ポケモン最強トレーナー・サトシ、バレンタインで好感度が限界突破している件   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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潮風の悪戯と、釣られた本音(1/8の可能性・後編)

オレが差し出した小箱を、スイレンは釣り竿を置いて、両手でそっと受け取った。

箱を開けると、そこには波のしずくを閉じ込めたような、深い青色の宝石がはめ込まれたペンダントが収まっている。

 

「……綺麗。これ、サトシが選んでくれたの?」

 

「ああ。……スイレンには、やっぱり海の青が一番似合うと思ってさ」

 

スイレンはペンダントを胸に抱きしめ、いつもの冗談を言う時とは違う、少しだけ潤んだ瞳でオレを見上げた。

 

「……サトシ。私、ずっと考えてたんだ。あの日、サトシに想いを伝えてから……もし、いつもの『最高の友達』に戻っちゃったらどうしようって」

 

スイレンの声が、潮騒に溶けそうなほど優しく、けれど切なく響く。

オレは一歩、スイレンのすぐ目の前まで踏み込み、彼女の華奢な肩をがっしりと掴んだ。

 

「スイレン。オレだって、ずっと考えてた。……お前はいつだって、オレの隣で静かに笑ってくれてたよな。オレが突っ走りすぎた時も、スイレンがいてくれるだけで、不思議と心が穏やかになれたんだ」

 

アローラの海で一緒にカイオーガを釣ろうって笑い合ったこと。

スイレンの真っ直ぐな努力と、その奥にある誰よりも熱い情熱。

 

「でも、もう『友達』のままじゃいられない。……スイレン。オレ、お前が大好きだ。ただの仲間としてだけじゃなく、一人の女の子として……これからもずっと、オレの隣にいてほしい。スイレンのその優しさと強さを、これからはオレが一番近くで守らせてくれ!」

 

「……っ」

 

スイレンの瞳から、一粒の涙が頬を伝って海風に飛んだ。

彼女は泣き出しそうな笑顔を浮かべると、自分からオレの胸に飛び込んできた。

 

「……嘘じゃないよね? 冗談だって言っても、もう許さないから……!」

 

オレのシャツをギュッと掴むスイレンの指先から、彼女の熱い鼓動が伝わってくる。

オレは迷わず、その小さな体を力いっぱい抱きしめ返した。

 

「嘘なもんか。……世界で一番、スイレンのことが大切なんだ。これからは、オレの恋人として……一緒に新しい海を見に行こうぜ!」

 

「……うん! よろしくね、サトシ!」

 

スイレンの弾むような声が、胸の奥にまで響いた。

オレの胸に顔を埋めたまま、スイレンは幸せを噛みしめるように、何度も深く息をついている。

その温もりが、腕を通してダイレクトに伝わってきて、オレの心臓はさっきからバクバクと鳴り止まない。

 

しばらくそうしていた後、スイレンが少しだけ身を離して、潤んだ瞳でオレをじっと見つめてきた。

 

「ねえ、サトシ。さっきの言葉……もう一回、聞いてもいいかな?」

 

「え……さっきのって……」

 

「『大好きだ』って、言ってくれたところ。……嘘じゃないって、もっとちゃんと耳に焼き付けておきたいの」

 

いつものいたずらっぽい笑顔じゃない。

少しだけ赤くなった顔で、切なそうに、でも確かな期待を込めてオレを見上げるスイレン。

その真っ直ぐな想いに、オレも正面から応えなきゃ男じゃない。

 

オレはスイレンの頬に手を添えて、もう一度、今度は耳元で囁くように、はっきりと言葉を紡いだ。

 

「ああ、何度だって言ってやる。……大好きだ、スイレン。世界中の誰よりも、お前のことが大切だ。……オレの恋人になってくれて、ありがとう」

 

「……っ。ふふ、合格」

 

スイレンは満足げに微笑むと、今度は自分からオレの首に腕を回して、背伸びをした。

ふわりと潮風に乗って、スイレンのシャンプーの香りが鼻をくすぐる。

 

「私、サトシと一緒に世界中の海を冒険するのが夢だった。でも……これからは、その隣が私の『指定席』なんだよね?」

 

「当たり前だろ! どこへ行く時も、スイレンはオレの隣だ。誰にもその席は譲らねえよ!」

 

オレが力強く答えると、スイレンは幸せそうに目を細めた。

 

「約束だよ。……もし破ったら、特大のシャボン玉に閉じ込めて、海の底まで連れていっちゃうから」

 

「へへっ、望むところだぜ!」

 

二人の影が砂浜に長く伸び、波打ち際を歩く足跡が並んで刻まれていく。

繋いだ手から伝わる確かな熱量。 もう、迷いはない。

 

スイレンと一緒に、オレはもっと高い場所へ、もっと広い海へと突き進んでいくんだ。

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