ビッグ7は沈まない   作:ドラフェノク

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金剛回です。


『T』に別離を《Ⅶ》

「おう!?」

 

口だけ頭の怪物の腕が薙ぎ払われ、俺の頭上を通過する。

 

なるほど、本体の人型は長門に行って背後の妖怪・口だけ頭は俺にくんのか。

 

薙ぎ払われた腕とは別の腕を振り下ろし、見事なクレーターを作り上げた妖怪・口だけ頭を見据える。

 

まあ、こいつだけなら何とかなる、が。

 

「あんたも居るもんな、英雄」

 

「いい反応だ」

 

後ろに瞬間的に移動して剣を振るってきた英雄の刃を二本の指で受け止め、ため息をつく。

 

……エドに冗談半分とは言え『互角』と評されたボーアの英雄と、妖怪・口だけ頭。少々同時に相手するには面倒な相手だ。

なにより―――

 

「しつこいなぁ……」

 

英雄と力比べをしながら妖怪・口だけ頭の一撃を屈んで避け、突っ込んできた二本角の怪物を片手だけで投げ飛ばす。

 

凍らせた挙げ句に車体を衝突させて撃破したのとおそらく同一個体であろう二本角。

 

妖怪・口だけ頭。

 

英雄。

 

この豪華絢爛な面子に対して、相手をするのは一介の提督。

 

化け物三人相手にノーマルな提督が戦いますか?おかしいと思いませんか?あなた。

 

「……む」

 

英雄との力比べが敗色濃厚になってきたので腹を蹴飛ばそうと脚を伸ばすが、突如として英雄の身体が霧散。俺が少しよろめくだけの結果に終わる。

 

一対一ならすぐさま体勢を立て直せばいい。しかし、複数戦においては僅かな隙は死につながるのだ。

 

そして、その僅かな隙を逃す二本角ではない。その重装甲を活かして突撃をかけ、俺を挽き潰さんと迫り来る。

 

後方からも妖怪・口だけ頭もが突っ込んできており、あと数分で激突・俺は健康的な背骨を失うであろう。

 

金薔薇は『バレないようにしろよ』という一言を守ってさっさと撤退しており、長門は敵と隙の伺いあいをしているから、援軍は望めない。

 

ならばどうするか。

 

「ほい、と」

 

右手を二本角に、左手を妖怪・口だけ頭にそれぞれ向かわせ、腕を掴んで互いを空中に投げ飛ばす。

 

右から突っ込んできた二本角は望み通りに左方向に。左から突っ込んできた妖怪・口だけ頭はこれまた望み通りに右方向に到着できたわけだ。

 

まあ、少しの痛みは伴ったがね。

 

横を見れば、少し長門が圧されているように見える。

こちらに妖怪・口だけ頭一匹を裂いているとは言え、敵が従えている妖怪・口だけ頭は左右二匹。実質的に二対一なのだから、多少の不利は否めまい。

 

それでも小技と主砲の砲火を的確に使い分けてダメージを与えているのは流石と言ったところか。

 

『アマイワァ…!』

 

「お前がな」

 

注意のそれた一瞬を狙いすました一撃が、俺の背中に繰り出される。

 

くらったら実際死ぬ。しかし、二本角よ。

 

「ぐるるる……!」

 

喰らうのは君だ。残念ながらね。

 

俺の背後を狙った二本角の背後に突如出現したのは、ほっぽちゃん(巨乳形態)。

背後を狙った因果応報か、二本角は爪を思いっきり背中に背負った化け物に突き刺され、地面に叩きつけられた。

 

そして、俺の斜め左後ろに突如英雄が出現。鋭い剣撃が目の前を通過する。

 

……最近の自動人形どもは瞬間移動するのがセオリーらしいな。どうも。

 

「一つ聞かせてもらおう」

 

「何かな?」

 

ひょいひょいと突き出される剣を避け、あるいは受け止める。

 

妖怪・口だけ頭の砲撃をスルーし、蛇の後頭部をガシャリと撫でる。

 

そんなこんなな攻防が繰り広げられている最中、英雄が剣撃混じりに口を開いた。

 

「ダイダロスに何をした?」

 

「簡単な時限式の発火魔術を仕掛けておいたんだよ。念のためにね」

 

「馬鹿な……『絶対王権』を直接くらうあの船内でそんな魔術が行使できるものか!」

 

馬鹿にされたとでも思ったのか、剣撃がより一層、力を増す。

だがしかし。

 

「わからないかな」

 

「何がだ」

 

「策ってのはさ、敵からしたら出来ないように見えることをしてみせるからこそ、嵌め殺せるんだよ。

つまり俺がしたのは基礎中の基礎みたいな策の積み重ねで、派手なもんなんて何一つない。そっちがただ不注意だっただけだよ」

 

剣を杖で受け、柄をカチリと回す。

 

鞘が消え、白銀と黒銀の刀身が露わになった。

 

「大方『ダイダロスは不沈艦だ』とでも言われてたんだろうけど……」

 

一太刀目。

妖怪・口だけ頭の腕を切り落とし、砲身も半ばまで両断。

 

返す刀で頭から幹竹割りに切り捨てて、英雄の方へと向き直る。

 

「不沈艦なんて、この世にはないんだよ」

 

外敵には強くとも、例えば第三砲塔が爆発したらサヨナラだ。沈みにくい艦はあるが、沈まない艦は存在しない。

 

「確かにそれも道理、か」

 

二対二にまで減らされた戦況の危うさを感じ取ったのか、再び身体が霧散し、その後にはガチンコの格闘中なほっぽちゃんと二本角が残される。

 

ほっぽちゃんに加勢してもいいが、またまた隙をつかれる可能性が無きにしもあらず。実質的に膠着状態だ。

 

「疾ッ」

 

長門の繰り出した砲撃が敵の美人の腹に当たり、爆発する。

ああ、もったいねー……美人なのにもったいねー……

 

『コザカシイ……!』

 

「硬いな……まあ、長々とやるから問題はないが」

 

ポツリと感想と感嘆の間の子のような台詞を漏らし、長門は軽々攻撃を避けた。

流石は連合艦隊旗艦。実際気違いじみた近接戦闘能力だと言えるだろう。

 

「それはあなたもだろうが」

 

「実際ノーマルなステータスの保持者足るこの毛利元景になんつーことを言うか、ながもん」

 

長門は砲弾を殴り飛ばし、俺は繰り出される太刀を再び纏った錆色装甲の姿で避け、振るわれた太刀を二本指で挟み込む。

 

「全く、人を実際気違いじみた近接戦闘能力の保持者だとか言うなよ。とんだ風評被害なんだからさぁ」

 

剣ごと霧散した英雄への対抗策に頭を回しながら、適当にそう答えた。

砲弾は殴り飛ばすものじゃなく、切り飛ばすものなんだからな?殴り飛ばすなんてまぁ、正気じゃないぞ。

 

「…………まあ、いい」

 

「何が?」

 

「いや、もう……いい」

 

拳を右腕の手甲で受け流し、懐に飛び込んで一撃。

話しながらの攻防とは思えないほど高度な戦いが、そこにはあった。

 

「……閃いた、が」

 

手持ちのカードが足りん。具体的に言えば加賀さんを使いたい感じなのに、その本人は今いない。

 

「提督、これを使うといい」

 

顎を右足で蹴り上げ、空高らかに吹っ飛ばす。

ミニスカートでよくぞやってくれたもんだ。健康的な肉付きの太股が大変よろしい。非常によろしい。

 

「……ぬ?」

 

受け取ったのは、一枚のカード。

 

「召喚のカードだ。まあ、簡易の空間転移魔術だな」

 

「お、ありがとよ」

 

これ、俺が『痴漢にあったときに使いなさい』って渡したカードだけれども、今は助かる。

 

英雄の剣撃をいなし、反撃にうってでる。

 

―――――零閃

 

放たれた不可視の斬撃は英雄が霧散した辺りに当たり、何かを切り裂いた。

 

落ちたのは、軍服の切れっぱし。

 

「……なるほど」

 

これは加賀さんの手助け要らんわ。自分の手札であるところのセトのオフェンシブ―――即攻性呪術で攻略が可能。

 

なら、そうだな。早めに長門の戦いを終わらせるか。

 

「金剛、来い」

 

『金』の一文字が浮かび上がり、膨大な魔力が場を満たす。

 

「……What?」

 

なぜ自分がここにいるかわからないと言うような顔をしたあと、こちらをゆっくりと振り向く。

 

「提督……?」

 

「おう、提督だ」

 

『信じられない』と言う表情から、顔のパーツ全てで喜びを表すような表情になり、目尻に涙を浮かべながらも太陽のように笑った。

 

わかりやすい。恐ろしいほどわかりやすい奴である。

 

「てーーーとくぅぅぅ!!」

 

「おうおう、心配かけたな」

 

ギシギシ言う装甲の耐久性に全てを託しながら、金剛の締め技めいた包容を受け入れる。

 

「生きててよかったデース……」

 

「せ、せやな」

 

ギシギシからメキメキに移行した錆色装甲に魔力を注ぎ、耐久力を底上げ。

 

生きててよかったデース、か。今死に瀕してるんだけどね。

 

「金剛、再会の喜びはあと。今は……」

 

「そ、そうですネ」

 

ピシッと英雄目掛けて指をつきつけ、金剛は元気に言い放つ。

 

「全てはYouを倒してから、デース!」

 

何をやるつもりなのかは知らんが、泣かれてるよりは元気な方がいい。

 

反乱騒動の終着が、刻一刻と近づいていた。

 




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