ビッグ7は沈まない   作:ドラフェノク

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サブタイの『T』は誰でしょうか?答えは本編にあります。

最近低評価が続いているので何ぞと、評価いただけると幸いであります。

あ、艦これで大将になりました。持続するかどうかは疑問ですが。


『T』に別離を《Ⅲ》

(死ぬか?)

 

ここはリヴァプール。大英帝国の一大都市である。

 

(……死ぬか)

 

この都市で、基本的に王立機巧学院生徒は戦闘のための機巧魔術の使用は禁止されている。勿論、重火器のたぐいを使うことも、刃物を使うことも。

 

(いや。ここで死んでは大日本帝国が侮られる、か)

 

仮にも中将たる自分が、テロ程度の事件から同盟国の民を守れずに死んだとあらばそれは、大日本帝国の将校の水準が著しく低いと言うことになる。

それは、避けなければならない。

 

(事が終わった後、全てを洗いざらい話して裁可を求めればいいことだ。今はとりあえず―――)

 

同盟国の民を守るとするか。

 

飛来する砲弾を、謎の力が通さじと阻む。

力が拮抗したのは、一瞬だった。

 

「……やってしまった」

 

跳ね返された砲弾は、遙か彼方の大西洋へと着水。遠目にも見えるほどの水柱を上げて爆発した。

 

「……何やったんだ、あんた」

 

「聞かれて教えるはずがないでしょ?馬鹿なの?」

 

とりあえず一難は去り、俺は事件を起こしてしまった。

馬鹿は己であったらしい。俺の計画では最早学院にいるはずだったのだが、少し歯車が狂ったおかげでこの様である。

 

「静まれ――――!」

 

次にやることと言えば、避難誘導の補佐。

主砲の発射時の轟音と言うことを聞かない己の自動人形にパニックになりながらも、群衆の混乱がピタリと止んだ。

 

お、やっぱり人が何か一点に注目した時を狙えばこちらを注視させるのは容易だな。

 

「観光客・英国臣民の方々。今あなた方には未曾有の危機が迫っていることは、先の主砲の激発により理解してくれたものだと思う」

 

混乱の極致に達し、死の絶望を味わったと思ったら救われる。

 

激変した環境にすぐさま対応することが出来るほど、彼らの精神は強くはなかった。

 

「簡潔に言う。先ほどの主砲弾を逸らしたのは私だ」

 

あたりを支配していたざわめきがピタリと止み、分散しかけていた注目がこちらへと注がれる。

 

俺の声が行き渡って、数秒。これくらいで、誰かが質問を出すだろう。しかし、その問いに答えている暇はない。

 

「これからも同じように主砲の発射弾からは私が責任を持って守り抜こう」

 

再び放たれた主砲弾が飛来するタイミングと合わせてそう言い放ち、実際に防いでみせる。

 

これで、疑いを抱かれる余地はない。

 

「しかし、貴君らの身辺にはもう一つ異変が起きている」

 

「自動人形の暴走、か」

 

陸の、ナイス相槌。君もやれば出来るじゃあないか。

 

「そうだ。自動人形がただ今暴走している。具体的な論理は省くが、これは故障ではなく、テロリストたちの魔術によるものだ。

故に貴君らは、一品斎の印が入っている物以外の自動人形が制御できていない」

 

何せイブの心臓の自律回路を書き換えられてるんだから。

 

ああ、勿論俺の作った自動人形は書き換えられてないさ。

道具は使い手を裏切るべきではないからね。

 

「故に、一品斎の自動人形を持った人々はそれ以外の人々の盾となっていただきたい。我々がむやみやたらに逃げたら確実に犠牲がでるだろう。しかし、統制されたならば犠牲を皆無にすることすら不可能ではない」

 

静まり返った機巧都市に、ただただ俺の声のみが響く。

 

―――もう一押し、と言ったところか。

 

「貴君らの勇気と良心のみが多くの命を救いうる。どうか、この場は私の指揮に従って欲しい」

 

話し始める前に登っていた高所で自信ありげに胸を張る。

ハッタリオッケー。こういう時は張ったもん勝ちだ。

 

「貴君らの生命の安全はこの帝国海軍中将、毛利元景が保証する」

 

―――ウォォォォオ!

 

パフォーマンスが終わり、辺りは熱狂に包まれた。

内部に送り込んだ加賀さんを主導に戦闘隊列を組み替えながらもジワジワと学院の方へ非戦闘員を逃がしていく。

 

「……そう言えば」

 

一段落付いたような気がした時、陸のが不吉な声を出す。

 

「俺が突入したときには黒ずくめと将校っぽいのが居たんだが……」

 

「が?」

 

「邪魔してこないのは変じゃないか?おおかた、奴らが黒幕なんだろうし」

 

「何クソ当たり前なことを言ってんだ、陸の。黒幕が消えたって事は即ち―――」

 

第二弾があるっつーことよ。

 

恐らく避難を遅らせるより大事な、何かが。

 

「中将さん!」

 

「どうしましたか」

 

「あれ!」

 

ジワジワ下げてきた前線、そこに自身の自動人形を操りながら暴走した自動人形たちを食い止めている一人の男が、街の中心部を指さす。

 

つまり、嘗て俺が金剛ストリームアタックをくらった地点あたりを。

 

「……機巧師団、か」

 

しかもあれは第一師団。精鋭を謳われたグレンダン中将の指揮下の部隊だぞ。

 

「我々を助けに来てくれたのでしょうか!?」

 

「……いや」

 

何だかんだ言いながら最前線で自動人形と生身で戦っていた陸の襟を引っ張り、目の前に写真をぶら下げる。

 

「おい陸の。黒ずくめってのは、こいつか?」

 

「ああ」

 

「じゃあ、将校っぽいのってのは……この軍人か?」

 

「よくわかるもんだな、あんた」

 

―――天を仰ぐ。

 

ヤッベ。想像しうる限り最低最悪の状況だな、これは。

 

「で、その写真がどうしたんだよ?」

 

「一枚目の写真は、『黒太子』エドマンド殿下。二つ目の写真は―――」

 

ボーアの英雄。英国の至宝。英陸軍の双璧。

 

様々な名前があるが、どれも彼を表すには相応しくはない。

 

「英国陸軍第一機巧師団師団長、グレンダン中将。今を生きる英雄さんだ」

 

「……つまりこれは、クーデターってことか?」

 

王位継承権第一位『黒太子』エドマンド殿下と、『英雄』グレンダン中将。

 

この二人による軍事クーデターが起こるかもしれないとは、思っていた。事前に準備もしていたし、対策も練っていた。

しかし。しかし、だ。

 

「最精鋭の機巧師団を引き連れた、軍事クーデターだよ」

 

一個師団丸々寝返るとは、予想外もいいところ。

いや、対策はあるけどもな。

 

「おい陸の、今から俺が自動人形の前列を一掃する」

 

「そんなことが出来るのかよ?」

 

「出来るから言ってんだよ。

で、一掃したら学院に一目散に逃げ込め。正規教育を受けた軍人に寄せ集めでは勝てるはずもないからな。戦術的撤退だ」

 

というか、今まで死者もなしによくやった方だと俺は思うよ。

 

「あんたは?」

 

「俺が逃げたら主砲弾が降り注ぐから……まあ、君たちが避難し終わってからかね。逃げるのは」

 

「……そうか」

 

周りの機巧魔術師たちに何事かを告げ、一転攻勢にでる。

 

暴走した自動人形たちに、戦闘センスは欠けている。たちまち突き崩され、戦列が後退した。

 

その瞬間を、見逃さない。

 

「沈め」

 

凹凸している所為か横幅30mに渡る戦線を、提督の魔術が圧し潰す。

グチャグチャにひしゃげた自動人形達が地面に沈んだと同時に、寄せ集め集団は駆けていく。

 

「加賀さん、夕張」

 

「何かしら」

 

「君に少し、悪いことをします」

 

強制的に回れ右。絶対的な支配が彼女ら二人の身体を流れ、あらがう間もなく屈服させた。

 

『強制支配』。自動人形を思い通りに、強制的に動かす技能である。

 

「なっ―――」

 

「加賀さん。君は俺に対して忠誠に篤い。だからこそなんだ。ごめんね」

 

支配された箇所は神経の一筋すら自らの意志で動かすことは出来ず、ただ使えるは言葉のみ。

 

「提督、あなたは―――」

 

「いや、どうせまだ反乱軍認定されてない英国陸軍には手出せないからさ。犠牲は少ない方がいいでしょ?」

 

じゃあね、と笑って手を振り、逃げていく英国臣民と無理矢理撤退させられていく加賀さんを背に一人立つ。

 

「ごきげんがよろしいようで、エドマンド殿下」

 

「君も随分と小癪なことをしてくれたじゃないか」

 

数分間、師団の足が止まる。

避難し終えた彼らの足もまた、止まった。

 

加賀が王立機巧学院の門を通ったとき、彼女の鋭敏な鼓膜を乾いた音が震わせる。

 

―――英国史上有数の規模を持った軍事クーデターが、始まった。

 

 

 

 

 

 




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