ビッグ7は沈まない 作:ドラフェノク
この話には、日本以外に忍殺語という新言語が使用されています。ヘッズの方は心配していないが、一般の読者=サンは訳が分からないこともあるかもしれません。
なので、一応最初に謝っておきます。
すみませんでしたぁ!
何人かの人から『おい、日本語で書けよ』と言う指摘があったならばすぐさま校正致しますので、最新話を見て『ちょっと何言ってるかわかんない』とばかりに低評価乱舞するのはご勘弁を!
奇襲。アンブッシュ。様々な言い方があるが、要は不意打ちである。
見たところ目の前のニンジャめいたアトモスフィアを纏った女の搭載する魔術回路は、影に潜るとかそう言ったたぐいの―――つまりは、アサシンのような役割を持つものだと考えられた。
「ドーモ、ヤセンスレイヤー=サン。ライコネンデス」
諜報機関の長だけあり、彼は各国の文化や戦術、固有の技能を持つ戦士たちに通じている。
ニンジャは、日本がまだ国内で血を血で洗うツキジめいたサツバツ空間を構成していた頃に暗躍した存在だ。
軒猿、草の者、乱波など様々な言い方があるものの、彼ら彼女らは等しくニンジャと言う呼称で呼ばれる。
暗殺・諜報を専門とした彼らはこちらとしても興味が引かれる戦士たちであり、ライコネンはニンジャたちが遵守する一通りの作法と礼儀に通じていた。
まず、アンブッシュは名乗りを上げる前に一回のみ許される。
が、これに失敗した場合は両手を合わせて腰を曲げ、実際丁寧さ重点な方法でアイサツをせねばならないのだ。
このアイサツ中のアンプッシュはスゴイ・シツレイにあたり、ほとんど行われないが、何せ初めて見るニンジャなのだ。ライコネンが気を払ったのも無理無きことであろう。
身体を黒い粒子に変えながら相対するニンジャを見、ライコネンは緊張の糸を張り詰めた。
ニンジャ。日本の要人の影に隠れて敬語を行う、実際奥ゆかしさ重点な戦士である。
彼が魔王であるとはいっても、実際コワイのだ。
「イヤー!」
黒い鱗粉めいた粉を撒き散らしながら、その場でしめやかに霧散する。
霧散した身体は宙に消え、行き先を悟らせることなく消え去った。
「………」
自分、ニンジャ、火の檻。
その配置の都合上、火の檻がニンジャの背後に隠れるのにお誂え向きな影を作り出しているのだ。
これは実際、スゴイ・フリ、だ!
間髪入れず前に広がる影から迫る短刀を身体を右にずらして避け、後方から迫る風切り音に気づく。
「イヤー!」
ニンジャの身体が影に溶けたように、足元に突如発生した火柱に身体を溶かし、飛来する短刀をすり抜けさせる。
しかし、咄嗟に魔力を持続時間は長くない。ライコネンはその身体を生身のものへと戻そうと―――
(この気配……!)
した瞬間に、三段構えの最後の襲撃を察知。側面から迫るニンジャ、ヤセンスレイヤーを視界にとらえた。
肉体半分、火半分。中途半端な状態でヤセンスレイヤーの攻撃を受ければ、実際死ぬ!
「―――ッ!!」
類い希なまでの魔力操作の腕で、ライコネンは決断的に魔術回路を起動した。
自分の身体を分離、その後簡易的な火の檻を作って攻撃を中断させ、再び火と化して距離をとる。
標敵まであと僅かにまで迫ったヤセンスレイヤーを、猛火があぎとを広げて待ち受ける。このままでは、飛んで火に入る夏の虫、モスキート・ダイビング・トゥー・ベイルファイヤだ!
「ウカツ!」
火のあぎと有れば、即ち影あり。
待ち受けるベイルファイヤが作り出した影がライコネンの前に盾めいて展開された。
何たるニンジャ俊敏性か!ライコネンは驚愕した。
作られた影の盾を壁代わりにし、更には火によって盾が溶かされる前にその表面を蹴り、とんぼをきって距離をとる。
これが刹那の内に行われたのだ!
「ライコネン=サン、るっくあっとみー、よ!」
凄まじい棒読み英語に唖然とし、聞き取れた自分に賛辞を送る。
と言うかこのニンジャ、今までニンジャめいた言葉しか発していなかったのは、英語が話せなかったからではないか?
「……ヤセンスレイヤー=サン、もしかして英語が」
「ニンジャが英語を話せますか?おかしいと思いませんか?あなた」
「アッハイ」
こちらが日本語を話せるというのに、向こうは無理。この格差に不満を抱きながら、ライコネンは構えた。
ヤセンスレイヤーの口元には『夜 戦』と書かれたメンボが装着され、彼女の身体に巡る血中魔力が―――
「ニンジャの使う魔術は実際カラテだ。イイネ?」
「アッハイ」
血中カラテが高まりを見せる。
これは音に聞く、ニンジャの秘技。暗黒カラテ奥義―――
「リブート・ナイト・エントリー!」
太陽が闇に包まれ、光源という光源が消え去った。
月もでない、星もない。火をつけようにも阻害されており、生半可では魔術が使えそうにない。
「さあ、私と夜戦しよ?」
反響めいたボイスが響き、辺りの闇が不吉にざわめく。
背後、金属の飛翔する独特の音が、鳴った。
無音を切り裂き、刃が迫る。頼れるのは音。それ以外は嗅覚だが、彼はまだまだニンジャとしては半人前。聴覚のみでしか察知ができないのだ。
「―――」
無音で避け、辺りに視線を巡らす。
―――何も見えないというのは、かくも精神を削るものだったか。
そんな彼の元に、またもや不快な音が届く。
金属の刃が擦れ合うような、そんな軋むような音だった。
「……くっ!」
苦労して作った火を指先に灯し、辺りを見回して戦慄する。
周囲全てが、短刀に埋め尽くされていたのだ。
「突撃、よ!」
ヤセンスレイヤーの声が響く。
やはり、日本語ならば普通に喋るようだ。
そんな暢気な感想を持ちながらも、ライコネンは体内魔力を極限まで高める。
威力・操作。それら全てをこの空間のレジストに向け、闇を一点残らず焼き払わねば生はない。
「イヤ―――――――ッ!!」
血中魔力が最大の高まりを見せ、辺りを白炎が覆い尽くす。
放たれた短刀をも溶かす最大火力を解き放ったライコネンは、中天に上がる太陽を見て安堵した。
体内魔力は著しい現象を見せたが、それはヤセンスレイヤー=サンとて同じこと。あとは互いの高めた空手をぶつけ合うのみ。
「ライコネン=サン……」
「何だ、ヤセンスレイヤー=サン」
所々破れた服が痛々しいが、敵に情けはかけられない。
だが、ライコネンは命乞いならば聞き受ける度量はあった。
「何たる、ウカツ。やはり貴様はニュービーよ……」
背後に迫る、黒い影。
振り向いたときにはもう、遅い。
「―――これで詰みだ、ライコネン」
隻眼の狼の爪が、ライコネンの胸に突き刺さっていた。
読者=サン。読了ありがとうございました。感想・評価いただけると(特に高評価重点)幸いです。