雅が本当の兄の様に慕っていた分家の兄が、雅の母親を介錯した話。   作:ザワザワする人

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流雅さんに暴走してた時の記憶無いです。
六課、リン、アキラは気を遣って聞かないだろうし。他のグループはそもそも暴走知らないので聞くシーンが作れませんでした。
文章力無くて、ごめんちゃい



課長ってたいへん

『本日のニュースです』

 

『ブリンガーが起こした事件から一ヶ月が経った今日、先の事件の受勲式が新エリー都市役所前で、行われました』

 

『受勲されたのは、やはり対ホロウ六課の隊員達。市民からの人気も高い彼らが、また新エリー都を守り、その人気と共に地位を高めました』

 

『そして、さらに式の最後に特別受勲が行われました。受勲されたのは、対ホロウ六課課長、星見雅さん。並びに()対ホロウ六課隊員、星見流』

 

 

 

「え!?流雅さんH.A.N.D辞めちゃったの!?お、お兄ちゃん知ってた!?てか、なんでテレビが急に止まったの!!」

 

「リン……もう少し落ち着きをもった方が良いな。リンの考えている様な事が起こった訳じゃ無い」

 

「ほ、ほんと!?『あ………です……』あ、直った!」

 

『星見流雅さんは今回の事件において、虚狩りを凌ぐ活躍をしたと目撃者からの情報がありました。H.A.N.Dはこの情報を受け、星見流雅さんに特別執行課課長の地位を与え、同時に特別執行課を新設。さらにH.A.N.Dは市長と協定を結び、特別執行課に元のH.A.N.Dの対処範囲を大きく拡大させた特権的権能を与えました。これは受勲式での彼のスピーチの映像です』

 

「あ、流雅さんだ!」「ここは僕も見てないな…」

 

『まず、受勲に対し市長並びにH.A.N.Dの方々に深い感謝を。………あまりこういう場は得意ではないので手短に、皆さんに言いたい事があります』

 

『僕は、英雄じゃありません。誰かを一瞬で救うヒーローでも、ホロウを滅ぼす事の出来る武の天才でもありません』

 

『僕はただ市民の皆さんと同じ大多数の中にいる、少し輝いているだけの人間です』

 

『ですがそんな僕でも、誰かを助ける事が出来ます』

 

『この世界は痛みと不安に満ちている』

 

『その事実を、皆さんは直視しなくていいんです』

 

『僕が、見ます。僕が、皆さんの代わりに見ます』

 

『誰もが今の幸せを永遠に噛み締める、そんな世界を僕は作りたい』

 

『だから——どうか恐れないでください。夜に怯えて目を閉じる必要はありません』

 

『明日が来るのかと、震えながら眠る必要もありません』

 

『皆さんが笑っていられるのなら、僕は何度でも傷つきます』

 

『皆さんが大切な人の名前を呼べるのなら、僕は何度でも立ち上がります』

 

『光は、特別な誰かのものじゃない』

 

『ここにいる全員のものだ』

 

『だから——もしも世界がまたあなたから何かを奪おうとした時は、思い出してください』

 

『一人で背負わなくていい。あなたの代わりに、前に立つ人間がここにいることを』

 

『英雄じゃない僕が、あなたの世界を守ります』

 

『それが、僕の選んだ生き方です』

 

会場に居た市民の歓声と共に、ニュースは終わりを迎えた。

 

「……かっこいいね、流雅さん」

 

「あぁ。彼は英雄と言っても過言じゃないと、僕は思っているよ」

 

二人の兄妹の間に、少しばかりの沈黙と彼の言葉を噛み締める時間が生じた。

 

「あっと……流雅さんのスピーチに感動して忘れる所だった…。リン。今日の店番は君の筈だ」

 

「う、嘘!」

 

すると同時に玄関のベルが鳴った。

 

「い、今行きまーす!」

 

「ビデオ屋なんてしてるんですね、リンさん?」

 

そこには先程見たばかりの人の姿が。

 

「流雅さん!!怪我はもう大丈夫なの?」

 

「えぇ、大体は治りました。…お腹がちょっと痛いですけどね」

 

「ウチにはビデオを借りに?」

 

「それもありますけど、お礼を渡そうと思いまして。こちらをどうぞ」

 

すると、流雅さんは左手で持っていたメチャクチャ高そうな袋を渡してくれた。

 

「本当はプロキシですし、電気系統が良いと思ったのですが、そういうのにはちんぷんかんぷんで……」

 

「これ、ケーキ!?」

 

「えぇ、昔よく雅と母上と三人で食べた所のものです。安心してください。味は保証します!」

 

「……Fairy?ちょっと調べてみて?」

「了解しましたマスター………ヒットしました。このケーキの値段はマスターの支払う私の電気代を約一年負担できます」

「え!?たっっか!」

 

「?どうしました、リンさん?」

 

「い、い、いやいやな、何でもないよ〜!お、美味しそうだったからビックリしちゃって〜…」

 

「それは良かったです。そのケーキ、母上がよく修行を頑張った日には買ってきてくれたんです。沢山食べる雅のほっぺにクリームが付いてたりして、可愛いかったなぁ〜…」

 

「流雅さん?それってどれくらいのスパンで……」

 

「…?月に一回くらいですが?」

 

「……………ぁぅ」

 

「そうだ、見たい映画を探してもらいたくて………り、リンさん?だ、大丈夫ですか〜?な、なんで白目を剥いて……あ、アキラさん!リンさんが!」

 

 

 

 

 

 

 

 

(いや〜……流石に緊張するな〜……)

 

僕は今、謎に長い廊下を歩いている。

 

(………課同士の仲が悪いからってこんなに離さなくても…)

 

歩いているのはH.A.N.Dの対ホロウ課の建物。

長い間通ってきたけど、六課のオフィスにしか行ったことはなかった。

まさか、こんなに大きかったとは。

 

(いやはやまさか柳の連絡がこういう理由だったとは……)

 

あの日、イヴリンさんと出会った日に柳から来た連絡。

もう六課に来ないでください、と言うのはどうやら僕がいなくなるので、事前に僕抜きの業務の練習を先にしたかったらしい。

流石に驚いたけど、後から説明に来た雅のおかげで誤解は少なかった。

「……寂しい……」って雅は言ってたけど、上からのしかも市長からの勅令なので断る事は流石に出来ない。

 

(それよりも……)

 

僕の心配は今は別の所にある。

 

(喧嘩してないでよ〜……)

 

僕が課長に就く事になった特別執行課の人員は、対ホロウ課のそれぞれから引っ張ってくるらしい。

人員のリストを見た所、新しくH.A.N.Dに来た人もいるもののその数は少数。

殆どの人員は一度何処かの課に所属していて、一定の功績を納めているようだ。

だからこそ、彼らは自らの課、及び課長、副課長を誇りに思っている。

それこそ、自分の課長こそ最強だと言わんばかりに。

 

(落ち着け……最初が肝心………)

 

長い長い廊下を歩き終え、一つの扉の前に立つ。

対ホロウ課の建物は防音が完璧。中の声は外には決して届かない。

 

(多分……きっと……大丈夫…)

 

 

「みんなおはよう!急な異動で不安だと思

 

 

 

 

 

 

「「「「かかって来いよ雑魚!!」」」」

「「「「上等!!今すぐその首、飛ばしてやるわ!!」」」」

 

「……せ、先輩達〜……そろそろ課長が……あ」

 

 

 

うん。やっぱりやばかったです。

 

 

 

 

 

——————————————

 

 

 

 

 

 

あれから部屋の隅っこで、ビクビク震えていた新入りの子たちを避難。

それぞれ武器を出して今すぐ殺し合いが始まらんとする勢いの人達は、僕が来るとスンッと黙った。

私、俺、何もしてませんが?みたいな顔でこっちを見てくる。

見たから。バリバリ見たから。郊外みたいなノリだったよね、皆。

いや、待て。ふざけてる場合では無い。

課の結束が無いという事は、連携すらままならない事を意味する。

それはホロウの中では、自らに刃を立てる凶器にすらなり得てしまうのだから。

 

「と言うわけで、何で言い争ってたの。皆は」

 

「「「「「「「…………………」」」」」」」

 

(全員黙っちゃった……)

「君たちは、何か知ってる?」

 

新入りの子達に話を振ってみる。

 

「え、えと……先輩達は流雅課長と………雅課長のどっちが強いのかって言う……言い合いを………」

 

「え?」

 

「で、ですから…」

 

「あぁ、うん。なるほど。ありがとう。……さてさてこの子の話は本当、皆?」

 

「「「「「「「はい!!」」」」」」」

 

(急に元気)

 

「いやあのまぁ別に言い合いはしてもいいよ?全然ね、一応交流は深まってはいるし」

「ただね〜…武器出したらダメかな……」

 

「ですが、課長この馬鹿共がですね」

 

「脳無しが何を言ってるのでしょう。これだから……」

 

「これだから、なんだ!言ってみろや!!」

 

また言い合いが、始まってしまった……。

いやて言うかそもそも議論の余地があるのか?雅は虚狩りで、僕は違う。

もう結果は出てるのでは?

………うん?ちょっと待って。なんか来た時より人数が一人少なく……。

 

バンッ!!

「ヒィッ!!」

 

後ろのドアが思いっきり開かれて、新入りの子がビビる。

入ってきたのは、さっき言い合ってた人と……。

 

「兄上!早く!早くしよう!」

 

ウッキウキの目でこちらを見つめてくる可愛らしい……いや、ちょっと怖い僕の妹でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどなるほど、言い合っても埒が明かないから実際に戦ってもらおう〜と」

 

「「「「「「「「はい!!!」」」」」」」」

 

(仲が良いのか、悪いのか………)

 

僕は雅に爆速で引っ張られ、訓練場に拉致られた。

 

「えと……皆には悪いけど、戦うつもりはないよ?」

 

「ふんふふん〜♫」

 

雅は上機嫌に木刀を選んでいる。冗談やめて欲しい。

雅の全力とか、生身で受けたら一貫の終わりだ。

 

「そ、そんな……」

 

何で皆ショックを受けてるの。

 

「兄上兄上。私が選んできた」

 

耳をふりふりさせながら、僕に二本の木刀をニコニコで渡してくる雅。

クッ………笑顔が眩しい!!

 

「雅?六課の仕事もあるでしょ?先にそっちを終わらせて……」

 

「それなら、兄上の課の方達が手伝っている。ほら早く」

 

よく見るといつの間にか新入りの子達が居ない。

逃げられた〜……。

 

「で、でもさ雅どっちかが怪我しても良くないでしょ?だからさ、今日は辞めにしない?」

 

「兄上……」

 

やめてくれ。ショボンと耳を垂れないでくれ。その技は僕に効く。

だが、雅も諦めてくれたようだ。良かった良かった。

 

「はい、それじゃあ皆んな戻ってから仕事の確認を」

…ギュ……

 

後ろから、服の袖を引っ張られる感覚。

ま、まさか!?

 

 

「兄上……ダメ…か?」

 

 

上目遣い!?!?クッ……ダメだ、笑みが抑えられない…。

 

「わ、分かった……一本だけね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

訓練場の中央に二人の狐のシリオンが相対している。

 

「木刀での一本勝負。よろしく頼む」

 

「……よろしくお願いします」

 

二人の纏う雰囲気が、一気に変わる。

雅は一人の武人として、流雅もまた雅と同じく。

今、この試合に兄妹の関係は存在しない。

 

先に動いたのは、雅。

 

上段からの振り下ろし。と、見せかけた首元への突き。

彼らの仕合は、これが二度目。

雅の暴走を治めたあの日よりも早く、重く、雅は同一の剣技を繰り出した。

 

カンッ!

 

まさに、間一髪。

流雅は双刀でその突きを上に弾く。

前回、回避しか選択肢の無かった彼を、ここまで急速に成長させたのは目の前の雅に他ならない。

流雅の暴走を自らのエーテルで覆う事によって、雅は暴走を止めた。

その間、流雅の孔という孔から雅のエーテルが流雅の体に入り込んだ。

エーテルの扱いという点で、流雅は雅の数歩先を行っている。

虚狩りのエーテルを、雲嶽山の技術で自在に操る。

その動きはまさに、彼の師(儀玄)が如く。

身体能力という一点に於いて彼は今、虚狩り級と呼んで相違ない。

 

(滑らかに、緩やかに、水の如く……か)

 

流雅は以前と同じ剣技を用いている。

それは、雲嶽山の剣技だ。仲間と共に築き上げてきた剣術だ。

これは、雅の()()とは大きく異なる。

雅は、天性による武具への適正により数多の敵を屠ってきた。そこに、仲間との修行など存在しない。

彼女が剣技を極めた糧にあるもの。それは敵の屍に他ならない。

だが、彼女がそれに孤独感を感じたことは一切ない。

兄を失った時からずっと、彼女は一人で、孤独で修行を続けてきた。最初こそあれど、今では最早そのような思いを感じる事は無いと彼女自身も思っていた。

 

(あぁ………楽しい!)

 

彼女が今、感じているのは孤独では無い。一重に、興奮と歓喜のみである。

今まで誰もがまともに仕合えなかった自分に、剣を打ち合える()()が出来たこと。

そしてそれが最愛の兄である事。

今までに感じた事のない喜びに、雅は嬉し涙を流した。

 

「雅………」

 

「兄上!もっと!もっとしよう!」

 

流雅もまた、それを理解している。最愛の妹の為に彼も力を出し尽くす。

 

カンカンカン!!!

 

木刀を一度打ち合う音が響き終わるまでに彼らは、三度打ち合っている。

仕合を始めてから、七分と十二秒。

 

「「はぁ……はぁ…………」」

 

両者は緊張と興奮により、肩で息をする。

 

((次の打ち合いで終わる))

 

両者の思考は一致する。

 

故に両者、同時に仕掛けた。

 

「っ…!」

 

今まで取らなかった行動に、雅は意表を突かれる。

横の薙ぎ払いが、流雅の左刀に止められる。筈だった。

限界を迎えた流雅の左手は、その衝撃に耐えられず左刀は遥か遠くへと。

だが、雅の刀がそのまま流雅の脇腹に入る事は無かった。

 

「クソッ……!」

 

(陰陽相生……)

 

雲嶽山に伝えられし思想を体現した彼の技が、虚狩りに一針の隙を作る。雅の刀は彼女の右手だけに握られ右後方へ。

が、雅はここでは終わらない。

刀から離してしまった左手を刀に戻す事なく、そのまま流雅へと振り下ろす。

 

(もらった…!)

 

流雅の左手には刀が無く、あるのは右手の刀のみ。

左から振り下ろされる刀に、追いつき防御、反撃する事は相手が一般人であれば可能だ。

だが、相手はまさしく最速の剣豪。その剣速は、目で捉える事は出来ない。

また最も大きな問題で、力が足らない。真剣でコンクリートの建物を容易に豆腐にする剣豪の振り下ろしを、体勢が悪い状態で受ける事は出来ない。

故に、流雅は()()()()()。両手を後ろに回し、刀を持つ手を、そして刀の持ち方を、変えた。この間はコンマ一秒に満たない。

 

(()()()()…!?)

 

雅の剣術知識は、模範的なものだ。それは決して悪では無く、正統な剣術に積み重ねた名誉でもある。

だからこそ、雅はその選択肢に気付けない。

流雅は、刀の持ち替えと同時に左半身を大きく引いている。

安定した体勢。迎え撃つには十全。

 

 

 

 

 

 

 

バギ、ギ!!

 

 

 

稽古場に響いたのは全く同じ二音。それに続き

 

 

 

カコン……カコン…カコン…コン……。

 

 

 

地に落ちる木刀の()()

 

 

 

「……引き分けかな」

「むぅ………」

 

両者の手には同じく木刀の一部が握られている。

両者の木刀は途中で折れ、その破片が辺りに散らばっている。

 

 

「「ありがとうございました」」

 

互いに最敬礼。同じ母から学んだ礼儀だ。

 

「雅、木刀の破片刺さってない?」

「問題ない。ありがとう、兄上」

 

「「「「………………」」」」

 

特別執行課の人員は、言葉を失っていた。

それは当然でもある。彼らが目にした七分十四秒間。

それは、二つの残影が行き交い、二つが風を裂き、二つが衝突する度に鳴り響く轟音。

まさに、地獄絵図。彼らが目に出来たのは、その結果のみ。

 

「と言う事で、引き分けでした!はい、皆オフィスに帰るよ〜。色んな書類渡されててさ」

 

「「「「はい!!」」」」

 

が、彼らもまたH.A.N.Dの一員。

全てを虚から守り、自らの命を賭す覚悟を胸の中で燃やしている。

滅多に観測すら不可能な虚狩り級の実力者同士の仕合は、彼らの正義の炎に薪を焚べ、風を吹き、油を注いだ。

 

「雅、ごめんだけど鍵お願いしていい?」

「………分かった」

 

そのまま特別執行課は、皆訓練場から退室した。

 

(雅なんか黙ってたし怒ってるのかな……やっぱり僕の異動が嫌だったのかな………機嫌直してくれると良いんだけど…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

星見雅は一人、訓練場に残っている。

兄の折れた木刀を拾い上げ、ゴミ箱へと捨てる。

だが、彼女の手には自らが使っていた真っ二つに折れた木刀がある。

 

(引き分け………()()…)

 

雅は気づいている。

兄との最後の打ち合い。そして最終的に勝負を決めたあの木刀の衝突。

そこで対峙していた雅だけが、ほんの微かに感じた違和感。

 

(焼き跡……)

 

雅が持つ木刀の分かれ目は黒く燻んでいる。

 

(炎……違う。炎ならば私は見えるし、木刀に広がる)

 

雅の思考は、刀のように鋭く尖る。

 

 

 

 

 

 

 

 

(……()()……?)

 

 

 

 

 

これより彼を渦巻いていく変化に最初に気付いたのは、本人では無く。

遥か高みの剣豪(虚狩り)だった。

 

 




雅とのイチャイチャ(物理)

雅との普通の幸せなラブコメ…などと!その気になっていたお前達の姿はお笑いだったぜ。

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