ビッグ7は沈まない 作:ドラフェノク
* + 比叡です
n ∧_∧ n
+ (ヨ(* ´∀`)E)
Y Y *
「Hey、提督、加賀!
……こっち、Come onネ」
「うん?」
力尽き、倒れ伏した榛名を寝かせ終えた金剛が『おいでおいで』とこちらを手招く。
彼女の背には、リビングルームがあった。恐らくは食事が用意されているのだろう。
「……ん?」
「どうかしたの?」
「ん、いや……何でもない」
一瞬リビングルームに紫色の瘴気が漂った気がしただけだから、実際なんでもないことだ。
瘴気を発生させる料理なんてあるはずがないし、な。
「金剛、榛名は?」
「機関部には問題ないデース。多分強烈なショックが襲ったとか……そんなことが原因だったんだと思いマース」
「霧島は?」
「眼鏡のツルを直しに行ってるけど、もう直ぐ帰ってくるはずデース」
「比叡は?」
「私の黄金のカリィスープを混ぜていてくれているはずデース」
なるほど、つまり金剛、比叡、霧島にはその強烈なショックは訪れず、隣で何やら考え込んでいる加賀さんにも訪れていない。
当然俺にも訪れてはない。
……何が原因だ?
気体毒物なら加賀さんもやられているし、金剛も無事ではすまない。
今居ない霧島を除いた俺たち三人が外に居たから無事だったというならば、何故比叡が無事なのか。そこらへんが説明できない。
「完成です、お姉さま!」
考えている間にも、五人分のお皿がよそわれ、配膳させる。
「ぽ!」
匂いにつられたのか、或いは潜るのに飽きたのか。背中に背負ったバックから、白い幼女が顔を出した。
「ほっぽちゃん、君が食べるには少し辛いと思うよ」
「カラ、イ?」
「そ、辛い。舌がピリピリして水が飲みたくなるような味のことをこう言うの」
「ミズ?」
「これ。冷たくておいしい、貴重な資源だよ」
最近少しずつ喋るようになってきたほっぽちゃんを最早定位置となりつつある膝に乗せ、少し長くなった白髪を手櫛で溶かしはじめる。
今更だが、俺は女の髪をいじるのが大好きらしいということに気づいた。
最初は長門の髪をいじるのが好きだと思ってたんだが―――つまるところ、節操がないのか。
「ウ、ミ?」
「海は辛いけど、水は甘いよ」
コップの中の水に手を突っ込んで遊ぶほっぽちゃんの二の腕を軽く掴んでやめさせ、紙ナプキンで紅葉のようにちっちゃな手を拭う。
「うっうー!」
霧島不在のため、待ち始めてから数分後。早くも待つのに飽きてきたのか、ほっぽちゃんがスプーンで俺のカレーの皿の縁をカンカンと叩きはじめる。
そして突き刺さる加賀さんの視線。襟元を掴む動作は素早く、尋常じゃなく手慣れていた。
「静かにしなさい」
「うー」
不承不承ながらも躾担当の加賀さんの注意には従う幼女に可愛さを感じながら、再びぶら下げられていた状態から俺の膝へと帰還したほっぽちゃんの小動物のような動きに注意を向ける。
「右上げて」
「ぽ」
「左上げて」
「ぽ」
「左下げないで右下げて」
「ぽ……?」
バンザイしている自分の腕をキョロキョロと見回し、左手を下げたと思えば上げ、右手を下げたと思えば上げる。
単純な文には対応できるが、こういう類のひっかけにはまだまだ弱いのだろう。
「お待たせしましたー!」
飽きもせずに右手と左手を上げたり下げたりしているほっぽちゃんが混乱状態に陥りかけた瞬間、まさにベストなタイミングで霧島が新調した眼鏡をカチカチといじりながら入室。
机に肘を突いて、突いた手に頬を乗せてこちらをニコニコ見ている金剛と、そんな金剛をラブビームを放ちながら見ている比叡に、虚空を見つめている加賀さんに、入室したての霧島。
「お姉さま、榛名は……」
「寝込んでマース。何かあったみたいなんデスガ……」
意識を取り戻さないようではどうにもならないとばかりに肩をすくめて首を左右に振る金剛を見て何かを察したのか、それ以上問うことなく席に着く。
「では、反乱騒動鎮圧を祝して」
「「「「「いただきます」」」」」
ワインを満たしたグラスを掲げ、申し訳程度の音頭をとった俺に唱和するように、四人の声が部屋に舞った。
乾杯後の礼儀として一口分の飲み物を口に含み、カレーに匙をのばす。
そして。
「!?」
加賀さんの無表情に緊迫が走り、
「Oh!?」
金剛の顔色が目まぐるしく変わり、
「!!?」
霧島の眼鏡に何故か罅が入り、
「ヒエー!?」
比叡もまた顔色を鮮やかに変化させる。
「うまいな」
「ぽ?」
平和な顔をしているほっぽちゃんと、カレーをよく咀嚼した後によーく味わって飲み込んだ俺だけが、異質な雰囲気を醸し出していた。
「…………金剛さん、何を入れたの?」
「…………Potato、Carrot、各種Spiceデース」
口に含んだ瞬間に先の反乱での『もしも』に持たせていた万能解毒剤を飲み込んだ二人以外、完全に目を回してノックダウン。
「……無理心中?」
「ありえまセーン!」
「……ぽ?」
あんたら何やってんの?と言うニュアンスを含んだようにも見えるほっぽちゃんの一言に、ようやく無事だった二人の視線がこちらに向く。
「提督ぅー!?何平然と食ってるデース!」
「……」
凄まじく焦った様子で食器を取り上げようとする金剛と、少し潤んだ目&無言ながら襟を持ってグラグラ揺らす加賀さんに共通するのは、焦りと驚愕。
なるほど、この料理は中々にやばめな物だったらしい……が。
「うまかった」
残念ながら、手遅れである。
「……提督?」
今聞いた言葉が信じられないとばかりに、加賀はおののきつつも聞き返した。
金剛が黙っているという珍しい状況の中、解毒剤を投与した後に霧島と比叡をリビングルームにあるソファーに安置した提督は、またもや信じられないことを言い放った。
「おかわり」
そう言った瞬間、厨房からこのリビングルームに続くドアが開け放たれる。
出て来たのは、金髪の少女。
やけに露出度高めの服装を抜きにすれば、年齢は十五歳くらいといったような感じだろうか。
「このカレーを作ったのは誰じゃあ!!」
何てことない、テロリストが現れた。
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