ポケモン最強トレーナー・サトシ、バレンタインで好感度が限界突破している件 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
バレンタインデーの午前中も終わりに近づいていた。
天井のガラス越しに差し込む太陽が、テラリウムドーム内のサバンナエリアを穏やかに温めている。
オレは、次に誰が来るのかと気を張りながらも、エリアの隅にある岩場の休憩所で、持参したサンドイッチを軽く食べていた。
乾いた風が吹き抜け、遠くでポケモンの鳴き声が聞こえる、のどかな昼下がりだった。
その時、静かな休憩所に明るい声が響いた。
「サトシ! やっと見つけたー!」
マオだった。
いつもの活発な笑顔で駆け寄ってくるが、どこか頬が赤く、手に持った箱からは、甘くて芳ばしい香りがふわりと漂っていた。
「マオ! どうしたんだ、そんなに元気よく!」
オレは立ち上がり、マオを迎えた。
マオは、いつも誰に対しても明るい彼女らしからぬ緊張した様子で、オレの正面に立った。
その大きな瞳は潤んでいて、真っ直ぐにオレを見つめている。
「サトシにね、どうしても聞いてほしいことがあるの」
彼女の真剣な雰囲気に、オレの背筋も自然と伸びた。
オレは静かに頷いた。
マオは、決意を固めるように大きく息を吸い込んだ。
「サトシ。人を笑顔にする料理を作るのが夢! アイナ食堂でも、ずっとそのために頑張ってきた。でもね……あなたといると、料理がなくても、最高に心が満たされるの!」
マオは、ぎゅっと胸に手を当てて、その内側から溢れ出す情熱を言葉に乗せて伝えてきた。
「私、この気持ちは、ただの仲間じゃなくて、もっと熱くて、もっと特別なものだってわかったんだ! だから、お願い! これからもずっと、一番近い場所で、私のこの気持ちを味わってほしい! サトシのことが、誰よりも大好き!」
(マオの熱い想い……! まるで、アローラの太陽みたいに、まっすぐで力強い愛の告白だ!)
オレは、マオの情熱的な言葉に、全身で応えた。
「マオ、ありがとう! 君が勇気を出して伝えてくれたその気持ち、その情熱とともに、真剣に受け止めるぜ!」
マオの表情が、パッと明るい期待に輝いた。
「じゃあ、返事は……?」
オレは、心を込めて誠実に言葉を選んだ。
「ごめん、マオ。こんなに大事な、情熱的な気持ちを、オレはすぐに答えられない。君の想いに、オレもちゃんと真剣に向き合う時間が欲しいんだ! 中途半端な気持ちで返事はしたくないからさ」
マオは、一瞬だけ寂しそうに顔を曇らせたが、すぐに理解してくれた。
「でも……必ず、君の気持ちに対して、オレなりの最高の答えを出す! 返事は、ホワイトデーに必ずする! それまで、信じて待っていてくれ!」
マオは、オレの不器用な誠実さを汲み取るように、力強く頷いた。
「うん! 約束! ホワイトデーまで、最高の笑顔と、もっと美味しい料理を作って待ってるから!」
マオはそう言い、芳ばしい香りのする手作りのチョコをオレの手に渡し、最後にもう一度満面の笑みを見せて、広場の方へと去っていった。
オレは、マオのチョコを大切に持ち、ポケットにしまった。
サバンナの風が、彼女の残した甘い香りを乗せて、優しく吹き抜けていった。