ポケモン最強トレーナー・サトシ、バレンタインで好感度が限界突破している件 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
「リーリエ!」
オレの呼びかけに、オーロラを見上げていたリーリエがゆっくりとこちらを向いた。
星降るテラスに立つ彼女は、夜空の光を反射して、まるでおとぎ話のお姫様みたいに綺麗で……。
一瞬、息をすることさえ忘れてしまいそうになった。
「……サトシ。来てくれたんですね」
リーリエの透き通るような声が、冷たい空気の中に溶け込んでいく。
オレは一歩ずつ、凍った床を踏みしめて彼女の目の前まで歩み寄った。
そして、ポケットで温めていた小さな箱を差し出した。
「これ……バレンタインのお返しだ。リーリエ、受け取ってくれ」
リーリエは驚いたように目を丸くし、それから震える指先で箱を開けた。
氷の結晶を象ったネックレスが、オーロラの光を受けて虹色に輝く。
「……なんて、素敵……。サトシ、私のために選んでくれたのですか?」
「ああ。……ポーラエリアの雪景色を見てたら、リーリエのことを思い出したんだ。真っ白で、綺麗で……でも、どんなに厳しい寒さの中でも、自分を信じて真っ直ぐに咲く花みたいだなって」
アローラで出会った頃のリーリエは、ポケモンに触れることさえできなかった。
けれど、彼女は逃げなかった。恐怖を乗り越え、家族の問題に向き合い、今では立派なトレーナーとしてオレの隣に立っている。
「オレ、リーリエのそういう強さが、たまらなく愛おしいんだ。……学園で再会して、また一緒に過ごすようになって気づいた。オレは、ただリーリエを守りたいだけじゃない。リーリエが隣にいてくれないと、オレの冒険は完成しないんだ」
オレは一歩踏み込み、リーリエの細い両手を自分の大きな手で包み込んだ。 彼女の手は冷たかったけれど、オレの手を通して伝わる彼女の鼓動は、驚くほど速くて熱い。
「リーリエ。……大好きだ。これまで出会った誰よりも大切なんだ。……もう、どこへも行かせたくない。これからの人生、オレの隣で、一緒に歩んでほしい。……オレだけのものになってくれ!」
「サトシ……っ!」
リーリエの瞳から、大粒の涙が溢れ出し、頬を伝ってキラキラと輝きながら落ちていく。 彼女はそのまま、オレの胸に顔を埋めるように飛び込んできた。
「……私も、ずっと……ずっと好きでした……っ! サトシがくれた勇気が、私をここまで連れてきてくれたんです。……私を、サトシの隣に……ずっと、いさせてください……!」
オレは、リーリエの小さな体を、折れんばかりに強く抱きしめ返した。
もう、あの日みたいに船を見送る寂しさはいらない。
今、腕の中にいるこの確かな温もりこそが、オレの全てなんだ。
「ああ、約束する。一生かけて、オレがお前を幸せにしてみせる。……愛してるよ、リーリエ」
「……はい。私も、愛してます。サトシ……」
オーロラが激しく揺れ、二人を祝福するように輝きを増す。
離れた場所で、グラジオが満足そうに、けれど少し寂しそうに微笑んで去っていくのが、雪の反射で見えた気がした。
「……なあ、リーリエ。そんなに泣くなよ。せっかくの綺麗な顔が台無しだぜ?」
オレは少し体を離し、親指で彼女の涙を優しく拭った。
するとリーリエは、赤くなった顔で、でも幸せに満ちた最高の笑顔を見せてくれた。
「……もう、サトシのせいですから。責任、取ってくださいね?」
「へへっ、望むところだぜ!」
オレはもう一度、愛おしさに耐えきれず、リーリエを強く抱きしめた。 腕の中のリーリエは、少しだけ身体を震わせながら、幸せそうにオレの胸に耳を押し当てている。
「……サトシの心臓の音、すごく速いです。私と同じ……」
「……当たり前だろ。こんなにドキドキすんの、最強の相手とバトルする時だってないよ」
オレが正直に言うと、リーリエはふふっと小さく笑って、オレの背中に回した手にギュッと力を込めた。
「嬉しいです。……私、サトシが世界で一番かっこいいって思ってますけど、今日が……今までで一番、かっこいいです」
そう言って見上げてくるリーリエの瞳は、どんな宝石よりも澄んでいて、まっすぐにオレへの愛情を映し出していた。
冷たくなった耳を温めるように、自分の額をリーリエの額にそっと合わせた。
「……これからも、ずっと隣にいてくれよ。リーリエがいなきゃ、オレはダメなんだ」
「はい。……約束です。ずっと、ずっとサトシの隣にいますから」
オーロラが揺れる幻想的な夜空の下、オレたちはいつまでも離れずに、重なり合った熱を確かめ合っていた。