ポケモン最強トレーナー・サトシ、バレンタインで好感度が限界突破している件 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
アイリスの瞳が、大きく揺れた。
差し出された袋を見つめるアイリスの頬が、朝の光の中で、みるみるうちに真っ赤に染まっていく。
差し出した袋を見つめたまま、アイリスの動きが完全に止まった。
ツタを掴んでいる指先が、かすかに震えているのがわかる。
いつもなら、ここで「なーんだ、お菓子? サトシにしては上出来じゃない!」なんて笑い飛ばすはずだ。
オレも、どこかでそんな反応を予想して、心の準備をしていた。
だけど、返ってきたのは静寂だった。
「アイリス……?」
不安になって顔を覗き込むと、アイリスは俯いたまま、絞り出すような声で呟いた。
「……本気……なんだよね? ……今の、本気で言ってるってことで、いいんだよね……?」
アイリスの瞳からこぼれた一粒の涙が、朝日に照らされて地面に落ちた。
オレはもう一歩踏み出し、ツタを握りしめているアイリスの両手を、包み込むようにガシッと掴んだ。
「アイリス、聞いてくれ。オレ、ずっと考えてたんだ」
「……サトシ?」
「マスターズトーナメントで、全力のお前と戦った時、すげー熱くなった。あんなにワクワクしたバトルは初めてだった。……でも、バトルが終わった後も、ずっとお前のことが頭から離れないんだ。飯を食ってる時も、寝る前も、気づけばアイリスのバトルのことや、一緒に旅してた時のことを考えてる」
アイリスが息を呑むのがわかった。
オレは、潤んだその瞳を真っ直ぐに見据えて、一番伝えたかった言葉を口にした。
「全力で戦うアイリスも、たまに弱音を吐くアイリスも、全部ひっくるめて……オレは、アイリスのことが大好きだ! 最高のライバルとしてだけじゃなく、一人の女の子として……これからもずっと、隣にいてほしいんだ!」
「――っ!!」
アイリスの顔が、これまで見たことがないくらい真っ赤に染まった。
言葉を失ったように口を震わせていたけれど、やがてポロポロと大きな涙を流しながら、くしゃくしゃの笑顔を作った。
涙を拭うのも忘れて、アイリスはオレの手を思い切り握り返してきた。
「……本当に、サトシは最高の『子ども』ね」 その声は震えていたけれど、確かな喜びと愛おしさがこもっていた。
「最高の『子ども』……。へへっ、アイリスらしいや」
「当たり前でしょ! 私はドラゴンマスター、サトシはポケモンマスター。二人とも夢の途中なんだから、ずっと全力で追いかけっこしなきゃいけないんだからね。……でも、これからは隣にいても、いいんだよね?」
「ああ、望むところだ!」
テラリウムドームに差し込む午前中の光が、二人を包み込む。
もしこの道を選んだなら、オレたちの前には、どこまでも続く青い空と、見たこともないドラゴンポケモンたちが待っているに違いない。
「行こうぜ、アイリス!」
「言われなくても! 遅れないでよ、サトシ!
」
二人は手を繋いだまま、新しい冒険へと駆け出した。