ポケモン最強トレーナー・サトシ、バレンタインで好感度が限界突破している件 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
体育祭が終わり、学園は文化祭の準備期間に突入した。
オレたち特進クラスが企画したのは「ポケモン・テラスタルカフェ」。
「よし、厨房は任せて! アローラの味、みんなに届けちゃうよ!」
料理班のリーダー・マオが気合を入れる横で、タケシが手際よく食材の下ごしらえを始めていた。
「フッ、マオ。火加減は俺が完璧に管理しよう。栄養バランスと愛情を込めた、特製の『タケシ・ブレンド』を隠し味に使うぞ!」
タケシの安定した包丁さばきは、流石の一言だ。
そこに、優雅な足取りでもう一人の「専門家」が加わった。
「おやおや、実にスパイシーでエネルギッシュな厨房ですね。……ですが、このメニューにはまだ『驚き』というスパイスが足りない。……イッツ・テイスティングタイム!」
イッシュ地方のジムリーダーであり、ポケモンソムリエのデントだ。
彼は指をパチンと鳴らし、マオのパンケーキの試作をじっと見つめる。
「デント! お前も協力してくれるのか!」
「もちろんです、サトシ。このカフェには、お客様とポケモンが共鳴するような最高の『マリアージュ』が必要ですからね」
デントは流れるような動作でハーブを散らし、香りのアンサンブルを整えていく。
その様子は、バトルの時とは違うプロの風格に満ちていた。
一方、ホールでは「内装」を巡って、激しい火花が散っていた。
「水槽の位置はここで決まり! 水ポケモンの美しさを最大限に引き出すのが、世界一の美少女ジムリーダー・カスミ様の仕事よ!」
「ちょっと待って、カスミ! カフェ全体の色彩バランスを考えたら、ここは温かみのあるオレンジの照明にすべきだわ。デザインを任された私の意見を聞いて!」
カスミとセレナ。
二人の主張がぶつかり合い、一触即発の空気が流れる。
オレが「二人とも落ち着けよ!」と割って入ろうとしたその時、背後から聞き覚えのある力強い声が響いた。
「みなさん、落ち着いてください! こういう時こそ、サイエンスの力です!」
シトロンが、大きな装置を台車に乗せて現れた。
「ジャジャーン! 名付けて『内装・カラー・ライティング完全同期システム』! さあ、ケンジさん、データの入力をお願いします!」
「ああ、任せてくれ。各地方のポケモンセンターのレイアウトと、心理的なリラックス効果の相関図、スケッチと一緒にまとめてあるよ」
ケンジが素早く開いたスケッチブックには、学園のホールの寸法と、最適な導線が完璧に描き込まれていた。
ケンジの観察眼と、シトロンの工学技術。
二人の連携が、対立していたカスミとセレナを圧倒していく。
「このシステムなら、カスミさんの水槽の青を際立たせつつ、セレナさんのデザインしたユニフォームが一番映える補色を自動で算出できます!」
シトロンが眼鏡を光らせてスイッチを押すと、ホール全体が幻想的な、それでいて落ち着く光に包まれた。
「科学の力って、すげー!」
オレは思わず、いつもの言葉を叫んでいた。
バトルのフィールドではオレの背中を預けられる仲間たちが、こうして自分の得意分野で最高に輝いている。
その姿が、無性にカッコよく見えた。
「フン、賑やかなことだ」
教室の隅で、一人で教科書を読んでいたシンジが、冷めた、だがどこか観察するような視線を向けた。
「無駄なエネルギーだと言いたいが……この効率的な配置は、バトルの陣形にも通じるものがある。……少しだけ、記録しておくか」
シンジなりに、この「プロの仕事」を評価したようだ。
「サトシ! 見ててください。僕のサイエンスで、このカフェを学園一にしてみせますから!」
「ああ! 期待してるぜ、シトロン! ケンジもデントも、タケシも……みんな、最高のチームだな!」
オレはピカチュウと顔を見合わせて笑った。
ヒロインたちの熱いアピール合戦も凄まじいが、それ以上に、それぞれの「道」を究めようとする男たちの情熱が、このカフェを特別な場所に変えようとしていた。
文化祭、これなら絶対に成功する!
オレは確信に近いワクワクを感じていた。