■■黒獣戦記~盾の勇者の成り上がり異聞~ 作:黒戌ランジール
初投稿且つ、ほぼ勢いで書いているため気が向いたときにでも眺めに来てください。
殴・考・考・蹴。
己の肉を変異させ、黒い獣が疾駆する。
血炎纏う狂える兇刃、数え切れない死を散らす。
欲に汚れた大儀を断てと、仁義の刃が鞘走る。
人の理外れる自己愛と、毒婦が招いた泥沼の戦争。
その戦争に終止符を打ったのは、ある小国の勇者だった。
少なくとも、
だが、歴史などというものは当時の人々の自戒や教訓等を差し置いて手前勝手の利益や都合不都合で好き勝手改変されてしまうものだ。
──偽物が本物となる時には、本物もまた偽物であり、無いものが有ることとなる所では、有るものもまた無いのだ──。
その様にして、事実をもって真実を隠された悲劇が存在する事を私はその身を持って知っている。
──時は過ぎ去り数年後、次元の波の第一波がメルロマルクに押し寄せ、緊急の勇者召喚が行われた2日後から私は再び眠りから覚め、世界に爪痕を残していくことになる──。
~メルロマルク城下町~
盾の勇者岩谷尚文が連行されておおよそ10分後、メルロマルク城の門前で私は門前払いを食らい城下町で二の足を踏んでいた四人に遅れて合流した。
理由は単純明快、盾の勇者の身の潔白を証明する為である。
「ああもう...!!一目見た時から様子がおかしいと思っていたのよあの
「まぁまぁ、落ち着けよ
「よくもまぁ会って三日も経たない知人の人格やら育ちの良し悪しやらをこれでもかと罵倒できるものだな二人共...」
「ははは...これでも大分、いえ寧ろ丸くなったからこそ、お嬢様はここまで彼の事を気になさるのでしょうね」
次から次へと小言が出るわ出るわ、見るからに怒り心頭なご様子。
チャイナドレスを身に纏い、黒髪に白のアクセントが入ったツインテールのご令嬢の名はジア・シーチュン。
聞くところによれば、次代の家主の座を見事勝ち取ったそうで、現在は家主に相応しい品格と実力を身に着ける為、邁進中とのこと。
そんな彼女を宥めている青年は、全身に紫色の刺繍を彫り込み、黒の革靴に白いスーツタイプのボトムスと紫のファージャケットを素肌の上に羽織り、大きめのこれまた紫で装丁された手帳を首に掛けた半グレのような恰好。
都市において最上級の非合法組織、五本指の一派、中指末弟のヴェルナーだ。
中指に関しては...まあおいおい語るとして、そんな二人を少し遠目に見やるのは、私とジア・シーチュンに合わせた漢服を身にまとい、アンダーリムの眼鏡をかけた彼女の従者であるウェイという長髪長身の男性。
昔は私と同じ穴の狢だったのだが、彼女と何やかんやあったらしく、彼女の思想に感銘を受け現在は従者として仕えているそうな。
...ん?私か?そう急かすな、後でちゃんと教えてやるから。最も私の名前はそう明かせるものではなく、便宜上通り名を名乗る事になるだろうが...見てくれだけでも話しておくか。
全身黒ずくめの漢服装束だがウェイのような伝統に則ったものではなく9分丈のガウチョパンツとインナーにミリタリータイプのカットソー、アウターにアフガン襟の漢服マントを合わせたカジュアルな物。
それが今の私の姿だ、...最も皆が想像できるような姿とは
二人のやり取りを横目にウェイの方に向き直り、私は現状把握と今後の行動方針を決める為、彼と情報の整理を行うことにした。
「しかし、思った以上に手が早かったな、この国の上層部は余程、盾の勇者を追い出したかったようだが、少々やり口が杜撰に過ぎるな」
「ええ、恐らくは敵対勢力に取り入られる前に処分したかったようですが、組織的な行動としてはあまりにも衝動的です、個人が起こした行動に間違いないかと」
「実行犯は間違いなく現在進行形で貴公のご令嬢が罵倒しているあの女だろうが、大手を振って権力を行使している辺り、後ろについているのはやはり...」
「十中八九、上の王様があの三勇教とやらのエセ宗教家共に担ぎ上げられてやってんだろうな。あの年増女は目先の勝ち馬に乗ろうと飛びついただけだろうよ」
「...!思ったより早かったな、リカルド。弟達は配置には着いたようだな」
私とウェイが声の主の方へ顔を向ける。
どっしどっし、と大きな歩幅で歩み寄りこちらの会話に加わって来たのは先程紹介したヴェルナーの兄、末兄のリカルド。
兄といっても血縁的なものではなく、どちらかといえば義兄弟のソレに近い。これも中指の特徴である、家族兄弟を大事にする独自の規則の象徴ともいえるものだ。
ヴェルナーと同じく、更に数と密度の増した刺繍、黒の革靴と白のスラックス、ファーの付いた紫のロングコートを素肌に直接前開きで着込み、末弟のものより一回り大きい手帳を身に着けている。
「もし狂言回しがバレても役立たずの第二王女に唆されたとでも言い張っとけば後は勝手に王様がうやむやにしちまう。最悪、時期を見計らってご退場ってワケだ」
本来なら、絶対に交わることもなく、ジア・シーチュンとは関係構築不可能な敵対者であるはずなのだが...
何故彼が力を貸してくれるのか、その理由は
「不思議なものです、まさか彼らと慣れ合うどころか行動を共にすることになるとは...」
「巻き込んでしまってすまないなリカルド、ゼルドブルに戻ったら貴公のクラブでボトルを一発撃たせてもらうよ」
「気にすんなよ若旦那、ウチの姉さんのダチの頼みなんだ、断る理由がねぇ。それに加えて...」
一つ、私と長い付き合いがあり友好関係にある人物が、中指に所属している。
そしてもう一つが──
「俺の髪にサラサラとフワフワという命だけじゃなく、ツヤツヤとキラキラという星を与えてくれたからな」
「「「...............」」」
「アニギッ...!マジで良がったっずね...!」
髪である。
正確には彼のボッサボサ通り越してカッピカピになってしまった髪を整髪料等用いて綺麗に整えてあげたからである。
尚その過程でジア・シーチュンと私の整髪用の椿油がその職務を全うし切ったが、彼とその兄弟達の協力を取り付ける事が出来たのだから安いものだろう。
「...兎に角、手筈は整いました。後は出来るだけ王城内への侵入を穏便に済ませて、彼の濡れ衣を晴らしてあげるだけですね」
「内緒話は終わったようね。行くんでしょ、あいつを助けに」
ジア家の二人がこちらを見つめる。
「アニキ、前もって仕返し帳簿に罪状、記入しときます?」
「いいや、一番目立つ所でやる。誰にケンカ売ったのか思い知らせてやらねえとな」
中指の兄弟もそれぞれ拳と鎖を鳴らす。
「では役者も一通り揃った所で...行くか」
斯くして、五人の奇妙な共闘が幕を開けたのだった。
~城門前~
さて、メルロマルクの城門前についた。
「最終確認だ。殺しは極力無し、行動は穏便かつ迅速に」
「刻限はいつまで?」
「最終の判決が出るまでだ。恐らく王が判決を押し通すだろう、相当短い」
「間に合わない、若しくは到達が困難だと判断された場合は如何いたしましょうか?」
「その場合には兄弟達に騒ぎを起こしてもらう。《ヴェルナー、無線の調子はどうだ?》」
《ああ、バッチリ通じてる。騒ぎはどんだけ起こしゃいい?》
「裁判が一時中断できれば御の字。出来なくても裁判の場に集まった者が異変に気付けばそれでいいわ」
「よし、では面が割れていない私とリカルドから行こう」
ファーストステップ、まずは私とリカルドで門番に対処する。
説得、賄賂、詐術、脅迫...。
行使できる手段と可能とする人員は揃っている。
先に押し掛けたシーチュンとウェイの情報通り、門番が三人、随分と暇そうにしているが警備はこれだけか?。
いや、考えてみれば今あの城内には勇者、つまりこの世界における最高戦力が三人揃っている、当然その仲間達もあの場に集まっている事は想像に容易い。
盾の勇者を助けようとするものは先ず居ないだろう。
──その助けようとする者達が白昼堂々、正面から襲撃を仕掛ける気狂いでも無ければ──。
「すまない、ニ三程、訪ねたい事が──」
「オイオイオイ!!きったねぇ亜人にキッショイ髪したゴリラまできやがったぞ!!」
「ハハハハ!!亜人びいきにこんなのまでうろつくとかこの国はもうおわり──」
罵詈雑言、言い切る前に殴打音。
遮るように、重なるように、二つの拳がドタマを二発。
殴り付けた勢いのまま、振り抜く様に城壁に叩き付け、そのままドタマを粉々に潰す。
「初対面の人間に、礼節がなっていないようだな」
「どいつもこいつも帳簿に書かれるまでの記録を更新しねぇと気が済まねぇのか...?」
《「「......」」》
早くも作戦が瓦解した瞬間を目の当たりにした(1名は無線越しに知った。)3人はただ閉口するしか無かった。
侮辱を受けた二人があまりにも短慮だったからではない。
侮辱した兵士が余りにも軽挙妄動だったからでもない。
「きっとヒースクリフもこんな風にしでかしたんでしょうね...」
《ああ、
「リンバスカンパニーの社員をまとめる管理人様の苦労が偲ばれますね...」
彼女達と出会うまでに目も覆いたくなるような惨状をいくつも生み出してきた
そんな幼稚園より治安が終わっている囚人達を束ねる時計頭の管理人。
そして彼らのやらかしで遠路はるばる引っ張って来た悪縁共々
結果、地獄のバスに犇めく魑魅魍魎達を知る者が放棄しかけた思考をなんとか動かし、一つの答えに至った。
「ウェイッッ!!やりなさいッッッ!!!」
「委細ッッ、承知ッッッ!!!!」
そこからの2人の行動は早かった。
シーチュンの命令に間伐入れず、ウェイは自らの躰を獣へと変える。
足が融ける様に形を変え、
黒い獣、
群れの筆頭が後ろ蹴り、主もまた、合わせる様に掌底を城門に放つ。
何人たりとも通さないと口を堅く閉ざした城門も、元黒獣と鴻園の家主の全力の一撃には抵抗空しく、向こう側で巡回していた兵士をついでとばかりにつまみ食いして行きながら、凄まじい破壊音を立てて吹き飛んでいった。
「う~む...お手本のようなガゼルキックだ...今の動きを獣化時の戦闘に取り入れてみるか」
「感心してる場合か!?とっとと乗り込まねえとクモがガキンチョ散らすみてぇに逃げられるぞ!?」
「それもそうだな。ほれ、無線」
「せめて要るかどうかくらい聞いてくれよ...《おいヴェルナー!逃げ道塞いでフリーの奴集めろ!ラジカセと例の機材も忘れるなよ!!
初っ端死人が2名ほど出ましたが都市じゃこれくらいジャブよジャブ()