ポケモン最強トレーナー・サトシ、バレンタインで好感度が限界突破している件 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
学園バトル大会の熱が冷めやらぬ中、ブルーベリー学園の食堂は、別の意味で凄まじい熱気に包まれていた。
「サトシ! 昨日のバトルの反省会、私の特製ランチを食べながらやりましょう!」
「ちょっとセレナ! サトシは私とみずポケモンの特訓に行くんだから!」
「二人とも落ち着いて! サトシにはまず、シンオウ地方の最新ポフィンで糖分補給が必要だよ!」
カスミ、セレナ、ヒカリ……ヒロインたちの猛烈なアプローチの嵐。
その中心で、オレは「おう、みんなサンキュー! 腹減ってたんだ!」と、まるで台風の目の中にいるような平穏さで飯を食っている。
その様子を、少し離れた「男子専用テーブル」から、複雑な表情で見つめる一団があった。
「……凄まじいな。まるでヴェラ火山の噴火が同時に三つ起きたような熱量だぞ、ありゃあ」
カキが腕を組み、真剣な顔で呟く。
その隣でハウがマラサダを頬張りながら笑った。
「あはは、サトシはアローラの時も凄かったけど、ここの学園に来てからさらに『Zワザ』級の引きの強さだねー!」
「分析によると、サトシを中心とした感情エネルギーの観測値は、既にメガシンカの放出量を超えているよ……」
マーマネがスマホロトムを操作しながら、冷や汗をかいている。
「ええ。サイエンスの法則でも説明できない、未知の引力ですね……」
シトロンが眼鏡を光らせて頷く。
向かいに座っていたホップが身を乗り出した。
「サトシさんって、バトル以外でもあんなに『伝説級』なんですね! 兄貴とはまた違う意味で、目が離せないっていうか!」
「フム。この状況、まるで熟成されたロマンスワインと、激辛のカレーがぶつかり合っているような、実にアグレッシブなハーモニーだね」
デントがワイングラス(中身はグレープジュースだ)を揺らしながら、一人で納得している。
そこへ、トレイを持ったタケシとケンジが合流した。
「……おい、タケシ。サトシを助けなくていいのか?」
ケンジの問い。
タケシは悟りを開いたような顔で首を振った。
「無理だ、ケンジ。今のアイツは『友情』という名の強固なバリアを無意識に張っている。どんな愛の告白も、サトシの耳には『もっと強くなろうぜ!』という特訓の誘いに変換されて届いているんだ。……同じ男として、羨ましいような、恐ろしいような……」
タケシの言葉通り、オレはヒロインたちに囲まれながら、満面の笑みで言い放った。
「みんな! 応援ありがとうな! みんなの熱い気持ち、しっかり受け取ったぜ! この『友情パワー』があれば、どんな相手にも負ける気がしねえ!」
「……ほらな」
タケシがガクリとうなだれる。
「あはは! さすがサトシだ!」
ゴウが隣で苦笑いしながら、コハルから手渡されたメモを大切そうにポケットに仕舞った。
ゴウの周りには、オレのような嵐はないが、確かな「進展」の香りが漂っている。
「サトシ……お前はいつか、その蓄積されたエネルギーを清算しなければならない時が来る。それがバトルの代償よりも重くないことを祈る」
少し離れた席で一人食事をしていたグラジオが、ボソリと呟いて席を立った。
「なんだか、みんな今日は一段と気合が入ってるな! ピカチュウ、オレたちも負けてられないぜ!」
「ピカピカ!」
オレは、背後で繰り広げられるヒロインたちの「次なる対戦カード」を全く気にすることなく、午後の特訓に向けて目を輝かせていた。