デジモンアドベンチャー IB   作:煮干し銀

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出発とその頃の子供達

 「トイアグモン進化! ブリンプモン!」

 

 ピコデビモンを仲間にしてから一日。特訓したおかげで、ようやくトイアグモンがブリンプモンに進化した。ただ、一つだけ想定外だったのはブリンプモンが思ったより小さかったことだ。

 

 タイムストレンジャーで移動に使っていたブリンプモンは完全体や究極体でも複数乗せられるぐらいに大きかったと思ったのだが、トイアグモンが進化したブリンプモンは成熟期が五体もいれば定員オーバーになるサイズでしかなかった。

 

 これが通常サイズでタイムストレンジャーのブリンプモンが大きすぎたのか、はたまたこちらが小さすぎるだけなのかはわからないが、これからの冒険においてこの狭さは結構厳しい。子供たちとパートナーデジモンたちを合わせて14人、くわえて俺たちが3人で17人、今後また新しいデジモンが加わることも考えると狭すぎる。

 

「ご主人様、すみません……」

 

「いや、ブリンプモンが悪いわけじゃないって。とりあえず俺たち全員がサーバ大陸まで渡れればいいんだから、荷物まで入れて飛べるなら今は十分だよ」

 

 現状はまだ成熟期のブリンプモンだ。次の完全体でマスターブリンプモンになれば体も大きくなるはず。なら現状はこの狭さでもなんとかなる。俺たちは物資を運ぶ役割を受け持って、子供たちには旅を続けてもらう。ちょっと心苦しいが、現状ではそれがベストだろう。

 

 レオモンたちに手伝ってもらって載せられるだけ食糧と水を積み込んだら、あとは俺たちが乗り込んで出発するだけだ。

 

「レオモン、ユニモン、それから皆も、この数日間いろいろとありがとうございました」

 

「いや。これぐらいは何でもない。それよりもすまないな、本当は私もついていければ良かったのだが、このファイル島がまた新たな脅威に直面しないとも限らない。私がここを離れるわけにはいかないのだ」

 

「それがレオモンのやるべきことなんだろ? 謝る必要はないさ。そのかわり島のデジモンたちのこと頼んだよ」

 

「もちろんだ。このファイル島は私とここにいる皆で守る」

 

 レオモンがそう決意表明すると、周りにいたデジモンたちが皆一斉に声を上げた。

 

 もともとはバラバラの地域に住んでいたデジモンたちが、こうして一致団結してファイル島を守ろうとしている。彼らがいればファイル島はもう大丈夫だろう。

 

 

 

 ブリンプモンに乗り込むと俺は操縦席、ブイモンは助手席に座った。ピコデビモンは飛んでいる。

 

 操縦席の横の小窓から外を覗くと、レオモンたちが見送りをしてくれているのが見える。俺は彼らに数回手を振ると、前を向いて操縦桿を握った。

 

「行き先はサーバ大陸。全速力で行くぞ!」

 

 

 

 

 一方そのころ、選ばれし子供たちはホエーモンに乗って海上をゆったりと移動していた。

 黒い歯車に蝕まれていたホエーモンを助けたことで、お礼にとサーバ大陸まで送ってくれることになったのだ。

 道中で、デビモンが海中に隠していた次の進化に必要なタグを回収し、その後は特に何のトラブルもなく海の旅が続いている。予定通りであれば、あと二日。子供たちはすでに海の景色に飽きてしまい、平和で暇なひと時を過ごしていた。

 

 これまで七人一緒に行動してきて、それなりに仲は深まってきている。しかし、何も気にせず言いたいことを言えるほどの関係性はまだ構築されていない。タグを取りに行ったり食料を確保したりと忙しかった一日目、体力回復に努めつつ、のんびりしていた二日目はまだ良い。だが、それが三日目ともなると話すことがなくなって静かな時間が増えてくる。

 

 何も話さないならそれでもいいのだが、とはいえそれはそれでなんだか退屈だ。体力も回復しきっていて、昼寝だってできないぐらいに元気な子供たちは、誰か何か話題を出してくれないかなと思うようになっていた。

 

 そんな中、ヤマトが一つの話題を出す。それは気になってはいたものの何となく話しづらいようなあの人の話だった。

 

「なあ、皆に聞きたいんだけど、シンイチさんのことをどう思ってる?」

 

 まず反応したのは釣りをしていた太一。

 

「どう思ってるって、別にただ良い人なんじゃないかってぐらいだな」

 

「それはそうなんだが、なんていうか、シンイチさんってちょっと変わってる人だよな。あの話も突拍子もない感じだったし」

 

「そうね、いきなり異世界とか言われても、ちょっと信じられないもの」

 

 空の言葉にだよなと返すヤマト。しかし、それに続いて光子郎が反論してくる。

 

「ですがシンイチさんが持っていたあのスマートフォンという携帯電話、あれは僕らの世界からすれば信じられないくらい高性能な物でしたし、僕はシンイチさんが異世界から来たという話は本当なんじゃないかと思ってます」

 

「うーん、たしか写真とか動画とか、あとインターネット? も使えるって言ってたわよね? ミミ一枚写真撮ってもらったけど、すっごく奇麗だった! パパのデジカメで撮った写真よりもすごかったし、ミミもシンイチさんが異世界? から来たっていうの本当じゃないかなと思ったな」

 

 ミミの言葉に対して、太一と同じく釣りをしていた丈が口を開く。

 

「まあ、ミミ君や光子郎の言ってるようにシンイチさんが異世界から来てたとしても、何にしろ僕らより年上の頼りになる人がいてくれるのはありがたいよ」

 

「それはそうだな。ゲンナイさんは正直ちょっと頼りにできなさそうな気がしたし、シンイチさんがいてくれるのは助かる」

 

 丈の言う通りシンイチの存在はヤマトにとってもとてもありがたいものだったらしい。特に弟のタケルの面倒を一時的にでも見てもらっているので、ヤマトは人一倍助けられている。

 

「年上か……そういや、シンイチさんが言ってたことの中で異世界から来たってのよりもっと変なのがあったな」

 

「ああ、あれか……」

 

 太一が思い出したように言おうとしていることをヤマトも思い浮かべたのか、二人は同時にその疑問を口に出した。

 

「「25歳!」」

 

「だよな! シンイチさんどう見ても15とかにしか見えねぇのに、自分のこと25歳なんて言ってて変だなと思ってたんだよ!」

 

「俺も思ってた。確かに世の中には年齢よりも見た目が若い人はいるけど、流石に15歳と25歳じゃだいぶ変わるだろ。シンイチさんはどう見ても高校生ぐらいにしか見えない」

 

「それも異世界から来たから、なのかな? 光子郎君はどう思う?」

 

「そうですね……すみません。僕にもそのあたりの推測は出来そうにないです。年齢を偽る意味もありませんし……」

 

「たんに大人ぶりたかったんじゃないの?」

 

「いえ、それはないでしょう。シンイチさんからはそんな感じしませんでしたし。そういう人って話せばすぐわかります」

 

「確かに、丈先輩はわかりやすいもんね」

 

「ミミ君!?」

 

 その後も子供たちの間でシンイチの話題は出続けた。どうしてデジモンを複数持てるのかとか、アグモンたちに何か知らないか聞いてみたり。結局、夕食の時間に差し掛かってようやく忙しくなってくるまで、彼らの話題はシンイチのことで染まっていた。

 

 夕食後、さて寝るまで何をしようかと考えていたところで、なぜか再びシンイチの話題が出始める。しかし、一人の小さな男の子がさえぎって放った一言で、皆はシンイチの話題を出すのをやめた。

 

「シンイチさんは僕のエンジェモンを助けてくれたんだよ。自分のデジモンが小さくなっちゃうのも分かってたのに、僕たちのことを助けてくれたんだ。異世界とか難しい話はよく分からないけど、僕はシンイチさんはとっても良い人だと思う。それでいいじゃない!」

 

 

 そしてこの二日後、いよいよサーバ大陸に到着したその日に、子供たちはシンイチたちと再会を果たす。

 

 その時、子供たちの中にはシンイチに対する重要な事実が刻まれることになった。

 

 食料と水を持って子供たちを待っていたシンイチ。海上で魚ばかりの食事、なおかつ満足に水も手に入れられない環境にいた彼らに、おいしい食事とたっぷりの水を提供してくれた。そんなシンイチはタケルの言った通り『とっても良い人』で、『信頼できる仲間』なのだと。

 

 だから、ちょっとぐらい変なことを言っていたとしても構わない。

 

 肉をほおばっている子供たちがそんなことを考えているとはつゆ知らず、シンイチは次に自分が取ろうとしている行動についてどう説明しようかと、頭を悩ませていたのだった。

 

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