ポケモン最強トレーナー・サトシ、バレンタインで好感度が限界突破している件 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
入学式が終わって、俺たちはすぐに寮生活へと移行した。
この学園の寮は、最新の設備が整っているらしいが、完全な個室ではない。
オレの部屋は、タケシとゴウとの三人部屋だ。
「うおおお! 最強のポケモンマスターと、一流ポケモンドクター志望、そして俺! 夢を追う男が集結したぞ!」
ゴウは興奮気味に、ベッドの上に荷物をぶちまけた。彼の頭の中は、学園生活よりも「ここでどんな珍しいポケモンが捕まえられるか」でいっぱいだ。
その横でタケシは、キャリーケースからなぜかエプロンと本格的な料理道具を取り出している。
「フッ、ゴウ、お前がポケモンを捕まえるなら、俺はこの寮の女性陣の胃袋を掴む!まずは夕食の準備でジャック先生にアピールするぞ!」
オレはというと、ピカチュウとどっちの枕元に寝るかを相談している。
ワールドチャンピオンになっても、この騒がしさからは逃れられない。まあ、この賑やかさがオレにとっては一番力になるんだ。
そんな男子寮の熱気とは裏腹に、女子寮は別の意味で大変なことになっていたらしい。
夕食時、食堂で顔を合わせたケンジが、オレたちにため息まじりで報告してきた。
「サトシ、お前、女子寮でも問題を起こしてるぞ」
「オレが? 何もしてないだろ」
「カスミとセレナが同室になったんだ。部屋割りが発表された瞬間、廊下まで凄まじい水しぶきの音が聞こえたそうだぞ。まるで、みずタイプとほのおタイプが、いきなりバトルを始めたような騒ぎだったらしい」
(なるほど。カスミは、セレナがオレとの旅の経験を語り出したことに、ジムリーダーとしてのライバル心むき出しで対抗したんだろう。初日から熱い戦いだぜ!)
オレは、二人の間に生まれたバトルを純粋に応援する気持ちで頷いた。
「大丈夫かしら、カスミ……」
「セレナも、ちょっと心配だね……」
背後から声がした。
ハルカとヒカリだ。
「サトシ! 私たちは大丈夫よ。旅の途中で競い合ってた私たちだけど、ルームメイトになったら気が合うんだよね!」 とヒカリが言い、ハルカも「そうよ。バトルは勝負だけど、日常は別よ!」と笑った。
(やっぱり、みんなオレとのバトルや旅の再会を喜んでくれている。その熱意を、もっとポケモンに向けなくちゃな)
オレがそんなことを考えていると、食堂の隅から低い声が響いた。
グラジオだ。妹のリーリエと静かに食事をしていたが、オレを一瞥して言い放った。
「騒がしいな。トレーナーとして入学したのなら、私情を持ち込むな。特に、うちの妹に迷惑をかけるなよ、サトシ」
グラジオの過剰なまでの警戒心。
リーリエは苦笑いしながらも、オレを見て小さく微笑んだ。
「私は大丈夫です、お兄様。サトシたちとも、またこうして学園で会えて嬉しい」
そこに、カキ、ハウ、マーマネの3人もトレイを持って近づいてきた。
アローラのスクールメイトも、全員この学園に揃ったんだ!
「おいサトシ! リーリエを困らせるな。お前とグラジオが火花を散らすと、ヴェラ火山の火山灰より息苦しくなるぞ!」
カキが呆れたように笑いながら、オレの隣に座った。
その目には、いつでもバトルを受けて立つという闘志が宿っている。
「あはは! サトシはどこにいても注目の的だねー。ボクもマラサダを配って、みんなと仲良くならなきゃ!」
ハウは能天気に笑っているが、その目は食堂に集まった各地方の強者たちを興味深そうに観察している。
「分析によると、この食堂の『熱量』は既に許容量を超えてるよ。特に女子寮側のデータが異常なんだ……爆発の確率は80%以上だね」
マーマネはスマホロトムを操作しながら、少し不安そうに周囲を見渡した。
オレがピカチュウと笑っていると、ゴウが少し慌てた顔で立ち上がった。
「サトシ、悪い! コハルが課題のことで相談があるって。同じクラスだから話が早いんだ。行ってくる!」
食堂の別のテーブルで、困ったように待っているコハルの元へゴウは急いだ。
(ゴウとコハルも、協力し合って目標に進んでるんだな。最高の友情だぜ!)
寮生活がスタートしたばかりなのに、オレの周りは既に、ポケモンリーグの決勝戦よりも熱い人間関係で溢れかえっている。
オレの目標はただ一つ、真のポケモンマスターになること。そのためには、みんなの熱い情熱に全力で応えるしかない。
オレは、ピカチュウを膝に乗せ、決意を新たにした。
「ピカチュウ、みんなの熱意に応えて、もっと修行するぞ!」
ピカチュウは「ピッカ!」と元気に鳴いて、オレの頬を叩いた。