ポケモン最強トレーナー・サトシ、バレンタインで好感度が限界突破している件 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
テラリウムドーム、サバンナエリア。
人工の太陽が沈みかけ、地平線まで続く黄金色の草原をさらに深いオレンジ色に焼き尽くしていく。
その光の中に立つマオは、いつも以上に大人びて見えて、オレの心臓はさっきから早鐘を打っていた。 オレはポケットの中で温まっていた包みを、意を決して取り出した。
「マオ、これ……バレンタインのお返しだ。受け取ってくれ!」
差し出したのは、マオが大好きなお茶の葉と、彼女のイメージに合わせたグリーンの宝石があしらわれた髪飾りだ。
受け取った包みを、マオはまるで壊れ物を扱うみたいに、愛おしそうに両手でそっと包み込んだ。
「……ありがとう、サトシ。これ、私への『特別』だと思っていいのかな?」
少しだけ茶化すように、いつもの快活な調子で笑ってみせたマオ。
だけど、その頬は目の前の夕陽よりもずっと深く、真っ赤に染まっているのをオレは見逃さなかった。
「アローラのポケモンスクールで出会ってから、毎日みたいにアイナ食堂で『お腹空いたー!』って笑い合って、マオの作った美味い料理を食べてきた。マオは、太陽みたいに明るくて、一番安心できる存在だったんだ」
でも、今この瞬間のマオからは、いつも隣にいる「最高の親友」とは違う、どこか儚くて、胸が締め付けられるような甘い香りがした。
「マオ」
一歩、彼女のすぐ近くまで踏み込み、その細い肩をがっしりと掴んだ。
「え……サ、サトシ……?」
突然の真剣な温度差に、マオが小さく息を呑む。
至近距離で見つめ合うと、瞳の中に、真っ赤な顔をしたオレが映っていた。
「お返しだけじゃ、気持ちは半分も伝わらないんだ。……マオは、ただの仲の良い友達なんかじゃない。アローラで一緒に過ごした時から、その優しさに、その笑顔に、オレは何度も救われてきた」
「……っ」
マオの瞳が大きく揺れ、みるみるうちに涙が溜まっていく。
もう、自分の気持ちに嘘をつくことなんてできなかった。
「アイナ食堂で忙しそうに働いてる姿を見るのが大好きだ。でも、それ以上に……オレだけに向けた笑顔を見せてくれる時、胸が熱くなって、どうしようもなくなるんだ。マオが好きだ。ただの仲間としてじゃない。誰よりも大切に思ってる。マオの笑顔を、これからも一番近くで、オレだけのものとして守らせてほしい。……これからは、オレの恋人として、ずっと隣にいてくれないか!」
「恋人、に……。私、ずっと……ずっと待ってた……」
マオの声が震え、その目から熱い涙がポロポロと、真珠みたいに零れ落ちた。
マオは手に持っていた包みを落とさないように大切に抱えたまま、自分からオレの胸に飛び込んできた。
そのままオレの背中に細い腕を回して、力いっぱい、壊れそうなほど強く抱きついてきたんだ。
「私、ずっとずっと、この瞬間を夢見てたんだからね……っ! 嬉しい……、嬉しいよサトシ……! 私も、世界で一番大好きだよ!!」
腕の中に伝わってくるマオの柔らかい体温と、感極まった泣き声を全身で受け止めた。
彼女の髪から香る草花の匂いが、胸をかき乱す。
オレはマオの腰を引き寄せ、その温もりを独り占めするように強く抱きしめ返した。
黄金色に染まるサバンナの中で、二人の鼓動だけが重なり合い、激しく、そしてとろけるように甘く響き渡っていた。
「マオ。もう一回、いや、何度だって言うぞ。……世界で一番、大好きだ」
「……うん。私も、サトシを世界で一番、愛してる! もう、絶対に離してあげないんだから!」
顔を上げたマオの表情には、涙と一緒に、これまでで一番甘く、とびきり幸せそうな笑顔が咲いていた。
オレは彼女の涙を指で拭うと、そのまま引き寄せられるように、その柔らかい唇に自分の唇を重ねた。