ポケモン最強トレーナー・サトシ、バレンタインで好感度が限界突破している件   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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竜の心と、重なる鼓動(1/8の可能性・後編)

アイリスの瞳が、大きく揺れた。

差し出された袋を見つめるアイリスの頬が、朝の光の中で、みるみるうちに真っ赤に染まっていく。

 

差し出した袋を見つめたまま、アイリスの動きが完全に止まった。

ツタを掴んでいる指先が、かすかに震えているのがわかる。

 

いつもなら、ここで「なーんだ、お菓子? サトシにしては上出来じゃない!」なんて笑い飛ばすはずだ。

オレも、どこかでそんな反応を予想して、心の準備をしていた。

 

だけど、返ってきたのは静寂だった。

 

「アイリス……?」

 

不安になって顔を覗き込むと、アイリスは俯いたまま、絞り出すような声で呟いた。

 

「……本気……なんだよね? ……今の、本気で言ってるってことで、いいんだよね……?」

 

アイリスの瞳からこぼれた一粒の涙が、朝日に照らされて地面に落ちた。

オレはもう一歩踏み出し、ツタを握りしめているアイリスの両手を、包み込むようにガシッと掴んだ。

 

「アイリス、聞いてくれ。オレ、ずっと考えてたんだ」

 

「……サトシ?」

 

「マスターズトーナメントで、全力のお前と戦った時、すげー熱くなった。あんなにワクワクしたバトルは初めてだった。……でも、バトルが終わった後も、ずっとお前のことが頭から離れないんだ。飯を食ってる時も、寝る前も、気づけばアイリスのバトルのことや、一緒に旅してた時のことを考えてる」

 

アイリスが息を呑むのがわかった。

オレは、潤んだその瞳を真っ直ぐに見据えて、一番伝えたかった言葉を口にした。

 

「全力で戦うアイリスも、たまに弱音を吐くアイリスも、全部ひっくるめて……オレは、アイリスのことが大好きだ! 最高のライバルとしてだけじゃなく、一人の女の子として……これからもずっと、隣にいてほしいんだ!」

 

「――っ!!」

 

アイリスの顔が、これまで見たことがないくらい真っ赤に染まった。

言葉を失ったように口を震わせていたけれど、やがてポロポロと大きな涙を流しながら、くしゃくしゃの笑顔を作った。

 

涙を拭うのも忘れて、アイリスはオレの手を思い切り握り返してきた。

 

「……本当に、サトシは最高の『子ども』ね」 その声は震えていたけれど、確かな喜びと愛おしさがこもっていた。

 

「最高の『子ども』……。へへっ、アイリスらしいや」

 

「当たり前でしょ! 私はドラゴンマスター、サトシはポケモンマスター。二人とも夢の途中なんだから、ずっと全力で追いかけっこしなきゃいけないんだからね。……でも、これからは隣にいても、いいんだよね?」

 

「ああ、望むところだ!」

 

テラリウムドームに差し込む午前中の光が、二人を包み込む。

もしこの道を選んだなら、オレたちの前には、どこまでも続く青い空と、見たこともないドラゴンポケモンたちが待っているに違いない。

 

「行こうぜ、アイリス!」

 

「言われなくても! 遅れないでよ、サトシ!

二人は手を繋いだまま、新しい冒険へと駆け出した。

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