君がカードを引いたなら   作:七紫ノごんべえ

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共通ルート 六

 

 日曜日の朝にも関わらず、俺はいつもの待ち合わせ場所にいた。

 

 今日は白栞と千夏、桂木さんでショップバトルに参加することになっている。

 発案者は千夏だ。あいつは毎週参加しているのだが、桂木さんも経験を積みたいと相談していたらしい。

 で、どうせならみんなで行こうという流れになった。

 俺もそのショップにはよく行くのだが、ショップバトルとは別の用事だからなぁ。

 

「結翔くん、なんか荷物多くない?」

「あー、いつものクセでな。気にしないでくれ」

 パンパンに膨れ上がった旅行鞄を肩に掛けなおしながら、桂木さんに返事をした。

 まあ、カードショップに行くだけとは思えない荷物なのは認めるが、必要になったときに手元に無いと困るのだ。

 

 

 ショップに着くと、ショップバトルの参加希望者が受付に並んでいた。

 年齢層は……ジュニアが多いな。中学校低学年まで合わせると十五人くらいか? 

 

「あ、結翔兄ちゃんだ!」

 呼ばれた方を向くと、見知った少年たちがいた。

 

「おお、お前らも参加するのか!」

「うん! 聞いてよ、俺この前ついに一勝できたんだよ!」

「マジか⁉すげーなサトル!」

「結翔兄ちゃん! 俺もこの前一勝した!」

「タケヤス、お前もか! やったなぁ!」

「もしかして、今日は結翔兄ちゃんも出るの? 珍しい!」

「おお、トモミ! 今日は友達と一緒に出るんだ。もし当たったらよろしくな!」

 見知ったジュニアプレイヤーたちに瞬く間に囲まれる。

 こいつらが出るなら、デッキは一番派手なものを使うとするか。

 やはり全デッキ持ってきたのは正解だったな。

 笑顔の子どもたちに囲まれながら、俺はショップバトルの準備を始めた。

 

 

 ──楓side──

 

「な、なんか結翔くんすごい人気だね」

 子ども好きなのだろうか。参加者と思わしき子どもたちに囲まれ、次々と声をかけられている。結翔くんも楽しそうだ。

「ああ、あれは結翔の……なんつーか、弟子みてーなもんだ」

「弟子?」

 アビカにも師弟関係があるのかな。

 

「結翔はね、小学生や初心者にルールを教えたり、デッキ相談に乗ったりしてるの。このお店でも定期的にやってるみたいで、多分そこで結翔が面倒を見てあげた子たちじゃないかな?」

「インストラクターみたいだね。そういうイベントもあるんだ」

 言われてみれば、アビカについての説明が一番丁寧でスムーズなのは結翔くんだった。

 必要な情報を必要なだけくれたり、言語化しにくい疑問を汲み取って丁寧に教えてくれたり。

 

 それに今思えば、初めの頃は使うデッキもボクの力量に合わせてくれていた気がする。

 実際、彼がコンボデッキを好んで使うと知ったのは、つい最近のことだ。それまではスターターデッキや、それを少し改造したものを使っていた。

 

「みんな、何だかとっても楽しそうだね」

 子ども達に目をやると、みんな表情がとても生き生きとしていた。結翔くんのところに集まって、我こそはと結翔くんに話しかけている。

 レアカードが当たったとか、ショップバトルで勝ち越せたとか、クラスの子とアビカで友達になれたとか。日常で起こった色々な出来事を結翔くんに報告する子どもたち。

 結翔くんもそれを全部拾っていって、目を見て会話をしていた。嬉しい報告には一緒に喜び、悔しそうな子には一緒に悔しがりつつ前向きな言葉をかけている。

 なるほど、これは子ども達に人気なわけだ。

 

 この光景は、ショップの店員さんや常連さんにとってもお馴染みの光景なのだろう。遠巻きに見ている人たちの視線が優しい。

 同じようなカードショップであるにも関わらず、前回足を運んだ場所とはまるで空気が異なっていた。

 

「結翔はね、人とちゃんと向き合ってくれるの。そして、頑張ってることをしっかり認めて褒めてくれたり、悩んでることにはそっと手を貸してくれたり。ああ、今日もかっこいいなぁ結翔」

「ま、あいつが一番ティーチングが上手いと思うぜ。大会での勝ち方っていうのとはまた別でな。あいつは、アビカの楽しさを教えるのが上手いんだよ」

 

 

 その後始まったショップバトルでは、子どもたちと結翔くんの楽しそうな声が響き、みんなの笑顔で溢れていた。

「いくぜハルユキ! これが俺の必殺コンボだ、通ったら俺の勝ちだぜ!」

「させるもんか! 妨害を使って結翔兄ちゃんのカードを無効化!」

「うわああ! 俺の最強コンボがー……! やるじゃねえか!」

 

 勝っても負けても楽しそうな子ども達と、その報告をにこやかに聞きながら言葉をかける結翔くん。

 他の参加者も私たちも、それを微笑ましく、温かく見つめていた。

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