デジモンアドベンチャー IB   作:煮干し銀

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特訓と進化と新たな仲間

 選ばれし子どもたちがサーバ大陸へ向かうのを見送ってから早一日。レオモンたちのおかげで特訓も順調に進んだこともあり、ブイモンとカプリモンのステータスは随分伸びた。

 

 おまけにいつのまにかデジファームアプリに追加されていた特訓用の道具も使ったので、これまでよりも随分とステータスの上がり幅が大きい。おかげで二匹ともあっという間に進化可能になった。

 

 ブイモンは今回の特訓でブイドラモンとエクスブイモンどちらかに進化可能となっている。カプリモンはソーラーモン、トイアグモン、コクワモン、ハグルモンの四種類すべてに進化可能だ。ただ、実際に進化するのは少し待ってもらっている状態にある。というのも、新しくスカウトするデジモン次第では進化先を指定させてもらう必要が出てくるからだ。とくにカプリモンについては慎重に考えたいところである。

 

「わるいな、二人とも。すぐに進化させてやれなくて」

 

「ううん、僕はそもそもシンイチがいないとこんなに早く進化できなかったんだ。少し待つぐらい平気さ!」

 

「私はご主人様がお決めになったのなら何の文句もありません! どうぞお気になさらず」

 

「ありがとう。とはいえ、進化させるのを遅らせればその分だけ進化後での特訓ができないからな。早めに新しいデジモンをスカウトしないと」

 

 新しいデジモンは当然どんなデジモンでもいいというわけではない。できれば世代は高い方がいいけれど、ヌメモンのようにすぐには戦力にならないデジモンを今仲間にしても旅が苦しくなるだけだ。食料消費も多くなるしね。

 

 なるべく空を飛べるデジモンが欲しい。ということで、特訓を手伝ってもらっているデジモンたちに知り合いのデジモンたちを紹介してもらい、スカウトしてみるも結果は惨敗。せっかく平和になったこのファイル島から危険なサーバ大陸に渡ろうと思うデジモンはいなかった。

 

 

 

 

 

 一匹目。

 

「悪いね、おいらは平和主義者なんだ」

 

 三匹目。

 

「サーバ大陸なんて行かなくても空は広いし自由だわ。ごめんなさいね」

 

 五匹目。

 

「せっかくデビモンがいなくなったのにサーバ大陸なんぞいくか! 帰れ帰れ!」

 

 十匹目。

 

「お肉100万個くれたら行ってあげてもいいよ。戦わないけど」

 

 

 全敗だ!

 

 

「まずいな、思ったより難航してる。流石にそろそろスカウトできないと、皆に追いつけなくなりそうだ」

 

 子供たちが旅立ってから三日目の朝。俺は決断に迫られていた。

 

 スカウトがこれだけ成功しないのなら、空を飛べるデジモンに限定すればもっと成功率は低くなる。こうなったらもう条件は撤廃しなければならないだろう。

 

 ということで、カプリモンにはわるいが、進化先をこちらで決めさせてもらうことになった。

 

「ごめんね、カプリモン」

 

「いえいえ、ご主人様のお役に立てるように進化するのですから、私としては最良の進化先です。是非ともご主人様の思った通りに進化させてください」

 

 カプリモンの言葉に頷いて、俺はアプリの進化ボタンを押す。するとカプリモンは光に包まれて、トイアグモンへと進化した。

 

「トイアグモン、これからもう少し特訓してもらって次の進化はこのブリンプモンというデジモンだ。大丈夫かな?」

 

「問題ありません、ご主人様!」

 

「よし。じゃあよろしくね」

 

「はい!」

 

 ブリンプモンはタイムストレンジャーをプレイしていた人にはなじみ深いデジモンだろう。戦闘で使ったことはないが、移動手段としては何度も登場するし、サブクエストもあるから結構会話もするしな。

 

 タイムストレンジャーで見たブリンプモンはかなり大きくて、大型の完全体デジモンですら中に収容して運べるぐらいだった。それだけの大きさがあるのであればブイモンも進化させてしまって問題ないだろう。まあでも、念のためにブリンプモンに進化してからブイモンについては考えようかな。

 

 ブイモンとトイアグモンがレオモンたちと特訓している間、俺はユニモンの背中に乗せてもらってファイル島を飛び回る。今後の方針が決まったので、あとはスカウトが成功すれば出発の準備はほぼ完了だ。

 

「えーっと、はじまりの町周辺のデジモンたちには断られたし、次はどのエリアに向かうべきかな……」

 

 俺がそうつぶやくと、ユニモンが突然方向転換する。

 

「ど、どうしたんだユニモン」

 

 そう聞いてみても、ユニモンはただ進むばかりで返事をしてくれなかった。喋れないというわけではないと思うのだが、もしかしてシャイな性格なのだろうか。

 

 進んでいる先に見えるのはムゲンマウンテン。もしかして、ムゲンマウンテンに仲間になってくれそうなデジモンがいるのだろうか。

 

 しばらくユニモンに任せて飛んでいると、やがてムゲンマウンテンの中腹にある古びた館に降り立った。なんだか幽霊が出そうな雰囲気のある屋敷だ。

 

「ユニモン、ここに仲間になってくれそうなデジモンがいるのか?」

 

「ヒヒーン!」

 

 前足を上げて鳴くユニモン。そうだと言いたいのだろう。

 

 俺はユニモンを連れ立って館の中に入っていく。結構広い館だが、外観と同様に中も幽霊屋敷感が満載だ。ところどころについている蠟燭の灯が少しだけ館内を照らしていて、助かるけど余計に幽霊屋敷っぽさを演出している。

 

「誰かいますかー!」

 

 玄関ホールでそう叫んでみたが、返事はない。

 

 本当にここに仲間になってくれるデジモンがいるのか疑わしくなってきたが、せっかくのユニモンの厚意だし、ひとまず屋敷を探索してみることにする。

 

 広い廊下に蜘蛛の巣の張った天井、床には赤黒いカーペットが敷いてある。そんな廊下を進みながら、一つ一つ部屋を覗くも誰もいない。そうして一通り屋敷を見て回って、あとは一部屋だけになってしまった。「ここに居なかったら本当に無駄足だぞ……」と、そんなことを思いながらゆっくりと他の部屋よりも大きな扉を開ける。

 

 扉を開けた先は厨房だった。大きな調理台が二列で並んでいて、調理器具が吊り下げられている。奥には巨大な冷蔵庫があって、稼働している音が聞こえていた。

 

 冷蔵庫がわずかに空いていて、冷気の煙が床を這っているのが見える。何者かがそこにいるらしい。

 

「誰かそこにいるのか」

 

 返事がない。

 

 仕方なく俺たちは厨房の中に入った。慎重にゆっくりと冷蔵庫に近づくと、冷蔵庫の明かりに照らされた黒い影が小刻みに震えているのが見えた。まさか、おびえられている?

 

「ユニモンから話しかけてもらえない?」

 

「ヒン」

 

 首を横に向けて拒絶された。なんでだよ。

 

 仕方なく俺はもう一度、自分が敵じゃないことをできるだけ優しげな声で伝えた。

 

「あのー、俺たちは怪しいものじゃありません。ユニモンの紹介であるデジモンを探してまして、ちょっとだけお話しできませんか?」

 

 それでも返事は返ってこない。ただ、何かもごもごという音、咀嚼音? が聞こえているだけだった。

 

 これはそっとしておいて別の場所に向かった方が良いのではないか。と、振り返ってみるとユニモンが早くしろと距離を詰めてくる。圧力!

 

「わかった、わかったって。開けるけど、襲われたら助けてよ、ぜったい」

 

 仕方がない。冷蔵庫に手をかけ、思いっきり開け放つ。

 

「えっ、ピコデビモン?」

 

「うん? キャーっ! 食料泥棒よ! 誰かーっ! 助けて―っ!」

 

「は、えっ、ちょっと待って。違うって、食料泥棒じゃないから!」

 

「じゃあなに! アタシの美しいお食事風景でも眺めに来たわけ? 変態じゃない!?」

 

「ピコデビモンの食事風景なんて見たいわけないだろ! 誰得だよそれ!」

 

 変なデジモンにあってしまった。さっさと屋敷から出て次のデジモンのスカウトに行こう。

 

 なんだよユニモン。え、このピコデビモンが候補のデジモン? ……マジか。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふーん、あんたサーバ大陸に行く仲間を探してんのねぇ。いいわよ、一緒に行ってあげても」

 

 女性のような高い声でそういうピコデビモンに、誘った手前なのにちょっと微妙な気持ちになる俺。しょうがないでしょ、さっき冷蔵庫の中に身体を突っ込んで口の周りを食べかすだらけにしてたんだ。こうもなるわ。

 

「ま、まあ、仲間になってくれるならありがたいよ。でも、本当にいいの? 他のデジモンたちはファイル島が安全になったから出たくないって理由で断る子が多かったけど」

 

「はあ、そうよね。平和平和、そりゃこの島のほとんどのデジモンたちにとってはそうでしょうよ。でもね、あたしたちみたいな悪魔型デジモンからしたら今のファイル島は最悪なのよ。なにせあのデビモンと関連付けされちゃうからね。そりゃあそうよね、あたしなんてピコデビモンよ。デビモンって思いっきり名前についてるもの」

 

「あー、それは大変だな」

 

「大変なんてもんじゃないわよ。外に出たら変な目で見られるし、食料の調達だってままならないわ。私だってあのデビモンがいなくなって清々してるうちの一匹なのよ? むしろ便利に小間使いにされてこき使われてたんだから一番の被害者といっても過言じゃないわ。まったく、暗黒の力になんて手を染めて、こっちはいい迷惑よ。だいたいね、あいつは……」

 

 その後もピコデビモンの愚痴はとどまることを知らず、俺たちは唯々それを聞かされ続けた。

 

「で、何だっけ? 私を美しい女性型デジモンに進化させてくれる話だったかしら?」

 

「違うよ。俺たちの仲間になって一緒にサーバ大陸に行ってくれるって話だったでしょ」

 

「ああ、そうだったそうだった。じゃあ行きましょうか。あっ、おなかいっぱいで飛びづらいわね。あんたの頭に乗っからせてもらうわ。うわ、乗り心地あんまりよくないわねえ、この頭!」

 

「……」

 

 本当にこいつを仲間にして良かったのだろうか。

 

 屋敷を出た俺は頭に重みを感じたままユニモンにまたがり、ブイモンとトイアグモンが待つ海岸へ飛んだ。

 

 海岸に着いたときユニモンに乗った俺の頭の上にさらにピコデビモンが乗っているという光景に、二匹が困惑した表情をしていた。まあ、そうなるわな。

 

 

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