■■黒獣戦記~盾の勇者の成り上がり異聞~ 作:黒戌ランジール
ちょっとタロⅡで自動化ライン作ってました。
睡眠時間が吸われてますが私は元気です()
~メルロマルク城 庭園~
《おい、聞いたか!?
「へっ...流石だなヴェルナー、仕事が早い。《目に付いた奴は全員ぶちのめせ。出入り口の周辺には人を近づけるんじゃねぇぞ。》」
「リカルド、替わってくれるか「ほらよ」...っとと、《私が先行して内部に潜入しよう。中の連中の視線がこちらに集まった時点でB班は突入してくれ。B班が突入後、A班も着いた者から雪崩れ込んでしまって構わない。》」
元から次善策を練っていたとはいえ、予想よりも早すぎる作戦プランの変更にも関わらず、ヴェルナーは柔軟に対応し、弟妹達に素早く指示を飛ばす。
《旦那、今どの辺りにいます?》
「《まだ庭先だ、城内に入るのはもう少しかかる。「いたぞ!!誰かアイツらを止めろ!!」「汚らしい亜人め!!生きて帰れると思うな!!」...数だけは一丁前に配備していたようだ。》」
城門前での騒ぎに気付いて駆け付けた騎士達を相手取りながら、私達は城内への道を駆け抜けていた。
相手取るといっても卓越した技巧を使っているなどは一切ない。
相手の攻撃を直剣で弾いて走り抜け、間伐入れずに返しの一撃を背後に叩き込む。
振るわれた武器の軌道を裏拳で逸らし、そのままの勢いで蹴り飛ばす。
それだけ。たったそれだけの単調な戦闘機動の繰り返しにも関わらず騎士達は反撃はおろか、まともな対応すら取れていなかった。
隙を伺い、私が周囲の戦況を確認すると他の3人も似たり寄ったりな状態だった。
たった4人相手に、数十を超える騎士が囲んで棒で叩くような有様。
にも関わらず、こちら側に痛手を与えるどころか、足を止めることさえ叶わないでいた。
「なぁ、コイツらちょいと弱すぎやしねえか?動きが素人丸出しだぞ?」
「...そうだな」
4人が疑問に思っていた事を、騎士の頭を掴んで地面に叩き付けたリカルドが切り出す。
騎士間の統制もなく、てんでまばらに突っ込んでくるのみ、技量においても足さばきなどの基本すらできておらず、裏路地のネズミが鉄パイプを振り回している方がよっぽどマシに見えてくる程。
明らかに騎士の錬度が低すぎるのだ。
「騎士という主君を守る立場に置かれながらこの体たらく...ほんとこの国終わってるわね...」
「なんと...なんと惨たらしい有様なのでしょうか...もしお嬢様が家主になられていなかったら、いずれ鴻園も...」
「やめてウェイ。鴻園に、そんな未来は、絶 対 に、来ないから」
扇を振るい、演武の様に舞いながら、数人を巻き込んでウェイの方に吹き飛ばすシーチュン。
その周囲を蹴散らす様に偃月刀を振り回し、縦横無尽に駆け、ついでとばかりに吹き飛んできた騎士を横薙ぎに払いホームランするウェイ。
騎士達とは正反対に、息ピッタリの巧みな連携と絆を見せる2人。
元とはいえ、黒獣の筆頭と阿吽の呼吸で闘うそのあり方は、鴻園の家主として、ある意味異質でもあり、彼女が目指す新しい鴻園の未来を体現していたといえよう。
そんな事を思いながら、大暴れしている3人を止められないと、理解するないなや、残った騎士達がこちらに一斉に向かってきた。
「うおおおお!!亜人よ、しねぇえぇぇ!!」
「此処は人間の国だ!畜生風情に穢れさせはせん!!」
「ハァ...妄信して目が眩んだか、そもそも足るを知らない凡愚だからか...よりにもよって虎──
いや、龍の大口に飛び込んできたか」
それにしたって数が多いな、15は居るぞ。
...少しばかり、強度を上げるか。
「リカルド、先行くか?」
丁度、騎士達の包囲網を蹴散らして此方に
「じゃあ、お言葉に甘えて。まだ暴れ足りねえなと思ってたところだったんだよ」
言うな否や、
「う、うあ───」
「遅え!!」
驚いて硬直した一際重装な出で立ちをした騎士に、弾丸の如く突っ込んできたリカルドのショルダータックルが、炸裂する。
刹那、騎士が、爆発した。
全身の鎧が、骨が、肉が、すべて一撃で粉々になり、弾け飛んだ。
弾けた破片はまるで散弾の様に向かって来た騎士達に襲い掛かり、彼らの鎧を貫通しながら、肉や、臓腑を、ズタズタに引き裂いてゆく。
阿鼻叫喚の地獄絵図を一瞬で作り上げながら、リカルドは止まる事なく、辛くも惨劇を逃れた騎士達に肉薄する。
「お、おのれっ──」
「フンッッ!ハアァッッ!!」
剣を振り上げた騎士の一人を勢いのまま右アッパーで顎を砕き、すぐさま構えを直して左の拳を別の騎士に振り下ろしそのまま地面に叩き付ける。
「くっ──!!」
別の騎士が咄嗟に剣を振るったものの、そこにリカルドの姿はなく──。
「後ろに注意だ!!」
既に背後を取っていたリカルドが、後頭部を鷲摑みにし残りの騎士達の集団に、力強く投げつける。
飛んできた騎士鎧を着た大の大人を、ロクな鍛錬もしていない騎士もどきに支えられる筈もなく、団子になって倒れ伏していく。
「そろそろ仕舞だ!」
そう言い放ちながら、リカルドが全身に力を籠めると、紫のオーラが彼の全身を覆い、特徴的な刺繍が、彼の義理に報いる怨恨の感情を表現するかの如く紫の輝きを放ち始め──。
「姉さんの、ダチを、侮辱した挙句、俺の髪までコケにしたテメェらは...」
刺繍が一際輝いた瞬間、彼は団子になった騎士達の頭上へと大きく跳び上がり──
中指が中指たる所以を自身の暴力性を持って証明した。
舞い上がった土煙が収まり、その周辺が視認出来る様になるとそこには──
「フゥ...これも後で、帳簿に書いとかねぇとな」
半径4~5m程のクレーターと、その中央で髪を手櫛で軽く整え直す彼がいた。
きっと彼の頭の中では、割れんばかりの弟妹の歓声が響き渡っていることであろう。
(...私...適当に敵をいなすくらいしかしてないのだが...私の出番、無くなりそうなのだが...)
そんなリカルドを尻目に、私は外された梯子と奮い立たせた闘争心を持て余すようにぼやくのだった。
~メルロマルク城 城内~
数分足らずで庭先を駆け抜け、私達はヴェルナー達と合流する為、城内へ続く扉の前に立った。
繋ぎっぱなしにしていた無線機越しから、ブリキ缶を階段から蹴落としたかのような喧騒がひっきりなしに聞こえてくる。
その中には、ヴェルナーと中指の弟妹達の怒号も交じっており、今この瞬間も、双方の戦力が扉の向こうで戦っている事を証明し続けていた。
「ここだ、間違いない!」
「押し通るわよ!まだヴェルナーや皆が向こうで戦ってるんだから、扉吹っ飛ばすような真似はナシよ!」
シーチュンが、中指の弟妹達を巻き込まないように、念入りに私の行動に釘を刺す。
「「イー...アル...サンッ!!!」」
その掛け声と共に、今度は私とシーチュンで城内へと続く扉を蹴破った。
蹴破った轟音が城内に響き渡ったことにより、扉の先に居た者達の視線を引き付ける。
「アニキ!!旦那!!」
その中には勿論、ヴェルナーもいた。
他の弟妹も騎士達と乱闘を繰り広げている合間をドタバタと縫って何名か此方に来たようだ。
「すいません、予想以上にアイツらやるみたいで...」
「いや、気にしなくていい、むしろよくここまで合わせてくれた」
ヴェルナーの申し訳なさげな表情に、私は一瞥するとその場で
上手く起動した事を両脚でしっかりと、地面を踏み締めて確認すると、そのまま乱戦の中心に向かって剣を構え──
「残りは私がやろう」
──真っ直ぐに跳躍する。
そのまま騎士の首の後ろを、剣を沿わせながら振り抜き、勢いのままに数人の首をまとめて切り飛ばしながら、再び跳躍し、今度は別の騎士の頭蓋を切り上げて寸断する。
ある一人の騎士の、目から上の部分が無くなり、噴き出した血と弾けた脳漿が、周囲の騎士の顔を汚す。
瞬間、戦場の時間が、一瞬止まった──。
──その一瞬を私が逃す訳がなかった。
施術の出力を一気に引き上げ、殺戮の速度を上げる。
跳躍、連斬、繰り返し、跳躍、連斬、繰り返し、跳躍、連斬、繰り返し。
反復横飛びの様に、何度も何度も跳躍する度、声を上げる間もなく、騎士の首が飛んでいく。
戦闘時間約15秒。
たったそれだけの時間で弟妹達と戦っていた騎士達は全員絶命し、首から噴き出すおびただしい量の鮮血の海に沈んでいった。
阿鼻叫喚の地獄絵図。
そう表現するに相応しい光景を、
「フゥ......く・美。いやキッチュが過ぎたか...?」
「く? ......あんた今なんて...?」
最後の跳躍で、彼女の側に戻った時、思わず口にした呟きに心当たりがあったのか、
シーチュンが問いただそうとしてきた。
血がたぎったせいか、少々、口が軽くなってしまったようだ。
これ以上深く詮索されないよう、弁明しておいた方がいいだろう。
「私の知り合いがこの光景を見たら...このような感想を述べるだろうなと、思っただけだ」
「......そう」
シーチュンはそれ以上詮索してこなかった、表情一つ変えることもなく。
だが、ポーカーフェイスこそできているものの、...未熟だな。
僅かだがはっきりと、憂いの表情を感じ取れる。
流石に慮っている暇は無いので、申し訳なく思いつつも、ヴェルナーに声をかける。
作戦の仕上げと行こうじゃないか。
「待たせたなヴェルナー、早速で悪いのだが、王座の間の前まで案内してくれ」
「旦那、ここがその王座の間の目の前っす...」