ビッグ7は沈まない 作:ドラフェノク
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たくぽ様、sinren様、kasim様、大虚人様、正太郎様、誠にありがとうございます!
北神様(誤字ではない)が先制雷撃で翔鶴姉を、相手の金剛改二が瑞鶴を中破にさせて、更に翔鶴姉改(敵の)が大破にさせて、あー、負けかな?と思ったら旗艦にしてた加賀さんが瑞鶴(敵の旗艦)と翔鶴姉改を立て続けに潰して結局S勝利。
……家の加賀さん、五航戦を執拗にスナイプし続ける傾向にある気がする。
「ああ懐かしの機巧都市よ……!」
そこらに広がる露天市。学生目当ての安物屋。最早学園城下町とも言える都市に降り立ち、大袈裟にそう声を発した。
それもこれも電車内で一度も顔を合わせてくれなかった加賀さんとの会話の糸口を掴むためである。
「……ここがリヴァプール。世界に誇る機巧都市、ですか」
初外国な加賀さんを引き連れ、適当に観光案内を行いつつ、市内での情報収集に勤しむ。
道中のどうやら俺不在の二ヶ月間の間に色々あったようだ。
まず、七位『自ら廻る焔の剣』ロキが九十八位に自主降格し、姉の九十九位『多重なる騒音』フレイと『陸の』こと、赤羽雷真と共闘契約を結んだ、らしい。
つまり三人いる日本代表は全員が勝ち進んでいることになる。
ここまでが良いニュース。
悪いニュースは、学園で時計塔をぶっ壊すというテロ行為に及んだシャルロット・ブリューを庇い、そのためにまた重傷を負ったということ。まあ、黒幕は他にいたらしいから対外工作に勤しまずにすんだわけだが。
そしてもう一つの悪いニュースは、俺が降格処分を下されたということ。降格先は八十位。自称秘密組織『十字架の騎士』連中が独占していた順位、八十六位から七十四位までの内部に食い込んでしまったわけだ。
(今が参戦義務が初めて発生する二十番目の夜ってことを考えると何かしら作為的なものを感じなくもないんだが)
だがそんなことはどうでもいい。問題は今が夜会の開始時刻だと言うことである。
「加賀さん、早速戦闘なわけだけど……体調はどう?」
「どんな敵であろうと鎧袖一触よ。心配いらないわ」
バニラアイスを食べ終わり、心なしか気分が昂揚しているようにも見える加賀さんを引き連れて夜会に赴くと、案の定だった。
先のシャルロット・ブリューテロ行為事件の際に黒幕にあたる存在と戦って重傷を負った『自ら廻る焔の剣』ロキと、陸の。彼らはとても今夜会に立てる状態ではないらしい。共闘契約に参加したメンバーの中で夜会に立てる―――立つ義務のあるのは、九十九位『多重なる騒音』のみ。全くもって隙だらけ、『十字架の騎士』連中の思惑通りである。
各個撃破は戦術の原則。確実に彼らは行動を起こしているだろうと予想して言ってみれば案の定、だ。
「誰から狙うのかしら?」
「一応陸のの一味だし、有利な方に付くわけにはいくまいさ」
『弱いものから潰す?』と言うような意味を含んだ問いに答え、少し笑う。
長門には義侠心的なものがあった。不利な方の肩を持つような、そう言う感情が。
加賀さんにはそう言う無用な感傷はないらしい。非常に良いことだ、これは。戦いが組み立てやすいし、初めて俺らしい戦い方ができるかも知れん。
「見捨てる?」
「いや、助けよう」
「わかったわ」
和弓に富嶽に変化する赤い矢をつがえ、引き絞る。こちらの指定したタイミングに合わせてくれるのだろう。
『多重なる騒音』が追い詰められていく。複数の犬型自動人形による包囲陣を敷いたつもりが逆に包囲された形。状況としては最悪だ。
包囲が縮み始める。囲んでいる側、『十字架の騎士』たちに油断はない。まだだ。
包囲が縮み切り、再び広がる。口に浮かぶ余裕の笑みを見るに、降伏勧告でもするつもりなのだろう。人形使いどもが前に出た、その瞬間。
「第一攻撃隊、発艦始め」
そう言うや否や夜会のフィールドに走り、放たれた矢から解放された爆撃機が展開を始める前に人形使いどもを囲むように防壁を張る。一二体の敵機が防壁内に入っているがまあ、贅沢は言えない。人形使いを自動人形が攻撃したら失格なんだから。
「『多重なる騒音』、耳を塞いで口を開けろ」
一瞬キョトンとした彼女がおずおずとその指示に従た、その時。
五機の富嶽による急降下爆撃が始まった。
馬鹿でかく、超高度に耐える頑健そのものな機体に、『世界一周しよう』と言うコンセプトの元発達した航続距離。その本来はあまり派手な動きをしないはずの爆撃機に更なる変態軌道を描かせることに成功したのが、一航戦とかいうチート集団であった。
この後開発されるであろう世界から見ればトップクラスの名機、『アルバトロス D.II』が時速175km。それに対して試製富嶽は時速880km。凄まじいじゃじゃ馬である。ミニチュア化しているので本来のスペックは出せないが、脅威であることに変わりはない。
風を裂き、大地を黒煙と炎に染め上げる。
信じられないほどのコントロールを以て自分の頭スレスレを爆弾を落としながら遠ざかっていく一機を見送ったと思えば、息つくまもなく次が来る。
彼らの積んでいる魔術回路『完全統制振動』は、優秀な防御力を持っていた。しかし、旧式型でしかない彼らには相手が悪すぎ、荷が勝ちすぎた。
何の戦果も残すことなく、爆撃開始から数分と経たずに四機の自動人形は全滅した。
「八十位、参戦します」
黒い胸当て、青袴。それまで彼が伴っていた物とは違う自動人形を引き連れた提督が、参戦した。
「貴さ―――」
「邪魔」
突然の奇襲者に激昂する二人の『十字架の騎士』団員に最後まで台詞を言わせることなく蹴り飛ばし、目の前で仲間が粉微塵に爆散していく光景に唖然としていて身動きのとれなかった自動人形のみが残される。
自動人形は人形使いを攻撃してはならない。
しかし、人形使いは自動人形や人形使いに攻撃しても構わない。
頓知のようなルールだが、事実であった。
綺麗な回し蹴りで二人仲良く場外に蹴り飛ばし、続いて未だ操る自動人形を持っている者二人を残して場外へと吹っ飛ばす。
「い、いけ!」
錯乱したか、或いは相打ち狙いか。集団のリーダー格らしき中性的な少年がこちらに指を向け、膨大な魔力を発した。
「加賀さん、直掩隊回して」
富嶽を帰艦し終えた後、直掩隊―――自分の護衛用として発艦させた烈風。爆撃するには少なすぎるこの二機を葬るには丁度いいだろう。
向かってくる二機が俺に向かって来るまでは最早一秒とない。直掩隊はあと五秒はかかる。ならば。
剣を抜く。最早使わないと思っていた特注軍刀の刃が煌めき、光とのみが弧を描いた。
鯉口と鍔が軽く打ち付けられ、ベルのように鳴る。
肘から下からがなくなり、滑らかな切断面を晒しているにも関わらずこちらへの浮遊移動を続けている自動人形を後目に後方に思いっ切り跳躍した。
俺が退避することを予測していたのか、或いはどうなろうと割り込む気だったのか。烈風が視界の端を掠めて、俺が今までいた場所へと潜り込んだ。やはりというか、呆然とした敵は討ちやすい。
事実あっと言う間に烈風はその名に恥じぬ高速機動で二機を瞬く間に葬り去った。
立ち昇る黒煙、どこか寂しげに鳴く炎。
全ての敵を一機もかけさせることなく一掃し終えた艦載機を少数の直掩隊すら残すことなく収容し、この戦争のような情景を作り出した本人は、いつもの如くポツリと呟く。
「やりました」
何の感動もないわけではないが、勝って当たり前な戦いに勝っても嬉しくはない。
そんな彼女の内面が如実に出た一言だった。
「勝ったねェ……」
反射的に抜いてしまった軍刀の柄を叩き、自嘲気味に呟く。身体に染み込んだものは二度と消えないし、戻らない。
そんな非合理極まりない諦観を含んだ精神論に頷くわけにはいかないが、どうしても今回は後悔が残る。
攻撃されても反撃する必要はなかった。後ろに跳んでやり過ごせば直掩隊が何とかしていただろうに。
『第八十六位、第八十五位、第八十四位、第八十三位、第八十二位―――権利消失(ロスト)です』
無情なアナウンスが夜会の会場に響いた、その時。
「姉貴!」
松葉杖をついている人間の出せる速度ではないスピードで、件の『自ら廻る焔の剣』―――通称、『剣帝』陛下がやってきた。
事前情報では彼ら姉弟は仲が悪かったはずだが、ここに二ヶ月間で変わってしまったらしい。
耳を押さえながらも明らかに無事な姉の姿を見てホッとしたのか、剣帝は少し溜め息をつく。お前姉貴大好きだろ。仲悪かったってのはあれか。誤報か。
「……―――!」
後ろから追従するように姿を現したのは、陸の。
何やら血相変えてこちらを見て、何かに耐えるように拳を握りしめ―――
「あんたがやったのか?」
―――何故か責めるような口調でこちらへ問いを投げた。
「何を?」
「とぼけんなよ。ここで死んでる奴らはあんたが殺したのかって、そう聞いてんだ」
なるほど、そこら辺には腕や足やらが落ちており、中々に惨憺たる惨状を示している。
だがしかし、どうにも誤解があるようだ。
「全て自動人形だ。搭載されている回路は『完全統制振動』。大方ドイツの機巧兵士計画の被験体だろ」
腰に括り付けている水筒に手を伸ばし、一口飲む。
参戦義務はもうないが、後十分は待つ気だった。この問答に付き合うのも一興だろう。
「殺したんだな、あんたが」
・・・
「壊したんだよ、陸の」
客席に着いていた観戦者たちは最早疎らになってきていた。まあ、手や足が転がってる光景はあまり見たい物じゃないから仕方ないだろう。
「そいつらは生きてたんだよ……!」
赤羽雷真は知っていた。『機巧兵士計画』によって造られた一人の執事を。
その執事はあくまでも人間らしく、己の意志を持っていた。
故に彼は、予測したのだ。『機巧兵士計画』で造られた自動人形は全て人の肉体を使った『禁忌人形』ではないのか、と。
彼の相棒もまた、精度が段違いだとは言え禁忌人形である。この虐殺のような所業の中に平然としている提督は、とうてい許せるものではなかった。
「いや、こいつらは機械だよ」
足下に転がっていた金属部品がのぞく足を蹴り、平然と言い切る。
死体への侮辱と、禁忌人形への蔑視。
多感な年頃である赤羽雷真は憤った。価値観のすれ違いを、モロに感じてしまったのである。
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