カランコロンっと下駄の音が響き……山如は自宅のドアを開ける。
一軒家であり……それなりに大きい平屋である。
心操がこの家に招かれるのも既に4桁を超えている。
駒草家と心操家は2人が幼少期からの付き合いであり、互いの子供を預けられるくらいに信頼できる存在であり、長きに亘り家族ぐるみの付き合いである為……1人娘である山如の部屋へと異性である心操が入れるくらいには関係が良好である。
もちろん、逆も可能である。
「先に部屋行っててくれ……少し準備してから行くから」
そう語る山如。
山如の部屋は和室であり勉強用の卓と隣には布団が敷かれている。
その背後には本棚があるのだが本の内容は100冊の内50冊くらいはトランプや花札、世界各国のあらゆるギャンブルのルールブックである。
残りの50冊はカジノ関連の書籍……本棚の横に置かれているのはカジノゲームで実際に使う道具一式。
聞けば博打好きは駒草一家の血筋らしい。
山如は原理的に勝てないゲーム、またはルール上必敗が確定しているゲームやギャンブル、賭博でさえなければどんな勝負、どんな内容のゲームだろうと確実に勝てる程に賭博師として熟達している。
駒草カジノアミューズメントパークという施設を世界的に展開、運営している世界的大企業の1人娘、それが駒草山如である。
先に山如の部屋へと通された心操はいつもの様に対面になる様に座って山如を待つ。
数分もすると扉が開きお盆に2人分の麦茶とサンドイッチといった軽食を載せてきた。
「さて……食べながらで構わない、試験の反省会をしようか」
そう語る山如。
そうして……心操と山如は互いに試験の反省会で2時間程語って語って語り尽くす。
実技で取れたポイントは32ポイント……これだけでは合格は厳しいだろう。
だがそれは山如も同じ。
34ポイントしか取れていなかったのだ。
「……ま、如何に此処で合否を論じても結果が来ない事には不毛な遣り取りに過ぎない……反省会はこれくらいにして如何かな? コイツで一勝負、ゲーム内容はポーカーで」
そう言って取り出したのは未開封のトランプ1セットとカジノでよく見る6種類のチップ。
互いに150,000のチップを持ち金としてゲームをスタートする。
ディーラーは山如が務め……ゲームが開始される。
15分後。
勝ったら負けたりを繰り返して互いのチップに変動はほぼない。
そして始まる8ゲーム目。
3枚チェンジ後の心操の手はかなり良い。
対する山如もかなり強い手が入っているのが長い付き合いで理解できるが……此処で勝負を仕掛ける。
「……オールインだ」
手元に置いてあるチップを全て前に押し出しつつ宣言する。
それに対して山如は不敵な笑みを浮かべてそれを受ける。
「怖いなぁ……余程のよい手が来てるのかな? 受けよう、此方もオールインだ」
……
心操人使の手はKのフォーオブアカインド。
なるほど、これならばオールインするのも頷ける。
この手に勝てる手はジョーカー抜きのこのゲーム内ではこの手に勝てるのは2つ。
Aのフォーオブアカインドかストレートフラッシュ。
負ける確率の方が少ないのだからオールインするのも納得だ。
「だが……惜しかったな」
そう告げて自身の手を公開する山如。
山如の手はAのフォーオブアカインド。
それを見て残念そうに項垂れる心操。
「勝てると思ったんだけどなぁ……」
そう悲しげに語る心操だが対面の山如から称賛の声がかけられる。
「ポーカーフェイスも完璧、賭けに出るタイミングも完璧……もう少しで負ける所だったのは私の方さ、勝負は時の運……だからこそ運以外のあらゆることを塗り潰すのは定石だ。そうして隙間を埋めていって、運だけが純粋に残った時── 最高の賭けになるのさ」
実際……山如が化け物レベルで強いから霞んで見えているだけでそれに喰らい付いていける心操人使も充分に強い。
それこそ単なる素人相手ではゲームにならぬ程に熟達している。
山如は手元のチップを再度振り分けて今度は別のゲームを行なっていった。
次なるゲームはブラックジャックである。
そうして……部屋の熱気はどんどん上がっていった。
試験後同日。
雄英高校では試験の合否を決める会議が行われていた。
モニターに映し出される結果とともに語られる。
そうして……順々に精査し終わり駒草山如の試験結果と合否判定を降す。
教師の1人が語る。
「駒草山如……個性は『煙草の煙で精神を操作する』個性ですね……直接的な戦闘能力に欠ける中、自分のやれる範囲内でポイントを獲っていたのは評価できます……そして、このシーン」
モニターに映し出される映像はお邪魔虫と呼称されていたロボット。
それが出現した際、山如は己が個性でパニックを鎮めて纏め上げていた。
受験者に秘匿されていた
「煙草が個性発動に必須となると……未成年喫煙で罰せられません?」
尤もなその問い掛けに根津校長が口を挟む。
「その疑問は尤もなのさっ、だけれど彼女はその辺りの許可はしっかりと取っている……何よりもこの人数を纏めて制御出来ているのは驚嘆に値するし伸び代が凄い、筆記も全科目ほぼ満点に近く、実技でも一定以上の成績を残している……彼女を落とす意味は無いのさ」
そう語り……続いては心操人使の合否結果へと移りモニターに映し出される。
そうして……話は続いていった。
試験から数日後。
駒草家は心操家にお邪魔しティーパーティーを始めていた。
そして、山如は心操の部屋で、心操と共に封筒を見つめている。
2人がその手に持っているのは雄英からの合否通知が入っている封筒。
山如は自身と心操のを交互に見遣る。
心操家の家族からはもはや実の娘同然に扱われている。
尤も、それは逆も同じなのだが、駒草家では心操人使は実の息子同然の歓待を受けている。
意を決して封を破る山如。
映像投影機がコロンッとテーブルに落ちて映像が投影される。
全身真っ黒な服に、よく分からない布をマフラーのように首に巻いている男性は駒草山如の名前を読み上げて獲得ポイント数と確定したクラスを告げ……次に行こうとした所外にいた別の教員が何かボディランゲージでもしたのかガリガリと髪を掻いて言い忘れてたと前置きして……語った。
『ここがお前のヒーローアカデミアだ』と。
山如は無事合格。
残す懸念はただ一つ……。
隣に座っている心操人使。
心操も意を決して投影機を投影させる。
すると……見事にヒーロー科へと合格していた。
互いに合格を喜びヒシッと抱き合う2人。
スタート地点に立てた、一先ずは互いにその事を喜びあった。