マスターは50位圏内を見事に勝ち取り、報酬の豪華さも相まって充足感を感じていたが屋敷内の空気はかえって張り詰めていたように感じた。
そしてそして母親のアンはマスターにプリンをご馳走してくれた。
「おめでとうマスター、褒美のプリンですよお食べなさい」
とアンはマスターにプリンを勧める。
(いつも厳しいお母様が優しくしてくれるなんてどう言う風の吹き回しなんだろう?よくわからないけど日頃の僕の行いがそれだけ良いって事なんだな♪)
マスターはそう思う事にしてスプーンを手に取る。
しかしマスターはある事に気づく。
「あれ?いつも見守ってくれているはずのナラカちゃんがいないけどどうしたの?」
ナラカがいつも食べっぷりが良いとマスターを眺めてくれているがいない事にふと気にかかるマスター。
「マスター、そのプリンはナラカさんが焼いてくれたのですよ」
とアンは答える。
「そっか、いっただきまーす♪んー美味しい♪」
マスターはまるで女子高生のようにそのプリンを美味しそうに頬張った。
食べ終わったその時アンの表情が暗雲に包まれている事にマスターは気づく。
「お母様どうしたの?」
「マスター食べちゃいましたねそのプリンを…」
アンの声に低いノイズがかかる。
「え……どう言う事……?」
マスターの胸がドクンドクンと脈打つ。
そしてそしてアンはこう言う。
「実は実は、貴方が食べたプリンはナラカさんの命なのです」
「な…何が言いたいのお母様?」
意味深な事を言うアンの言動にマスターはただ理解が追いつかない。
アンの冷たい表情からネガティヴな意味が込められているのは確かだ。
「まだわからないのですかマスター。そのプリンは私が魔法で姿を変えさせたナラカさんなのです!」
「…なんですって!?」
アンのその一言でマスターはようやく気付く。
そうそう、マスターが食べてしまったプリンはアンが魔法で姿を変えさせたナラカだったのだ。
つまりナラカはプリンになってマスターに食べられたと言う事になる。
「なんで…そんな…」
悲しみのあまりマスターは崩れた。
まさか自分がナラカを食べてしまうなんて。
「ふっふっふ愚かな事…ナラカさんも可哀想に。マスターを堕落させたばかりに…」
と言ってアンは腹黒い笑みを浮かべる。
「何故ですかお母様!お母様も僕とナラカが婚約した事をとても喜んでくれてたじゃないですか!」
「しかしナラカさんは貴方を堕落させてしまった!彼女よりもゲームに夢中になり散財させてしまったのはナラカさんにマスターを支える程の力量が無かったと言う事!」
アンはピシャリと言い放つ。
マスターは自己嫌悪に陥った。
「そんなそんな…僕がナラカを不幸にしてしまってただなんて……」
マスターは項垂れた。
「それだけなら私はまだ許せてました。何より許せなかったのは風呂場で私の悪口をあの子が言ってた事です!」
そしてさらにアンはこう付け足す。
『本当にマスター様には同情いたします。母上様も言い過ぎではないでしょうか?何もあんな事言う事無いでしょうに…』
ナラカは確かにこう言っていた。
アンは魔女。どこかに使い魔を召喚させてアン自身の悪口を言っていたものを炙りだすなどお手のものだ。
「汚いぞお母様…僕だけならまだしも何もナラカを貶める事はないじゃ無いか!」
「しかし貴方と婚約すると言う事はそう言う覚悟がおありという事!この魔女アンの支配がある内はマスターだけでなく私にも忠誠を誓う義務があると言うこと!あの子はあの瞬間それを放棄したのです!」
マスターは怒りに任せてアンに攻撃する。
「許せない閃空モルフォ!」
「頭を冷やしなさい羅刹ドラゴンバーナー!」
弾幕がぶつかるがマスターは魔力を使い果たし殆ど抵抗出来ないままぶっ飛ばされた。
「く…くそ…」
火傷を負い悔しさやら痛みやら悲しみやらでぐちゃぐちゃになりながら蹲るマスター。
「そしてそしてここに仕えるメイド達も皆ここを追い出しました。貴方がお金を使い果たしてしまったせいでね…貴方はナラカさんだけでなく他のメイド達をも不幸にしたのです!」
「そんな…僕が課金しまくってたせいで……」
マスターは罪悪感に苦しむ。
「だが喜びなさいマスター…あの人だけは貴方を見捨てずに残ってくれるそうですよ」
アンは口元をニヤつかせマスターにこう告げた。