雅が本当の兄の様に慕っていた分家の兄が、雅の母親を介錯した話。 作:ザワザワする人
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「プロキシさん!来ましたね!」
「青衣さんが言うには、彼らの潜入操作官がブリンガーをホロウに呼び出したそうです」
「彼の動向を察知して、流雅さんを先に行かせました。ですが明確な位置は分からずに行かせてしまいました……。急いで彼に追いつきたい所ですが……」
「連絡が取れなくなったと……」
悠真は心配しているようだ。
「プロキシの話によると課長とドンパチした後、腹部に刀が貫通………。普通の人間なら死んでてもおかしくないですよ」
「それにブリンガーが配置していた軍と交戦している可能性があります………」
「なんにせよ、流雅さんの位置が分かんない以上、あの人信じるしかないですかね……僕たちが出来るのはすぐさまブリンガー捕まえて、流雅さんを捜索することって感じですかね」
「プロキシさん!突入します。準備は?」
「H.D.Dもド安定!絶好調って感じ!いつでも行けるよ!」
そうして、彼らはポート・エルピスのホロウへと入った。
「……そこらかしこに銃痕がありますね」
悠真は呟く。
悠真の言う通り、地面やコンテナには細い穴が空いていたり、銃弾がそれらを削った跡が残っていた。
「これがもし流雅さんとの交戦跡だったなら……」
「浅羽隊員、集中してください。そろそろブリンガーとの待ち合わせ場所です」
彼らが待ち合わせ場所に着くと、ブリンガーは確かに待っていた。
だが彼らがブリンガーを捉える前に、先にブリンガーはこちらを見ていたようで逃亡を始めた。
プロキシの案内で、ブリンガーを追い詰める。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「待ちなさい!」
悠真の威嚇の矢が、ブリンガーの前に刺さる。
「止まれ!」
「投降しなさい!ブリンガー長官!」
柳の声には確かな怒りが籠っている。
それは、信頼する仲間を、親友とその家族を、傷つけられた怒りだ。
「いえ、今は容疑者……ですね」
「フン!流石は対ホロウ六課、足が速いな……」
この状況であってもブリンガーからは余裕が見て取れる。
「いいだろう……こちらとしても、この方が好都合だからな…」
「妖刀の力は手に入った!見せてやろう、ホロウの時代を先駆ける究極の姿!」
ブリンガーは胸元のポケットから何やら注射器のようなものを取り出す。
そして、その中に入っている黄金色の液体を、自らの腕に突き刺す。
「始まりの主よ……再創を!!」
ブリンガーは蹲り、それを中心として魔法陣のようなものが広がっていく。
それらは周りにあったエーテル物資達を巻き込んでいく。
「え?なになに?」
今まで見た事の無い状況に、蒼角が疑問を呈する。
『エーテル活性上昇!気をつけて!』
ホロウ独特の黒いモヤのようなものが、ブリンガーを飲み込み、中から巨大な白い手が現れる。
その手のひらには、大きな大きな目があった。
拳を握りしめ、それを振り下ろしてくる。
「避けて!!」
柳が声だけでも反応する。
だが、それは皆の目前まで迫っていた。
全員が覚悟を決めた時。
彼らの視界に映っていたのは。
「りゅうにぃ!!」
巨大な白い腕を両断している流雅の姿だった。
「全員、怪我無い?」
彼は着地し、聞いてくる。
「流雅さん……それ………」
彼の服は、赤く染まっている。
元々白かったシャツは、もはや原型の色を留めていなかった。
それは返り血なのだろうか、それとも本人の血なのだろうか、一目では分からない。
プロキシの報告にあった腹部の傷からだけでなく、左肩の近くに、銃撃の跡があった。
「大丈夫大丈夫、だいたい返り血だから。怪我の出血も抑えてる。まだまだ動けるよ」
流雅の言葉には有無を言わせぬ力があった。
柳も、悠真も、蒼角でさえも、彼の雰囲気が明らかに以前と違うことに気づいていた。
「さっさと、アレ倒して帰ろう」
その言葉に、全員が確かに頷いた。
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星見流雅は、嘘をついている。
彼のシャツの血はほとんどが彼の血であった。
彼の身体はポート・エルピスのホロウ内での最初の交戦の時点で、限界を超えている。
腹部の傷は大動脈を傷つけ、左肩の銃創は鎖骨を一部破壊している。
彼の身体を動かしているのは、ただ一重に敵への復讐に起因する。
大切な、大事な妹を、狙われた。
そして不甲斐なくもそれを事前に防げなかった自分自身に。
彼は燃え滾る怒りを抱いている。
(僕が、あと数秒早く雅の元に着いていれば)
(僕が、ずっと雅と一緒にいたら)
(僕が、自分を過去に縛らなければ)
憎悪を、厭悪を、それら全てを力に変えていた。
(体が、軽い)
彼の目とそれと同じく両刀には、荒れ狂う無尾の赫とは対を成す、蒼い炎が点っていた。
今までに無い程、流雅は速度を出せていた。
それは、最年少の虚狩りにも匹敵している。
【あいつは無尾の力を使ってる!俺らしか抑えらんねぇぞ!】
「お、お前……!!」
ブリンガーのエーテリアス化した声が聞こえる。
でも、それもどこか遠くに聞こえる。
ブリンガーの殆どの攻撃は肥大化した右腕か、変形した左腕の剣、もしくは空間から出てくる巨大な白い手。
それらの連携速度も、威力も、全ては。
(雅より、弱い)
一般的なエーテリアスは、コアを貫けば活動を停止する。
ブリンガーにはコアが見当たらなかった。
首を撥ねるように思案し、そのように動く。
六課の皆は僕の動きに呼応して動く。
全員が雅の速度には見慣れている。
協力し、一体の敵を撃破する。
この一点において対ホロウ六課に勝るチームは、新エリー都に存在しない。
瞬く間に、ブリンガーの首へと迫る。
「クソがぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ブリンガーの咆哮が辺り一帯を震わせる。
それを無視し、両刀をブリンガーの首へとあてる。
(いける)
そう思った瞬間、体の力がふっと抜けた。
バンッ
少し遅れて遠くから銃声が聞こえる。
(狙われたのは、僕)
左腕後方に撃ち込まれた。
実弾ではなかった、ブリンガーが打った液体でもない。
頭が急速に冷やされていく感覚。
頭に冷水をかけられたような。
それは、僕の思考を冷静にする。
感覚で分かる。
これは鎮痛剤の真逆のようなもの。成分としては、筋弛緩剤に似ている。
「……………っっ!」
収まっていた痛みが再び呼び起こされた。
体から一気に力が抜ける。
「流雅さん!!」
どうやらブリンガーは空中から手を出し、柳達を薙ぎ払ったようだ。
柳たちは、そのまま落下していく。
(四面楚歌……)
目の前には強大なエーテリアスが、背後からはいつ実弾を撃たれるか分からない。
身体を動かそうにも、立ち上がる力すら出てこない。
「ははは!所詮はこの程度か!!」
(動け、動け、動け、動け!!)
自分の体に命令を送る。
脳は確かに命令を送るが、四肢がそれに反応しない。
「不安にさせてくれたな」
ブリンガーは僕に近づき、話しかけてくる。
「星見雅を暴走させ、お前を殺させるのが目的だったのだが……」
「まさか、お前が勝つとはな」
「聞こう。星見雅は無事か?」
「誰が……答えるか」
「そうか、無事なのだな」
ブリンガーはそう断定した。
「なんで……そう思う」
絶え絶えの息で声を出す。
「お前のような人間は無事でなかったら、私に怒り狂って声を出す筈だ。なのにお前は妙に冷静だな?星見雅は無事と見て間違いない」
それは長年、治安官として鍛えられた第六感なのだろうか。
彼は見事に言い当てた。
「全く……お前のような
「……失敗……作?」
「お前は知らないのだろうな、旧都陥落の日の事を」
嫌な想像が、頭の中を電流のように走った。
「我々はお前たちが幼い頃から、無尾を狙っていた」
ブリンガーは語り出した。
「星見家において、目覚しい程の才を持った娘が生まれたと聞いた」
「初めは娘の方を狙っていた。だが本当に偶然だ。お前が本家に入り込んできたのは」
「養子として迎え入れられたお前は、明らかに星見雅より才能が無かった」
「星見の刀は、本家の人間のみに受け継がれる」
「俺達は、何とかお前に無尾を継がせるように仕向けた」
「幼少期の頃に無尾を握らせ、お前を暴走させれば刀の力を盗むのは固くない」
「そのままお前が暴走すればよかったんだが……まさか星見雅が戻っているとはな」
「お前は星見雅に刀を奪われてしまって、結局、星見家から逃げ出した」
「巡り巡って、まさかお前が俺達の計画を邪魔するとは」
「なにかの因果すら感じるな」
何を言っているのか、分からなかった。
(こいつが……僕に母上を殺させた……?)
(雅の……暴走も……こいつが……)
ふつふつとまた怒りの炎が湧き上がる。
(こいつは……どれだけ……)
また力が出てくる。
炎が刀を呑んでいく。
先程よりも、それは大きく、強くなっていく。
だが、やつは辺り一帯にあるエーテル素材を巻き込み吸収しようとしている。
はるか上空に奴は上っている。
あれを止めるべきだ。
けれど、あれにはエーテル爆薬も入っている。
あれを刀で傷つけにいけば、僕の命は無惨に散っていくだろう。
(考えろ……考えろ……)
あれを吸収されたら、雅ですら勝ち目が無いかもしれない。
刀を投擲したとしても、正確にエーテル爆薬だけを撃ち抜くのは難しい。
刻一刻と時間が迫る中。
一本の流れ星が、やつに向けて飛んでいった。
それは確実に、エーテル爆薬だけを撃ち抜き大爆発を起こした。
辺りに粉塵が舞う。
(悠真か……)
あのような一点を撃ち抜く弓の腕を持つのは、六課のサボり魔しかいないだろう。
地に伏せたブリンガーに近づいていく。
「く、クソが……!!」
大きな右腕を地に打ち付け、悔しがっているらしい。
ゆっくり近づいていく。
刀を引きずりながら。
ふと、肌に何かを感じた。
殺気ではない。
視線だった。
(いや、そもそもこれは……)
僕に向けてではない。
(ブリンガーだ)
僕は足の痛みを無視して動かし、駆け寄る。
僕の目は確かにそれを捉えた。
ブリンガーが、エーテリアス化した物質が籠った銃弾を。
プシュ
中の液体は、ブリンガーの中へと入っていく。
「ぅぁぁあぁあぅぅぅぅうぁぁぁあ!!」
人間の声帯から出せるような声では無かった。
先程とは、エーテルの密度が段違い。
(首を落とす!)
僕が駆け寄ると、ブリンガーは跳躍した。
二十メートル近くを跳躍し、奴の見据える方向は。
(柳達か!)
右腕を構え、エーテルが圧縮されていく。
星彩を投擲し、すぐさまブリンガーへと向かう。
少しだけ刀で腕を弾いたが、ビームは柳達へと放たれた。
それは柳達への直撃を下げたが、あたりの地形を破壊し、柳達を再び落下させた。
(ここで……倒すしかない)
現状、雅が動ける状態か分からない以上、六課の最高戦力は自分だと流雅は自負していた。
(
刀を構え、突進する。
【避けて!!】
頭に月影の声が響き、間一髪で斬撃を回避する。
それは後ろのコンテナを豆腐のように切り裂いた。
先程までとは速度も威力も別格。間一髪が連続しながら、斬撃達を弾いていく。
「ははは!!この高揚感!!素晴らしいな!!」
弾き飛ばされ、相手の姿を再び認識する。
無尾のような、赤い炎のようなオーラを纏っている。
(無尾の力か……)
「星見家の失敗作よ!!見るがいい!これが、妖刀の力!!」
奴が右腕と比べて小さな左腕を天に掲げる。
徐々に、奴の体の十倍はある刀が作られる。
(まずい……)
あれは、受け流せない。
弾けない。
避けるしか無かった。
けれどもうそれを実行出来る程、足に力が残ってない。
(
ただ振り下ろされる圧倒的質量に、小手先の技も術も関係ない。
故に、彼は禁術を使おうとしていた。
だが禁術は禁じられているが故に、この限られた時間では余りにも長い発動時間を要する。
禁術は発動不可と認識した瞬間、彼は行動する。
ブリンガーのの巨大な太刀は、既に振り下ろされている。猶予は僅か。
星彩を、全身全霊をもって投擲。
続いて、月影を納刀。左半身に自重を傾ける。
(何回も、何十回も見てきた。だから、形は出来る)
霜月の構え
彼のそれは、星見雅の真似事に過ぎない。威力は遠く及ばない。
故に。
(
完璧以外のタイミングは、死を意味する。
一心無我
言葉で表せぬ集中力に、夜の彩光は静かに答える。
星は曇天を駆け、ただその距離を望んだ。
月は人の手に収まり、ただその時を待つ。
霜月
月は、真正面から規格外の質量を受け止めた。
「何っ!?」
ブリンガーの太刀は、止まった。静止した。
ここから先は鍔迫り合い。そう、なる筈だった。
プシュン
少し抜けた炭酸を開けた様な音。正体はサイレンサー付きのスナイパー。
清く澄んだ水の器に、墨汁が一滴。
必然的な、脱力。
「がはっっ……」
数十メートルを飛び、コンテナに叩きつけられる。
「……先に他の六課を殺しに行く。どうせお前はもう死にかけだろう。星見雅を確実に殺し、妖刀の力を完全に私が奪う!ハハハハハ!!」
そう言い捨て、ブリンガーは立ち去った。
浮上し、高速で柳達へと向かっていく。
(うご……けない……)
意識が遠のいていく。
(やっぱり、二人の言う通りだったかな……)
視界の端に移る刀を一瞥する。
エーテルを集中させ止血はしているつもりだったが、完全では無かったようだ。
血が少しずつだが溢れ出している。
おそらく後頭部からも出血してる。
途端に眠くなってきた。
(これ…やばい……)
頭にモヤがかかっていく。
瞼が鉛のように重い。
体の力が抜けていった。
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「……追ってきてますよ!」
ブリンガーは私達にエーテル弾を打ち込みながら接近してきている。
(流雅さん………)
私達はブリンガーに落とされた後、再度ブリンガーに近づくことが出来ましたが、その後再び落下されてしまいました。
私達が落とされた後、ブリンガーを抑えていたのは言うまでもなくただ一人。
けれど今そのブリンガーが追ってきていると言うことは……
「なぎねぇ!りゅうにぃなら大丈夫だよ!」
私の不安を察したのか、蒼角が声をかけてくれました。
「そうそう、あの人意外とタフですからね!」
浅羽隊員もそれに呼応する。
『柳さん、ニコが海岸に行けって!』
「海岸……分かりました、向かいましょう」
そうして、私達は西の海岸へと向かう。
途中でのブリンガーの猛攻を避けながら辿り着くと、ブリンガーが待ち構えていた。
「終わりだ!!」
ブリンガーが先程と同じビームを放とうとしていました。
「くっ………」
私は蒼角を庇い、背を向けました。
ですが、それが私達に向けて放たれることはありませんでした。
「なんだと!?」
ブリンガーの声が聞こえると同時に。
「皆、待たせた」
対ホロウ六課の課長がそこにはいました。
「課長!」
「やっと来た!」
『雅さん!』
私たちに希望の光が舞い込んできました。
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「お前が元凶だな?」
「はっ!だったらどうする?」
「なに、容疑者を速やかに捉える…修行だ」
「ハハハ!妖刀の力は既に私のモノだ!やってみるがいい!」
「対ホロウ六課、いざ参る」
星見雅を基軸として、六課は戦闘行動をとる。
蝶の戯れの中に鋭く光る蜂針のように。
雅の刀は、ブリンガーへと辿り着く。
目と鼻の先。
雅の目には燃え滾る炎が点っているようだ。
それは決して、無尾の支配によるものではない。
むしろ、真逆。
雅が無尾を支配していた。
炎の原因はそれだけではない。
ふつふつと怒りの炎が雅の中で燃え盛る。
「兄上を……どこにやった!!」
雅の視点から言えば流雅の情報は雅を抑えた後、彼がブリンガーの元に向かったという情報しか持っていない。
だが、今この場に流雅の姿はなかった。
「ハハハハ!そんなに偽りの兄が大事か?」
「黙れ!!!」
ブリンガーが左手でエーテルで作られた刀を握る。
雅はそれを粉々に粉砕する。
「星見家の最高傑作が!血の関係も殆どない失敗作を想うのか!傑作だな!」
「黙れ!!!!」
「兄上は誰がなんと言おうと、私の……私の
「兄上を、侮辱するな!」
ブリンガーは右手で雅を弾いた。
後退し、再び突撃を行おうとした矢先。
「始まりの主よ!再創を!」
ブリンガーが叫び、巨大な数十メートルの大太刀が現れる。
(大きいな……)
私がそれを断ち切ろうと、足を踏み込むと。
「星見雅よ!見るがいい!」
ブリンガーは左手で何かを握っている。
そこにあったのは真っ赤に染まった血だらけの何か。
「まさか……」
柳がこぼす。
それにはほんの少し蒼が見える。
「星見流雅の隊服だ!この出血量……お前にとって想像にかたくないだろう?」
(兄上の………血……)
「奴は私と接敵する前に、腹部に大きな傷跡があった!」
「一体誰が傷をつけたんだろうな!!」
(まさか………)
刀を握る手がプルプルと震える。狐火の勢いも、弱まっていく。
(私が……兄上を……)
「あ、ああ………ああああああ!」
必然的に、思い浮かぶ。
旧都陥落の時の光景が。
兄上が、母上を突き刺したあの日が。
私が………兄上を……………
『雅さん!しっかりして!』
「課長!」
声は私の頭に届かない。
ただ兄上の姿と、声と、匂いと、表情と……それら全てが頭を駆け巡る。
兄上という存在が私の中で反芻され続けていた。
(兄上が………死んだ………)
ブリンガーが巨大な大太刀を振り下ろしてくる。
反撃を取ろうとしても、体が、腕が、頭が、動いてくれない。
(私が……殺した…)
大太刀が私達の目前へと迫った時。
「うるさい」
微かに声が聞こえるのと同時に、バギン!!!と刀が砕ける音がした。
私は急いで顔を上げる。
バラバラと砕けた大太刀の破片が落下していく。
「兄………上………?」
私がそう零すと、ソレは少しだけ後ろに振り向いた。
ソレは、兄上に似ていた。
闇夜のような黒い髪も。
少し可愛らしさを感じる垂れた狐耳も。
全てが同じだった。
けれど、彼の腰の部分には大きな二つのしっぽが生えていた。
それだけが、たった一つだけが兄上とは違った。
お前誰だよ!
霜月は雅の通常長押しのやつです。