ポケモン最強トレーナー・サトシ、バレンタインで好感度が限界突破している件   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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カスミの告白〜「最悪の出会い」から「最高の隣」へ

バレンタインデーの早朝。 オレは広場のベンチに座り、ピカチュウと一緒に昇り始めた太陽を眺めていた。

昨夜、シゲルたちに「覚悟を決めろ」と言われてから、なんだか落ち着かなくて、こうして一人で静かな空気を吸いに来たんだ。

 

「なによ、そんなところで黄昏(たそがれ)ちゃって。チャンピオン様が形無しじゃない」

 

聞き慣れた、少し強気で、でもどこか懐かしい声がした。

振り返ると、そこにカスミが立っていた。

 

いつもの勝気な左上で縛った髪。

だけど、その顔は朝焼けのせいだけじゃなく、リンゴみたいに赤くなっていて、右手に握られた小さな箱が小刻みに震えているのが見えた。

 

「カスミ……どうしたんだ、こんな時間に」

オレが立ち上がると、カスミは一瞬視線を逸らしてから、また真っ直ぐにオレを見つめ返した。

 

「サトシ。あんた、私の自転車を壊した時のこと、覚えてる?」

 

「えっ? ああ、もちろん忘れてねーよ。あの時は悪かったって……」

 

「そうじゃないわよ、大バカ!」

カスミが鋭く突っ込んでくる。いつもの調子だ。

 

でも、彼女の瞳は笑っていなかった。

「……あの時、あんたとピカチュウを追いかけて、なし崩しに旅についていった。最初は自転車のためだった。でも、いつの間にか……あんたの背中を追いかける理由が、変わっちゃったのよ」

 

カスミが一歩、オレに近づく。

その瞬間、彼女の周りから、激しい水しぶきのような「覚悟」が伝わってきた。

 

「あんたがどんなに遠い場所へ行っても、どんなに凄い存在になっても……私は、あの時の自転車の借りを、まだ返してもらってないと思ってるの」

 

「え……?」

 

「一生かかっても返しなさいよ! ……私の隣で、特別な……世界で一番特別な人として!」

 

カスミは意を決したように、箱をオレの胸に押し付けた。

 

「好きなの、サトシ! ……ずっと前から、あんたのことが、誰よりも……世界一、好きなんだから!」

 

(カスミが……あの、いつも喧嘩ばっかりしてたカスミが……!)

 

押し付けられた箱を通じて、カスミの指先の震えが、オレの胸に直接伝わってきた。

長い間、一緒に旅をして、オレのダメなところも、情けないところも全部知っているカスミ。

 

そんな彼女が、今のオレを「一人の人」として真っ向から見つめている。

その事実に、鼓動が激しくなった。

 

「……カスミ。ありがとう。お前のその気持ち、真っ向から受け止めるぜ」

 

オレはカスミの目をじっと見つめ、逃げずに答えた。

 

「でも……正直に言う。今のオレには、すぐに答えを出すなんて、できないんだ」

 

カスミの眉がピクリと動いた。

いつもの怒鳴り声が飛んでくるかと思ったが、彼女はただ、泣きそうなのを堪えるように唇を噛んだ。

 

「カスミの想いがどれだけ本気か、その手の震えで分かったから。だからこそ、オレも本気で考えたい。お前と積み上げてきた時間と同じくらい、ちゃんと真剣にだ。今のままのオレじゃなく、お前に相応しいオレとして答えたいんだ」

 

オレは一呼吸置き、決意を込めて続けた。

「ホワイトデーまで、時間をくれないか。必ず、オレの『最高の答え』を出す。約束だ、カスミ!」

 

カスミは一瞬、呆然とした顔をした後、ふっといつもの不敵な笑みを浮かべた。

でも、その目には少しだけ涙が浮かんでいた。

 

「……わかったわよ。あんたがそこまで言うなら、信じてあげる。その代わり、逃げたらカスミスペシャルのルアーで釣り上げて、ギャラドスの水びたしにするからね!」

 

カスミはそう言い捨てると、照れ隠しのように勢いよく背を向けた。

「約束よ、サトシ! ……待ってるんだから」

 

駆け去っていくカスミの背中を見送りながら、オレはもらった箱を大切にポケットにしまった。

 

最悪の出会いから始まったオレたちの関係が、今、全く新しいステージに向かおうとしている。

その実感が、ずっしりと重く、オレの心に刻まれた。

 

 

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