異世界エボルト   作:バルーンボーイさん

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プロローグ - 2

「……お前には世界を救って欲しいのだ」

 

 女神の突然の提案に、思わず鼻で笑う。

 ただそれもそのはず。地球滅亡を企んだ張本人に、わざわざ世界を救えと頼む神がいるのだろうか。客観的に見ても、あまりにも滑稽な提案だ。

 

「まさか、冗談だろ?」

「俺は多くの惑星を滅ぼした。なにか理由があるにしろ、随分と趣味の悪い女神様なことだ」

 

 間をおいて、皮肉を重ねる。

 

「それともなんだ、お前には俺が平和好きのお人よしに見えるのか?」

 

 女神は肩をすくめる。そんな疑問など見越していました、と表情は余裕そのものだ。

 

「そんなこと重々承知の上。あなたは救いようのないほどの極悪人よ」

 

「なら尚更だろう。なぜ俺を選んだ」

 

  女神は椅子から飛び降り、こちらへ近づくと、真正面から視線を合わせてきた。

 

「兎にも角にも、その世界は、あなたがよく知る”あの世界”じゃないわ」

 

 少し間を置き、女神は続ける。

 

「ほら聞いたことない?異世界転生とかってやつよ」

 

「……ほう?」

 

 確かに聞いたことはある。石動惣一に憑依していた際に、そんなようなものを見たことがあった。ただどんなものかは、知らない。

 

「一応ルールがあって、使える駒は死人だけ。その中でも、色々あって、あなたがピッタリだったってわけ」

 

 少しだけ、女神の口角が上がる。

 

「それに、正義の味方よりも、悪の権化が世界を救うっていいシナリオじゃない?」

 

 訂正しよう。あいつは、間違いなく趣味の悪い女神だ。

 

「事情は大体理解した。……だとしてもだ」

 

 俺は右手に人差し指で、自身の頭をコツコツ、とつつく。

 

「俺の答えぐらい、もう分かってるんじゃないか?」

 

 俺のその答えに、女神はさらに近づき、わずか数センチほどの非常に近い距離で目を合わせる。

 

「もちろん君を更正させる気なんて、一ミリもないよ」

「……そうだね。なら、もっと分かりやすい、良いやり方にしよっか」

 

 すると、女神は今までとは異なる嫌な笑みを浮かべ、俺の右胸を人差し指で軽く小突いた。

 

 その刹那、視界がぐにゃりと歪む。

 重力とは違う、得体の知れぬ圧力が全身を襲い掛かり、思わず両膝をつく。なんとか抵抗して立ち上がろうとしたが、無駄だった。脚を持ち上げるどころか、両腕すらも思うように上がらない。まるで身体が言うことを効かないみたいだ。

 

「……なるほどな!交渉じゃなく、命令ってわけか!」

 

 歯を食いしばりながら、言葉を絞り出す。

 

「……確かに、俺には良いやり方かもな」

 

「そう?分かってくれて、感謝するわ」

 

 女神が人差し指を挙げるような仕草をすると、身体にかかる圧力が一瞬にして消える。精神的にも軽い疲労感を感じつつも、ゆっくりと立ち上がる。

 

「……分かった、引き受けてやる」

 

「話が早くて助かるね」

 

 女神の表情は満足げに頷く。だが、こちらにも条件はある。

 

「ただし、それ相応の報酬を期待してるぞ。なにせ、世界を救うんだからな」

 

「もちろん。好きな望みを一つだけ、なんでも叶えてあげる」

 

 一拍おいて、女神は続ける。

 

「……ただし条件付きだけどね」

 

「待て、条件だと?」

 

 女神に問い詰めようと近づいたその瞬間、足元はまるで元から無かったかのように、ぽっかりと消滅。先の見えない、真っ暗な穴へと落下していく。

 

「じゃあ頑張ってね~」

 

 最早ツッコミをする暇もなく、エボルトの意識は急速に遠ざかっていった……。




【追記】
「女神について」
・この世界観では、思ってるより結構えらい立場の神様です。
・人間味豊かなキャラとして描かれてますが、ただの人真似なので、感情はない設定です。
・一応、名前は"テラ"といいます。
・今後の出番はないです。


転生するなら女神様より、優しいおじいちゃんタイプにしてもらいたいですね。
(次回から本編始まります)
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