうし、ここはパーッと羽を伸ばしましょ」

 

 と言った。何とも呑気だ。流石に父さんは何か言うかと思ったが、僕の肩をポンと叩いて首を横に振り、抵抗は無駄、といった感じだった。この家での男子の立場、その低さを思い知った。

 

 

 電車に揺られ1、2時間。やはり夏休みシーズンということもあって人が多い。水着を着てこれからビーチに向かうのであろう人も多く見られた。

 ホテルのチェックインを済ませて、その後僕ら家族もビーチへと向かった。

 

「やー、壮観だなぁ」

 

 ビーチで父さんはそう言ったが、どう考えても海の方ではなくてビキニを着た女子の方を見ていた。視線がもういやらしかった。良い歳して何やってんだろうか。

 母さんと妹から「ケッ」と蔑まれている。

 

 海の家でビーチパラソルや椅子を借りて、自分たちの場所を取った。母さんと妹は荷物を置くと直ぐに海へと繰り出そうとした。

 

「兄ちゃんは海行かんの?」

 

「あー、僕ぁ海水しょっぱいの無理だから」

 

「うわーだっさ!海で泳げないなんて人生の半分は損してるんじゃない?」

 

「してねぇよ!十分楽しいわ!」

 

「きゃー怒ってやんの。お母さん逃げよ!」

 

「もう…はいはい」

 

 癪に障る妹だ全く。

 

 遠くで浮き輪に乗りぷかぷか浮いたり、泳いだりして遊んでいる2人の姿を父さんと荷物番ついでに眺めていた。いや、父さんは前を横切るビキニのギャルに目を奪われたりもしていた。

 

「なぁ、悠也」

 

「…?どったの父さん」

 

「お前もさぁ、折角海来たんだから楽しめよ。ほらこれ、俺の財布から千円やるからさ、これで女の子でも引っ掛けて海の家でジュースでも飲んで来い」

 

「そんなことしないっての」

 

 僕は女の子にナンパするような人間ではないのだ。あと、大体こういう持ちかけをする時は、父さんは邪な考えを持っている確率が高い。

 

「いいからいいから、ほら、行け行け」

 

「…1人になって女の子眺めたいだけだろ」

 

「ギクッ…ならば、追加で千円…どうだ…?」

 

 分かりやすく「ギクッ」て言ったぞこの親父。妻と娘がいるのになんだこいつ。

 

「もう一息」

 

「いや、これ以上は「ガールズバーの名刺」追加で千円差し上げます」

 

 父さんのポケットマネーから3千円ぶんどることに成功し、自前の財布にしまい込んで、その場を離れた。

 ただ、別に女の子を引っ掛けるつもりなど毛頭ないし、この3千円はまたの機会に取っておこう。

 

 暫くふらふらと海岸線を歩いていると、ほんの少し人だかりがあるのを見つけた。野次馬精神が湧いて近づいてみた。

 そこには、妙に凝った砂の建造物があった。砂遊びというものなのだろうが、“遊び”と呼ぶにはその範疇を優に超えたクオリティのものだった。思わずポケットに入れていたケータイを持って写真を撮っていいか確認しようとした。

 了解を得ようと、一体誰が作っているのか、その当人を探す。どうやら1人の女の子が作っている様子。アレを1人とはなかなかの腕前、いや、プロと形容するべきだろう。

 

「あのー、写真いいですか、これ…」

 

「あ、はい、どうぞ大丈夫ですよ…あれ?佐藤くん」

 

「…って、小野寺さん!?」

 

 物凄く見慣れた顔。まさかの同級生だった。

 

 …え!?あの連絡と目的地同じだったの!?どんな確率!?

 

「別に友達なんだから勝手に撮ってくれても良かったのに。佐藤くんは1人行動?」

 

「へ?小野寺さん驚かないの?」

 

「…?何に?」

 

「いやこんな偶然あるんだなー、とか…」

 

「偶然って…佐藤くん変なの。私たちと一緒に来たんじゃないの?」

 

「はい…?」

 

 何か重大な齟齬が発生している気がした。とりあえず事の経緯を小野寺さんに説明すると、

 

「え、ええぇっ〜!?佐藤くん居なかったの!?」

 

「居なかったよ!?」

 

 まさかの居ない事に気付いていなかった。普通あったとしても逆だろうが。自分で言うのもなんだけど…。

 

「えっ…じゃあ、私たち、最初から…えぇ…」

 

「舞子から何も言われたりしなかったの?」

 

「そ、そういえば、今日は8人かぁ、みたいなこと言ってた気が…もしかしてあれって、橘さんに着いて来てる人を入れた人数…?」

 

「えぇ…?まさか他の皆んなも」

 

「多分、気付いてないかも…」

 

 いやいや、流石にそんなことはないだろう。皆んなと比べて影の薄い僕だ。居る事に気づかれないことはあったとしても、居ないことくらいは…不安になって来たな…。

 

「と、とりあえず、一条達もいるんでしょ?挨拶してこうかな。どこにいる?」

 

「一条君と千棘ちゃんなら、あっちの方で晩ご飯の準備してたと思う。他の皆んなは…ちょっと分かんないかな…」

 

「そっか、ありがとね。行ってくるわ」

 

「うん…その、なんか、ごめんね…」

 

 小野寺さんが指を刺して示した方向に向かうと、確かに一条と桐崎さんがいた。肉や野菜があって、串があるのを見るに、バーベキューの予定というのが伺えた。

 

「よう、一条に桐崎さん」

 

「あ、悠也か、ちょっとそこの塩胡椒取ってくんね?」

 

 普通に対応された。近くにいた桐崎さんも僕の方を一瞥した後、すぐに視線を食材の処理の方に戻した。

 

「ほい…一条、お前は何の感慨も湧かないのか」

 

「感慨って…何言ってんだお前?」

 

「別に気を遣って手伝いに来なくてもいいわよ佐藤くん。晩ご飯の準備はもや…ダーリン、と私で滞りなく進んでるんだから」

 

「…お前のせいでちょっと滞りあるんだけどな…まぁ確かに、別に俺たちのことは気にしなくていいぜ」

 

「あぁ…そう…」

 

 説明する気失せたな。このままほっといても多分何も気付かないだろ。何だったら帰るまで気付いてなさそう。もういいか別に…。

 

 そう思ったところ後方から救いの手が現れる。

 

「どう?そっちの方は〜。準備は順調かなぁ〜…って、あれ?悠也?何で居んの?!」

 

「その声は我が友舞子。お前には説明監督責任があるのだぞ」

 

「へ?お前ら何言ってんだ?」

 

 そのまま皆んなのところにも出向いて、全員に事の経緯を説明した。

 

「てっきり居るもんだとばっかり…」

 

「え?居なかったの?」

 

「貴様居なかったのか」

 

「あら。そうでしたの?」

 

「気付かなかったわ…」

 

 ものの見事に誰も僕が居ないことに気付いていなかった。何でやねん。

 舞子から何も言われなかったのかと訊くと「そういえば…」と口を揃えて思い当たる節があったようだ。なら気付くだろ普通。

 

「小咲ちゃんには?」

 

「さっき会って説明してる」

 

「そっか。それにしても、まさかこんな事があるなんてね〜。俺、一応言ったはずなんだけどなぁ、何でだろ?」

 

 舞子が首を傾げ、僕も一緒に首を傾げた。

 

「じゃあ、悠也はどうしてここに居るんだ?」

 

 一条が不思議そうに訊いた。

 

「家族で来てるんだよ。ほら、あっちの…人混みに紛れてよく見えん…とにかくあっちの方に居んだわ」

 

「ふーん、そんな偶然ってあるんだなぁ」

 

「僕も思った…ま、別にこれ以上話すこともないし、戻るわ。じゃあな」

 

「あ、ちょっと、お前も晩飯食ってくか?バーベキューだぜ?」

 

 僕が立ち去ろうとすると、一条がそう言って引き留めた。しかしホテルの方で用意があるので、名残惜しいが断った。

 

「そうか…いや…お前もてっきり居るもんだと思って、食材の計算に入れちまったんだよな…」

 

「別に1人分くらい多めに食べれるわよー」

 

 話が聞こえていたのだろう、桐崎さんが遠くから返事をした。

 

「あの地獄耳め…」

 

「ははは」

 

「じゃあ、明日の夜ってどう?皆んなで花火やる予定なんだけど」

 

 舞子が横から提案してきた。

 確か僕のところは2泊3日の予定だったはずだ。都合は合うだろう。

 

「多分大丈夫」

 

「なら、悠也の分も用意しとくわ。時間は─」

 

 

 次の日の夜。僕は家族に適当に理由を付けて、ビーチへと向かった。

 

「お、来たか悠也。皆んな先に始めてるぞ〜」

 

 手持ち花火を持って花火の光を楽しんでいた。こじんまりしているが、これはこれで風情があると思う。橘さんがワーキャー暴れてて火花が危険だが。

 

「ほい、これお前の分」

 

「どうも…おお、なかなか勢い凄いな」

 

 火が付いたら間髪入れずに色のついた火花が勢い良く飛び出す。ぼーっと眺めていても悪くなさそうだ。

 

「…あれ?一条と…桐崎さんも居ねぇな」

 

「さっきから千棘ちゃん居ないから、楽が捜しに行ったんだよ」

 

「なーるへそ」

 

 さっきから鶫さんがキョロキョロと辺りを見渡していると思ったらそういうことか。

 

 すると、タイミング良いのか悪いのか、丁度話題を出した時に桐崎さんが戻って来た。元気良く走って、というよりか、何かから逃げるように戻って来た。彼女の面持ちには翳りがあり、誰とも目を合わそうとはしない。

 

「…話しかけない方がいいよな、あれ」

 

「そうだねぇ。ま、こっちはこっちで楽しんでおこうよ。おーい!るりちゃーん!あ、ちょっと花火こっち向けないで、ぎゃーっ」

 

「…」

 

 暫く経つと、桐崎さんの戻って来た同じ方向から一条もやって来た。

 

「僕も来たぞー、一条」

 

「おお…悠也…」

 

「友達からの親切心で言うと、こういうのは自分の発言も省みた方が良いぞ。何がとは言わんが」

 

「言わんって、それ殆ど言ってるようなもんじゃねぇか…でも、ありがとな」

 

 …ったく、めんどくせぇカップルだこと。性懲りもなく喧嘩しやがって。

 

 

 ─結論から言うと、2人は仲直りした。

 

 2学期が始まってすぐ執り行われた文化祭、僕のクラスは演劇。題目は「ロミオとジュリエット」。

 捻挫した小野寺さん、そして急病の橘さんの代役として桐崎さんが選ばれた。

 一条が彼女を連れて来た時にはとっくに仲は元通りになっていた。何があったのか直接は見ていないが、桐崎さんが一条に惚れ直したのであろう、いつもより一条に向ける視線が熱っぽかった。

 

 舞子の唐突なアドリブ、橘さんや明らかな第三者の横槍が入ったり、僕としては大分意味が分からんかったが、観客の反応は良好。

 セリフの崩壊、シナリオの崩壊、舞台の崩壊、様々ぶっ壊れたが、担任のキョーコ先生含めた皆んなの感想としては「何とかなって良かった」らしい。何でやねん。

 

 因みに僕は裏方として、劇の脚本構成を担当した。本来なら元々のロミオとジュリエットそのままでやる予定だったらしいが、キョーコ先生から「お前結構文章書くの得意だろ?ちょっとやってみろ」と強制的に仕事を押し付けられた。

 全部ぐちゃぐちゃになった。泣きたい。




やっと5巻を抜け出せた。そして僅か十数行で片付けられる文化祭。
いや、決して面倒くさかった訳ではなくて、文化祭をやろうと思うとこれこそマジで原作の焼き直しにしかならないと感じたんです。本当です。ここの主人公ほぼ関係ないし。

結果的に毒にも薬にもならん回になってしまった。鶫誠士郎をメインヒロインに仕立て上げようとしてるのに全く恋路を進める隙がありません。一応サブヒロイン誰にしようとかも考えてるのに。全部自分が悪いんですけどね()

次回はまた気が向いたらです。次の内容は全く決めてません。はてさてどうなるんでしょうか。未来の私に任せたいと思います。
誤字脱字、お手数ですが、あれば修正お願い致します。
ご感想とかあれば自由に。アドバイスもください。切実な思い。
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