雅が本当の兄の様に慕っていた分家の兄が、雅の母親を介錯した話。   作:ザワザワする人

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超かぐや姫がおもしろくってぇ!!
気付いたら書いててぇぇ!いつの間にかこんなに間が空いてしまってぇ!



説教タイム

 

 

青い電流は、チェーンソーを持った男の体を走り、やがて空中へと放出された。

 

イヴリンが発行した特別招待券は、()()

 

3枚は、アキラ、リン、イアスの分である。

 

そして残りの一枚は、流雅へと渡された。

 

しかし、流雅はそれを使っていない。

 

特別執行課の地位を使い、流雅はこの会場へと入っている。

 

なら、その一枚はどこに行ったのか。

 

流雅は、ある人物へとそれを手渡した。

 

ほんの少し、流雅が仲良くなれたと思っている人。

 

相手も、流雅の事をちょっとばかりは想っている人。

 

 

 

「プロキシ先生に言われて来たけれど………間一髪ね」

 

 

 

澄んだ声と同時に、青白い電流が納刀と同時に最後の残滓を空気に散らした。

 

チェーンソーを持った男は白目を剥き、その場に崩れ落ちる。

 

流雅は薄く目を開こうとしたが、塗料と疲労で視界はほとんど利かない。

 

ただ、少しだけ聞き慣れた少女の声だけが耳に届く。

 

「……誰、ですか」

 

「アンビー。あなたの映画友達よ」

 

淡々とした声で冗談交じりにアンビーは言う。

 

「立てる?」

 

流雅は返事をしようとした。

 

だがその前にまたぐらり、と世界が傾いた。

 

「……あ」

 

膝が完全に崩れ、意識が暗闇へ沈みかける直前、誰かの腕が彼を支えた。

 

「……限界を超えてる」

 

アンビーは流雅の体を受け止め、小さく呟く。

 

「よくここまで動いたわ」

 

流雅は、かすかにアンビーが微笑んだ気がした。

 

「……アストラ、さんは……」

 

「無事よ。イヴリンという護衛もいるらしいわ。それにプロキシ先生もいる」

 

その返答を聞いた瞬間、流雅の体から力が抜ける。

 

「……そう、ですか」

 

それが最後だった。

 

流雅は完全に意識を失い、アンビーにもたれかかった。

 

アンビーは一瞬だけ彼を見下ろす。

 

塗料まみれで、顔色は最悪。

 

呼吸も浅い。

 

「……本当に、無茶をする人」

 

その言葉に責める色はない。

 

むしろ、少しだけ呆れているようだった。

 

アンビーは流雅を壁にもたれさせ、周囲を警戒する。

 

その時、廊下の奥から軽い拍手が響いた。

 

「いやぁ、さすが~。パエトーンの人脈ってすご~い」

 

ローブの人物が、ゆっくりと姿を現す。

 

アンビーは即座に刀を抜き、構えた。

 

「あなたが黒幕?」

 

「黒幕ってほど大層じゃないかもね~。私は今回で言えばそっちの味方かも?」

 

「そう」

 

アンビーの目が細まる。

 

「じゃあ、倒しても問題ない」

「映画でそう言うセリフを言うのは、決まってラスボスで出てくるタイプよ」

 

ローブの人物はくすくす笑う。

 

「その前に、一つだけ教えてあげる」

 

「その人、ずいぶん大切にされてるみたいだね」

 

アンビーは無言。

 

「あなたにも、イヴリンだっけ?あと、アストラにも。そして…………パエトーンにも」

 

「……だから何」

 

「別に。ただ、壊し甲斐があるなって思っただけ」

 

その瞬間。

 

アンビーの周囲で、青い電流が弾けた。

 

空気が焦げる。

 

「訂正する」

 

彼女は一歩踏み出す。

 

「倒す、じゃないわ」

 

「あなたは捕まえて、情報をもらう」

 

ローブの人物は笑みを深めた。

 

「いいね~~。でも、私は帰らなきゃ。ばいば~い」

 

アンビーの一歩目は途中で停止した。

 

それ程までに、美しく、滑らかに、気配を絶たれた。

 

「プロキシ先生に連絡………も必要なさそうね」

 

「それに…………」

 

「あなたを見ていないといけないから」

 

アンビーは微笑みを零し、座った自分の腿の上に、流雅の頭を乗せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

「…………」

 

「言い分はあるか、兄上?」

 

「…………ないです」

 

「兄上の課の人達が六課にも来た」

 

「……はい」

 

「兄上は独自で調査を行い続けており、自分達はそれに関われなかったと言っていた」

 

「……はい」

 

「イヴリン殿からも事情を拝聴した」

 

「………はい」

 

「統括するに、兄上は一人で全てを解決しようとし、六日間睡眠を取らず、挙句の果てには邪兎の従業員に助けられなければ、命が危うかった。これに相違は?」

 

「………ないです」

 

なにこれ、目が覚めたら妹からの尋問が始まりました。

ていうか最近もこういうのあったっけ。ブリンガーの時。

 

「兄上」

 

「は、はい」

 

「………怖かった

 

その一言は、あまりにも小さかった。

 

けれど、静まり返った病室では嫌というほどよく聞こえた。

 

僕は、一瞬言葉を失う。

 

普段の雅なら、絶対に漏らさない弱音。

それを聞いただけで、胸の奥が鈍く痛んだ。

 

俯いた雅の肩は、わずかに震えている。

握り締められた拳が、どれだけ不安だったかを物語っていた。

 

「……ごめん」

 

自然と、その言葉が口をついて出た。

 

雅はすぐには答えなかった。

 

数秒の沈黙の後、ゆっくりと顔を上げる。

 

目元が、少しだけ赤かった。

 

「兄上が帰ってこない夜が、何日も続いた」

 

「……うん」

 

「連絡をしても、返事は最低限」

 

「……うん」

 

「兄上の課に問い合わせても、誰も詳しいことは知らない」

 

一つ一つの言葉が、胸に刺さる。

 

僕は、自分が思っていた以上に、雅を心配させていたらしい。

 

「それで、平気でいられると思うか?」

 

「……思わない」

 

即答だった。

 

思えるわけがない。

 

僕だって、雅が同じことをしたら気が気じゃない。

 

雅は小さく息を吐いた。

 

「兄上は昔からそうだ」

 

「自分が傷つくことには、あまりにも無頓着すぎる」

 

「守ることばかり考えて、自分が守られることを想定していない」

 

「……耳が痛い」

 

容赦がない。

 

でも、その厳しさが今はありがたかった。

 

雅は僕を真っ直ぐ見つめる。

 

「私は、兄上が誰かを守ることを否定しない」

 

「それが兄上だから」

 

「だが、一人で背負わないでくれ」

 

その言葉に、僕は目を瞬いた。

 

「私もいる」

 

「特別執行課の皆もいる」

 

「イヴリン殿も、アストラ殿もいる」

 

「……兄上を助けたいと思っている」

 

胸の奥が、少し熱くなる。

 

そんな当たり前のことを、僕はいつも忘れそうになる。

 

「だから」

 

雅は少しだけ眉をひそめた。

 

「次からは、誰かに頼ってくれ兄上」

 

「ちゃんと寝て」

 

「食事も取り」

 

「無茶をせずに」

 

「………最後のは難しいかも」

 

「なら努力を」

 

「……善処します」

 

「信用できない」

 

即答だった。

 

思わず、笑ってしまう。

 

「イヴリンさんにも同じこと言われた」

 

「当然だ」

 

その時だった。

 

病室の扉が勢いよく開く。

 

「流雅ぃぃぃぃぃ!!」

 

「うわっ」

 

アストラさんが飛び込んできた。

 

その勢いのまま、ベッドに突撃してくる。

 

「無事でよかったぁ!!」

 

「ちょ、ちょっと苦しいです!」

 

「アストラ、離れろ。患者だ」

 

後ろからイヴリンさんが呆れた声を上げる。

 

さらにその後ろには、アンビーさん、リンさん、アキラさん、イアスさんまで揃っていた。

 

一気に病室が狭くなる。

 

「生きてる?」「体は無事かな?」

 

兄弟の阿吽の呼吸で、リンさんとアキラさんに同時に聞かれた。

 

「ちゃんと生きてますよ」

 

「よかったー」「それはよかった」

 

リンさんがけらけら笑う。多分、僕の体調の事は聞いてたんだろう。

アキラさんは聞いていなかったようで、リンさんを問いただししていた。

アンビーさんは静かに頷いた。

 

「回復力は高そう」

 

「そこ褒めるところですか?」

 

イヴリンさんが腕を組み、俺を睨む。

 

「倒れたら三発目だと言ったはずだが」

 

「……覚えてます」

 

「なら話は早い」

 

バシンッ

 

「痛っ!?」

 

病み上がりに容赦がない。

 

「本当に叩くんですか!?」

 

「当然だ。むしろ軽いくらいだな」

 

アストラさんは大笑いしている。

 

「ふふっ!いい気味ね!」

 

「味方がいない……」

 

「いるわ」

 

アンビーさんが淡々と言う。

 

「でも、今回はイヴリンに賛成」

 

「アンビーさんまで!?」

 

病室に笑い声が広がる。

 

雅はそんな様子を見て、小さく息を吐いた。

 

「……まったく」

 

「兄上は、本当に手がかかる」

 

その声には、呆れと、安堵と、少しの笑みが混じっていた。

 

俺は、そんな皆を見回して、小さく笑う。

 

……本当に。

 

僕は、一人じゃないらしい。

 

 

 

 

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