ビッグ7は沈まない   作:ドラフェノク

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ほっぽちゃん は こうわんせいき に しんかした!

aimkut様、Cerasus様、しーにゅ様、c+java様、GAIAGUL様、評価いただき感激です!

しかもしかもぉ!前回の投稿で遂に評価10が二桁!これはヒャッハーと言わざるを得ませんねぇ……


迫り来る『К』、巡り会うK《Ⅴ》

「はいじゃあ、三方作戦始めるよ~」

 

黒板に張った地図に指揮棒を突きつけ、学院南方部の地形の説明を終える。

学院南方部は中央の広場を核にして広がっており、まともに人が通行できる通路が三つしかないという過疎っぷり。

主な建物が入り口付近の北部(寮とか)、研究所が中央部に集中しているため、南部にはグリフォン女子寮と迎賓館くらいしか主要な建物はない。

ちなみにグリフォン女子寮とは、優秀な女子生徒が住む寮である。

ならば早急に助けにいかねばと思うかもしれないが、ここに関しては拠って戦っていた幾人かの生徒が学院長率いる部隊と合流しており、危急に奪還すべきものではなくなっている。

 

「加賀さんの艦載機に敵の本陣らしき場所を探らせたところ、ここ―――迎賓館がそれだとわかった」

 

すでにこの時点からしてきな臭い。迎賓館には高貴な身分の者しか入れないし、門は警備が固めている。

 

この情報を得たとき、襲撃者たちの首領は迎賓館が目的かと思ったが、今日迎賓館にいらっしゃる人はいない。つまり事実上無人だったのだ。

 

犯人は徹底的に迎賓館に入れる程度の高位の人物であることは確定。

わざわざ厚い警備を突破しようとするなんざナンセンスだし、な。

 

「迎賓館の破壊許可は下りている。今回の作戦目的は迎賓館に決定的な打撃を与え、襲撃者たちの増殖を止め、あわよくばその原因を探るものである。敵を壊滅することではなく、進撃を是とすることを忘れないように作戦行動をとっていただきたい」

 

場にいる全員が頷き、互いに顔を見合わせる。

作戦を実行するに当たって最も重要なことは思想統一。

 

本部が『敵を壊滅させる』ことを、現場が『根拠地を占領する』ことを望んでいては、どちらにしても片手間になるだろう。故に、目的とその目的に至るまでの思想は統一されなければならないのだ。

 

「作戦としてはまず、俺直率の機動部隊が敵を引きつける。俺たちはまあ、一番敵を殺しているからな。敵の注意はこちらに向くことだろう。

つまり、主攻に見せかけた囮だな」

 

装甲車四十九両と航空母艦四隻。誰が見ても主力にしかみえないだろう。ここはその裏をかく。

 

「で、俺達囮機動部隊が動くと同時に東のエドも動く。西東から攻め込んで戦力を分散させた後、泊と長門が率いる中央部隊で迎賓館を攻撃、これを破壊さしめるのが目的だ。

何か質問は?」

 

「ん」

 

ひょいっと手を挙げたのは、長門。実質的な中央部隊の指揮官である。

 

「はい、長門」

 

「エドとは誰だ?友達か?」

 

「エドは学院長だ。エドワード・ラザフォードだからエドと呼んでいる。友達と言うか……まあ、そんな感じだな」

 

沈黙が支配した場に喝をいれるべく机を叩き、叫ぶ。

 

「各自基本方針を頭に入れ、高度な柔軟性を保持しつつ臨機応変に行動すべし!以上、解散!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督」

 

「何?」

 

「学院長とは親しいの?」

 

……何だ、そんなに親しいのがおかしいのか?

 

あの学院長、何故か気が合うし向こうがやたら親しげに話しかけてくるから少しずつ話してみたら意外といける口だったんで親しくなっただけなんだが。

 

そりゃ確かに笑いながら敵に毒を盛るような爺さんだけど、それはこちらも同じこと。毒は盛らぬが謀略はするし、世界中に有事のための種はまいている。どっちもどっち、同じ穴の狢だろうさ。

 

「いやまあ、共同研究したり共同で人を嵌めたりする程度には親しいぞ」

 

「……お気の毒ね、嵌められた人も」

 

まあ、エドに目を付けられた時点でご愁傷様だよ、加賀さん。

 

何せ『十九世紀最強』らしいし。

 

「じゃまあ、さっさと釣り出しに行ってきてくださいな、加賀さん」

 

「ええ」

 

装甲車に乗って出撃していく空母四隻を見送り、背後に立つ長門に鞘ぐるみに剣を放る。

 

「いいのか?」

 

「まあ、俺は前線に出る気ないし、長門率いる中央部隊の奮戦如何でこの事件の結末が変わるわけだからね。装備には特上の物をあげないと」

 

数十分後。敵の主力の半数以上が囮機動部隊によって釣り出され、東からエド率いる悪魔連合が突っ込んだ。

 

学院南部は最早息すら付けない激戦地帯へと変貌を遂げたのである。

 

「では私たちも行くとしよう」

 

「おう、いってら」

 

伯と長門率いる部隊も戦地へと赴き、静かになった本陣に一人たたずむ。

 

剣もない。右腕となるべき盾もなければ、頼れるべき弓もない。

 

鋭敏に張り巡らされた天眼に、雄偉な身体が影を落とす。

 

速い。巨体に似合わぬそのスピードは古の怪物を思わせた。

 

「まあ実際怪物なんだけどね」

 

「ぽ?」

 

天眼を切り、トコトコと近寄ってきたほっぽちゃんをそこらの茂みに隠す。

 

「待ってたよ、『君臨せし暴虐』、七位殿。いや、ブリュー伯と呼んだ方がよろしいか?」

 

「何とでも好きに呼びなさい」

 

飛翔してきた竜の背中から、一つの小さな身体が飛び降りる。

太陽の光で煌めく金髪に、鷹匠のような独特の制服。

 

「これで赤羽連合揃い踏みだな」

 

本人とロキとは戦った。フレイとも顔を合わせた。

どれも楽勝も楽勝だった、が……

 

「赤羽連合が何だかは知らないけど、あいつがあんたに奪われた自動人形を取り戻しにきたわ」

 

「なるほど、例の恋とか言う感情かね」

 

こいつとはなるべく戦いたくないもんだと思ってたんだけどね。

 

「こ、ここここ恋!?ち、違うわよ!私はただ借りを返すためにここにきただけ!勘違いしないで!」

 

なるほど、ツンデレか。クーデレ(デレるとは言ってない)なら側にいるが、そいつは初見だぞ。

 

「恋ってのは、どうよ?理性的な判断が出来るもんなの?」

 

「は?」

 

「つまりさ、好きだなーと思う相手を激戦地帯に叩き込める?それとも無理?」

 

何言ってんだこいつという視線が突き刺さるが、そんなことを気にしていては謀略家はやってられない。

 

「俺は因みに、出来るんだけど……それは果たして恋なのか、否か。わからぬは自分ばかりなんだよね、俺の場合」

 

「……あんたと話してると頭が痛くなってくるから、簡潔に言うわ」

 

コホンと一回咳をし、ピシリとこちらに人差し指を向ける。

 

「あんたが奪った二人を返しなさい」

 

「ああ、いいよ」

 

「返さないなら―――……は?」

 

「だから、返せばいいんでしょ?別にいいよ、そんくらい」

 

二枚のカードを放ると、表面から光が漏れた。

 

―――光と共に現れたのは、お探しの二体の自動人形。夜々といろりとか言う奴らである。

 

「もうやることはやったし、返してあげようかなーと思ってたんだよ。まあ陸軍がまた取り上げるかもしれないけどね」

 

「……気味の悪い奴ね」

 

そりゃまあ会話の緩急をわざと外してやってるんだから、その印象は当然なもんだな。

 

「でもまあ、対価はもらうよ」

 

「?」

 

ほっぽちゃんと契約時に増えた三枚のカード。

 

一つは解析中。

もう一つは、性質の融合。

 

もう一つは―――

 

「シャル、後ろだ!」

 

カシャン。銃床がスライドし、カードを読み込み、吼えた竜が凍りつく。

 

「うっぅー!」

 

完全に機能を停止した竜に異常に発達した両腕の爪を突き刺し、右手の爪を腹に残したままこちらへ引きずってくる白い角つきの熊……みたいな何か。

 

……まさか、加賀さんの上を行く存在に、ほっぽちゃんがなろうとは。

 

「フッ!」

 

ほっぽちゃんを変化させたと同時に左手に装着された獣爪を竜の心臓に突き立て、魔術回路の一部を引っこ抜く。

 

「ゴァァァァァア!?」

 

凍らせて、爪を突き立て、引きずって。心臓くり抜く元気な大佐、か。

 

いや、もう大佐じゃねえか。でもまあ、大佐のほうが語呂いいし……

 

「シグムント!?」

 

竜の断末魔のような雄叫びを背後に駆け出し、さっさとその場をトンズラする。

 

左手の獣爪に引っかかっている魔術回路。これさえゲット出来ればそれでいいんだ。

まあ、心臓ごと引き抜いた訳じゃないんだから死にはしまい。

 

「う……」

 

後ろのほっぽちゃんに振り返れば、面影残したままでかくなったような図体をのそのそと動かしてこちらに追従している。

 

やはりデカくなるのは慣れていないのか、あるいはちっこい方が自身としては楽なのか。

 

「ご苦労さん、ほっぽちゃん」

 

「うっうー!」

 

ギシャギシャと爪の鳴らして喜ぶほっぽちゃんだが、デカい。

 

どこはとは言わない。どこはとは言わないが、瑞鶴<翔鶴<<<赤城=長門<加賀だった戦力図を卓袱台返しのごとくひっくり返してしまえることは請負だ。

 

「いやまあとりあえず、目に毒だから戻んなさい」

 

悪いことしても悪いことだと認識しなさそうな童心そのものなほっぽちゃんを幼女形態に戻し、一息つく。

 

「ぽ」

 

ひょいっと肩によじ登ってくるほっぽちゃんを乗せてやり、暇つぶしにそこらをブラブラと歩き出す。

 

「……加賀さんはあの胸当て外すとすごいけど、君は将来アレを越えるんじゃない?」

 

「ぽ?」

 

ぺしぺし軍帽を叩いていたほっぽちゃんの背丈に変化は見られないが、『進化』のカードがなくなってるところをみると、自由に変化できるようになったっぽい。

 

「ほっぽちゃん、加賀さん帰ってきたみたいだね」

 

「ぽ」

 

カードの右下に出る表示が『出撃中』→『戦闘中』→『帰還中』になっていることを確認し、再び本陣へと引き返す。

 

天眼で見たところ、ブリュー伯はもう撤退したらしいし。

 

「目標達成、と」

 

ほっぽちゃんが退化したと共に外れた獣爪を一応カードに封印し、引っこ抜いてきた魔術回路・『魔剣』も勿論封印。

 

「研究がはかどりそうだ……」

 

いやーな笑みを浮かべながら、提督はフラフラと歩き出した。




読了ありがとうございます!いつもいつもの繰り返しになって申し訳ありませんが、感想・評価ry
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