2日目午前、みっちり詰め込まれた5教科の授業を終えると午後はヒーロー基礎学、オールマイト先生による戦闘訓練。
それぞれ入学前に提出した『個性届』と『身体情報』を提出すると学校専属のサポート会社がコスチュームを用意してくれる。
個々人の『要望』を添付する事で更に個々人に合ったコスチュームが手に入る。
どうしてそんな話をしてるかというと。
女子更衣室内で着替えをしているのだ、コスチュームへと。
山如の要望したコスチュームは和服であり個性発動に必需品となる煙管と特別製の葉を入れた小物入れ、そして火を灯す為のジッポライター、そして龍の絵が描かれた扇子が帯の所に差し込まれている。
艶やかな赤い着物で、胸部から腹部の帯にかけて濃くなっていき、下半身は紫色のスカートを履いており履き物は下駄を着用している。
見た目からして……博徒を思わせる風体である。
口に咥えている煙管とその眼差しから……凄腕のギャンブラーをも思わせる。
和装テイストの姿が一際際立つ。
芦戸さんや耳郎さんからはカッコいいと褒められて照れる山如。
そうして……初のヒーロー基礎学戦闘訓練の授業が始まった、
そうして、オールマイト先生より説明が告げられる。
曰く、賢しい
故に基礎を知る為の実戦との事で2VS2の屋内戦を行う。
制限時間15分、
ヒーローチームは『
ヒーローチームと
5分間は敵ヴィランチームにセッティングとして諸々の準備をする時間が与えられる。
そうして訓練を順々で行なっていき残す所は……。
ヒーローチーム・轟焦凍&八百万百チーム。
まさかの組み分け結果に笑みが溢れる山如と心操。
対するは……推薦2人組。
準備時間の5分をフルに使い山如は核がある部屋と言わず……建物全体に紫煙を行き渡らせる。
煙自体、視認性が非常に悪い……行き渡った煙は既に見えなくなっている。
山如以外には判別出来ず、匂いも無い……何よりも煙そのものを自由自在に操作できる故、判別など山如以外には煙が今何処にあるかなど判別が不可能。
そうして……5分が経過した瞬間に建物が丸ごと凍らされる。
下駄に素足の山如は足首までガッツリ凍らされており、心操も同じ状況だった。
「さっむ……凍えちまうだろこんなの、なぁ心操」
身体を震わせながらそう語る山如。
心操も足首までガッツリ凍っており動けるような状況ではない。
そこへヒーローチームの轟焦凍と八百万が乗り込んできて語る。
「動いてもいいけどよ、足の皮剥がれたら満足に戦えねぇぞ? 動けない状態で……目の前には2人のヒーロー、降伏しろよ」
圧倒的優勢からの降伏勧告。
涙が出るほど嬉しい御言葉に足首以外は凍らされていない山如は煙管を深く吸い込んで紫煙を燻らせつつ言の葉を返す。
「……そこの八百万お嬢様から私の個性を聞いてないのかな? 私の個性を知ってたら足首なんてものでは済まさない筈なんだが……おおかた話を聞かずに最初の一手で終わらせる気だったのだろうけど……猪突猛進は悪い癖だよ? 轟焦凍さん」
そう煙管を咥えて語り建物内に行き渡らせていた紫煙を轟焦凍と八百万の周辺に固定させて行き渡らせる。
口と鼻付近に突如として立ち昇ってきた煙……吸引をなんとか防ごうとしたが極めて少量の煙の吸引とて精神を操作できる。
煙を吸った時点で終わりなのだ。
そして……精神操作の恐ろしい所は此処からだ。
精神操作とは突き詰めれば極めて強力な暗示に近い。
一気に陰鬱の状態に操作し精神状態を落として轟焦凍を徹底して虚脱状態に陥らせて無力化する。
ただ一手で劇的に形成逆転させる山如。
だが八百万は諦めてはいない。
最後の最後まで諦めてなるものか……そう強い決意と眼差しで語りかけてきた。
そこへ……轟焦凍の声が響く。
「八百万‼︎ 下がれ‼︎」
山如の燻らせる煙の影響下から立ち直ったのかその声に従いつつ返事をした瞬間……糸が切れた操り人形の如く動かなくなる八百万。
その声の主は正確には轟焦凍ではなかったという事。
山如の後ろに居た心操人使が声帯模写で焦凍の声音を模写して叫んだのだった。
片や足首をガッツリと氷漬けにされて動けない
片や山如の煙と心操の洗脳で動けないヒーローチーム。
全員動けないが……勝負の行方は明白であった。
オールマイトより
解除した瞬間……ハッとした表情で此方を見遣る轟焦凍。
山如は肩を竦めながら轟へと語る。
「悪いね、勝負の世界は残酷なんだ……それはさて置き八百万お嬢様を起こしてくれると助かる、肩を軽く叩く程度の衝撃で起きるから……ほらっ、私達は動けないからさ」
そう告げると八百万の肩を軽く叩いて揺さぶる焦凍。
ハッと意識を取り戻し何が起きたか察する。
八百万の顔を見て心操は顔を背けていた、個性を知ると人は自分達の近くから居なくなった、犯罪者向き、
心ない言葉を心操も山如も痛い程浴びせられて来たのだから当然と言えば当然だ。
「心操さんの個性ですか……素晴らしい個性ですわね」
しかし、今までとは違う反応であり面食らう心操人使。
驚愕で、呂律が回らない。
「素晴らしい……?」
ようやく絞り出したその言葉を再度反芻する。
反芻した言葉を更に重ねて八百万は語る。
「えぇ……とても素晴らしい個性ですわ、この個性ならば相手を無傷で捕らえる事だって出来ますわ……それに先程の声帯模写……完全に轟さんの声と誤認識する程完璧なものでした、そこに至るまでの修練と執念、そして血の滲むような努力……全てに敬服します、過去に何があったかは山如を見れば想像がつきます……ですが、とても、とっても素晴らしい個性だと私は思っております……これからの訓練も頑張って行きましょう」
そうして……初の戦闘訓練は幕を閉じたのであった。