ポケモン最強トレーナー・サトシ、バレンタインで好感度が限界突破している件 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
バレンタインデー前夜。学園の熱気は最高潮に達し、寮は一種の臨戦態勢に入っていた。
女子たちは早々に消灯し、最後の準備に取り掛かっていることが、オレにも察せられた。
オレは、自室で翌日の修行プランを立てていた。
明日は、ヒロインたちから渡される「友情の応援」を力に変え、いつも以上の特訓をするつもりだ。
タケシが興奮した様子で、オレに話しかけてきた。
「サトシ! 明日、お前が受け取るのは、ただのチョコじゃない! それは、全てのヒロインの『魂の告白』だ!」
タケシは、ブリアー先生への告白プランを真剣に立てているせいか、異常に熱い。
「そうか! 魂の告白、か! タケシ、オレの最高のポケモンへの情熱に、みんなが共鳴してくれているんだな!」
オレは、友情の熱さに感動し、タケシの肩を叩いた。
タケシは、その反応を見て、額を押さえた。
「頼むから、明日、間違った返事をしないでくれよ……」
オレは、廊下の窓から夜空を眺めていた。
普段は静かなイッシュの海も、今日は何となく騒がしい気がする。
(この騒がしさは、みんながオレのポケモンマスターへの道に、期待をかけてくれている証拠だ!)
オレがそう思っていると、部屋の隅でケンジが、オレたちの様子をスケッチしながら、小さくつぶやいた。
「サトシの周りだけ、世界の理が歪んでいるな。明日の修羅場が目に浮かぶようだ」
その時、ゴウがオレに近づいてきた。
「サトシ。コハルは、オレの夢を応援してくれると言ってくれた。お前も明日、言葉一つ一つを、よく聞くべきだ。それは、修行とは別の、人生の大きな決断に繋がる」
ゴウは、親友として、最大限の警告をオレに発してくれた。
「わかったよ、ゴウ! オレは、みんなの友情のメッセージを、一つも聞き逃さないように、全力で向き合うぜ!」
オレは、ゴウの友情にも心から感動した。
オレは、明日が待ち遠しくてたまらない。
最高の友情が詰まったチョコを受け取り、もっと修行に励める!
「なんか変だな…」
オレは、ふと、この学園の過剰なほどの熱気に、違和感を感じた。
(オレへの期待が、高すぎるんだろうか? それとも、オレがワールドチャンピオンだから、みんなが過剰に気を遣ってくれているんだろうか?)
オレは、この答えの出ない疑問をすぐに振り払い、ピカチュウに向き直った。
「ピカチュウ! とにかく、明日だ! みんなの熱い想いを、受け止めるぞ!」
ピカチュウは、オレの顔を見上げ、何かに耐えきれなくなったのか、両手で顔を覆い隠した。
「ピィ……カァ……」
それは、まるで「もう知らん」と言っているかのような、深く長い、諦めの鳴き声だった。
オレは、ピカチュウが明日の修行に向けて、過剰に緊張しているんだと解釈し、優しく頭を撫でた。
「大丈夫だ、ピカチュウ。オレたちは、絶対に負けない!」
オレの高校生活は、いよいよ最も熱く、そして最も誤解に満ちた一日を迎えようとしていた。