ビッグ7は沈まない   作:ドラフェノク

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提督パパン……全自動敵国瓦解装置。ロシアのトラウマ。提督の殆ど(謀略・政略・戦略など)上位互換。本名・吉川経景。ロシアの帝政が揺らいでいるのはだいたいこいつの所為。1906年没。

金薔薇……原作屈指の危険人物にして、(敵を跡形もなく)腐(らせる)女子。尚、今作では更にチートな模様。二世紀生きてる。

提督……提督パパンの下位互換とは言ってもそこそこ使えなくもない能力と、他の追随を許さない技術力を持ち、ほっといたら一日に一個旅団並みの兵力を作る。きっと早死にする。

三人揃うと敵国終了のお知らせが鳴り響くことになるが、揃うことはなかった。

……なんだこのチート一族は。たまげたなぁ(他人事)


『T』に別離を《Ⅵ》

第一機巧師団本陣は、ざわめいていた。

計画は何のほころびもなく順調に進んでいたのだ。邪魔になるであろう存在を消し、機巧都市を完全に制圧する事に成功。まさに完璧なすすみ具合だった。

 

しかし、その完璧は一つのほころびを端緒に、四つの要因によって打ち砕かれることになる。

 

まず一つ、消したはずの存在が行動不能となった期間が極端に短くなったこと。

 

二つ、その存在からの魔力供給が途絶えても特記戦力たちは全力で動けたこと。

 

三つ、特記戦力たちの士気が鬼気を帯びていたこと。

 

そして、最後。

完璧に進んでいたはずの計画は、実は全体図を悟られていたということ。

 

長門は冷淡なまでに感情を殺して采を振るい、指揮官クラスの保有する非量産型の自動人形を拳と鉄火にて葬り去った。

 

加賀は静かに燃え、自らの未熟さに暗い憎悪を抱き、その魔術回路と艦載機を併用して淡々と、しかし苛烈に敵の数を削っていく。

 

金剛もまた、その魔術回路と脚を活かして巧みに敵陣をかき乱し、一撃離脱で敵を撃ち抜いている。

 

その奮戦ぶりは見事だが、何せ人形使いが居ないのだ。時間と共に解決するだろうと思った刹那、半数が裏切った。

 

最早訳がわからない。彼らはいつから裏切りを決めていたのか。祖国を裏切った自分たちから裏切ることは、本当に裏切りと言えるのか。本来の役目に返っただけではないか。

 

揺れる心の中、遥か後方で魔力が膨れ上がる。

それはたった二人で構成された二百人が一斉に突撃を開始した音なき鬨の声だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ。お主、実は時を止めたりなどしておらんか?」

 

前に立ちはだかった自動人形を居合で斬り、返す刀で横から迫る量産型を膾切り。

純粋な剣術のみで、自分の攻撃がかすりもしない。そんな奴らが百人と。

 

「あんたと一緒にすんなや」

 

「まあ、そう言うでないわ」

 

時を止めて疑似瞬間移動を繰り返しながら金色の燐光に加工した瘴気と毒をまき散らし続ける…つまり、かするどころか場所をつかむ前に瘴気に侵されて機能を停止させられる金薔薇が、百人。

 

「あれ?黒太子と英雄って司令部にいないの?」

 

役五分の戦闘の末に、本体二人が敵軍の核に辿り着く。

分体の約半数は未だ戦闘を続けているが、最早大勢は決しただろう。完全包囲の形からの総攻撃は伊達ではないし、耐えられるほどの温さでもない。

 

「……あれか」

 

分体を自身に集束させ、二百人が二人に戻る。

空に浮くのは、ダイダロス。恐らく地上の司令部はフェイクで、艦上に本物の司令部があるはずだ。果たして何に司令するのかどうかはわからないが、黒太子と英雄はあそこだろう。

この反乱の規模を考えるに、近衛も乗り込んでいると見て間違いはなさそうだ。

 

敵本陣から味方の後陣へ。再び増殖させた後続どもに本陣の占領を任せ、強大な魔力の元を辿っていく。

俺に銃弾と斬撃を与えてくれたイギリス機巧師団のみなさん。君たちは許そう。何故ならそれは命令だから。

 

しかし英雄グレンダン、てめーは許さん。

 

「ああ、提督」

 

「長門、ちょっと来い」

 

生死不明とは何だったのか。どんな修羅場でも買い物中にばったり会った感じなノリで話せることに定評のある長門を問答無用でカードにイン。

再び読み込んで呼び出し、さっさとこの反乱を終わらせるべく魔力のリンクを繋げる。

 

「おお、艦隊決戦か!?」

 

相変わらずなテンションの長門だが、残念ながら俺が計画に気づいてた時点でまともな戦いは起こらない。起こったとしても裏切りやらなにやらに塗れた汚い戦いが繰り広げられるだけだ。

 

「いや、勿論それはない」

 

「そうだろうなとは思っていたが……何というか、ブレないな」

 

 

その言葉、そっくりそのままお返ししよう。

 

パチリと指を鳴らし、念のために仕掛けていた装置を作動させる。

装置と言っても実体はない。セトの呪術を独自に改良して作った、足跡の残らない時限装置のようなものだ。

 

「何をした?」

 

「軽い火を起こす。それだけ」

 

ただし弾薬庫に、な。

 

うわ……という声が聞こえてきそうな長門のひきつったような顔を後目に、宙に浮かんでいるダイダロスの船底が突如爆発。周りを巻き込んで小規模・中規模な爆発を繰り返し、その船体が粉微塵に爆散していく。

 

あちらさんもまさか、あらゆる魔術の発動を阻害する『絶対王権』内で魔術が発動するなど思ってもみなかったらしいな。この威力。

 

空中で突如その巨体を煙と炎に包み隠されたダイダロスをただただ呆然と見つめるのは、戦うすべを失った機巧師団の兵達。

 

何が起こったのかがわからないって感じだね、君たち。その気持ちは分からなくもないけど……自分たちが戦う手段を失ったからと言ってボーっとしてたら実際死ぬ―――と、父が言っていたよ。

 

「……これまで死者ゼロでやってきたが、これは死んだんじゃないか?」

 

「いや、ない」

 

悪党ってのは生まれついての悪運に恵まれてて、天が裁きを下すと決めたその日まで、どうやっても生き残るもの。

 

更にその悪党にはボーアの英雄と、先に学院を襲撃した艦娘・亜種が護衛についているはずだ。死ぬようなことなんざ、ほとんどないと言ってもいいだろう。

 

「……やってくれたな」

 

「ほら、生きてた」

 

そう言った数秒後。灰と煤にまみれた黒太子が、黒い蛇を思わせる艦娘・亜種に護られ、地上に降り立った。

 

灰色の肌に、口だけしかない黒い頭部。その二頭の怪物を首輪と鎖で従え、黒い乙女は立っている。

 

艶やかな髪。シミ一つ無い絹のような肌。こちらを見定めるように見つめる鋭い目。

 

「やっべ、モロ好みじゃないか」

 

「……黙っているから何かあったのかと思ったが、軽口叩く余裕があるなら問題はなさそうだな」

 

珍しく、非常に珍しいことに、だ。

 

もう稀有に過ぎることに、長門がこちらからぷいっと視線を逸らす。

 

「私はあなたを……信じていたからその軽口は許容するが、加賀と金剛の前でそんな軽口は叩くなよ?」

 

「何で?」

 

「加賀は自分の無力を憎みながら泣いてたし、金剛は悲しさを隠して無理矢理テンションを上げようとしていた。とても見てられるようなものではなかったから―――この戦いが終わったら、ちゃんと気を使ってやれ」

 

……あー、そう。俺が死ぬとそんなことになるのか。

不謹慎だが、嬉しくもあるな。やはり人は、死んだら誰かに惜しまれたいものだし――――権力とか血筋とかを関係なしに俺を見て、その上でそうやって泣いたり悲しんだりしてくれるってのは、幸せなもんだ。

 

「長門はどうだったの?」

 

「あなたがあなたの責を果たして死んだならば、私は私の責を果たすまで。

悲しんだりするのは全てが終わった後でいいさ」

 

相変わらずのイケメンっぷりを発揮する長門の隣に立ち、高らかに宣言する。

 

「さあ、この反乱騒動を終わらせようか」

 

長門が頷き、前に出る。

 

―――そう言えばこいつ、貴様って言わなくなったんだな。

 

そんな締まらない感想を胸に、反乱騒動最後の戦いが始まった。




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