君がカードを引いたなら   作:七紫ノごんべえ

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結翔の選択により、未来が分岐しました。しっとりしていきます。


楓ルート 一

 

 ▶・来年に向けて実力を磨く

 

 翌日、いつも通り駅前での待ち合わせ場所に行くと白栞が先に着いていた。

 見たところ、どうやら千夏はまだ来ていないようだ。

 

「で、結翔はどうするか決まった?」

 挨拶を済ませて早々、白栞に今後の参加方針を聞かれた。

 よっぽど気になっているのだろう。輝く眼差しが俺の顔に穴が開くほどに見つめている。

 

「まあ、今年は準備の年にしとくわ。いきなり大会はちょっとな」

「えー! つまんないよー!」

 今まで競技的にアビカに取り組んだことが無いので、正直いきなり大会と言われてもあまり気乗りはしなかった。

 アビカ甲子園はチーム戦。もし自分の敗北でチームの足を引っ張ったらと考えると、どうしても勇気が出なかった。

 

 まあ、白栞や千夏がいるのだ。いい所まで行けたかもしれないが、そうなると俺もしっかり練習しなければならなくなる。今はまだ、アビカで勝利を追い求める気になれない。

 AWGは個人戦だし、勝敗の全ては自己責任だ。アビカ甲子園より精神的な負担は軽いが、一人で過酷な大会に挑むことに魅力を感じなかったし。

 どちらにせよ準備も実力も足りてないしな。

 

「いくらなんでも急すぎるんだよ。スポーツ系の部活だって、本番は二年からだろ? 今年は自分を鍛える年にするよ」

 一年間部活に打ち込んで実力が付いたら来年には考えも変わっているかもしれない、とは本当に思っているのだ。

 競技だけがアビカの遊び方じゃないしな。

 

 しかし、白栞はこの選択が不満だったらしい。

「結翔が出ないなら、私も出なくていいかなー」

 などと言い出す始末だ。

「お前な。そうは言っても、何にも出ないなんて訳にもいかねえだろ」

 いかんせん、白栞は世間からの注目度が高い。当然スポンサーからも相応の結果を求められているわけで……。

 部活としても学校の注目度に関わってくる以上、アビカ甲子園には出てもらいたいはずだ。

 

「というかお前、去年AWGでベスト8になった時に今年の大会のシード貰ってるじゃねえか。アビカ甲子園に出るからって言えば問題は無いだろうけど、AWGも出ないって言ったら結構うるさく言われるんじゃねえの?」

「う、うう……。正論は時に人を傷付けるんだよ……?」

「知るかよ……」

 

 結局、色々と確認を取った結果、AWGの参加は避けては通れないようだった。

 しっかり落ち込んでいたが、応援に行くと言ったら急に元気になっていた。なんて現金な奴なんだ。

 

 

「そっか。結翔くんも大会出ないんだね」

 放課後、部室で千夏と桂木さんにも報告する。どうやら桂木さんも大会には出ないようだ。

「アビカは楽しいけど、大会に出て勝ち上がりたいっていう訳じゃないからね。部室でみんなと対戦したり、たまにショップバトルに出るくらいがちょうどいいよ」

 内心、勿体ないと思った。桂木さんの成長曲線は驚異的だ。もしかしたら、この子を巻き込んでアビカ甲子園を目指していたら面白い物が見れたかもしれない。

 

「ま、結翔は出ないだろうとは思ってたよ。アタシはAWGに出る」

 千夏はAWGへの参加となる。白栞も恐らくそうなるだろうから、俺は二人の応援に回るかな。

「もし対戦相手が欲しかったら言ってくれ。手伝えることがあればやるからさ」

 環境で流行りの仮想敵との対面練習がしたい等であれば、微力ながら手伝えることもあるだろう。

「はいはい! 私、毎日結翔と対戦する!」

「お前はもっとしっかり練習しろ」

 俺とばかり練習していてもしょうがないのだ。もっと色んなプレイヤーと練習すべきだし、全国レベルの対戦相手を見つけたほうが良い。もちろん俺で良いならある程度は相手になるが。

 

 さて、練習用に何のデッキを組んで来ようかと考えていると、

「せっかくだし、僕も結翔くんからもっとアビカを教わろうかな」

 と、桂木さんから希望が挙がった。

 

「ほら、来年大会に出るなら知識も必要だし。この前負けちゃったのも悔しいからね」

 どうやら桂木さんもモチベーションはあるようだ。そういうことであれば、こっちとしても断る理由は何もない。

 むしろ、このままアビカを続けていたらどうなるのか、俺も気になるところだ。

「うっし、じゃあ俺たちは俺たちで強くなるか」

「うん。よろしくね、結翔くん」

 

 白栞も千夏も、大会で十分活躍できる実力がある。

 桂木さんも、正直センスは負けてない。俺だって一年も部活でアビカをやれば、それなりな戦力にはなれると思う。

 

 来年のアビカ甲子園は、もしかしたらこの四人で全国大会なんかも目指せるかもしれない。

 この時の俺は、そんな夢を見ていたのだった。

 

 そんな日は永遠に来ないと知るのは、すっかり空気も冷え込んだ冬のこととなる。

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