デジモンアドベンチャー IB   作:煮干し銀

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捜索とピッコロモン

 「十五歳、だって……?」

 

 砂漠に送った物資の受け取り後の箱を改修しに行ったエアドラモンとウィッチモンが受け取ってきたメール。そこに書いてあった文章に俺は衝撃を受けていた。なんと俺の見た目が二十五歳ではなく十五歳に見えていたというのだ。

 

 これまでずっと二十五歳の大人としてふるまってきて、子供たちも大人として俺を扱ってくれていると思っていた。けれど、見た目が十五歳だったのだとしたら、その振る舞いは背伸びした子供に見えていただろう。

 

 それでも子供たちが疑問をぶつけてこなかったのは、ひとえに彼ら彼女らがそういう気づかいができる良い子たちだったからだ。

 

「ちょ、ちょっとウィッチモン。スマホのカメラで俺を撮って!」

 

「なによ。今更自分の格好が気になりだしたの?」

 

 ウィッチモンにスマホを渡して俺の姿を撮影してもらう。ちなみにこのウィッチモンはあの元デビモンのインプモンが進化したウィッチモンである。

 

「はーい、それじゃあ撮るわよー。……ちょっと、撮るって言ってるんだからそれなりのポーズをしなさいよ」

 

「そんなのどうでもいいよ」

 

「よくないわ。ポーズをしないなら撮らないわよ」

 

「わ、わかったよ」

 

 ポーズとか言われても特に思いつかない。なので適当にダブルピースしておいた。それに対してウィッチモンはそんなのでいいのかお前はと言わんばかりに呆れていたが、一応要望通りにポーズをしたことで写真を撮ってくれた。

 

 数枚撮られた写真を確認すると、そこに映っていたのは確かに二十五歳の俺じゃなくて、高校生ごろの自分の姿。服だけが二十五歳時点で着ていた服だったので、なんだかすごい違和感を感じる。

 

「マジか……本当に若返ってるよ」

 

 いったいこれはどういうことなんだ。と思っていたところでメールに続きがあったのを思い出した。

 

 光子郎が書いてくれたメールはいつもより長い。内容を読む限り、どうやらまたゲンナイと話をする機会があったらしい。そこでゲンナイが俺の状態について話してくれたことを簡潔にまとめて書いてくれたようだ。

 

 内容は割と納得できるものだった。あくまでゲンナイの仮説ではあるが、通信容量の関係で二十五歳のままではこのデジタルワールドに来させることができなかったのではとある。人ひとり分の情報は適当に取った映像のデータ容量を考えるとかなりのものになることは明らかだ。おそらくテラサイズでも足りないだろう。

 

「俺の情報は抜け落ちている。か。でも思い出せる限り記憶に不自然な部分はないんだよな。この世界に来てしまった経緯の記憶が完全に無いのは気になるけど」

 

 さらにメールを読めば、光子郎は俺のデータが抜け落ちているというゲンナイの言葉によって、自分たちがデータになっているということを確信したのだという。そこで、一つの仮説が頭に浮かんだ。自分たちはオリジナルからコピーされた存在ではないかということだ。

 

 光子郎はこのことについて相当悩んでいそうだった。そりゃそうだ。自分がコピーにすぎない存在だと考えると俺だって怖い。

 

 この文章を見る限りでは、他の皆に話してはなさそうだ。俺に話してくれているだけまだマシだが、これは危ういかもしれない。

 

「今は船に乗ってる? 砂漠を移動する船だって? なんだそりゃ」

 

 船がどうこうはよくわからないが、書いてあるそのままと考えると船の移動速度でどこまで行ったのかは予測が難しい。次の物資を送るためにも、子どもたちがどこにいるのかおおよその位置は知っておかないと。

 

「とにかく、飛べるデジモンたちで前回の物資を置いた場所から探すしかないか。結構大きな船みたいだしすぐ見つけられるはずだ」

 

「今飛べるデジモンはセーバードラモンとエアドラモン、それからアクィラモンにあとは一応、スティングモンも飛べるわね」

 

「スティングモンは砂漠では目立つから、他の三体で捜索してもらおう。それと光子郎君がちょっと心配だから今回は俺も行こうと思う。出来ればウィッチモンも一緒に来て欲しいんだけど、どうかな?」

 

「まあ、仕方ないわね。ブイドラモンもガードロモンも大きすぎるし。私がついていってあげるわ。その代わり、次の進化は私を最優先にしなさいよね」

 

「わかった。そうするよ」

 

 話が終わると早速俺たちは飛べる三体のデジモンを招集して経緯を話し、子どもたちを探すために飛び立った。砂漠は視界が良好なため敵に見つからないようにかなり高度を上げてもらって、その結果砂漠なのに全然暑くない快適な空の旅となった。

 

 しかし、旅は快適でも目的が達成できなければ意味がない。俺たちは砂漠の上空から子供たちを探そうと目を凝らしたが、見つけたのは巨大サボテンと船の物と思しき残骸のみで、彼らの姿はどこにもなかった。そのうえ、エテモンのトレイラーが何度も砂漠を往復していてろくに地上に降りることもできない。

 

 俺たちはその日はいったん引き上げて、翌日からまた捜索を行うこととした。高度を上げているとはいえずっと砂漠の上空に居座っていたらエテモンに怪しまれるかもしれないからだ。

 

 翌日、まだ日が昇りかけの早朝から捜索を再開した。だが、太陽が真上に来るまで探し回っても何の成果も得られなかった。

 

「ねえ、もうあの子たちはこの辺りにいないんじゃない?」

 

「そうだと良いんだけど、だとするとあのエテモンのトレイラーがこの辺りを何度も行き来しているのが気になるんだよ。エテモンはこの辺りで子供たちが隠れているのを知って、探し回ってるんじゃないかと思えてさ」

 

「それは確かに気になるけど、実際、子供たちの影も形も見つからないんだからエテモンからうまく隠れて先に進んだって方が現実的でしょ。こんな開けた砂漠に隠れられる場所なんかないわよ」

 

「はぁ……やっぱそうなのかな。メールの返事もないし」

 

「きっとそうよ。そうと決まれば本部に帰って――うん?」

 

「どうした、ウィッチモン?」

 

「ちょっと黙って。何か変だわ。これは……この辺りで魔法が使われているわね」

 

 インプモンから進化したウィッチモン。デジモン図鑑ではウィッチェルニーとかいう別のデジタルワールドからやって来たと書かれているが、当然うちのウィッチモンは違う。それでも、進化した時から身に着いたその体に宿る魔法使いの力は本物だ。どうやらウィッチモンはこの辺りで魔法が使われていたのを感知したらしい。

 

「でも、今まで何も言わなかったのになんで今になって感知できたんだ?」

 

「おそらくだけど、この魔法を使っているのは相当高位なデジモンよ。私のような進化したことでようやく使えるようになったのとは違う。長年の研鑽によってより極まったものだと思うわ。効果範囲はあの巨大サボテンから少し行った先からかなりの範囲に及んでいる。たぶん結界だわ。これは並のデジモンができることじゃないわね。今感知できたのは、その結界が揺らいだからよ」

 

「なるほど。揺らいだ原因は何だと思う?」

 

「結界からの出入りがあったんだと思うわ。それも術者が正確に把握していないものでしょうね」

 

「その出入りがあった場所ってわかるか?」

 

「ええ。ついてきなさい」

 

 自分の箒で飛べるのにサボってアクイラモンに乗っていたウィッチモンは、結界の出入りがあったと思われる場所に一直線に飛んでいく。俺はその後ろをエアドラモンで追って行った。セーバードラモンは警戒のために離れたところから様子を見ていてもらっている。

 

 そうしてウィッチモンについて行くと、やがて砂漠にポツンと置かれていた井戸を見つけた。その近くには空間が割れているかのような亀裂と、亀裂の奥に広大な森が見えている。そして何より、砂漠から亀裂を通って森に向かって伸びている大量の黒いケーブル。

 

「結界の中でエテモンが送り込んだデジモンと何かが戦っているようね」

 

「子供たちが戦っているのかもしれない。俺たちも行こう」

 

 そうしようとしたところで、不意に目の前にピンク色の毛玉が現れた。

 

「それは待ってほしいッピ。これは太一とアグモンにとって大事な戦い。邪魔してはいけないッピ」

 

 俺はこのデジモンを知っていた。タイムストレンジャーでも一時期パーティに入れていたデジモン。その身体の大きさは幼年期並。けれど、強さは完全体の名に恥じない可愛さと強さを両立させたデジモン。

 

「私はピッコロモン。君たちはレジスタンスかッピ? まあ、なんにせよよろしくだッピ」

 

 妖精型デジモン。ピッコロモンであった。

 

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