ポケモン最強トレーナー・サトシ、バレンタインで好感度が限界突破している件   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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最高のパートナーから、その先へ(1/8の可能性・後編)

差し出した袋を、ヒカリは胸元でぎゅっと受け止めた。

その指先には、はっきりと力が入っている。

 

ヒカリがこの瞬間を、静かに、けれど熱く待っていたことが、痛いほど伝わってきた。

 

「……ありがと」

ヒカリは袋を大事そうに抱えたまま、顔を上げる。

 

「サトシなら来てくれるって、分かってたよ」

自信に満ちた笑顔。

 

それは、コンテストステージで優勝を決めた時と同じ、まっすぐで強い笑顔だった。

 

毎日、学園の教室や食堂で当たり前に顔を合わせている。

隣に座って、同じ課題に頭を悩ませて、バトルで張り合って――それが日常。

 

でも、今日渡すお返しには、いつもの「じゃあね」や「また明日」とは違う重みがあった。

二人とも、それを言葉にしなくても理解している。

 

少し離れた場所で、ポッチャマが足踏みしながらこちらを見ていた。

ちらちらとこちらを気にしているのが、いかにもヒカリの相棒らしい。

 

「ヒカリ」

 

氷を踏む靴底が、きゅっと小さく鳴る。

さっき、シンジに突かれた背中の感触が、まだ残っている。

 

――逃げるな。

――決めたなら、言え。

 

その熱を、確かな決意に変えて、オレは言葉を続けた。

「お返しだけじゃなくて……ちゃんと言葉でも伝えたいんだ」

 

一瞬、ポーラエリアの静寂が、さらに深くなった気がした。

 

「……。……うん、聞かせて」

 

ヒカリは逸らすことなく、真っ直ぐにオレを見つめる。

その瞳には、迷いも不安もない。

ただ、オレの言葉を受け止める覚悟があった。

 

シンオウを旅していた頃から、ヒカリはいつだって前向きだった。

負けても、落ち込んでも、「だいじょうぶ!」と自分に言い聞かせて、次へ進む。

 

「一ヶ月前……」

オレは、あの日を思い出しながら言葉を選ぶ。

 

「想いを受け取った時、改めて気づいたんだ」

 

白い息が、言葉と一緒に宙へ溶けていく。

「ヒカリは最高のパートナーだ。バトルでも、学園でも……ずっと背中を預けてきた。でも、それだけじゃ足りないって思ったんだ。これから先も、勝っても負けても、迷っても……ずっと一番近くにいてほしいって」

 

オレは、一番伝えたかった言葉を、逃げずに、はっきりと口にした。

「ヒカリ。オレは、ヒカリが好きだ。パートナーとしてだけじゃなく、恋人として……これからも、オレの隣にいてくれ!」

 

「っ……!」

 

ヒカリの瞳が、一瞬だけ潤んで揺れた。

それでも彼女は、泣く代わりに、こぼれそうな感情を押し込めるように笑う。

 

ヒカリは勢いよく、一歩踏み出した。

そして、そのままオレの胸に飛び込んでくる。

 

「……当たり前でしょ!」

 

厚手の制服越しでも分かる、確かな体温。

「私たちなら、これからも一緒なのが――『大丈夫!』なんだから!」

 

弾む声は、ヒカリそのものだった。

冷たいポーラエリアの空気の中で、その言葉だけが、ひどく温かい。

 

オレは、迷わずヒカリを抱きしめ返した。

腕の中の感触が、現実だと何度も確かめるみたいに。

 

遠くで氷がきしむ音。夕陽に染まった雪原が、二人の影を長く伸ばしていく。

 

毎日会っている日常の続き。

明日からは、昨日までとは少しだけ違う。

最高のパートナーであることに変わりはないけれど、その先へ進んだ、もっと特別な毎日。

 

「……なあ、ヒカリ」

オレが小さく呼ぶと、彼女は腕の中で顔を上げた。

 

「なに?」 その笑顔を見て、胸の奥がまた熱くなる。

「これからもよろしくな。オレの……恋人」

 

一瞬きょとんとしたあと、ヒカリは照れたように、でも誇らしげに笑った。

「うん! まかせて!」

 

ポーラエリアの夕陽が、完全に雪原の向こうへ沈みきる少し前。

オレたちは、名残惜しそうにゆっくりと体を離した。

 

「……へへ」

ヒカリは少し照れたように笑うと、急に一歩下がった。

 

「なにって――決まってるでしょ」

 

そう言って、ヒカリはぐっと拳を握り、オレの前に突き出した。

「これからも一緒に頑張るんだからさ。パートナーで、恋人で……それでもやっぱり、私たちらしく!」

 

一瞬で分かった。

シンオウを旅していた頃から、何度も何度もやってきた、あの合図だ。

 

「……ああ、そうだな!」

オレも拳を作り、ヒカリの手に合わせる。

 

「最高のパートナーから、その先へ――だ!」

 

「うん!」

 

二人同時に、手を振り上げる。

「「ハイタッチ!」」

 

パチン! 

澄んだ音が、ポーラエリアの静寂に心地よく響いた。

 

氷原の中で交わした誓いと、重なった体温と、いつも通りのハイタッチ。

全部ひっくるめて――これが、オレたちの答えだった。

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