ビッグ7は沈まない   作:ドラフェノク

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sinren様、kasim様、蛮鬼様、ヒネモス様、評価いただき幸いです。

スポテットガー様、ヒネモス様、感想ありがとうございます。

特に貴重な評価10を下さった蛮鬼様、感想・評価ともに行っていただけたヒネモス様。本当にありがとうございました!


Aの罠、嵌まるR

「えー、戦艦代表・長門、空母代表・加賀さん。あなた方にも考えていただきたいことがあります」

 

「私もある。考えてほしいというより、聞いてほしいことだが」

 

「……何かしら?」

 

長門の聞いてほしいことはひとまず後回しにすることに決め、幼女を封印しているカードを銃に装填、トリガーを引く。

 

「この幼女の名前を考えてほしい」

 

「何とも唐突だな」

 

長門は流石の貫禄。突然俺が変なことを言い出したというのに、僅かに苦笑しただけで全く動じた気配を見せない。

 

なお、加賀さんは茶飲みを握りつぶした模様。弓懸つけてる方の手だったからよかったものの、つけない方でお茶を飲んでいたら大惨事だったことは請負だ。

 

湯飲みが人の手により爆散させられるというまさかの出来事に不安を隠しきれない俺と長門は揃って口を噤み、幼女が俺の肩に座る。

 

わざわざ子供用の席を用意してやったんだからそこに座ってほしい。

 

「………………隠し―――どこで拾ってきたのかしら?」

 

湯飲みを爆散させ、一回天を仰ぐ。

呼び出した最初から比べて謎の行動を起こす比率が次第に高まっている気がしなくもない加賀さんの口から漏れたのは、かなり常識的?な質問だった。

 

「港。因みに一切変な気はない。優秀な能力を持ってたから拾っただけだ」

 

「そう」

 

俺の弁明もむなしく、加賀さんは無言で席を立ち、リビングルームから姿を消す。

 

またもや沈黙が場を包み、幼女ですらも黙り始めた次の瞬間。

 

「……」

 

どうやら矢懸を脱ぎ変えたらしい加賀さんがこれまた無言で着席、こちらを鋭い目で見据える。

 

幼女を。

 

「ぽ?」

 

肩から降り、腕を伝って俺の膝に着席していた幼女が首を傾げた。

それもそのはず。何故か加賀さんがこちらに向かってカツカツカツと近づいていたのだから。

 

「こちらに来なさい」

 

ひょいっと襟を持って膝から持ち上げ、両足をうまいこと使って右袖を持った幼女がハンモックのように宙ぶらりんになる。

 

「提督の邪魔です、こちらへ来なさい」

 

「ぽ……!」

 

航空母艦(12万5000馬力)VS軍港兼航空基地(固定建造物)の熾烈な戦いに、俺の軍服の右袖が耐えること十二秒。救いの神が現れた。

 

「加賀、それはさすがに大人げないのでは―――「長門さん、今は黙っていていただけるかしら」

 

背後に地獄の焔を背負ってんのか、加賀さん。

そんな感じな迫力だった。

 

「う、うむ」

 

全てを舐め溶かすような凄まじい迫力に圧され、長門はあっさりと撃退される。

長門は神じゃないな。長門はただの少し哀れな戦艦。もっと哀れは俺の軍服の右袖だ。

 

「ぽー……」

 

結果、二分五十七秒の激闘の末に幼女は加賀さんの膝に収まった。

 

去り際に聞こえた『そこは譲れません』とは何だったのか。

 

「(長門さんや)」

 

「(何だ)」

 

「(加賀さんってこう……小さい娘が好きとか、そんな感―――)」

 

「提督、無駄話は慎んだ方がいいと思うのだけれど」

 

コソコソ話終了のお知らせが鳴り響き、元の議題にUターン。

だがここでそもそも何故逸れたのかと考えてほしい。これは些か理不尽なのではないだろうか。

 

「で、名前なんだけど」

 

それでも逆らえない、反論すら挟めない無言の圧力。それに屈した俺は軟弱者。

 

「私にいい考えがある」

 

「ほう、長門」

 

「奇妙」

 

やっべ、人選ミスった。

 

「はい」

 

「加賀さん」

 

「白猫」

 

白はわかる。全体的な基調が白だしね。

猫はどっからきたのか、それが果てしなく謎である。

赤目で白いから『兎』ならわかるんだけど。

 

「人」

 

「却下」

 

「猫」

 

「却下」

 

延々と、まともな名前がでないままひたすら会議は踊る。

全く進んではいない。しかし案だけはポンポンでる。

 

「茶筅」

 

長門の珍妙回答を無視し、ゆっくりと立ち上がる。

 

このままでは不味い。幼女幼女と言っていた方がましだったであろう名前に定着してしまう。

 

「君たちには、失望したよ……!」

 

「なら自分で言ってみたらどうなんだ?」

 

珍回答量産機(角付き)を無視し、加賀さんの膝に大人しく鎮座している幼女に注意を払う。

 

「北の女みたいな肌色だから、ほっぽでいいだろ」

 

北(ほく)+幼女の主要使用言語(ぽ)を足しただけ。何とも単純だが、猫とか人とかよりはましだという自負があった。

 

「ぽ!」

 

約二名が首を傾げ、当人が机をバンバン叩いて賛同の意を示す。

 

最早時間もない。やけに猫に拘っている加賀さんからまともな案がでるはずもない。

 

「この幼女を呼ぶときは『ほっぽ』で決定、Do you understand?」

 

「?」

 

「Understood it well」

 

英語を理解していない某戦艦を除き、この議題は終結した。

 

「で、長門の話は?」

 

「いや、昨日の深夜に赤羽雷真が訪ねてきたんだが―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「加賀さん、出入りだ」

 

「……長門さんはどうするのかしら?」

 

「長門は……個人的な理由で陸のの前に連れて行くわけにはいかんのだよ」

 

数分前のほっぽちゃん論争から視線が痛い加賀さんに頭を下げる。

 

「……構わないわ」

 

「敵は『十字架の騎士』連中だ。月の乙女が失踪したらしくてね。その援護を陸軍から頼まれた」

 

余所行きの服装と新式飛行甲板(仮)を渡し、寮の外へと足を運ぶ。

加賀さんは手に装着した飛行甲板に違和感があるらしき、しきりに腕を振っているが我慢してもらうしか他はない。何せあれは特注品だったのだ。

 

具体例で言えば、加賀さん本体が大砲に撃たれて腹に穴が開くほどのダメージを受けたとする。本来ならばここは腹に穴が開いてDEADENDだが、その場合は装備している飛行甲板、胸当て、矢懸、袴、弓道衣のどれかが破れるに止まり、ダメージは無効化される。

 

あの盾になった飛行甲板も特注品。腕が折れる代わりに飛行甲板が壊れたというわけだ。

 

しかしながら今はただの飛行甲板。違和感があるのも当然だろうさ。

 

「そう言えば、聞いていなかったのだけれど……あなたに頼むに際して陸軍は何と言ってきたのかしら?」

 

「可能ならば回収、手に余らば破壊してよし。魔術回路は出来るだけ回収するように、だと」

 

最近陸軍が素直だ。俗に言うならばデレ期にある。

 

軒並みデレ期を知らない連中しか周りがいないからな……いやまあ、組織にデレられても、とも思うが。

 

「随分と甘いのね、陸軍は」

 

「ん?」

 

「軍属が裏切ったならば、それは威信・規律の低下に繋がるわ。月の乙女もその主人も決して従順とは言えない態度なのだから―――いっそ見せしめにしてしまった方がよいと思うのだけれど」

 

「え、何で内地に居た加賀さんがそんなこと知ってんの?」

 

わりかし状況を把握、解析していた加賀さんを不思議に思い、とりあえず問うてみる。問題を起こした旨を長門から聞く度に詳細なレポートを書いていたが、提出しているのは陸軍に向けて。海軍所属の加賀さんは知らないはずなんだけども。

 

「一部の若手の士官の間では陸海の情報共有が行われているわ。『同じ国だというのに互いに防諜しあう意味などあるまい、それとも陸軍と海軍は二主を抱いてるというのかな?』と言うあなたの台詞がグサリときた若手も居たみたいね」

 

「へー」

 

いい兆候だ。感動的だな。長続きすればいいんだけど。

非協力的な頑固頭にあんまりにもムカついたから言った台詞がまさかそうなるとは。わからんもんだな、人生。

 

「……あ、陸のが釣られた」

 

「罠とわかって釣られたのかしら?」

 

明らかな誘いに乗り、フラフラと人気のない―――つまり、部外者の目のない―――場所へと入り込んでいく陸のを『天眼』で認識、ため息を付く。

 

「そんなことするわけないな。大方『こいつが黒幕の一味なら黒幕の正体に近づける』とでも思ってるだけだろうさ」

 

詰まるところが勇敢であり、無謀に近い蛮勇だ。指揮官には向かないし、何を言われても逆らわないほどの従順さと冷厳な規律が必要な一兵卒ですら勤まらない。

 

「……そう。面倒なものね」

 

「本当にね」

 

ぶつくさ言ってはいるが、指令と要請には従わなければならない。

 

心無しか足が重い。心底面倒くさいことを巻き起こす野郎だね、君は。

 

「加賀さん、後衛頼むよ」

 

「直掩隊を護衛に回す方がいいかしら?」

 

「いや、こっちも飛ばせるからいいや」

 

零戦ではなく零閃だけど、雑魚には過ぎた一撃だ。

 

適当に軍刀を叩き、背を伸ばす。

 

「さあ、突入しようか」




読了ありがとうございました。感想・評価いただきありがとうございます。またいただけると幸いです。(強欲並感)
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