君がカードを引いたなら   作:七紫ノごんべえ

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楓ルート 十七

 

 白栞ちゃんの場に、四つの鬼門が揃う。

 この展開を阻止することが、最も勝率の高いルートだったのだが。やはりそう上手くはいかないようだ。

 

「これで鬼門も揃った。条件を満たした〈悪鬼羅刹・ジエンド〉が場に出るよ」

「どうぞ。対応はできないよ」

 

 白栞ちゃんがトラッシュから切り札を繰り出す。

 本当にふざけたカードだ。

 

 悪鬼羅刹は、四種の鬼門がそろった際にデッキかトラッシュから召喚可能なガーディアンだ。

 圧倒的なスペックを持つ、極めて凶悪な切り札には四つの効果がある。

 

 そのうちの一つ。プレイヤーのターンに一度、相手のガーディアン二体を破壊する。もしくは相手に十点のダメージを与える。この効果は相手……今回の対戦の場合は僕が選ぶことになる。

 ガーディアンが二体破壊できなければ、強制的に十点のダメージだ。

 

 また、破壊耐性も持っている。鬼門が四枚揃っていないとそれらの効果は無効となるため、倒すためにはいずれかの門を破壊しておく必要がある。

 デメリット効果もあるにはあるのだが……。

 

「悪鬼羅刹の効果を使用するよ」

「ガーディアンは破壊しない。十点のダメージを受けよう」

 

 僕の宣言に、白栞ちゃんは少しだけ笑みを浮かべた。

 判断に対しての嘲笑ではないはずだ。現状、僕のライフには余裕があった。

 一方で、ここで盤面が壊滅すれば勝てる試合も勝てなくなる。

 

「悪鬼トークンで楓ちゃんに攻撃」

「受けるよ」

 

 これで僕のライフは二点になるが、一度に十点も与えるカードが存在しているのだから誤差だろう。

 不用意にガーディアンを減らしてしまうと、ダメージを避けられない。

 幸いこっちはまだガーディアンの数に余裕があるため、次のターンは十分に生き残れるはずだ。

 

「僕のターンだね。手札からトトちゃんを召喚して、ポポとププを強化。さらにトトちゃんの効果も使って、デッキからガーディアンを展開」

「悪鬼羅刹のダメージ回避のためのガーディアンか。ジリ貧だね」

「どうかな。鬼門を欠けさせれば良いんだろう? 手札から〈じゃれつく牙〉をプレイ!」

 

 自分の場にいる獣ガーディアンの数に応じて能力が変わるスペル。トトちゃんと相性がいいからと、結翔くんが勧めてくれた一枚。

 場に四匹いる時の効果は。

 

「相手の場のカードを一枚破壊し、カードを一枚引く」

「対応はないよ。どの鬼門を破壊する?」

 

 公開情報を脳内で整理する。確率で言うなら東だろう。すでに一枚破壊していて、今場に出ているのが二枚目だ。

 だが、結局手札にある可能性もある以上、悩んでも仕方ないようにも思える。確率に基づいた思考も、運が悪ければ無意味と化す。

 

「東だ」

「……ふーん。いいよ、破壊されるね」

 

 東の鬼門がトラッシュに送られる。

 次のターンに場にプレイされなければ、悪鬼羅刹もただの置物だ。そうなれば返しの僕のターンで破壊も可能だろう。

 

 動けるガーディアンはすべて白栞ちゃんのライフを削りに行く。一体は悪鬼トークンに阻まれたが、着実にダメージを蓄積できているのは事実。

 そろそろ彼女も余裕が無くなってくる頃だろうか。

 

「私のターン。手札からドロソをプレイ。通る?」

「ああ。それで鬼門を引かれてしまったら仕方ないさ。それに、元々引き込まれていた場合のリスクもあるからね」

「そうだね。ほんと、桂木さんはセンスあるなぁ……。 変な気を起こさなければ、結翔の理想のチームが作れたかもしれないのに」

「理想のチーム、ね」

 

 本当に、それが結翔くんの理想だと思っているのだろうか。

 彼女の目に映っているのは、結翔くんの過去に過ぎないというのに。

 

「〈東の鬼門〉をプレイ」

「持っていたか……それとも今のドロソで引いたのか。何にしても、それを通すわけにはいかないな。妨害を使おう」

「だよねぇ。でも私も、邪魔されるわけにはいかないの。〈呪法・呪い返し〉を発動!」

 

 まずい、と思った時には遅かった。

 鬼門を無効化しようと試みた僕のスペルを打ち消したそれは、カウンターとして僕のガーディアンを消滅させる。

 そして。

 

「悪鬼羅刹の効果を発動!」

「っ……ガーディアン二体を破壊する」

 

 これで場のガーディアンは全滅だ。

 ライフはギリギリ残っているが、手札は二枚だけ。そして、鬼門を破壊できるカードはない。

 ドローの内容次第では、まだ戦えなくはないが……。

 

「残ったコストで手札からガーディアンを二体召喚すれば、次のターンもギリギリ生き残れるけど……いつまで延命できるかな?」

「どうだろうね。最後まで何があるか分からないのがアビカだろう?」

 

 ターンを貰い、山札を一枚引く。

 手札の三枚でできることは。

 

「……エンドだ」

「ふぅん。コスト全残しでエンド、か」

 

 思案する白栞ちゃんは、手札をじっと眺めて動かなかった。

 

 

 ―白栞side―

 

 

「……ドロー。スペル〈悪鬼開門〉をプレイ」

「どうぞ。通るよ」

 

 悪鬼羅刹は盤面にいて、鬼門も揃っている。

 この状況においてガーディアンを展開せず、コストを構えて番を終えた。

 であれば、狙いはおそらくカウンタースペルだ。

 場にガーディアンを二体用意できるものか、ダメージ軽減か。ここでうまく生き残って、返しのターンに奇襲を狙っている? 

 

 この大事な局面においてあの表情だ。何かを構えている。

 汎用カードでここを乗り越える手段は思いつかない。であれば、マイナーな獣ガーディアン専用のサポートカードがあるとみて良いだろう。

 結翔ならそういうカードにも詳しい。私が知らないような驚くべき一手を繰り出してきてもおかしくはない。

 万全の体制を整えるべく、スペルで悪鬼トークンを召喚する。

 

 これでカウンタースペルが構えられていても、それを更に無効化する手筈だ。

 

「カウンタースペルで防ぐ? それとも、ガーディアンを用意できる算段がある?」

「どうだろうね。この状況を打破する手段があるなら、ぜひ教えてほしいものだけど」

「……白々しい」

 

 状況を考えれば私が有利。警戒するカウンターも抑えられる……はずだ。

 にもかかわらず、あの余裕は何だろうか。

 結翔がかかった勝負だ。お互いに絶対負けられない戦いなのだ。何かある、と言っているようなものだった。

 

「随分考えるね。もうやるべきことは一つだろうに」

 

 桂木さんの挑発を無視して、一番裏目が少ないルートを思案する。

 ここから返しで負けるとしたら……? どう考えても手札は足りないはず。次のターンで私のライフを削り切ることはできないだろう。

 ならばこのターンは悪鬼羅刹の効果から入って、桂木さんが構えているであろうカウンターを打ち消し、そこでさらに妨害を釣り出してサブプランへ移行するか? 

 このデッキには悪鬼羅刹以外の勝ち筋も搭載しているし、移行するのに必要な状況は揃いつつある。

 

「……まずは、悪鬼羅刹の効果を発動するよ」

 

 効果発動を宣言しつつ、手札の妨害に手をかける。

 おそらく裏目は少ないだろう。

 決着まで三ターンかかるプランだが、道中の安定性もある。これが一番安牌だ。

 そして。

 

「対応は無い。十点のダメージだね」

「そう。じゃあ妨害を……え?」

 

 ダメージを受ける? 

 桂木さんのライフは二点。これを受ければ敗北だ。

 

「……ダメージ軽減のカードでも使うのかな。それとも、ライフ回復で延命を……」

「無いよ、そんなの。やっぱり白栞ちゃんはアビカが強いなぁ」

 

 

 

 桂木さんは涼しげな顔でそう言い放つと、ライフカウンターを操作し、自らのライフをゼロにした。

 

 

 こうして。

 彼女との大一番は、私の勝利で幕を閉じた。




そろそろ楓ルート完結です。
もしよろしければ、評価などいただければ大変嬉しいので何卒よろしくお願いします…!
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