ポケモン最強トレーナー・サトシ、バレンタインで好感度が限界突破している件   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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リーリエの想い〜踏み出す勇気のその先に(7/8の可能性)

ブルーベリー学園の図書室。

 

午後の日差しが書棚の隙間から差し込み、埃が光の粒のように舞っている。

オレは予約席の椅子に深く腰掛け、静かにその時を待っていた。

 

「ピカチュウ……」

膝の上のピカチュウが、心配そうにオレの顔を覗き込む。

 

誰かの想いに応えられないと告げるのは、これほどまでに心が痛むものなのか。

自分自身の決断の重さを、図書室の静寂がさらに際立たせていた。

 

扉が静かに開き、白いブラウスをなびかせてリーリエが現れた。

彼女はアローラで見せていたあの「一歩踏み出す勇気」を、今、その凛とした立ち姿に宿している。

 

「サトシ……お待たせいたしました」

リーリエは席に着くと、深呼吸をしてからオレを真っ直ぐに見つめた。

 

その瞳には、どんな答えでも逃げずに受け止めるという覚悟が光っていた。

 

オレは、叫ぶ代わりに、静かに、そして決然とした声で告げた。

「リーリエ。お前の気持ち……本当に、嬉しかった。でも、オレは……リーリエの気持ちに応えることはできない。ごめん」

 

「……はい。決めて、いらしたのですね」

リーリエはゆっくりと目を閉じた。

 

顔から一気に血の気が引いていくのがわかったが、彼女は涙を流さず、静かに微笑もうとしていた。

 

その表情は、痛々しいほどに強かった。

 

「リーリエは、アローラで誰よりも勇気を出して、自分を変えてきた。その強さを、オレは誰よりも尊敬してる。……でも、オレの心の中には、どうしても隣にいてほしいと願う、たった一人の存在があるんだ」

 

(……そうだ。ずっと前から心に決めていた、あの約束がある。その笑顔に相応しい自分でいるために、オレはここで嘘をつくわけにはいかないんだ)

 

自分の決断に一点の曇りもないことを確かめ、オレは言葉を続けた。

「リーリエが持っているその勇気は、これからはリーリエ自身の夢のために、家族やポケモンのために使うべきものだ。オレは、ポケモンマスターになる道を選ぶ。それは、リーリエの進む道とは、別の場所にあるんだ」

 

「別の場所……」

リーリエは、テーブルに置かれたアメジストのチャームをそっと指でなぞった。

 

「ずるいです、サトシ。私を、ポケモンに触れるように変えてくれたのはあなたなのに。私の世界の中心に、あなたは光として現れたのに……」

 

彼女の目から、ついに大粒の涙が溢れ出した。

「でも……その光に頼るのではなく、私自身が光になりなさいと、あなたは言っているのですね」

 

「……ああ」 オレは、選んだ者として、彼女の涙の重さを真正面から受け止めた。

 

しばらくして、リーリエは立ち上がった。

「わかりました。……サトシ。あなたが選んだ道の先で、あなたが最高に輝けるよう、私も私自身の道を極めます。いつか、アローラの空の下で、胸を張って再会できるように」

 

リーリエが図書室を後にした数分後。

本棚の陰から、グラジオが静かに姿を現した。

 

「サトシ。……見ていたぞ」

グラジオの瞳には、いつもの鋭さだけでなく、オレの「決断」を認めるような、静かな光が宿っていた。

 

「グラジオ……」

 

「妹の想いを断ち切ったその罪……本来なら許し難い。だが、その瞳を見ればわかる。お前もまた、退けない覚悟を持って、一人の相手に向き合おうとしているのだとな」

 

グラジオは一歩近づき、オレの肩に手を置いた。

「リーリエの涙は、お前が妹を一人のトレーナーとして認めた証だ。……お前が選んだその道を、最後まで突き進め。俺は、前を向いた妹と共に、お前の進む先を見守らせてもらう」

 

グラジオはそう言い残すと、妹の後を追うように図書室を去っていった。

一人残された静寂の中で、オレは胸に走る痛みを噛み締めていた。

 

(リーリエ、ありがとう。……お前の勇気に、オレも、生涯を懸けた決断で応えてみせる)

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